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■オープニング本文 ──事件の冒頭 さて。 今年の凰凱擂台賽は荒れ模様の状態です。 今年の決勝戦は、1月から11月までの優勝道場11と、特別参加枠5つの総勢16チームのトーナメント戦となりました。 ちなみに参加道場の中には、初参加にして決勝までを運んだ紅道場の名前もありました。 また、同じく個人戦の部については決勝までの間に個人戦優勝した選手と、来んかい団体戦で決勝まで残ったチームの選手のみが参加可能となっています。 この大会を見事に勝利したものには、春香王が自ら『大龍王』の称号を授けてくれるということらしいですが、さて‥‥。 ──場所は変わって紅道場 「‥‥ふぅ‥‥頭が痛い‥‥」 静かにそう呟きつつ、、紅老師はじっと外を眺めていた。 「どうしたのですか?」 「いやいや。間もなく始まる擂台賽決勝のことなのぢゃが‥‥」 と告げると、紅老師はそのまま口を閉ざした。 「大丈夫です。彼等はやってくれます。決勝まで勝ち抜いて、春香王を護ってくれますよ‥‥」 と告げる。 「そうぢゃな。で、警備の方は?」 「強化しています。が、町の中に『風龍八十八聖』の者たちが紛れ込んでいるという確認情報もあります‥‥」 「そうなるとゃっかいぢゃな‥‥まあ、我々でなんとかせにゃのう‥‥」 「ええ。彼等には最後まで戦って欲しいですから‥‥」 「うむ‥‥」 と告げている紅老師と師範代の二人であった。 ──そして いつもの紅道場。 いつものように座って門下生の姿を見守っていた紅老師の姿はない。 変わりに師範代が老師に変わり、門下生達に功夫をつけていた。 「老師‥‥どうかご無事で」 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
雲母(ia6295)
20歳・女・陰
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
日御碕・神楽(ia9518)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●最後の日 ──泰国・城塞都市凰凱 「はっはっはっはっはっはっはっはっ」 あ、紅老師の笑い声が道場にコダマする。 擂台賽決勝トーナメント早朝。 いつものように道場には開拓者たちが集まっていた。 最後の大会。 それを無事に終えられるようにと、紅老師が自ら祈祷を行なっていたのである。 すべてはこの日の為に。 一年間の集大成が、今まもなく始まる‥‥。 ──場所は変わって 「‥‥」 道場の真ん中でどっかりと腰を落とし、腕を君で頭を捻っている少女が一人。 「‥‥全然判らない」 と呟いているのは秋霜夜(ia0979)。 『風の道場』に出稽古にやってきた霜夜、その相手として『剛体術と点穴』を使う元放さんを指名していたのである。 だが、その相手に一つも打撃を叩き込む事が出来ず、そのまま点穴で倒されてしまっていたらしい。 「まあ、点穴は直に憶えられるものではありませんからねぇ。まあ、今日の大会でなんとかかち残ってくださいね。決勝でお会いできることを楽しみにしていますよ‥‥」 「ううう‥‥それじゃあ決勝で!!」 と告げて、霜夜はそのまま道場を後にした。 そして一つ用事をすませると、そのまま紅道場へと戻っていった。 ●ということで始まりますよっ!! ──泰国・凰凱12月決勝擂台賽 「それではっ。定例大会を開始するんだワンッ!!」 武道大会会場で、司会進行でもある昨年度『大覇王』のわんドシ君が大声で叫ぶ。 その言葉に会場に集まった観客が盛り上がる、まさに会場は興奮の坩堝となってしまった。 やがて個人戦と団体戦それぞれの対戦表が張り出されると、いよいよ試合が開始された。 どうにか一回戦、二回戦と順当にかちつづけた紅道場はなんと決勝までコマを進めた。 そして決勝戦の相手は因縁の対決、ジルベリア代表の『チーム・テラー』。 これを突破すると、念願の『大龍王』の称号を得ることができる。 はたしてどうなるか‥‥。 ─先鋒 ○日御碕・神楽vs『もふもふ仮面』 対戦相手はチーム・テラーの『もふもふ仮面』。 「それではよろしくお願いします」 「よ、よろしくだもふー」 と楽しそうなデザインのマスクを被るもふもふ仮面。 