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■オープニング本文 ──事件の冒頭 さて。 今年ものこるはあと1回。 11月擂台賽を終えると、いよいよ年度末最終の決勝擂台賽が行なわれる。 そしてなんと、今年の決勝擂台賽には国王も身にやってくるというまさに前代未聞の事態となる事となった。 その噂を知ってか知らずか、巷では様々な噂がちらほらと流れている模様です。 「今年の最優秀選手の中から、国王側近の特殊部隊のメンバーが選ばれるらしい」 「いやいや、俺のの効いた噂では、今回の見学、実は将来の事を見据えてのことという噂が‥‥」 「それって、つまり婚姻の相手を探すってやつっすか?」 「さあな」 「モフの聞いた噂では、国王も擂台賽に参加するって言う噂でもふよ」 「い、いやいや、それはないだろう‥‥」 「判らないでもふよ。実は今までの擂台賽でも、仮面やマスクを付けて密かに参加していたらしいでもふ」 「そんなバカな‥‥じゃあどいつが国王だっていうんだ? 体格やその他、近い存在なんて‥‥」 「いたら大変だワン」 とまあ、異様なほどに盛り上がっている模様。 はたして真相はいかに? |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
鴇ノ宮 風葉(ia0799)
18歳・女・魔
海神 江流(ia0800)
28歳・男・志
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
日御碕・神楽(ia9518)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●勇気の印 ──泰国・城塞都市凰凱 「はっはっはっはっはっはっはっはっ」 あ、紅老師の笑い声じゃないっすよ。 早朝。 いつものように市街地を走る人物が一人。 擂台賽の期間になると、紅道場で一人黙々とトリーニングを行なっている 「‥‥あとすこしぢゃのう‥‥」 道場に戻った彼女の演舞を眺めつつ、紅老師がそうつげる。 「何処が悪いのか‥‥さっぱり」 「うむ。それが普通じゃて。実際に体現してみないと、これは判らない。赤マントさん、カー今、貴方の眼の前にお起きなかべがあるのぢゃよ‥‥」 とつげると、紅老師は静かに胴着の帯を締め直し、ゆっくりと赤マント(ia3521)の前に立つ。 「構えなさい。真剣でやらせてもらうぞ」 とつげると、紅老師は静かに構えを取った‥‥。 (やばい‥‥これはマジでやばい‥‥) 紅老師はニコニコと笑いつつ構えている。 が、その背後から流れている闘気に、赤マントは気圧されそうになっていた。 ──パアンッッッッッ と、突然赤マントは自分の頬を引っぱたく。 「よっし、行きます」 そうつげると、赤マントは素早く身構え、そして一気に紅老師に向かって間合を詰めていった‥‥。 そのまま4時間、休むことなく戦いつづける紅老師と赤マント。 やがて一人、また一人と道場に姿をあらわす開拓者達。 「す、凄い‥‥こんな戦いが‥‥」 そう呟く日御碕・神楽(ia9518)。 その他のメンツもまた、固唾を呑みつつじっと二人の戦いを見つけていた。 その動き一つ一つから何かをつかもうと‥‥。 ●ということで始まりますよっ!! ──泰国・凰凱11月定例擂台賽 「それではっ。定例大会を開始するんだワンッ!!」 武道大会会場で、司会進行でもある昨年度『大覇王』のわんドシ君が大声で叫ぶ。 その言葉に会場に集まった観客が盛り上がる、まさに会場は興奮の坩堝となってしまった。 やがて個人戦と団体戦それぞれの対戦表が張り出されると、いよいよ試合が開始された。 