【四月】退魔戦記
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: 不明
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/04/16 19:12



■オープニング本文

──事件の冒頭
 この世界を作りし神々。
 様々な国で信仰されている神々の存在。
 だが、それらは全て、3つの神の眷族に過ぎないということを知って居るものは、ごく僅か。
 
 阿修羅(あしゅら)
 迦無羅(かむら)
 斗摩邪(とまや)
 
 これら『創造』『破壊』『混沌』の名を冠する三柱の神々の存在と、それらに連なる従属神たち。
 そして、彼等と敵対し戦いつづけている存在『妖魔』。
 そのはて無き戦いは時間を越え、空間を越え、そして今の時代に受け継がれていた。

 時は現代。
 古の存在である『妖魔』が『妖魔界』より人間世界に侵攻を開始。
 それに伴い、彼等『妖魔』と戦う力を持つものが、少しずつ目覚めはじめていた。
 日本国政府直轄の『対妖魔組織』の長としてひそかに活動を続けていた『勇希サエラ』という女性の提唱により、日本各地に『対妖魔迎撃組織』を配備。
 但し、その存在は一般の人々に知られる事のないよう、一般企業や個人経営店としてカモフラージュし、一般の人々に妖魔の魔の手が伸びる事のないよう、影で戦い続けていた。


●時は2010年
 情報網の発達に伴い、それまで表向きには姿を表わさなかった妖魔の存在が、徐々に一般の人々にも『都市伝説』として知れ渡りはじめていた。

「あの情報知って居る?」
「ええ。願いを叶えるHP(ホームページ)の事でしょう?」
「アクセスして、自分の願いを掲示板に書けば、その願いがかなうっていう奴ね」
「そうそう。でも、その願いを叶えてくれる代償っていうのがあるらしいのよ‥‥」

 インターネット上に流れている一部の噂。
 『流転』という名のHPに願いを書いた者たちの願いが叶えられるという。
 そして願いを書き込み、叶えてもらった為に意識を失い眠ったままになってしまった少女の存在。

──北海道・札幌・宇童探偵事務所
「で、貴方のお嬢さんの意識が戻ってこないのは、そのインターネットの生というのですか?」
 宇童探偵事務所の所長である『宇童悠』が、依頼人の女性にそう問い掛けている。
「はい。娘は『流転』というHPに願いを書いていたそうです‥‥なんでも、片思いの彼氏と相思相愛になれますようにって‥‥その翌日に、娘が『彼氏が出来たんだよッ』て教えてくれて‥‥その直後に意識を失って‥‥」
 そこから先は嗚咽しか聞こえてこない。
「ふぅん。まあ良いでしょう。では今回のケース、無事に娘さんの意識が取り戻せるようにということですね?」
「はい‥‥噂では、こちらの探偵事務所ではそういった『一般ではない事件』を解決して頂けると‥‥」
 そう告げて、母親は静かに探偵事務所を後にしました。
「さて、美和君、メンバーに招集連絡を。事件内容は『インターネットに潜む妖魔の駆逐、及び奪われた依頼人の娘の魂の回収』ということで‥‥」
 そう告げられて、美和とよばれた助手が登録メンバーに連絡を開始した。



※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。




■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067
17歳・女・巫
雪ノ下・悪食丸(ia0074
16歳・男・サ
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
佐上 久野都(ia0826
24歳・男・陰
劫光(ia9510
22歳・男・陰
ラシュディア(ib0112
23歳・男・騎
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ


■リプレイ本文

●4月の雨
──札幌・宇童探偵事務所二階・応接間
 所せましと並べられた大量のパソコン。
 全部で12台のパソコンと、それを制御するサーバーマシン、無数の光回線が床や壁に縦横無尽に置かれている。
 その一角では、宇童所長と、今回依頼を受けた退魔師たちが椅子に座り待機していた。
「ふう。これで全てOKですわ。あとは椅子に座ってこのヘッドレストを装備してくれれば」
 と告げているのは、今回の依頼の為に本部より派遣されてきた『赤松』という電脳師。
 術師の意識を肉体より分離し、電脳世界に送り込むことができる術師である。
「‥‥わたし、電脳世界に入るのは始めてなのですよ。何か注意しなくてはいけないことはありませんか‥‥」
 そう問い掛けているのは柊沢 霞澄(ia0067)。本業は巫女。
 綺麗な巫女装束に身を包み、椅子に座ってそう告げている。
「まあ、この手のパターンからいうと、分離した意識体はすなわち自己そのもの、電脳世界で怪我をしたら肉体にも跳ね返ってくる、で、もし死んだら本当に死ぬ‥‥ってところでしょう?」
 そう告げるのは雪ノ下・悪食丸(ia0074)。
 本業は学生。
 ちなみに真名は隠し、通り名の『雪風』で通しているらしい。
「そうですね。雪風さんの言うとおりです。あと一つ、注意しなくてはならないのは『ログアウト』です」
「ログアウトというと、インターネットから出てくるっていうことか?」
 と恵皇(ia0150)が問い掛ける。
「まあ、簡単にいえばそうですね。今回の依頼で‥‥三笠さん以外は全員『意識体』で向かうのですよね?」
 と問い掛けると、全員が肯く。
「で、三笠さんは『式神化』とその式神武具での参戦ということで?」
 と問われ、三笠 三四郎(ia0163)は静かに肯く。
「アナログな人間でして。慣れない所での戦いはかなり危険ですから」
 と告げる三笠。
「で、あらかじめ『流転』について調べてきたのですが‥‥」
 と告げるのは佐上 久野都(ia0826)。
「ええ、何か判りましたか?」
 と可愛らしい仕種もつけてルンルン・パムポップン(ib0234)が問いかける。
「流転というのは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS)の一つらしいです。で、幾つか面白い特徴があるのですよ」
 と告げる久野都。
「それって、ミクシーとかと一緒なんだろう?」
 と劫光(ia9510)が呟く。
「ええ。そうですね。で、面白い特徴というか、不可解なことが幾つかありまして」
 久野都がそう切り出すと、その場の全員が耳を傾ける。
「まず、この『流転』には、定まったサーバーが存在しないということです」
「ちょっと待ってください。それっておかしくないですか?」
 と告げる悪食丸。
「ネットの世界に存在する以上、サーバーがあってその位置を示すURLが存在していなくてはなりませんよね」
「そのとおりなのです。けれど、この『流転』にはサーバーがなく、定まったURLもありません。ただ、ここに書いてあるURLでのみ、『流転』というHPにたどり着く事が出来ます」
「しっかし辛気臭い名前だなぁ‥‥『流転』ね‥‥最近のネットじゃそんな名前のサイトが受けんのか?」
「劫光さんの言うとおり、実際にはそんな名前は受け入れられにくいです。が、そうであるからこそ存在しているという所でしょう」
 と久野都が説明付ける。
「で、被害者の女性については? 交友関係とか、趣味とか、なにかはまっているものとか‥‥」
 と劫光が告げると、久野都が別のファイルを取出し、それを全員に配る。
「身辺調査書です。あとはそれらをヒントに、直接ダイヴして戴きます」
 と久野都が告げる。
「ああ、それについてですが‥‥」
 と三笠がスッと手を上げて一言。
「はい」
「僕の『電脳蜘蛛』で『流転』までの道をサーチします。そこまでは糸で道を記しますので、みなさんはそれ目印に追いかけてください」
 そう告げると、まずは三笠が静かに印を組み韻を紡ぐ。
「我が意志よ、その姿を蜘蛛に変え、かの敵を追跡せよ‥‥」
 神道系退魔師である三笠の術が発動。
 それにあわせて電脳師も術印を解放、電脳蜘蛛がパソコンの中へと消えていく。
「‥‥楽しそう」
 とルンルンが告げる。
「そうでもないですよ。僕の場合、現実の意識と電脳世界の意識の二つが同時に存在しますので、気を抜くと意識を失いそうになりますよ‥‥」
 と呟く三笠。
「‥‥流転確認、アクセスしました‥‥」
 その三笠の言葉と同時に、全員が一斉にパソコンにダイヴ。
 そのまま電脳世界へと旅立っていった。



