【泰国】風龍八十八聖
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/11/06 19:20



■オープニング本文

──事件の冒頭
 ザワザワザワザワ
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国中央にある『桃華(とうか)』と呼ばれる小さな街では、現在とある事件に巻き込まれていた。

「なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 絶叫しているのは『桃華』にある『七星鳳凰拳』と呼ばれている武術道場の道場主・紅流賽(こう・りゅうさい)。
 彼の道場にある宝物庫が破られ、中に納められていた『七星鳳凰拳秘伝書』が盗まれてしまっていた。

──ということで説明しよう
 最近、この道場のように、秘伝書が盗まれたという事件があちこちで頻繁に起こっていた。
 そしてその犯人も大体目星がついているものの、犯人を捉える事は出来なかった。
 犯人は『風龍八十八聖』と名乗る武闘派盗賊集団。
 この『桃華』の近くにある『隆碓山(りゅうたいざん)の麓に拠点を構えており、近隣の村や都市に出没しては、盗みや殺しを行なっていた。
 桃華の警吏(けいり)による討伐作戦なども行なわれていたが、ことごとく返り討ちに合い、今では誰も手を出さなくなってしまった。
 それを良い事に、『風龍八十八聖』はさらに勢力を拡大。
 今では誰も手出しできず、いつ姿を表わすか判らない風龍八十八聖の姿に脅える日々を送っていたらしい‥‥。


●ということで話を戻すとしよう
「これ以上、風龍八十八聖の好き勝手にされないよう、何か対策を取らなくてはならぬ‥‥」
 近くの村から集まってきた村長は町長、書く道場師父が顔を突き合わせて相談をしていた。
 だが、どうしていいか判らぬまま時は過ぎていった‥‥。
 
 そんな刻。
 貴方たちは旅の途中でこの街にやってきた。
 風の噂も聞き、今、この『桃華』を始めとする近隣の街や村が危険な状態にあることも理解した。
 さて‥‥みなさんはどうしますか?



■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
佐久間 一(ia0503
22歳・男・志
奈々月琉央(ia1012
18歳・男・サ
秋桜(ia2482
17歳・女・シ
紅虎(ia3387
15歳・女・泰
神鷹 弦一郎(ia5349
24歳・男・弓


■リプレイ本文

●まずは聞き込みから
──七星鳳凰拳道場
「これはこれはまた別嬪さんがわざわざ、何の御用かな?」
 道場主である紅流賽(こう・りゅうさい)が、来客である梢・飛鈴(ia0034)にそう問い掛ける。
「あたしは梢・飛鈴ね。久しぶりに泰国に戻ってきたら、とんでもない事件臥起こっているっていう噂話聞いたアルよ。よかったら力貸すアルよ?」
 そう告げられて、紅流賽もホッとした表情を見せる。
「開拓者かな?」
「そうアルよ」
「なら頼みたいが‥‥取り合えず中に入ってくれ」
 と告げられ、飛鈴はそのまま道場の居間へと案内された。

「実は‥‥困った事がこの街で起こっていまして」
 そう話を切り出した道場主は、この辺りを荒し回っている風龍八十八聖という組織について話を始めた。
 そして、奴等によって、この街の道場の殆どの『秘伝書』が盗まれてしまった事を説明、これから寄合所で対策を話し合うということも教えてもらった。
「アイヤ。それならアタシも手伝うアルよ。幸い、ここに来る途中で連れ合った開拓者立ちも来ているハズ。皆で手を合わせれば、楽勝アルヨ」
 ということで、飛鈴は寄合所へと案内されていった。


──大桃華飯店
「‥‥ず、随分とあるのねぇ」
 困惑した表情でそう呟いていたのは水鏡絵梨乃(ia0191)。
「まあ‥‥おおよそ予測はしていたが‥‥これは参ったなぁ」
 その絵梨乃の言葉に頭を掻きつつ、羅喉丸(ia0347)がそう相槌を打つ。
 一連の事件の情報を得る為に、絵梨乃と羅喉丸、神鷹弦一郎(ia5349) の3名はまず大桃華飯店にやってきた。
 ここで色々と情報を得ることができると判断し、絵梨乃は早速店内の人々に話を伺っていた。
 そして得られた情報が、以下の通りである。

・秘伝書が盗まれるのは概ね深夜帯と思われる
・複数の人間の姿が確認されているが、皆、同じ覆面を付けていた為、顔までは確認出来ていない
・奪われたときには道場主は不在であったところが多い。また、滞在していた場合は、秘伝書が保管されている場所と道場主のいた場所が離れていたことが多い。
・盗まれていない道場はあと4つ。『秘門流星拳』『大極式梵拳』『西方長拳』『天位猛皇拳』の4つの道場である

