【泰国】凰凱定例擂台賽
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/02/04 19:17



■オープニング本文

──事件の冒頭
 さて。
 今までは昇竜で行なわれてきた定例擂台賽。
 ですが、先日、桃華が風龍八十八聖によって襲撃を受けた事件から、桃華、昇竜二つの街の人々が東方にある城塞都市へと避難していったのである。
 幸いにも、東方城塞都市【凰凱(オウガイ)】でも、定例擂台賽は行なわれているため、それを楽しみにしていた人々にとっても今月の擂台賽はまさに最高の舞台でもあった。
 桃華や昇竜で名を馳せた道場が、この凰凱ではたしてどこまで通用するのか、じつに楽しみである。

 さて、ここで【凰凱】について一つ説明を付け加えておこう。
 泰国東方に位置するこの都市は、東方に巨大な海『青海』を覗く貿易都市として栄えている都市である。
 中央へと続く街道は全部で6つ、新道とよばれる2つと、旧道とよばれる4つの道がある。
 この旧道を透ると桃華や昇竜に繋がっているる。
 そしてこの凰凱は、都市の周囲の巨大な城壁によって護られている為、外敵などからの防御もかなりしっかりとしている。
 そして東方には港も存在し、青海での漁業を行う船と、他の天儀や安神と貿易を行う為の飛行場も存在するという、じつに便利な都市でもある。

 そして話をもどすとしよう。
「今回の優勝も、この僕で戴きだワン!!」
 そう叫んでいるのは、昨年度優秀泰拳士に輝いた謎の着ぐるみ拳士の『わんドシ君』。
 ちょっととぼけた犬の着ぐるみに身を包むという実にふざけたスタイルではあるが、その実力は本物である。
「‥‥というおかしい泰拳士がいたのぢゃよ‥‥」
 とにこやかに告げているのは、この街に避難してきた紅道場。
「で、今回の擂台賽はどうするのですか? 参加するのですか?」
 そう問い掛ける師範代に、紅師父は一言。
「戦う事で、この街の情勢も見えてくるやも。ということで、今回も頼むぞ」
「はいはい。また開拓者さんで人材を補充するのですね‥‥」
 ということになったらしい。
 では、今しばらくはこの街にて‥‥。


■参加者一覧
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
北条氏祗(ia0573
27歳・男・志
鬼島貫徹(ia0694
45歳・男・サ
ロウザ(ia1065
16歳・女・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
赤マント(ia3521
14歳・女・泰
趙 彩虹(ia8292
21歳・女・泰


■リプレイ本文

●果てしない大空に
──城塞都市・凰凱・紅道場
「‥‥これはなんですか?」
 新しくこの街に引越しをしてきた紅道場。
 その一角に作られている『酔八仙拳道場』のとある部屋で、水鏡 絵梨乃(ia0191)が紅老師にそう問い掛けている。
 彼女の目の前には、30cm四方の白い石が敷き詰められている。そしてその石には、人の足の形が掘りこまれていた。
 良く見てみると、それはどれもが方角や形がバラバラになっている。
「酔八仙拳にとって必要なもの・その壱ぢゃよ。これは歩法を学ぶもの。まあ、見ていなさい」
 と告げると、老師はまず起点となる黒い石の上に立つ。
──スツスッスススッスッ
 と、そのままゆっくりと猿歩法と呼ばれる酔拳独特の歩法を開始した。
 それは石に刻みこまれている足のかたちと同じで、この石に刻まれている足通りに身体を動かすと、綺麗に酔拳独特の歩法を未に釣れることができるというものであった。
 やがて老師は終点にたどり着く。
 その間、まったくといっていいほど無駄な動きはなく、終点に立つ老師は呼吸の乱れもなく、汗一つかいていない。
「す、凄い‥‥」
「ふぉっふぉっ。まあ、この部屋は許可さえとれば、誰でも好きにつかって良いということにしてあるのでのう。まあ、のんびりと練習してみなさい」
 と老師に告げられて、絵梨乃はすぐさま起点に立つ。
「ええっと‥‥まず最初がここで、次がこっち‥‥その次は‥‥と‥‥あれ?」
 先程の老師の動きを思い出しつつ歩いてみる絵梨乃。
 だが、ものの数分で足は止まり、次の場所をキョロキョロと探しはじめた。
「紅師父、この次はどこでしよう‥‥」
 観念してそう問い掛ける絵梨乃。
「ふぉっふぉっ。自然な動きを思い出してみるのぢゃよ。決して無理な動きは存在せずぢゃ」
 と告げると、そのまま床にどっかりと座り込むと。その場で腰に下げていた袋を取り出す。
 そしてその中から焼き栗を取出すと、ゆっくりと食べはじめた。
「聞く事も修行。なれど、自ら考えるのもまた修行ですね‥‥」
 その言葉に老師もニィッと微笑って肯く。