そして対戦相手は紅道場とは因縁の対決、『七星形意拳道場』。 4月擂台賽では苦汁を飲まされた相手だけに、今回はどこまで戦いぬくことができるのか‥‥。 ──先鋒 ×紅道場該当者なし vs 甲乙人 まずは先鋒。 対戦相手は七星形意拳の『甲乙人』。 で‥‥ 「紅道場は先鋒不在の為、七星形意拳道場の不戦勝となります!!」 審判の叫び声が会場に響きわたる。 「あちゃあ。やっぱりそうきますかー」 と擂台の下で待機していた霜夜が呟く。 「仕方ありませんわ。他の皆さんはバトルロイヤルに向かいましたし」 と神楽がつげると、その横で座っていたルオウが一言。 「3人全勝で丁度だ‥‥」 と呟いた。 まじっすか、ルオウさん。 ──次峰 × 秋霜夜 vs すぱらしきヤマシタ 対戦相手は七星形意拳の客人拳士『すばらしきヤマシタ』。 「ま、またあんたかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 と擂台の上で絶叫する秋霜夜(ia0979)だが。 「んーーー。何のことですか? 私は貴女とは初めて戦いますが?」 と覆面の下でフッフッフッと笑っている『すばらしきヤマシタ』。 「絶対嘘だ!!」 「ええ。嘘ですが‥‥ふっふっふっ」 とまあ、そんな会話がしばし続いていた。 「それでは始めッ!!」 審判の掛け声と同時に、まずは霜夜がしかける。 「それっ!!」 いつものように旋風脚で間合を詰めると、そのまま剛体法で連撃を叩き込んでいく霜夜。 「ほう‥‥これは‥‥」 と初撃はまともにくらったものの、そのあとは全てガードして受止める『ヤマシタ』。 「なっ‥‥私の剛体法が‥‥」 と絶句する霜夜に対して、『ヤマシタ』が一言。 「練の練りこみがあまいですねぇ‥‥」 と呟く。 ──プツン そのままさらに打撃を重ねていく霜夜だが、それらを全て『ヤマシタ』は剛体法で受止めていった。 「うそ‥‥」 「嘘ではありませんよ。練が使えるのなら基本ですよ‥‥これと対をなすこっちもね」 と霜夜に対して掌底を叩き込む。 ──ポスッ それは本当に触れただけの打撃。 だが、その威力は波のように体内に広がっていった。 「グッ‥‥こんな‥‥」 「貴方の剛体法も良い所まで熟成されていますねぇ‥‥けれど、柔体法についてはまったく未知の領域のようですねぇ‥‥」 「知って居るもん!! 紅老師との特訓で色々と学んでいるもん」 とつげると、そのまま『ヤマシタ』に向かって打撃を重ねていく霜夜。 ──ドゴッ‥‥ その一撃を『ヤマシタ』は普通に剛体法で受止めた。 が、その刹那、霜夜が拳から柔体法を発動した。 ──ドクッ‥‥ 一瞬だけ、点の攻撃が波に切り替わった。 硬い体表からいっきに体内へ。 その衝撃は広がっていくはずだったが。 ──ドッゴォォォォォォォォォォッ カウンターで『ヤマシタ』の拳が霜夜の腹部にめり込んでいった。 「紅式柔体法・波動撃‥‥だって‥‥」 そう呟きつつ、その場に崩れていく霜夜。 「‥‥ふう。とりあえずは私の勝ちですか‥‥」 と勝ち名乗りを受てから『ヤマシタ』も擂台をあとにした。 が、この戦いの後の試合全てを『ヤマシタ』は棄権した。 ──副将 ○日御碕・神楽 vs 翠仁 二敗とあとがない状態の紅道場。 一方、神楽の対戦相手は『内勁』使いで七星道場の中でも実力トップの拳士『翠仁』。 剛体法では防ぎきれない内勁を、どこまであしらう事ができるかが見物であった・ 「よろしくお願いします」 「こ、こちらこそお願いします」 丁寧に頭を下げる翠仁と、同じく頭を下げる神楽。 (日々の鍛練と赤マントさんとの手合い。それは確実に私に下地を与えてくれる‥‥大丈夫) そう自分に言い聞かせると、神楽は静かに構えを取った。 「それでははじめっ!!」 ──ダン!! それは一瞬の出来事だった。 挨拶が終った直後、翠仁が後方に吹き飛んでいった。 神楽の基本である震脚に赤マントや霜夜、紅老師とともに培ってきた剛体法。 そして絶妙のタイミングが加わった初手の一撃が、翠仁の腹部にクリーンヒットした。 その一撃で翠仁は意識を失い一撃ノックアウト。 「勝者、日御碕・神楽ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 「え?」 茫然とする神楽に向かって、審判が勝ち名乗りを上げた。 「今までの修行の成果が‥‥生きていたの?」 そう呟く神楽に向かった、擂台の下では霜夜が喜んでいた。 「すごいよ神楽ちゃん‥‥それに引き換えあたしは‥‥」 そう呟く霜夜‥‥。 「大丈夫。まだまた強くなれる‥‥あとはまかせろ」 ニィッと笑いつつ、ルオウ(ia2445)が呟く。 そしてゆっくりと大将戦の舞台へと歩いていった。 ──大将 × ルオウ vs 秋夜 いよいよ決勝。ルオウの対戦相手は秋夜と名乗る筋骨隆々の武人。 無手で静かに頭を下げる秋夜と、真剣に相手の顔を睨みつけるルオウ。 「‥‥こ、こいつ半端じゃない‥‥なにものなんだ? これだけの男が、まだ凰凱にもいたのか‥‥」 そう告げると、ルオウは開始線の前に立つ。 「ふう。あまり乗り気では無かったのだが‥‥」 と告げる秋夜。 「ムッ‥‥おれじゃあ役不足かよ!!」 「世界を見てこい‥‥」 と告げる秋夜。 そして擂台の下では 「あ、おとーさんさんだ」 と楽しそうに『秋夜』に向かって手を振る霜夜の姿があった。 「ナニ? 霜夜のとーちゃん? てことは‥‥」 イエスイエスイエスイエス‥‥。 大武王の称号を持つ凰凱屈指の拳術家『秋夜』である。 「それでは始めッ!!」 審判の開始の声と同時に、ルオウは素早くヌンチャクを振りはじめる。 「それじゃ‥‥気合入れていくぜぃ!!」 そのまま次々と秋夜に向かってヌンチャクで攻撃をしかけるルオウ。 だんが、その一撃一撃を秋夜はことごとく躱わしていく。 「その程度‥‥か?」 「まだまだっ!!」 突然ヌンチャクの速度が上がる。 と、それまでは一撃だった奇跡に同時に3撃が繰り出されていた。 ──シュッ!! そのうちの一撃は秋夜の身体を掠めていく。 「まだまだ速度はあがるぜっ!!」 さらに加速。 だが、そこからは全く命中しなくなった。 「‥‥まだまだ上がる。が、その壁を買えていないか」 ──ドッゴォッ 荒ましい一撃。 その正拳一発でルオウは後ろに吹き飛ぶ。 先程の神楽の放った震脚から繰り出された一撃である。 「ふう‥‥いてててて‥‥キツいな」 と呟きつつもゆっくりと立上がるルオウ。 「ほう、立上がるか」 「わんドシ君直伝の剛体術だからな‥‥」 っていうか、いつのまにかわんドシ君に師事して体得したらしい。 「ぐっ‥‥ぐはぁっ‥‥」 まだまだだがね。 喀血して膝から崩れるルオウ。 「受止めきれなかった‥‥のか」 「剛体術を限界まで磨いたのはこの私だからな‥‥私の正拳では、破壊できないものはない」 まさに秋夜オリジナル技。 「で、どうする? まだ続けるかね?」 「あたぼうだ。俺はサムライだからな‥‥」 口から血を流しつつもニィッと微笑ってそう告げるルオウ。 「よし。いい覚悟だ」 そのまま全力で立ち向かうルオウを、秋夜は全身全霊を以って受止めた。 ──そして この団体戦、結果としては一勝三敗という形で幕を閉じた。 ●そしてバトルロワイヤル いつもの個人戦ではなく、もう一つの会場に集められた一行。 ここではバトルロイヤルがまもなく始まる。 ルールはいたって簡単、最後までこの擂台に立っていればOK。 参加者もおのおの得物を手に、またあるものは大量の符を構えているもの、すでに詠唱の準備に入ったものなど、いつでも戦う気満々であった。 