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■オープニング本文 ──事件の冒頭 さて。 泰国東方に位置する凰凱。 ここから少し離れた場所にある小さな街、桃華では、ここ最近になって風龍八十八聖が猛威を振るっています。 現在、街は風龍八十八聖の泰拳士によって支配され、この街で生活していた人々のうち、力の強い男性は全て近くの山へと連れていかれました。 そこでは、風龍八十八聖の陰陽師・開白(カイビャク)が最近になって見つけたふるい遺跡があり、その発掘の為に男達は一日中強制労働に明け暮れています。 つい最近、この事実をどうにか伝えようと、まだ年はもいかない少女が桃華から脱出、着の身着のまま、裸足で街道を逃げてきました。 運がいいことに、風龍八十八聖は少女が逃亡したことには気付いておらず、少女はついに凰凱までたどり着いたのです。 ですが疲労と衰弱が激しかった少女は、酒場でこの事実を皆に伝えると、静かに息を引き取りましたました‥‥。 酒場では、風龍八十八聖の事について様々な噂が流れました。 幸いなことに、この凰凱は城塞都市であると同時に、屈強な警備員などによって護られている為、襲われるようなことはありません。 けれど、風龍八十八聖が力を付けたとき、果たして笑っていることができるのでしょうか。 |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
巴 渓(ia1334)
25歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
藍 舞(ia6207)
13歳・女・吟
観月 静馬(ia9754)
18歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●反乱の時代 ──凰凱・とある酒場 「‥‥とりあえず、詳しい情報を集めないとあかんなぁ‥‥」 天津疾也(ia0019)はそう呟くと、この酒場を訪れた少女について、誰か知って居る人がいないか調べてみた。 だが、この凰凱には少女の身内は誰も存在しない。 酒場の常連や旅の行商人などもおなじで、やはり面識は無かったらしい。 「ふぅん。これはあかんなぁ。何か情報でもないと、迂闊に手を出せへんわ」 としばし苦悩する天津であった。 ──その頃の紅道場 「ふむ。こころあたりはある」 静かに焼き栗を口に運びつつ、紅老師は秋霜夜(ia0979)にそう告げる。 「やはりですか。私は実際には面識はないのですが、確かそれらしい少女を以前桃華で見かけた事があるような気がするのです」 そう告げる霜夜に、紅老師も静かに肯く。 「儂の道場にも使いでやってきた事があったような。確か、別の道場の所の娘さんだったような。まあ、いずれにしてもなんとかしないといけないのう‥‥」 と告げると、しばし思考に入る紅老師。 「どうにか救出したいのです。その少女の魂‥‥と、その親御さんも、捕まっている皆さんも」 「そうじゃな。まあ、出来る限りのことは強力しよう。なにかあったらいつでも声を懸けなさい」 と告げられて、紅老師は霜夜を見送った。 「‥‥しかし、これも運命なのかのう‥‥」 ──その頃 「HAHAHAHAHA。囚われた罪無き者たちの救出ですかー!!」 「そういうことならば、手をかしてやろう。我等が武術は、弱きものを助ける為に!!」 「まあ、一回戦で負けちゃって、ちょっとムシャクシャしていたから丁度いいわ。相手になってやるよ」 と、異様なほどに盛り上がっているのは擂台賽の会場付近にある『武天飯店』。 そこを訪れた巴 渓(ia1334)が、酒場にいた武術形に向かって叫んだのである。 「命を懸けて危険を知らせた少女の魂を弔ってくれる奴はいないか!!」 そう告げられて、立上がらない武術家はいない。 一人、また一人と立ち上がり、さらに盛上りを見せていた。 「巴さん、協力して頂けるのですか?」 と、霜夜が飯店に入って巴に告げる。 「俺じゃない。ここの皆が力を貸してくれる。武術とは、弱きものに手を差し伸べる為にあるのだからな」 と告げて、巴は飯店から出て行こうとする。 