●夢を食らう
──流転HP
 果てしない電脳空間。
 風景は白黒のツートンカラー。
 市松模様と掲示板のみが存在する世界。
 その大地‥‥壁紙の上に、一行は立っていた。
「ここにくる途中で、この場所をおとずれた人たちの足跡を見ましたけれど‥‥」
 と哀しそうに告げる霞澄。
「全ての人が現在、意識不明で病院に運ばれています。魂をうばわれていました‥‥」
「つまり、ここの主を倒せばいいのですよ」
 と恵皇が告げたとき、電脳水平線の向うで、1頭の獣がノソノソと動いている。
「あれだっ!!」
 そう叫んで走り出す一行。
「そして接近したとキ、その奇妙な物体はゆっくりと立ち上がり、戦闘態勢に入った。
 二足歩行の奇妙な莫(バク)。
 夢を食らうバクが擬人化したような姿であり、全身のあちこちが時折点滅している。
「どこの誰かは知らないけれど、ここで奪われた者たちの魂を返して貰います」
 と叫ぶと、素早く体内の気を練り上げていく悪食丸。
「‥‥うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
 そのまま素手で殴りかかる。
 その手には気功法が施され、妖魔にたいしての肉弾戦が有効であることを表わしていた。
──ドゴオッ
 一撃が命中。
 そのまま二撃目まで叩き込む。
 が、それほど聞いた感じはない。
「時間を稼いでください‥‥」
 そう告げると、素早く印を組み韻を紡ぐ霞澄。
 その足元に、4つの複雑な魔法陣が展開する。
「儀式魔法!! 了解した!!」
 そう叫ぶと、劫光も悪食丸の横にむかって走り出す。 
 と、その前に三笠の式神がたどり着くと、そ手に持つ式神武具『薙刀16號』で斬りかかった!!
──ずばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ
 その一撃は莫の右上腕部に突き刺さる。
──ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
 大量の血が吹き出し、そして霧散化していく。
「効いている!!」
 そのまま背後に走り出し、別のアドレスへと逃げようとする莫だが。
「空間よ、かの地域を包む結界を作り、異空間を形成せよ‥‥」
 と、杉焼く久野都が時空結界を発動。
 『流転』のアドレスを別の時空に分離した。
「よしっ!! まだまだぁっ!!」
 と劫光も印を組み韻を紡ぐ。
「神代の紡ぎ糸よっ、かのモノを束縛せよ!!」
 神鞭法と呼ばれる術である。
 劫光の左手から大量の鞭が飛び出し、莫を捕らえた。
「って、捕らえたのですかっ!!」
 驚く一行。
 神鞭法はすなわち光の鞭による打撃、束縛する術ではない。
「んなもん、気合だ気合っ!!」

──火よきたれ。我が心に燈り、全てを焼き尽くす力となれ‥‥。

 そんな時。
 霞澄の足元の魔法陣の一つが完成し、炎渦巻く術印となる。

「まったく、劫光さん、あなたはなんてでたらめなんですか!!」
 と呟きつつ、恵皇も印を組み韻を紡ぐ。
「妄‥‥想‥‥悶‥‥絶‥‥我が心の扉よりい出よっ!!」
 と、恵皇野眼の前に光る扉が現われる。
 そして扉から、一人の女子高生が姿を現わした。
 夢想師である恵皇の召喚呪文が発動した。
「いけ千歳ちゃん!!」
 短いスカートにブレザー姿。
 黒髪ロングで霧ッとした少女である。
 その千歳ちゃんが莫に向かって間合を近づけると、一瞬のうちに莫を投げ飛ばした。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 大地‥‥壁紙に向かって叩きつけられた莫が素早く立ち上がり、千歳に向かって鋭い爪で切りかかる!!
──スパァァァァァッ
 その一撃を素早く交わす千歳。
 だが、躱わしきれず、ブレザーの胸許が切断され、柔肌が見え隠れしてしまう。
「きゃっ!!」
 すかさず胸許を覆う千歳。
──ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
 夢想師本体である恵皇の口許に笑みが浮ぶ。
 その刹那、千歳の衣服が再生した!!
「そうか‥‥妄想師の力の源は、妄想力だったよなぁ‥‥」
 妄想師ちゃうよ久野都。

──風よきたれ。私の周囲で逆巻き、雨敷物を阻む楯となれ‥‥

 霞澄の足元の魔法陣の一つが完成し、疾風逆巻く術印となる。

「グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ」
 さらに莫は、もっとも護りの弱いルンルンをターゲットにしたらしい。
 一気に間合を詰めると、ルンルンに向かって再び爪の一撃を叩き込む。

