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■オープニング本文 ──事件の冒頭 ザワザワザワザワ 大勢の人々で賑わう街。 ここ泰国中央にある『凛安(りんあん)』と呼ばれる小さな街の隣街・桃華では、現在とある事件に巻き込まれていた。 「なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 絶叫しているのは『桃華』にある『七星鳳凰拳』と呼ばれている武術道場の道場主・紅流賽(こう・りゅうさい)。 彼の道場にある宝物庫が破られ、中に納められていた『七星鳳凰拳秘伝書』が盗まれてしまっていた。 まあ、そんな話はおいといて。 ここ凛安では、最近になってある事件が起きていた。 街の郊外にある『もふら様牧場』から、毎日1頭ずつもふら様が盗まれていくという事件が発生していた。 近郊にあるもふら様牧場は大小あわせて10ほど。 最近は牧場の方でも定期的に見回りを行なっている為、被害はでていない。 けれど、夜通しの見張りが続くと、牧場主や雇われている人々の健康も害してしまう。 「このままでは、我々が身体を壊してしまう」 「そのタイミングで、きっとまたもふら様が盗まれてしまうに違いない」 「用心棒ヲ野盗ダ」 「そうだ、用心棒を雇って、もふら様泥棒を対峙してもらうだ」 「そうだ、それがいい」 「けんど、もし盗んでいる奴等が『風龍八十八聖』のやつらだったら‥‥」 ──シーーーーーーーーーーーーーーン 「と、とにかく用心棒雇うだ」 「それしかあんめ。うちのもふら様もこれ以上減らしたくねえだよ」 ということで、君達は牧場主達から頼まれて、用心棒となってしまったらしい。 いとおかし。 |
■参加者一覧
樹邑 鴻(ia0483)
21歳・男・泰
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
鴇ノ宮 風葉(ia0799)
18歳・女・魔
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
紬 柳斎(ia1231)
27歳・女・サ
剣桜花(ia1851)
18歳・女・泰
黒森 琉慎(ia5651)
18歳・男・シ |
■リプレイ本文 ●もふら様に愛を込めて ──凛安・もふら様牧場 「随分と広い所だなぁ‥‥」 樹邑鴻(ia0483)が牧場の中をのんびりと見回しつつ、そう呟いている。 幾つかの牧場を視察し、ここが最後の牧場らしい。 「そうですね。でも、ここが一番広くて、それで目が届きにくいかと思われますが」 樹邑と共に行動していた柚乃(ia0638)が、静かにそう呟く。 と、牧場主と共に鴇ノ宮風葉(ia0799)と酒々井統真(ia0893)がやってくる。 「牧場主さんとの話し合いはついたよ。離れの倉庫がもうすぐ取り壊しらしいから、そこは燃やして構わないってさ」 「俺も警備の奴等に話は付けてきた。ボヤ騒ぎに乗じて警備は手薄にしてもらえるようにな」 風葉と統真が二人にそう告げる。 ここに至るまで、皆でどういう作戦で行くか細かい打ち合わせを行なってきた。 そこで纏まった意見が、『ボヤ騒ぎを起こして警備を手薄にし、犯人をおびき寄せる』ということであった。 「あとは、街の方で聞き込みをしているメンツがどういう情報を持ってくるかだな」 そう統真が告げる。 まあ、その頃の情報収集は中々楽しくなっているようで。 ──市街地 「‥‥つまり、もふら様泥棒ってうのは三人一組なのか?」 輝夜(ia1150)は市街にあるもふら様牧場の管理事務所に話をききにやってきていた。 依頼人である牧場主からこの場所の話を聞き、ここに集まっている被害者の牧場主とかから手色々と話を聞き込んでいた。 というのも、あまりにも目撃情報が散漫で、とりとめがまったくない為、幾つかの情報から色々と推理してみようということである。 「そうだなぁ‥‥」 ということで、聞き出し、輝夜が推理した情報が以下の通りである。 ・泥棒は三人一組である。 ・リーダー格はその中でも豊満な女性、その下っ端に細い男と太った男がいる。 ・太った方はかなりの怪力無双、武芸に卓越しているらしい。 ・細い方は頭脳派、見た事もない術を使ったりしているらしい。 ・豊満な女性はかなりセクシー。その色香に騙された警備員もいるとか。 「うーーん。全体のバランスの良く取れたパーティーという所か。まあ、そこそこに気をは軋めなくてはならないか‥‥」 と呟きつつ、輝夜は1度仲間たちの待つ牧場へと移動していく。 ──その頃の現地調査班 「‥‥ここから森に抜ける道が一番安定していますね」 牧場から続く細い小道。 剣桜花(ia1851)が逃走経路の下見を行なっている。 