「共にいくのなら付いてこい‥‥」 と告げる巴に賛同した武術家が立ち上がり、飯店を後にしていった。 「‥‥凄い。これが凰凱の武術家なのですね‥‥」 感極まって涙を流す霜夜であった。 ──その頃 凰凱の外れにある墓地。 そこでルオウ(ia2445)は少女の墓に手を合わせる。 「‥‥頑張ったんだな‥‥わかった。必ずそいつら倒して皆解放してやるよ」 そう告げると、ルオウはまず協力者を求めるために桃華へと向かっていった。 そして桃華では、武具商会のモンテクリストファー卿の元に向かう。 幸いなことに、モンテクリストファー卿の元まではまだ風龍八十八聖の手は伸びていない。 そこで大まかな情報を聞き、さらに途中デ合流した大勢の武術家(巴に賛同した猛者達)もやってくると、足りない武具などの提供を受ていた。 「でや、モンテクリストファー卿、実際に遺跡のある山っちいうのはどこなんや?」 と地図を広げて問い掛けているのは斉藤晃(ia3071)。 「地図でいいますとこの山です。ここには古い遺跡があるっていう噂がありますし、実際に調査隊が現地に赴いて、調べたという話も聞いています」 「その調査隊の所に舞わしい地図はないんか?」 「すでに調査隊は王都に戻っています。まあ、同行した人夫などから聞けば、内部地図の簡単な奴なら手に入るかと」 と告げられて、斉藤はその人夫の元へと走り出した。 ──再び凰凱の飯店 「美鈴(メイリン)というのですか‥‥」 殺された少女の名前を聞いて、観月 静馬(ia9754)がそう告げる。 「ああ。桃華で行商していた時に、よく買い物に来てくれていたからなぁ‥‥」 と、行商の男性が観月に告げている。 「そうですか‥‥」 と立上がる観月に、行商人は話し掛ける。 「まさか敵討ちかい? 止めたほうがいい。相手はあの風龍八十八聖だ、死にに行くようなものじゃないか?」 と告げられるが。 「俺は命と引き換えにしてまで伝えてきたその思いに応えたい、それだけだ」 と告げて立上がった。 ──グイッ と、飯店の入り口で、赤マント(ia3521)が観月に目配せをしていると、観月も又静かに肯き、飯店をあとにした。 ──そしてとある道場 「まあ、そういうことなら力を貸すワン」 そこはわんドシ君の所属する小さな道場。 より多くの協力者を求めて、赤マントも奔走していたらしい。 とりあえずジルベリアの女性拳士は強力してくれるらしく、街の外で待っていてくれている。 先程、飯店で観月の協力も得られた。 あとはこの男‥‥女か判らないが、わんドシ君が手伝ってくれればと、赤マントはヤってきていた。 「済まない。今回の少女のもたらした情報、風龍八十八聖のやり方が悪辣すぎてもう見ていられない‥‥頼む」 「上等だワン!!」 と言うことで、赤マントはわんドシ君と女性拳士達を引き連れて、桃華へと向かっていった。 ●潜入 ──桃華付近・とある山の遺跡 モンテクリストファー卿から借りた地図を便りに、一行は目的地である遺跡へとたどり着いた。 その近くの茂みに隠れて周囲を伺うと、その遺跡の入り口外には簡易的な小屋がいくつも建てられており、その前にも見張りが立っている。 窓らしき場所に鉄格子が填められている事から、囚われてきた人々はこの建物に住み込まされているのであろう。 今はまた昼下がり、人々が小屋に戻ってくる時間には早い。 遺跡の入り口には、どうしてもその見張りに見つかりそうな危険性が絡んでいる。 「ここは‥‥いってくるか‥‥」 「ですね‥‥では」 と泥塗れになった衣服を身に纏い、斉藤と赤マントが鉱夫に変装、そのまま見つからない様に遺跡へと侵入した。 あとは内部で騒乱が起きるのをじっと待っているだけであった。 ──その頃 「‥‥」 すでに侵入して遺跡内部を調査していた藍 舞(ia6207) は、ゆっくりと人に見つからないようにあちこちに仕掛けを施していた。 「次はここ‥‥と」 焙烙玉をしかけ、導火線を目一杯に伸ばすと、藍は遺跡外の通路を爆破し、人が通れなくなるようにした。 それを繰り返して幾つかの通路を破壊すると、そのままさらに別の場所へほと移動、爆発の音を聞きつけて集まってきた風龍八十八聖の下っ端を行き止まりに誘導し、再び天井や壁を破壊し一網打尽にする。 