──ガギィィィィィィィン

 だが、それは鋼の縦によって阻まれた。
「ああ‥‥私の王子様‥‥」
 ルンルンの瞳が輝いている。
 夢想師であるルンルンの防御妄想‥‥防御詠唱が発動。
 瞬時に光の扉があらわれ、中から『白馬に跨った王子様』が姿を表わしたのである。
「もう大丈夫ですよ‥‥」
 そう優しい声を掛ける王子様。
「ああ‥‥もうわたし‥‥どうなってもいい‥‥」
 フラフラとその場に崩れるルンルン。
 それをすかさ王子様が庇い‥‥と、そこのあたりは放置の方向で。

──水よきたれ。私の周囲に降り注ぎ、全てを癒す水となれ‥‥

 霞澄の足元の魔法陣の一つが完成し、霧の柱によって形成された術印となる。

「戦闘はおまかせします‥‥それよりも、とり割れた魂を探さないと‥‥」
 と久野都は時空防衣を発動。
『我が周囲の空間よ、歪曲してわが身を包め』
 そのまま防御力を高めたまま、HPの内部を走り出す。
「‥‥ファイルの保存先‥‥この先ですか」
 と、一つ下の階層に何かあると確認した。
「では、少々手荒いですが‥‥」
 と印を組み韻を紡ぐと、右手を天にかざす。
「空、断・・・・我が手に宿れ、神代の剣っ」
──ズバァァァァァァァァァァァァッ
 一撃で壁紙を切り裂くと、そのまま下の階層に飛込む久野都。
「‥‥まだですか‥‥早くお願いします」
 莫との戦いはまだ続いていた。
 莫の攻撃を必死に薙刀で食い止める三笠。
 そこに悪食丸と千歳が乱打を浴びせていく。
 そのさらに後方では、劫光が印を組み韻を紡いでいる。
「普賢三昧耶大金剛輪・外獅子内獅子・外縛内縛・智拳日輪・隠形っっっっっっ」
 退魔行が完成し、劫光の右手の周囲で発動を待っている。
 が、劫光はそれを右手で握ると、腰溜めに構えた。
「来る!!」
「タイミングを合わせます!!」
 三笠と悪食丸、そして千歳の3名が体勢を取り直し、莫の動きを止めた。
「発動!! ごーーーーーーーーーーーーーーっつい退魔バズーカーーーーーーーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 退魔師である劫光オリジナル術、『退魔バズーカ─』が発動。
 退魔の波動が両手から飛ばされ、その直線上である莫を捕らえた。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォッ
 その一撃で、莫はフラフラになっている。

──大地よきたれ。その力にて全てを捉え、固めたまえ‥‥

 霞澄の足元の魔法陣の一つが完成し、水晶の柱によって形成された術印となる。

──パァァァァァン

 柏手を打つ霞澄。
「4大精霊の聖なる力よ、かの者の悪しき心を燃やし尽くせっ」
 その刹那、莫が4つの結界に囚われ、燃え上がる。
 やがて炎は消滅し、莫は完全に浄化されていた‥‥。

──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴコゴゴゴゴゴコッ

 と突然地響きが鳴りはじめる。
「い、急いで逃げましょう、ここは莫のテリトリーだった場所です。魂は回収しました」
 と久野都が叫ぶ。
 そして全員が一斉に、別のURLへと避難していった‥‥。


●そして
 電脳世界から帰還した一行。
 回収された魂は現実世界で消え、本体へと戻っていった。
 報告では、依頼人の娘も意識を取り戻し、全てが終った‥‥。
「で、すまないが恵、どうして千歳がここにいるんだ?」
 と問い掛ける久野都。
 電脳世界から戻ってきてもまだ、千歳は術が溶けていない。
「ええぇっと。俺の妄想力は∞?」
「まあそういうことにしておこう。それじゃあまたなにかあったらよろしく‥‥」
 と告げで劫光が事務所をあとにする。
 そして一人、また一人と事務所から来えていった。
 最後にルンルンもまた、白馬の王子様の後ろに跨がり、幸せうに帰っていった。
「さて、報告書を作りますか‥‥」
 
 いつもの日常。
 その影で戦う者たち。
 決して光を浴びる事のない‥‥。

──Fin