「とりあえずは、風龍八十八聖に対しての対策を練っている集まりがあるらしいから、そこに向かうとしよう」
 そう告げて、弦一郎はスッと立上がると、スタスタと外に出ていった。
「おおっと‥‥随分と気が早いが。まあいいか‥‥」
「そうですね。取り合えず戦おうという意志を持っている方たちがいらっしゃるのでしたら、そこで色々と話し合うのも良いでしょう」
 ということで、3人は被害を受けた道場主達の集まっている寄合所へと向かっていった。


──市街地
「このあたりの道場では、あそこがそうだねぇ‥‥」
 楽しそうに呟く街のおばちゃん。
 その話を聞きながら、佐久間 一(ia0503)はおばちゃんの指差した方角の道場をちらりと見る。
(かなれ荒れていますか‥‥そうですね)
 道場の宝とも言える秘伝書。
 それを盗まれてしまったのであるから、荒れるのも無理はない。
 看板を失った道場に通ってまで拳技を学ぼうという酔狂な弟子ならいざ知らず、この街にも、他の道場はある。
 将来の見えない道場よりは、まだ未来の明るい道場に移るのは自明の理であろう。
「あそこには、もう門下生はいないのですか?」
「師範代と師範が残っているわねぇ。あそこだけじゃなく、秘伝書を盗まれた道場はどこも潰れそうになっているわよ?」
 その言葉に、佐久間も哀しい表情をする。
「そうですか‥‥色々とありがとうございました」
 と丁寧に頭を下げると、佐久間はまた別の秘事に聞き込みをしてみた。
 
・主に狙われているのは道場の秘伝書ばかり。それも門下生の多い所から順番に狙われていった
・残っている道場は4つ。そのうちの二つに門下生が大勢移ってきているらしい。
・犯人は『風龍八十八聖』と名乗る武闘派盗賊集団で概あっている。その中の一人『赤流星の斜亜』と呼ばれている泰拳士がこの街に姿を表わしているらしい

「さて。とりあえずは皆と合流するとしましょう。恐らくは情報が集まっているでしょうから‥‥」
 ということで、佐久間も見なの所へと移動開始。


──とある道場
「ふぅん‥‥なるほどねぇ」
「それはそれは、凄い情報ですねぇ‥‥」
 サムライの琉央(ia1012)と秋桜(ia2482)、紅虎(ia3387)の3人は皆とは違う方角から調査を開始。
 まずは狙われた道場を訪れては、一軒一軒聞き込みを行なっていた。
「まあ、色々な泰拳といっても、色々な流派があるからなぁ。元々の最源流技と呼ばれているものから、つい最近になって分派して出来た奇抜なもの、腕技主体、足技主体、武器や暗器使い、様々な動物の形をとりいれたものなど‥‥数えたらきりがないからねぇ‥‥」
 と琉央に告げる道場主。
「道場主の皆さんが集まったりして作られている組織みたいなものはないのですか?」
 そう秋桜が問い掛けると、奥に座っていた師範代がゆっくりと口を開いた。
「道場主の寄り合いのことですね? 泰拳寄合所がありますから、そちらに向かうといいでしょう」
「泰拳寄合所? それは一体なんですか?」
 そう紅虎が問い掛けると、道場主が静かに説明する。
「泰拳寄合所というのは、各街にある道場の師範が集まって作った組織ですね。街の武術大会や流派同士の親善試合など、泰拳にかんする細かい取り決めをしている所ですよ。まあ、全ての土ヴ章が入っている訳ではありませんし、待ちによっては寄合所がなかったり、幾つもの寄合所があったりとしていますから‥‥この街では、大桃華飯店の隣にある建物が寄合所ですね‥‥」
 その説明を聞いて、一行は他の仲間たちもそこに集まるだろうと思い、とりあえず情報を集めたのち、そこに向かうことにした。