その姿を見て、日御碕・神楽(ia9518)もまた緊張の糸がほぐれたらしく、かなりリラックスした状態で試合に挑む事が出来た。 静かに一礼し、じっと開始の合図を待つ神楽。「それでは始めッ!!」 その合図と同時に、神楽は一瞬の震脚からの剛体法を使用した速度を追及した双掌打を放つ。 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォォッ その一撃はもふもふ仮面の胸部に炸裂し、そのまま場外まで吹っ飛ばした。 「え‥‥う、うそでしょ?」 完璧なる呼吸からのクリーンヒット。 それはまさに一撃必殺と呼ぶに相応しい。 「勝者、神楽っ!!!!!」 ──次峰 △秋霜夜 VS『ニコニコ仮面』 次峰は秋霜夜(ia0979)。 そしてその対戦相手はチーム・テラーの『ニコニコ仮面』。 「ここまで来たんだ。最後は華々しく勝つ!!」 「そうだねぇ。華々しく散って貰うよぉ」 と霜夜に対して笑いつつ呟くニコニコ仮面。 「むっ‥‥」 とむっとした表情で静かに相手を睨みつけるが、すぐさま目を閉じる。 (父様が言っていた。戦いを楽しんでこいと‥‥なら、ボクはそれに答える!!) ──パーーーン と自分の良頬を叩いて気合を入れると、そのまま開始線に立つ。 「それでは始めッ!!」 その合図と同時に、霜夜とニコニコ仮面の二人同時に剛体法を起動。 「なんだっ‥‥て?」 「へへっ。父様直伝の剛体法、そんじょそこらのものとは違うよっ!!」 と驚いているニコニコ仮面にむかって告げる霜夜。 そしてそこから激しいラッシュ。 拳戟からの掌打、掌底、そして肘撃、そして身体を捻っての旋風脚と技を次々と繋いでいく霜夜。 その技の切れに、霜夜自身が驚いていた。 (まるで‥‥風になったように‥‥って、それは赤マントさんか) ──ドッゴォォォォォォォォォォッ そして止めの一撃がクリーンヒットした。 「ぐふっ‥‥」 「え?」 だが、そのタイミングでニコニコ仮面もまた肘を霜夜の胸部に叩き込んでいた。 その一撃で肋骨が砕け、内臓に突き刺さった霜夜。 だが、ニコニコ仮面もまた旋風脚の一撃を頭部に受け、そのまま崩れて動かなくなった‥‥。 (こ。呼吸が‥‥出来ない‥‥) そのまま意識を失って崩れる霜夜。 審判は無常にも引分けの判定を行った‥‥。 ──副将 △劫光 vs『嘆きの仮面』 「それでは‥‥よろしくお願いします」 と静かに告げる『嘆きの仮面』。 その相手は御存知戦う陰陽師、レッツゴー陰陽師の劫光(ia9510)。 「‥‥参った。同門かよ」 と呟く劫光。 対戦相手である嘆きの仮面の服装から、相手が陰陽師であると睨んだ。 「ええ。それでは‥‥お互いに頑張りましょう」 と告げると、そのまま両者開始線にたった。 「それでは始めッ!!」 その掛け声と同時に、両者ともに呪符を起動。 陰陽体術を駆使する劫光と、その動きとまったく同じ動きで躱わしていく嘆きの仮面。 「いったいどうなっているんだ? 俺と同じ体術だと?」 「ええ。ですから同門‥‥と」 そう告げる嘆きの仮面にたいして、劫光は『火輪』を使い『天津甕星』を仕掛ける。 「俺の拳が真っ赤に燃える!!」 「相手を倒せと轟き叫ぶっ!!」 その劫光の動きと全く同じ動きで、嘆きの仮面もまた『火輪』を使い『天津甕星』を仕掛ける。 「そんな‥‥ばかな!」 「ええ。そんなばかなです‥‥けど、これもチームとしての作戦。私は負けなければいいのです。相打ちでいのですよ‥‥」 と告げる嘆きの仮面。 「‥‥そういう事か」 そこで劫光はしばし分析に入る。 開始を告げてからの一連の相手の動き全て。 それは完全に劫光の『鏡写し』であった。 まったく同じ動き、全く同じ攻撃なら、お互いに勝つことはないが負ける事もない。 相打ちで引分け、それでOKである。 だが、ここにきて劫光は信じられないものを見る。 相手のダメージがかなり早く回復しているのである。 「‥‥肉体の強靭さはアンタが上。つまり同じ技を仕掛けていっても、最後に立っているのはアンタと言うことか」 「おや、判って頂けましたか? そのために私は天儀に足を運んで、この技を体得してきたのですから」 と告げる嘆きの仮面。 「ふう‥‥大将、すへではアンタに任せたからなっ!!」 