「さて、あとはどう動くかね‥‥開拓者の皆さん」 と粒やキ、再び闇の中へと姿を消していった。 ──同時刻 ズズズズズズズズズズン 重く低く響く音。 それは床や天井も揺らし、奥で何かが爆発した事を告げていた。 「どうやら藍が動いたみたいね‥‥」 「はて、そのような協力者がいたとは‥‥」 と赤マントの言葉に頭を捻る斉藤。 「まあ、単独で動いていたみたいだし‥‥こちらもそろそろ本格的に動いた方がいいんじゃないか?」 と天井が外れ、そこから巴が飛び降りてきた。 「随分と凄い所からでてくるのね?」 「侵入とはそういうものだろう? そろそろ始めるぞ」 「そうやな。ほな、いきましょか!!」 と叫んで、斉藤が突然走り出す。 そして正面にいた見張りに向かって力一杯殴りかかる。 その横を駆け抜けて、赤マントももう一人の見張りに向かって空中二連脚を叩き込むと、そのまま扉を力一杯開く!! ──ギギギギギキギギギギン そこから時は洞窟のような空間。 囚われていた人々が発掘作業をしている場所である。 「きも、貴様達一体なにものだ!!」 大勢の見張りや作業員が巴たちに向かって叫ぶ。 「通りすがりの拳士だ!!」 そう力説する巴にむかって、大勢の拳士が走りこむ。 「HAHAHAHAHA。イッツスイーーーートデース!!」 しジルベリアの武道家たちも後ろから走りこんできて乱入。 さらに外で待機していた天津や観月、ルオウも参戦、まさにバトルロイヤルと化していった。 「あまりチョロチョロすんなや!!」 理穴弓を構えた天津が後方支援を開始、逃げてくる人々に向かって襲いかかる者たちを次々と矢で射止める。 「甘いです!!」 逃げ延びようとしている鉱夫が突然叫んでマントを翻す。 と、そこには潜入していた霜夜の姿があった。 「赤マントさん、ここの首領は今はここにいません!! 本拠地である山に、掘り出した宝珠を届けに出かけています。ここには雑魚しかいませんから、取り返すのは今がチャンスです!!」 と、潜入して情報を捜していた霜夜が告げる。 「なら、俺の敵は貴様だぁぁぁぁぁ」 と叫びつつ、敵指揮官らしき男に向かって直閃三連打を叩き込むルオウ。 だが、それらを巧く受け流すと、指揮官もまたゆっくりと身構えた。 「これ以上、ここを混沌としたままにはして置けないか‥‥」 と告げると、突然指揮官はルオウと一騎打ち体勢に突入!! 「近付くものは全て投げ飛ばす!! くらえわしの必殺奥義、ダイナミック大車輪や!!」 と叫びつつ、てじかにいた男を捕まえて、指揮官に向かって投げ飛ばす!! ──ドゴォッ 突然後方から人が跳んでくるなど想定外の指揮官。 そのまま不意の事態に対処しきれず、さらにその隙をみて殴り掛かったルオウの飛龍三連脚をまともに受て意識を失った。 「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」 絶叫するルオウ。 そのままの勢いで、とり割れている人たちの解放を開始。 「いそいでこっちに!! ここから先は安全です!!」 と大勢の人々を誘導している観月。 以前ワンどし君戦での教訓を活かし、目だけでなく気を読み行動していた観月。 以前よりも、僅かではあるが『気の流れ』を読み取れるようにはなってきていた。 そのおかげで、危険は極力躱わしつつ、不意の自体にはそこそこに戦いつつ、どうにか囚われていた人たち全員を遺跡の外、さらには安全な場所まで誘導することに成功した。 さて、そこからは開拓者達のターン。 ただひたすらに戦闘を繰り返し、敵の雑魚は全て一掃。 途中で追い付いた凰凱の守護隊が彼等を捕縛、とりあえずは一連の事件は集結を見た。 囚われていた人たちは桃華へと戻る事が出来たが、そのまま家族などと凰凱へ避難してくるものが多くなった。 囚えた敵の拳士などは観月がギルドを通して王都に連絡、後日桃華と昇竜に守護隊を派遣するという話がまとまったらしい。 それまでは、どうにか凰凱で避難をすることになったらしい。 遺跡の管理も王都からの研究員立ちに委譲され、あとは風龍八十八聖によって持ち去られた宝珠の回収のみとなっていた。 静かに事件の収束を、彼女の墓の前で報告する巴たち。 これで少女の魂は救われたのであろうか。 ──Fin |