●対策というなの‥‥
──大桃華飯店隣・泰拳寄合所
「なんだ‥‥みんなもここに来たのかよ‥‥」
 羅喉丸が集まっている面々を見て、静かにそう呟く。
「そのようだな。っまたく、お人好しというか、おせっかいというか‥‥」
 羅喉丸の言葉に続くように、弦一郎が呟く。
「まあまあ、お互い知らない顔でもあったりなかったりするのですから、ここは皆でこの街の復興に手を貸しましょうよ」
 と秋桜が纏めに入って、とりあえずは全員が席に座る。
 と、寄合所の責任者らしき人が話を始める。
「さて、とうとうこの街で狙われていない道場は4つになってしまった。次に何処が狙われるか、そしてどのように対策を寝るか考えなくてはならぬ。誰か、いい知恵はないか?」
 そう付けせられると、どの道場主もああだこうだと意見をだす。
 それらを聞きつつ、今までに得た自分達の情報を交換し、開拓者達は自分達なりの意見を練っている。
 もっとも、その結果練り上げられたものはかなり力任せの大技。
「提案ですが‥‥」
 そう開拓者を代表して佐久間が挙手。
「どうぞ」
「まず、残った秘伝書を一ヶ所に集めます。その場所に私達が待ち伏せし、あとは皆さんで秘伝書が一ヶ所に纏められた事をそこはかとなく流布してください。その情報を信じて姿をあらわした 風龍八十八聖を私達で捉えましょう‥‥その後、捕らえた賊から情報を聞き出し、奪われた秘伝書を取り返すというのはいかがでしょうか?」
 その佐久間の意見に、寄合所の中は大きくもめた。
 当然、置いておく秘伝書は偽物とするなどの安全策も考えてある。
 作戦としては悪くはない。が、開拓者達の腕は確かなのか?
 氏素性もわからない開拓者を信じていいのかなど、議論は白熱していったのだが。
 最終的には多数決を取る形となり、開拓者達の作戦に乗りかかることとなった。
 ただし、秘伝書を隠してある場所には、残った道場からも腕に自身のある者たちを選出し、一緒に潜ませるというかたちとなる。
「まあ、それでは早速、細かい打ち合わせとしましょう‥‥」
 絵梨乃の提案で、さらに細かいところまで打ち合わせが続けられた。



●作戦決行
──大桃華飯店
「ヒック‥‥ねえ、あの噂聞いた?」
 ほろ酔い気分の絵梨乃が、街の人らしい男性に酔っ払いつつしなをつくって話し掛ける。
「な、なんの話しだよ」
「秘伝書泥棒の話ですよぉ。あちこちの道場で管理すると危険なので、まとめて一ヶ所に保管したんですって‥‥私の通っている道場で、そんな話があったのですよ」
  そう嘘情報を流しつつ、絵梨乃は周囲の客を見渡した。
(聞き耳を立てているひともいる見たいですね‥‥)
 その様子を、近くの席で紅虎と秋桜の二人も眺めている。
「何人か、酒場からてでいきましたね」
「そのようだな。まあ、間者という可能性もあるが、まずは持ち場に戻るとするか‥‥」
 と呟いて、二人も寄合所から離れた『囮の道場』へと移動開始。



●そしてある日の深夜
──ホーッホーッホーッホーッ
 夜泣鳥の声が響く深夜。
 月が雲間に見え隠れしている時間。
 一行はいつものように持ち場につき、じっとその刻を待っていた。

──ゴトッ
 と、入り口のちかくで怪しい音がする。
(数は‥‥4、5、6‥‥結構いますね)
 外の建物の物陰から隠れて見ている佐久間がそう心の中で呟く。
「静かに‥‥急ぐぞ、ワナの可能性もある‥‥」
 そう盗賊の一人が呟く。
 そして室内奥にある戸棚に置いてある囮の秘伝主に手を伸ばした刹那!!
──バンッ!!
 突然扉が閉じる。
 そしてそれと同時に、室内には飛鈴と絵梨乃、琉央、秋桜、紅虎が飛び出し、敵と素早く接敵する。
 そして部屋の外では、羅喉丸と佐久間、弦一郎の3名が建物の扉を封鎖し、外で待機していた残りの同族に向かって相対峙する。

──室内
「さあて。貴方たちが風龍八十八聖ネ。この街から盗んだ秘伝書の在処、全て吐いて貰うアルよ」
 ゴキゴキッと指を鳴らしつつ、飛鈴が手近の敵に向かって殴りかかった!!
──ひゅんっ!! 
 素早い二段正拳突きを繰り出すが、それを敵は難無く躱わす。
「嘘!! そんなに素早く動くなんて!!」
 そう動揺する飛鈴に向かって、盗賊は飛鈴に向かって蹴りを叩き込む!
──ドガッ
 それを腕でブロックしたものの、すぐさまがら空きとなった腹部に膝蹴りが叩き込まれた!!
「痛いっ‥‥何するアルカ!!」
 そのまま後方に下がり、呼吸を整える飛鈴。
(ヤバイアル。思ったよりも手練れアルヨ)
 そのままゆっくりと相手の出方を待っている飛鈴。
 その横では、絵梨乃が敵の一人を袋叩きにしていた。
「ヒック‥‥どういう輩かは知らないですけれど‥‥堪忍して下さい‥‥」
 堪忍ちゃう、観念。
 って、かなり酔っているようですね。
 酔ったままの勢いで繰り出している酔拳。
 どうやら打撃力は下がっているものの、そのトリッキーな動きに相手は翻弄されてしまった模様。
「うぉらぁぁぁぁぁっ」
──ドッゴォォォッ
 素早く叩き込まれるスマッシュ三連。
 琉央の攻撃が次々と盗賊に向かって叩き込まれるが、そのどれもが失敗。
 そして隙が見えた瞬間、琉央は盗賊のケリの連撃を受てダウンする。
 意識はあるが、身体が思うように動かない。(この程度‥‥強力を使えば‥‥)
 少しずつ練を練りこみ、全身に爆発的な力を流し込む準備をする琉央。
 だが、盗賊は琉央が身動きできないのを見ると、他の仲間の加勢に向かった‥‥。