──その頃
 バシバシバシィィィッ
 次々と繰り広げられる正拳。
 それらを素手で受け流しつつ、北条氏祗(ia0573)はつぎの行ってを出すタイミングを捜していた。
 元来サムライである北条にとって、無手での戦いは久しぶりであった。
「こ、これはなかなか‥‥と‥‥」
 殆ど防戦一方の北条。
 それでもどうに流れを掴もうとするものの、相手が泰拳士では歯が立つ筈がない。
 どうにかその動きを脳裏で纏めると、北条は次の道場へと向かうことにした。

──さらに
「あかまんと、あそぼ!! あそぼ!!」
 紅道場の武舞台で楽しそうにそう叫んでいる のはロウザ(ia1065)である。
 この道場にくるのは初めてのロウザだが、数日ですっかり道場に溶けこんでしまっている。
「よろしいのですか?」
 そう告げる赤マント(ia3521)に、紅老師葉にこやかに肯く。
「お互いの為ぢゃて。まあ問題はないぢょろう?」
 と告げる。
「では‥‥ロウザ、まず武舞台にたった場合、この場所でお互いに挨拶するのがしきたりだ。やってみよう」
 とロウザに武舞台での戦い方ヲレクチャーする赤マント。
「ここか?」
「そう。で、お互いに礼」
「れい」
 赤マントの動きを少しずつ真似するロウザ。
 そして例が終った直後に、すかさずバトルに突入する。
 組み付きや投げ技などを多彩に駆使してくるロウザに対して、赤マントは打撃戦を主体とした戦い方を繰り広げていく。
「このたたかいかた、ろうざ、おぼえる」
「その通りだ。ロウザの戦い方は打撃戦主軸の擂台賽ではかなり有効に働く。機動力とその技をじっくりと使うタイミングを憶えるんだ」
「わかった、ろうざ、おぼえる」 
 と言うことで、二人の激しい戦いは日が暮れるまで続いていた。
 
──その同時刻
 ロウザと赤マントが手合わせをしている時。
「お手軟らかに」
「ええ。宜しくお願いしますね」
 もう一つの武舞台では、趙 彩虹(ia8292)と絵梨乃の二人もまた手合わせ行なっていた。
 ちなみに彩虹の服装は『白い虎の着ぐるみ』である。
 噂の泰拳士『わんドシ君』に対抗してのことであろうか、そこそこの動きで絵梨乃を翻弄していた。
「昨年度優秀泰拳士は犬の着ぐるみなんですよね?」 
 と下調べをしていた彩虹。
「ああ。ここの酒場で聞いた話だと、かなりの実力者らしい。十分引き締めていけよ」 
 と武舞台の下で説明する恵皇(ia0150)。
「うむ。俺も酒場で在ったが、かなりのエンターテイメントと見た。それなりの技を持たなければ、派手に負ける可能性もある」
 と恵皇の横で説明する鬼島貫徹(ia0694)。
「ということですね。ではがんばって行きましょう」
 と絵梨乃と彩虹も気合十分。
 そのまま激しい特訓を行なった後、二人は風呂に向かったそうで‥‥。
 まあ、そこで何があったかは二人の秘密ということだそうです。


●がんばれば‥‥ここでも夢
──1月対抗戦
「それではっ。定例大会を開始するんだワンッ!!」
 武道大会会場で、司会進行でもある昨年度覇王のわんドシ君が大声で叫ぶ。
 その言葉に会場に集まった観客が盛り上がる、まさに会場は興奮の坩堝となってしまった。
 やがて個人戦と団体戦それぞれの対戦表が張り出されると、いよいよ一回戦が開始された。
 この凰凱大会初出場の紅道場は無事に二回戦まで勝ち抜く事が出来た。が、その次の三回戦がかなりの手練れであった。
 対戦相手はこの凰凱でもかなり大きな『
冲林寺泰拳道場』。
 さて、三回戦の結果を簡単に説明すると、二勝三敗で惜しくも敗北、それでも初出場でそこまでの成績を残せた事がかなり大会でも波紋をもたらしていた。