「ここ以外の道となると、牧場の反対側から抜けていく街へと続く街道しかない。となると、ここが桜花の読み通りの場所ということになるか」 腕を組んでそう告げているのは紬柳斎(ia1231)。 手にした徳利からの街の地酒をぐびぐびと呑みつつ、街道をじっくりと調べる。 「どうですか? 何か判りましたか?」 そう問い掛ける桜花に、柳斎はにこやかに一言。 「実にいい酒だ。この凛安の中でも1、2を争う蔵元らしい。作り手の魂を伺える、いい酒だ」 「そうではなくて。あなたはどうしてそうなのですか? もう少し真剣になってください」 「ああ失礼。どうもこの空を見ているとな。青く澄み切った空、囁くように流れる風、最高の酒と最高の美女、それが傍にあるんだ。呑まない道理はない」 「美女って‥‥そんな事行っても騙されませんから」 「ああ失礼。それでだ、この街道筋だが、地面があまり踏み固められていない。獣道だった所を無理矢理切り開いてつくったという所だろう、馬車でもそんなに速度は出せないから、追跡にはもって来いというところだろう?」 そこまで見切っているのなら‥‥と言いかけて、桜花は断念。 そのまま仲間たちの待つ牧場へと戻っていくことにした。 そしてそのまま集まった皆で情報を交換すると、一行はいよいよ作戦を実行することにした。 ●ボヤボヤしてるとボヤが起きると ──モフラ様牧場・深夜 空には輝く月。 人が寝静まった深夜。 夜鳴鳥の声が森から響いてくる。 作戦通りに、開拓者一行はあちこちの納屋や小屋に隠れている。 そしてあらかじめ手配してあった道具で、静かに火を灯す風葉。 (よしよし。いい感じに火が付いたぞ‥‥) そのまま藁束などに火が燃え映り、そこから倉庫の壁に火は燃え移った。 ──パチパチパチパチ やがて火が大きく鳴るのを見計らって人騒ぎし、消化をしようと思った矢先に。 ──ゴウゥゥゥゥゥッ 突然の突風が倉庫を襲う。 ──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ その風邪のあおりを受て、突然火の勢いが大きくなった!! (しまった。これは全く想定外!!) そう心の中で騒ぎつつも、風葉はさらに縁起を続行!! 「火事だ!! 火事だぁぁぁぁぁぁ」 必死に叫びつつ近くに用意してあった『消化用のたらい』に入った水を桶で汲み出し、それをかける!! 「駄目だ!! 火の勢いが強すぎて間にあわない!!」 それは演技ではなく本音。 だが、周囲で隠れている開拓者たちは、そんな事実を全く知らない。 (だ、団長気合入っているな‥‥) (団長の意志、しかと感じた。あとはおまかせを) 統真と輝夜がそう念じる。 もっとも、心の声というのであれば、桜花がもっとも凄いであろう。 「業火絢爛の姫巫女、先の戦で悪名を馳せた風世花団団長鴇ノ宮風葉たるお人が放火の機会を逃すわけが無いじゃないですか‥‥そもそもひんぬー放火巫女の方が通りが良いお人に火を扱わせるのが間違いです」 ああっ、心の声じゃない、声が出ていたっ!! その言葉に耳を傾け、失笑する一同。 とその時。 ──ゴトッ もふら様の小屋の方からなにか物音がする。 と、そこから二人の人物が、1頭のもふら様を抱えて外に飛び出してきたのである。 (ふう。ようやく仕事ですか‥‥長かったですね) そう呟くのは、一番近くの納屋で隠れていた黒森琉慎(ia5651) ここまでの間、琉慎はずっと一般人に紛れて行動していた。 気配をすべて消し、開拓者であることを悟られないようにあちこちでも聞き込みを行なっていた。 そして今、琉慎は盗み出した盗賊の二人の追跡を開始する。 (よしよし。計算通りの場所にきたか) すでに逃走経路で隠れていた統真が、もふら様を馬車に乗せている盗賊の二人を確認。 (ではいきましょう) 桜花は愛用のG戦闘服とG覆面を身につけ、そそくさと闇の中へと消えていった。 そして追跡班が移動を開始した直後、残ったメンツもまたさらに追跡を開始。 「さて、アタシの役目はこんなもんかな。‥‥あー、もう、喉乾いちゃった! 後で酒々井にお茶淹れてもらおーっと」 風葉はそう呟きつつ、残ったもふら様の様子を確認。 「ねね、このもふら様、1頭貰っちゃダメ?」 「ダメですねぇ‥‥」 「だよねぇ‥‥あはははは」 とまあ、他のメンツが緊張の中で行動しているにもかかわらず、まあなんというか‥‥ゆるい。 ●追跡、そしてもふらの楽園 ──敵アジトらしき屋敷 そこは小さな屋敷。 その一角にガラガラと盗賊たちの馬車が入っていく。 その光景を、追跡してきた琉慎と統真、桜花の3名が確認。 「連れてこられたもふら様はあの大きな小屋に移されたか‥‥」 「盗賊の二人はそのまま屋敷に入っていきましたね」 「で、あの部屋の窓から明かりが漏れている所を見ると、あそこに女盗賊がいるみたいですね」 そう呟く3名。 