「こ、こっちに来ないで下さいっ!!」
 秋桜が襲いかかってくる盗賊相手に必死に抵抗を見せる。
 が、技が繰り出されることもなく、秋桜は敵の手によって押さえつけられてしまう!!
「破ッ!!」
 その秋桜押さえつけている盗賊にむかって、紅虎が空気撃を叩き込む。
 その一撃で、秋桜を押さえつけていた盗賊が後方に吹き飛ぶ。
「秋桜、きみは戦えないのか!!」
「む。無理です。戦えません!! 私は女中です」
 とあっさり。
 仮にも泰拳士なのだが、それらしい武器もない秋桜。
 まあ、それでもいるのはたいしたものであるが。
「数が多い‥‥どうにかするか‥‥」
 必殺の蛇拳を繰り出すにも武器はない。
 仕方なく、空気撃と旋風脚の連続技で敵を倒し、そのまま縛り上げていく戦法に切替えていく。


──その頃の外
「やれやれ。私の部下達を閉じこめるとは‥‥中々いい作戦ですね」
 外では4名の盗賊と、一人の武芸家が立っている。
「まあ、作戦勝ちって所だな。あんた、なにものだ?」
 羅喉丸がそう告げると、男は静かに口を開く。
「風龍八十八聖の一人、赤流星の斜亜。どうやらここは囮だったようで‥‥ひとまず引かせて貰う事にしましょう‥‥」
 そう告げると、斜亜は踵を返してその場から立ち去ろうとする。
「どこに向かうのですか? ここからは帰しませんよ」
 佐久間がその斜亜の前に達はばかる。
 そして少し離れた場所では、弦一郎が弓を構え、いつでも打てるような体勢を取る。
「その通りだぜ。アンタたちに盗まれた秘伝書、全て返して貰おうか!!」
 羅喉丸がそう叫びつつ気合を溜める。
 そして素早く接敵し、殴りかかったのだが‥‥。
──フワッ!!
 突然殴りかかった筈の羅喉丸の体が天に舞う。
 そして激しく大地へと叩きつけられた!!
──ドゴォッ
「い、今の技は一体‥‥」
 近くで見ていた佐久間にも、何が起こったのか理解できない。
 殴りかかった筈の羅喉丸がいつのまにか腕を取られ、そのまま投げ飛ばされてしまったのである。
 しかも、斜亜はその場から殆ど動いていない。
「ヤバイ‥‥あいつは危険すぎる」
 そう判断した弦一郎は、瞬速の矢で速力をました矢を斜亜に向かって放つ。
──バシィィィッ
 だが、その矢を斜亜は素手で受止めた。
 飛んできた矢の軸をがっちりと掴み、そのまま大地に投げ棄てた。
 その光景を見て、弦一郎はすぐさま次の矢を番えようとしたが、手が震えて思うようにいかない‥‥。

──ドッガァァァァァッ
 と、その時。
 封鎖していた扉が内部から破壊された。
「暗闇からようやく出られたアルヨ」
 飛鈴が縛り上げた盗賊を外に放り出しつつそう呟く。
 その後ろからは、同じ様に縛り上げた盗賊を転がしつつ秋桜も姿を表わす。
「中は全て完了しました。こちらはどうでしたか?」
 既に内部はどうにか制圧、盗賊のうち二人ほど死んだようだか、残ったものは全て捉え、縛り上げていた。 
「おや、まったく使い物になりませんね。まあ、今日の所は引くとしましょう‥‥」
 と告げて、斜亜とその部下の4名は素早く走り出す。
 その足力の速さに、急ぎ追跡しようとした一行だったが、とうとう見失ってしまった。


●そして
 縛り上げた盗賊達から得たいくつかの情報。
 盗まれた秘伝書は赤流星の斜亜のアジトに納められている。
 その場所はここから山中に3日ほど進んだ渓谷にあるらしい。
 いずれにしても、今回の襲撃阻止の結果、奴等の出方が慎重になり、襲ってこない事を祈るばかりであった。

──続く