【泰国】4月定例擂台賽
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 不明
参加人数: 8人
サポート: 1人
リプレイ完成日時: 2010/06/11 13:06



■オープニング本文

──事件の冒頭
 さて。
 今年の凰凱擂台賽は荒れ模様の状態です。
 1月の擂台賽での紅道場の活躍により、凰凱の青少年たちの一部が、紅道場へと足を運ぶようになりました‥‥。
 2月の擂台賽では、始めて異国のチームが参戦、かなり上位に食い込むという事態が発生しています。
 凰凱の武術連盟では、異国のものに『龍王』の称号を渡して鳴るものかと、さらなる訓練にはげむ道場が多数でているようですが‥‥。
 そしてついに4月、紅道場のランクが上位に食い込み、5月擂台賽でのシード枠を確保したようですが。 

「告知ねぇ‥‥」
 5月擂台賽に向けて、擂台賽実行委員会では、あたらしい競技枠の発表があったようです。
 いままでの個人戦、団体戦の他に、チーム枠というルールが加わりました。

・チーム枠
 参加者は二人一組のペアで参加する。
 擂台に二人同時に立ち、対戦チームの二人と同時に戦う『チーム・バトルロイヤル』を採用。
 最後まで立っていられるチームメンバーがいた方が勝利となる。
 使用武具制限は、団体・個人戦に準ずる。

 というものであった。
「‥‥さて、今回からこのようなルール枠が加えられたらしい!!」
 えらそうに告げる女性武道家が、道場に座っている武道家達に説明を行なっていた。
「まあうちの道場でもチーム枠に参加する。でだ‥‥御前中の日課に付いてだが‥‥」
 と一人一人の訓練について指導を開始する女性武道家。
 ちなみにこの道場、つい最近になってこの凰凱に引っ越してきたらしい『傭兵道場』。
 世界各国の選りすぐりの猛者達が集まっているらしく、かなりの実力があるようで。
 そんなチームが参戦するということもあって、凰凱ではかなりの前情報が広がっているようである。

 そして‥‥。
「ふぉっふぉっふぉっ」
 中庭の武舞台を眺めつつ、紅老師が静かに『てぃーたいむ』を楽しんでいる。
「紅師父、何か楽しそうですね」 
 と師範代が茶菓子を手に老師の前に座る。
「うむ。傭兵がきたようぢゃ。それに、ペア歩枠というのもある。これにワシらも参加しないとのう」
 と呟く紅老師。
「まあ、私としても賛成ですね」
「じゃろう?}
 と告げつつ、焼き栗をパキッと割りつつ口の中に放り込む。
 ということで話は纏まったようですが。
 では、擂台賽でお会いしましょう。




■参加者一覧
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
佐竹 利実(ia4177
23歳・男・志
平野 譲治(ia5226
15歳・男・陰
濃愛(ia8505
24歳・男・シ
贋龍(ia9407
18歳・男・志
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔


■リプレイ本文

●いつもの日常
──泰国凰凱
「自分で強くなっているのかあまり実感が持てないのですが、実際のところどうなのでしょうね」
 紅道場でそう紅老師に問い掛けているのは恵皇(ia0150)。
 いままで数多く戦ってきたのだが、今ひとつ強くなった実感というのがないらしい。
「ふむ。まあ幾分強くなってきているのは事実。では、ちょっと手合わせといこうかのう‥‥」
 と告げると、老師も武舞台に立つ。
「すまないが、ちょっと見学させてもらっていいか?」
 と武舞台の横で告げているのは柳生 右京(ia0970)。
 今回発参戦ということもあり、色々と先に勉強しなくてはならないと思ったのであろう。
「うむ、構わんぞ。では始めるとしようかのう‥‥」
 と告げると、老師は武舞台でゆっくりと身構えた。
「では行きます!!」
 と叫ぶと同時に、恵皇が一気に間合を詰めていく。
 そこから至近距離での空気掌、そして肩口からのタックルと技を連鎖させていく。
「ふむふむ。なかなか愉しい。じゃが、一つ一つにまだ隙があるのう‥‥」
 と呟きつつ、一つ一つの攻撃全てを右掌だけで受止めていく老師。
「なっ!!」
「ほっほっ。この動きが、この流れが泰拳士ぢゃよ。柳生君も理解したかのう?」
 そう武舞台の下で見ていた柳生に問い掛ける「あ、ああ‥‥後で頼む」
 と告げると、横目で見ていただけの柳生も座って真剣に観察を始めた。
 