そして後ろからのこったメンツが到着した時、いよいよ作戦は開始された。 ゆっくりと屋敷に近づいていくと、そのままこっそりと扉を開く。 先頭は抜足で足音を完全に消している琉慎。 その後ろをたの仲間たちが間合をとって突いていく感じとなっていた。 「神仙娘々様、これでもふらが20頭揃いましたですよ」 「あとは作戦を実行するだけだすな」 「ほーーーーーーーーーーっほっほっほっほっほっ。判っているじゃあないか。知星、飛空船に載せる為の隠蔽作戦は大丈夫なんだろうねぇ」 「それはもう。その為の準備はちゃくちゃくと」 「超力剛、お前はいまのうちにもふら様を箱につめてしまいな」 「ほいさっさーーー」 とまあ、そんな会話が扉の向うから聞こえてくる。 ──バン 「そこまでだっ!!」 素早く扉を蹴り開ける樹邑。 「敢えて言わせて貰おう。御仕置きだべー!」 そう叫ぶと同時に、入り口から他の仲間たちも突入。 「貴方たちの企みはお見通しです。すみやかにお縄についてください」 柚乃のその叫びに、超力剛と呼ばれていたらしい筋肉質の男が叫ぶ。 「なんだと? もふら様をとある実験の為に他国に輸出して一儲けしようという企みがばれていただと!!」 ──スパァァァァァァァァァァァァァァァァン その言葉の直後、神仙娘々と呼ばれていた女性が鞭で超力剛を打つ。 「ばれていたわけないじゃないかこのスカターーーーン。まあいいわ。ここまで来てしまった以上、あんたたちちを生かして返すつもりはないわ。知星、超力剛、やってしまいなさい!!」 『ほいさっさーーー』 と叫ぶや否や、知星と超力剛と呼ばれた二人は、開拓者たちの前に立ちはだかった。 「今週のびっくりどっきり気功波、ずばっとなぁ!」 樹邑が気功破を発動。 その一撃を受けた超力剛だかが、あまり効果がないように見える。 「そんなもの、効かないもんねーーっ」 そう叫びつつ、手にした鎖分をブンブンと振回す。 「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォッ そのまま遠心力を付けてから、樹邑に向かって鎖分銅を飛ばす超力剛。 「ふんっ!!」 咄嗟に樹邑の前に出た統真が、飛んできた鎖分銅を自らの右腕で弾く。 それはグルグルと腕に絡み付くと、超力剛がブンッと鎖を引く。 ──ガシッ 「ほう、力試しか‥‥」 「上等、この俺の鎖分銅のサビにしてやる」 ギリギリとお互いに鎖を引く。 その力はほぼ互角だったらしく、お互いに一歩も動かない。 お互いに一歩も動かない。 お互いに一歩も動かない‥‥。 お互いに‥‥ということは? ──ドゴォォォォォォォォォォォォォッ 素早く超力剛の後方にまわりこんだ輝夜が、そのまま強力により跳ね上がった右腕で思いっきり殴り飛ばした。 その一撃を受けて、力一杯吹き飛んでいく超力剛。 さらに倒れている超力剛を、手にした荒縄でグルグルと巻き上げていく柳斎。 ──一方その頃 ジリッ‥‥ジリリッ‥‥ ゆっくりと間合をとりあって居るのは知星と呼ばれた細身の男と琉慎。 「ひょっして、さっきの火事も貴方たちのせい? そうだとしたら、私達をここまで苔にした貴方たちを許せないわよっ」 知星がそう告げつつ、手にした剣をゆっくりと構える。 「‥‥素人の構えですね‥‥では、こちらも」 と告げつつ、琉慎が拳を握る。 「あらイヤだ、あんた武道家? それならちょっと不利じゃない?」 そう笑いつつ呟く知星。 その側面に一気に駆け寄っていくと、そのまま裏一重で敵側面へすり抜けるようにまわりこみ、そこから足を踏みつけてから背部への肘打ちによる空気撃を叩き込む樹邑。 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォォッ それはかなり強烈だったらしく、そのまま知星は意識を失ってしまった。 「ふう。いい感じですね」 「そう言われると光栄だな」 と呟く琉慎と樹邑。 そしていつのまにか居なくなってしまっていた神仙娘々を探すものの、ついに彼女は見つからなかった‥‥。 ●そして後日談 縛り上げられた知星と超力剛の二人は役人に突き出された。 屋敷から取り返されたもふら様た立ちは無事に元の牧場へと返される。 そして話にでてきた密輸の片棒を担いでいたらしい飛空船の姿はどこにもなく、どうやらこっちでの作戦が失敗した為にこちらへと飛んでこなくなったらしい。 そして一行は牧場主からの謝礼を受け取ると、しばし楽しそうに跳ねるもふらさまを眺めているのであった。 ──To be continue ‥‥ ‥‥ ‥‥ ‥‥ ‥‥ ‥‥ 「こんな所ではまだ終らないわよ!!」 「そうだす。神仙娘々様がきっと助けに来てくれるだす!!」 あっそ。 まあ、のんびりと君達の取り調べはさせて貰うということで。 |