先鋒:敗北 趙 彩虹
 対戦相手は『冲林寺泰拳』という泰拳を使う女性拳士『爛火』。
 一番経験の少ない彩虹が、やはり『白虎の着ぐるみ』を身に纏って正面から戦っていた。
  開始直後にすぐさま蹴り技からの連撃や空気撃を用いたトリッキーな戦術を駆使する彩虹であったが、相手は正攻法の戦いに長ける冲林寺泰拳。
 すぐさまその動きを見破られ、いっきに打撃戦で押し切られる形となってしまった。


次峰:勝者 鬼島貫徹
 対戦相手は『冲林寺泰拳・剛体法』を使う男性拳士の元弥。
 獅子を模した覆面を用いての参加となった鬼島、紹介では獅子仮面という名前で登場。
 獅子爆撃や獅子固め、獅子腕撃などの力技を駆使し、打撃戦に対して定評のあった剛体法を難無く撃破。 
 その見せる戦いに、会場は興奮の坩堝に堕ちていった。

副将:勝者 ルオウ
 対戦相手は『冲林寺泰拳・器械使い』の鈍吽(どんうん)。
 「刀つかわねえのはなれなえんだけどなぁ」
 と開始時に告げるルオウ相手に、鈍吽は木剣の二刀流。
 その激しいまでの速攻技に翻弄されまくっていたルオウ(ia2445)だったが、途中デ鈍吽の木剣を一本奪う事に成功。
「へっへっ。やっぱりこれじゃないと話になんねーぜ。審判、俺がこれを使うのは有りだよな?」
 と対戦中に審判に確認を取ると、そのまま激しい剣戟を叩き込んでの圧勝であった。
 

大将:敗北 絵梨乃
 対戦相手は『冲林寺泰拳』使いの黄龍(ウォンロン)。
 絵梨乃は紅老師から学んだ歩法を駆使した酔拳で戦いを挑んでみた。
 ほろ酔い気分でいい感覚になっていた絵梨乃は蹴りと踵落としを取り混ぜた千十で相手を押しまくっていたのだが、途中でいつもよりやや動きがちぐはぐ死していた所を見破られ、急ぎ体勢を取り直していたのであるがそこを一気に突かれ、ギリギリの所で力及ばず。

代表戦 敗北 鬼島
 もっとも疲労の少ない鬼島と、やはり疲労の少ない黄龍との代表戦。
 激しい打撃戦の押収の中、最後まで擂台に立っていたのは鬼島であった。
 が、その時点で既に意識はなく、敗北してもなお擂台に崩れねことはないという男気を見せつつ、判定で惜しくも破れてしまっていた。


●個人戦の光と影
 一方、もう一つの舞台では個人戦が始まっていた。
 この凰凱での戦いでは、個人で優勝する為には、最低でも8回戦勝ち抜けなくてはならない。
 紅道場の登録選手は4名。
 それぞれが様々な組に分かれ、対戦表に名を連ねていくのであったが。
 ここではやはり大番狂わせが発生していた。
 それではその大番狂わせをダイジェストでお伝えしましょう。

──第5回戦・赤マント
 対戦相手は昨年度優勝のわんドシ君。
「赤マント‥‥昇竜での戦いは聞いているワン。ここで手合わせが出来て光栄だワン‥‥」
 丁寧に挨拶をするわんドシ君と、同じく抱拳礼で挨拶をする赤マント。
「それは光栄です。僕としても、覇王との戦い、色々と学ばせていただきます」
「ではよろしくだワン‥‥」
 そんな会話から始まったこの戦い。
 覇王・わんドシ君と昇竜の拳士・赤マントの戦いはすでにかなり前評判になっていた。
 お互いに神速の技が駆使され、肉を裂き骨か軋むバトルが繰り広げられていた。
 が、ここまでの疲労が赤マントの身体にほんのわずかの狂いを生じさせていたらしく、最後の最後でわんドシ君の一撃を受けて、赤マントはここで苦汁を呑む形となってしまった。
「今まで以上に疲労が‥‥ペース配分まで考えないと、ここの大会は‥‥辛い‥‥」
 ですよねー。