すこーしだけ迷いもあるわけで。
まぁ、以前負けた相手にリベンジを果たせれば何となく成長を実感できるかもしれないが‥さてさて。

――その頃の『泰国新蔭流道場』
 そこは凰凱の外れにある小さな道場。
 あちこちの道場を尋ねて出稽古していた三笠 三四郎(ia0163)がその道場を訪れたとき、その道場はすでに閉鎖の危機に瀕していた。
 あまり大きくない道場の外観はあちこちが風化し崩れている。
 中央にある武舞台も敷石のあちこちがひび割れ、崩れているものさえあった。
 そして門下生らしい少女が一人、道場の掃除をしていたのである。
「あ、いらっしゃいませ。入門でしょうか?」
「い、いや、出稽古をお願いしたかったのですが」
 その言葉に落胆する少女。
「では、こちらで着替えてください。私も着替えて準備してきますので」
 と告げて、少女は武道着に着替えに向かう。
「ここの道場は、いったいどうなっているんだ?」
 そんな事を呟きつつ、三笠は着替えて武舞台へと向かう。
 そこには純白の胴着を身につけた少女が立っていた。
「泰国新蔭流師範代柳生弥生(やぎゅうやよい)と申します。よろしくお願いします」
「新蔭流っていうことは、天儀本島の武術かい?」
 そう構えつつ問い掛ける三笠。
「祖父はそうおっしゃっていました。遠い昔の流派だそうです。この泰国では日の目を見ませんけれど‥‥」
 と告げてからお互いに抱拳礼を取る。
 そして素早く構えると、稽古は始まった。

――そして

 一進一退の工房の後、勝利を納めたのは三笠であった。
 けれど、泰国の武術にはない動きを見せられ、勉強になった模様。
 ちなみにこの道場も、来月には閉鎖してしまうらしい。
 擂台賽によって、より強い道場に門下生が集まっていく。
 結果、力のないものや知名度の低い道場は淘汰され、ここのように潰れていったものも数多く存在するらしい。
「あまり、知りたくはなかったな‥‥」
 と呟くと、三笠も道場をあとにした。


三笠 三四郎(ia0163
佐竹 利実(ia4177
平野 譲治(ia5226
濃愛(ia8505
贋龍(ia9407
ジークリンデ(ib0258
わんドシ君(iz0086)

●がんばれば‥‥こんどは伝説
――5月定例擂台賽
「それではっ。定例大会を開始するんだワンッ!!」
 武道大会会場で、司会進行でもある昨年度『大覇王』のわんドシ君が大声で叫ぶ。
 その言葉に会場に集まった観客が盛り上がる、まさに会場は興奮の坩堝となってしまった。
 やがて個人戦と団体戦それぞれの対戦表が張り出されると、いよいよ試合が開始された。
 前回の成績により、今回はシード枠からのスタート。
 これまたかなりいいところまでがんばった紅道場はなんと再び決勝まで到達。
 いよいよ本格的にマークされはじめていたさ中のこの成績、あと一勝で『小龍王』の称号を得る事も出来る。

 今回の対戦相手はジルベリアからの刺客『チームティタニア』。
 前回、チームティタニアには敗北を喫して死載った為、今回がリベンジ戦となった。
 流派は、ジルベリアのとある地方の流派『ジルベリア徒手空拳』と、そして団体戦のメンバーも依然と同じ構成であった。

――先鋒 敗者 恵皇
 対戦相手はジルベリアの徒手格闘技使い、ウェンリー。
 以前とは違い、一気に速攻で仕掛けてきたウェン・リーの攻撃にたいして、転反攻を仕掛ける恵皇。
 そのまま一気に手数で押していく恵皇であったが、ウェン・リーは戦術を変更。
 恵皇の打撃にたいして転反攻を合わせてきた。
 こうなるとお互いに手のだしようが無い。
 ジルベリア徒手空拳は護りに徹するととてつもなく防御が硬くなる。
 そこからのカウンターなど、考えたくも内というところであろう。
 結果、攻守が逆転し、ウェン・リーの一方的な打撃戦で幕は閉じた。
「‥‥ふう。いいところまでいったのだがなぁ‥‥」
「あと少し、こちらが護りに間に合わなかったら、負けていたのは私の法です。今回は色々とありがとうございました」
 と最後にはがっちりと握手を交わす二人であったとさ。