「それでは擂台賽大バトルロイヤル、始めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」 ──グワァァァァァァァァァァァァァァァン 盛大に銅鑼が鳴り響くと同時に、一斉に戦いが始まった。 「‥‥どうしてあたしはここに‥‥」 茫然としている鴇ノ宮 風葉(ia0799)。 彼女の登録は『「泰国新蔭流」団体戦、大将』。 だが、その肝心の団体戦がメンバーが集まらなかった為棄権、振替でこの個人戦参戦となったらしい。 ──どがっ 「なんでこうなったの?」 ──ドゴドコドッ 近づいてくる拳士に対して『月歩』で避け、カウンターで『魔祓剣』を叩き込む風葉。 今だに納得が行っていないようですが、彼女の周囲にはすでに30人近くの倒された拳士が転がっている。 その実力は確かの模様。 「‥‥で、やっぱり狙われるわけけね?」 「はあはあはあ‥‥そのようで」 朝比奈 空(ia0086)の言葉にそう付け加える三笠 三四郎(ia0163) 今月もやはり、強い所は先に崩しに掛かってきているものが多い。 それらを巧く捌いていく空と三笠。 『天地陰陽戦陣・序』を巧く使いこなし、必要最低限の動きで相手の攻撃を捌く三笠。 そしてその隙を見て、『浄炎』と『精霊砲』を組み合わせてこうげきに入る空。 二人の絶妙なコンビネーションで、しばらくはこのエリアは持ちこたえられている模様。 「こレベルの奴が、この国にはゴロゴロとしているのですかっ!!」 相手の動きにあわせて、手にした流星錘を使って間合を退ける海神 江流(ia0800)。 「甘いです!!」 すかさず攻勢に切替えると、炎魂縛武を発動して木刀に炎を纏わせる。 そのまま次々と強敵を撃破していく海神であった。 そしてあらかたの敵を片付けおわったとき、擂台の上には10人前後の拳士しか残っていない。 ちなみに三笠や空、風葉たちもかなり善戦していたのだが、惜しい所で奇妙な拳士(わんドシ君となぞの覆面武術家『泰仮面』)の連携によって撃破されてしまった。 「‥‥まあ、ここまではお膳立てもなしで‥‥」 と身体を伸ばしつつ呟く赤マント。 ちなみにこの時点で息一つ乱していない。 ここまでの戦い、【壱龍】【弐龍】のみで戦ってきたらしく、まだまだ余裕がある模様。 「では、参りましょうか」 「そろそろ遊びの時間は終りだワン」 「ルオウは、ここの戦いには参加していなかったのですか‥‥」 「まあ、順当といえば順当ですか」 「来月の本戦までの軽いウォーミングアップということで」 以上、ここまでかち残ってきた泰仮面、わんドシ君、シエル、レイム、フリードマン・キルヒアイスの言葉でした。 「じゃあ、そろそろ死合うとしますか‥‥」 と赤マントが呟いた瞬間、最後の戦いに突入した。 ──そして 個人戦初の『勝者なし』という形で幕を閉じた個人戦。 バトルロイヤル故、最後まで擂台の上で立ち残っていたものが勝者。 だが、だれ一人として立っているものは居なかった。 わんドシ君とレイムが相打ち、海神はキルヒアイスを破ったもののシエルに惨敗。 そのシエルは赤マントに破れ、ずっと逃げていた泰仮面と赤マントの一騎打ちとなった。 お互いの全てを出し尽くしたが、最後は赤マントの【玖龍】と泰仮面の【蚩尤陣】の相打ちによって終った。 ●全てが終った。 団体戦では準決勝までは戦っていたが、相手が悪すぎた。 そして個人戦のバトルロイヤル。 皆実力が近いということが顕著になった大会であった。 勝者なしではあったものの、敢闘賞として最後に残った8名には12月の本戦出場が認められた。 ちなみに今回優勝した道場は『月影道場』の二連覇であった。 |