──第5回戦・北条氏祗
 対戦相手は『桃姫(トウキ)』という形意拳使い。
 この凰凱でもそこそこに有名な『真理王泰拳道場』の師範代でもある彼女との戦い。
 北条にとっては、第三の対戦相手が難敵であった。
『桃姫ちゃーーーーーーーーーーーーん』
 桃姫が擂台に辰や否や、黄色い第千円が会場を包みこんだ。
 この凰凱でも超有名な女性泰拳士であり、絶大な人気を誇る桃姫。
「では‥‥参る」
 両手に木剣を構えた北条。
 余計な言葉は発せず、ただ黙々と戦いに徹するサムライスタイル。
 そのストイックなまでの戦い方ニ、北条に対しても会場のあちこちから黄色い声援が響き渡っていた。
 だが、その騒がしすぎる会場の雰囲気が、徐々に北条の集中力を奪っていった。
 それとは対象的に、声援を受ければ受けるほどに強くなっていく桃姫。
 最後は木剣を二つとも破壊され、奉じようは止む無く敗北と言う形となった‥‥。


──第6回戦・恵皇
 対戦相手は『冲林寺泰拳道場』の神白龍(シェンパイロン)。
「冲林寺泰拳師範代ですか‥‥相手にとって不足はありません」
 今回の恵皇は強かった。
 ここまで無敗、しかも殆どダメージを受けずの勝利。
 昇竜の経験がここまでは遺憾なく発揮されていた。
 対戦相手の動きを観察し、その動きに合わせて最善の一手を出す。
 気功波で相手との距離を調整して、タックルや空気撃で相手を転ばせ、そして相手のマウントポジションを取ると、そこから繰り広げられる必殺技【破雲怒(パウンド)】の押収で相手ノックアウトしてきた。
 が、ここでその技が使えなくなってしまう。
 相手もまた恵皇と同じ『動きにたいしての最善の一手』を押収してきたのである。
 その結果、先にマウントポジションを取られたのが恵皇となり、あとはそのまま殴りつづけられて恵皇の敗北となった‥‥。
 ほんのわずかの差。
 それが恵皇にとっての苦い敗北となった。


──決勝・ロウザ
 対戦相手は『凰凱泰拳士道場の『わんドシ君』
「きぐるみのいぬ、あいてにとってふそくなし」
 といつも通りに楽しそうなロウザ。
 そのセコンドには鬼島が付き、擂台の外で色々とアドバイスを行なっている。
 強力により練力を全身に行き渡らせると、そのまま締め技や投げ技などを主体とした戦い方を駆使するロウザ。
 それにたいしてわんドシ君もまた、練力を色々と駆使し、ロウザとは一歩も引かない戦い方を繰り広げている。
「ロウザ、相手は化け物だ‥‥十分に気を付けていけ」
 という鬼島のアドバイスが時折ロウザに叫ばれる。
 セコンドを務めていた鬼島には、わんドシ君の戦闘スタイルがはっきりと判ったのである。
「そいつは、戦った相手の技を全て吸収している‥‥迂闊なことはするな!!」
「わかった!!」
 そう叫ぶとロウザは、鬼島オリジナル技である『獅子爆撃』をさらに強化した『ロウザ式雷撃獅子爆撃』をわんドシ君に向かって叩き込んだ。
 その直撃を受けてフラフラとなったわんドシ君に、ロウザは止めの一撃を叩き込もうとして‥‥。
──ヒョンッ!!
 素早く『獅子腕撃』を叩き込みに入るが、それをわんドシ君は『赤マント式神速回避』で難無く躱わし、返し技で『爆斧撃』を叩き込んで辛勝した‥‥。


●そして
 全てが終った。
 団体戦ではどうにか頑張ったものの3回戦敗北。
 そして個人戦では数々の選手が上位まで食い込み、ロウザの準優勝で華を上げた。
 今まで無名であった紅道場の名前が有名になり、この街での知名度も少しは上がった模様。
 ちなみに今回優勝した道場は苦汁をなめさせられた『冲林寺泰拳道場』。
 そして個人戦優勝は覇王・わんドシ君家であった。
 そして、来月2月に行なわれる『凰凱定例擂台賽』では、ついに『あのメンバー』の参戦が急遽決定した‥‥。
 あのメンバーとは何かさっぱり判らないが、擂台賽についてはまたの話。
 
 凰凱でも毎月開催される定例大会、来月の大擂台では、はたして何が起こるのであろうか。

──Fin