――次鋒 敗者 平野 譲治
 対戦相手はジルベリアの徒手格闘技使い、ルドルフ・シルバーバウム。
 平野が遠距離からの斬撃符と火輪で攻撃、圧倒的優位で幕を開いたこの一戦。
 そのまま押し切れるかと思った矢先、ルドルフがダメージ覚悟で平野に一気に間合を詰めた。
「わわわわっ。こんなはずじゃあなかったのだっ!!」
 そう叫びつつ斬撃符を飛ばす。
 相手の背後から飛ぶようにコントロールしてみるが、それも出来ず。
「悪いな。ここは終らせて貰う。もっと身体を鍛えてこい!!」
 と呟くと、ルドルフは平野を捕まえ両腕をがっちりロック。
「どっせい!!」
――ドッゴォォォォォォォォォォォォッ
 そのまま背面投げを叩き込まれる平野。
「ぐはあっ。こ、この程度のっ!!」
「ほう。まだ意識があったか。その心意気や良し!!」
 そのまま平野を掴むと、ルドルフは再び背面投げを叩き込む。
 その攻撃で、平野はダウン。
「こ、こんなはずじゃあなかったのだっ!!」
「そうか。なら、もっと鍛えてこい。必要ならコーチをしてやってもよいぞ!!」
 と互告げられ、がっちりと握手をして擂台を後にする二人であった。


――副将 敗者 赤マント(ia3521)
 対戦相手はアラン・ハイネゼン、ジルベリア徒手空拳の使い手らしい。
 当初参加が決定していたメンバーの決員により、急遽補欠枠の赤マントが参戦。
 まさかの事態にウォーミングアップも間に合わなかった赤マント。
 決勝までに身体を仕上げる予定だったのだが、それもままならない情況であったらしい。
 それでも決勝までは無敗でやってきた赤マントだが、その無理が決勝にでたらしい。
 自慢の神速が従来の力まで出しきれず、相手の攻撃を避けきれずに受止めてしまったのが敗因となった。
(あと半日。それで身体は完全にしあがったのだが‥‥)
 と心の中で呟く。
「アーカマントサーン。アナタハカンゼンデハアリマセンデシタ。ツギコソ、ホンキノアナタヲミセテクダサーイ」
 そう告げられて、相手のさし出した拳に拳をぶつける赤マント。
「応。次こそ本気の僕を見せてあげるよっ!!」
 ということで。


――大将 勝者 柳生 右京
 すでに試合の結果は決まっているものの、試合は行なわれた。
 対戦相手はジルベリア徒手空拳のフリードマン・キルヒアイス。
「では参るとするか‥‥」
 静かに木刀を構える右京。
 その動きに対戦相手のフリードマンもゆっくりと構えを取る。
――ヒーュンッ!!
 一気に相手の間合に潜り込んで斬撃を繰り広げる右京。
「紅老師との対戦がなければ、ここまで勝ち進めなかったということか‥‥」
 老師との戦いで、泰拳士との戦いにおいての間合は全て見切った。
 が、ジルベリア徒手空拳の間合はまた少し違う。
 それでも対戦中に間合の修整を施すと、右京はそのまま斬撃を繰り返していった。
 そして結果として、相手に競り勝つ形で幕を閉じた。
「計算しつくされた動き。たいしたものです」
 そう右京に告げるキルヒアイス。
「修練の賜物です。また御手合わせをお願いしたい所です」
 と告げて、領主共に武舞台から降りていった。


●個人戦の光と影
 一方、もう一つの舞台では個人戦が始まっていた。
 参加者が増えつつある凰凱擂台賽、個人戦で優勝する為には、最低でも9回戦勝ち抜けなくてはならない。
 紅道場の登録選手は2名。
 それぞれが様々な組に分かれ、対戦表に名を連ねていくのであったが。
 ここではやはり大番狂わせが発生していた。
 それではその大番狂わせをダイジェストでお伝えしましょう。

――準決勝・わんドシ君vs佐竹 利実(ia4177
 ここまで快進撃を続けてきた佐竹。
 本戦の前には傭兵道場の様子を見、なかなか面白そうだなと思っていたらしい。
 もっとも、傭兵道場の奴等の話によると、他国からの参加者が多くなってきていた為、泰国のとある資産家の依頼でこの戦いに参加しているらしい。
 一部の噂では、称号持ちの泰拳士のみが集まって戦う大擂台賽があり、その決勝は国王の目の前で行なわれるらしい。
 その瞬間だけは国王も無防備となる為、『国王暗殺』には持ってこいという噂らしい。
 もっとも、その為には毎月の大会で優勝し称号を受けなくてはならない。
 そして本戦でも決勝まで進まなくてはならない。
 まあ、そこの決勝まで進める実力があるのならば、国王の側近達を軽く倒せる。
 そうすれば暗殺など容易いということらしい。
 
「‥‥わんドシ君、お前もその口なのか?」
 と戦いのさ中問い掛ける佐竹。
「‥‥違うワン。むしろ逆だワン‥‥国王を護る為、この国を護る為に戦っているワン」
 と告げるわんドシ君。
 戦いは一進一退の攻防でわんドシ君が勝利したが、その戦いのさ中に、佐竹はわんドシ君からある情報を耳打ちされた。
 それは、ジルベリアからやってきている武道家達の中に、『風龍八十八聖』の手下がいるらしいということであった。


――準決勝・三笠 三四郎(ia0163)vs悪鬼仮面
 こちらはうってかわって激しい戦い。
 筋骨隆々の大男『悪鬼仮面』と三笠の戦いである。
 太刀とグレートソードの二刀流を使い、追い詰められない様に間合いを取った戦い方をする三笠。
 多重フェイントと円運動を基本とした戦い方で、その間合いを生かした戦いを続けていたのだが、悪鬼仮面の肉体にはほとんど傷が付いていない。
「まさか、剛体法?」
 紅老師から聞いた、練力で自らの肉体を硬化する技。
「ほう。そけれを知って居るとは流石だな‥‥」
 そう告げると、悪鬼仮面は防御から反撃に転じた。
 剛体法をこうげきに切替え、三笠の使っていた二つの武器を『武器破壊技』で完全に打ち砕く。
「しまった!!」
 新技が炸裂する前に、三笠の武器が破壊された。
「‥‥どうするサムライ? 武器がなければ戦えまい」
 と拳を納める悪鬼仮面。
「ええ。ここまでのようです。自らの肉体の一部であり、魂である武具を破壊された時点で、この戦いは僕の負けです」
 と告げる。
「いい覚悟だ。今度は木刀ではなく真剣で戦いたいな」
 その言葉に隔離と肯くと、三笠はゆっくりと舞台から降りていった。



●ペア枠
 そしていよいよフィナーレ。
 今回より始まった二人一組のチーム戦。
 擂台の上にチームが二人ともノリ、同時に戦うというチーム・バトルロイヤル。
 最後まで立っていたもののチームが勝者ということから、戦い方には色々なパターンが考えられていた。

――贋龍&ジークリンデ戦
 贋龍(ia9407)とジークリンデ(ib0258)の試合は第6試合。
 対戦相手は双子の少女拳士『鈴々』と『蘭々』。
「護りは任せてください。付け焼刃の拳だが‥‥守ることくらいは」
 と告げる贋龍に対して、ジークリンデはにっこりと微笑む。
 そしていよいよ試合開始。
 徹底して護りとなり壁となる贋龍と、後方から砲台となるジークリンデ。
 双子で左右から次々と攻撃を仕掛けてくる鈴々と蘭々。
 その素早い動きに翻弄される贋龍と、迂闊に範囲魔法を使うと贋龍を巻き込んでしまう為、小技でちまちまとダメージを叩き込むジークリンデ。
 結果、二人がかりのこうげきにより贋龍がまずダウン。
 そののち双子の一人蘭々もダウンし、ジークリンデと鈴々の二人の戦いとなった。
 こうなると一方的に殴りつづけられる鈴々の部があった。
 最後は鈴々が残っていた為、鈴々&蘭々の勝利となってしまった。



●そして
 全てが終った。
 団体戦では準優勝、そして個人戦では三笠と佐竹の上位入賞、パーティ戦では一回戦で終ったが、各々が上位まで食い込み、じつにいい戦歴であった。
 次回の団体戦でもシード権を取ることも出来、結果としては上々の模様。
 ちなみに今回優勝した道場は『冲林寺道場』。
 そして個人戦優勝はいままで無銘であった『白影』と名乗る女性拳士であった。
 そしてこの戦いののち、この女性拳士の姿が来えた‥‥。
 何かが、大会の影で動きはじめている‥‥。

――Fin