と叫ぶと、劫光は『呪縛符』を手に取った。 「ほほう。今度は呪縛符ですか‥‥」 そう告げつつも、嘆きの仮面の手にも同じ呪符が生み出されていた。 「ああ。鏡写しなら、どうなるか理解しているさ!!」 そのまま自分の身体に呪符を叩き込む劫光。 そしてその動きと全く同じく、自分のからだに呪縛符を叩き込む嘆きの仮面。 「そ、そんな莫迦な‥‥」 「ああ、アンタの技は知って居るんだよ。うちの大将は必ず勝つ。そう信じているからな‥‥」 と告げつつ、両者ともに呪縛符により行動不能状態となった。 そしてやはり両者行動不能により引分けという形で幕を閉じた。 ──決勝 ○ルオウ vs『タヌタヌ仮面』 悪くてもドロー。 それで優勝は決定する。 そして最悪ルオウ(ia2445)が負けても、代表戦に持ち込める。 劫光はそう全てをルオウに託していた。 「それじゃあ逝くかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 いや、逝ったらあかん。 ということで、対戦相手もまた木刀を構えて静かに立つ。 「これで全てを終らせる。よろしく頼む」 と挨拶するルオウ。 「ああ、正正堂堂とな」 ニィッと口許に笑みを浮かべるタヌタヌ仮面。 「それでは始めッ!!」 その合図と同時に激しい打ち合いが始まった。 両者の木刀が音を立ててぶつかり合う。 その一撃一撃にお互いの気力を叩き込んで。 だが、徐々にタヌタヌ仮面の方が押されはじめていた。 「‥‥ここまでの数々の戦いが、俺を育ててくれたのか‥‥」 そう。 ただルオウは負けつづけていたのではない。 負けた中から何かを見出し、相手の動きから何かを見出す。 その全てを自分のものとして吸収し、そのまま自分の力に変化させていった。 「‥‥そんな‥‥これでどうだっ!!」 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォッ タヌタヌ仮面の放った一撃はルオウの頭部に直撃していた。 だが、その一ゲ着手破壊されたのはタヌタヌ仮面の木刀である。 「ふんっ。霜夜の父ちゃん直伝の剛体法だ。そんなナマクラな木刀程度じゃ、傷も付かないぜ」 と告げると、そのまま一瞬怯んタヌタヌ仮面に向かって『タイ捨剣』を叩き込んだ!! ──ドゴォッ それはクリーンヒット。 その一撃でタヌタヌ仮面は失神した。 「勝者、ルオウ!!」 勝ち名乗りを上げる審判。 そしてこの瞬間、紅道場の団体戦優勝が確定した‥‥。 ●そして個人戦 いつものバトルロイヤルではなく、決勝トーナメントとして開始された。 ── 一回戦敗退 水鏡 絵梨乃 それは哀しい事実。 水鏡 絵梨乃(ia0191)のトーナメントの相手は赤マントであった。 「‥‥それじゃあよろしく頼むよ」 「は、はい‥‥」 と挨拶するや否や、一気に手にした老酒を飲み干す絵梨乃。 そのまま一気に紅老師直伝の酔八仙拳に切替えるが、赤マントの速度について行けなくなっていた。 結果、赤マントの一撃によって絵梨乃は残念ながら敗退。 ── 一回戦敗退 雲母 こちらはうってかわって激しい戦い。 全身是まさに凶器という感じの雲母(ia6295)と戦っているのは、これまた全身武器だらけのシエル。 お互いに次々と繰り広げていく攻撃の数々。 またに死合いという形に近い。 そんななかんで、お互いに腕が砕け脚が折れるという戦いにまで発展する。 それでもなお、両者は戦いの手を休めない。 「愉しいな。貴様ほどの使い手がいたとはな。まだまだ世界は広いということか」 「それはお互い様。本国でも、貴方ほどの武器の使い手はいませんでしたわ」 と告げる雲母とシエル。 この戦いは両者ノックアウトにより判定負けとなった。 というか、生きているのが不思議名ほど疲弊している両者、そのままつぎの試合に臨んだら確実に死ぬと審判は判断したのであろう。 ──そのちょっと前 「‥‥全く。暗殺っていうのは厄介な代物だなぁ‥‥」 大会の準備を終えた斉藤晃(ia3071)は、選手控え室の近くで怪しい人影を確認した。 大会は団体戦のさ中、誰も手を貸してくれるものはいない。 「‥‥全くしょうがないなぁ‥‥」 そう呟くと、斉藤はそのまま怪しい人影を追いかけた。 擂台の近くには、皇帝の為の席が設けられており、そこに近衛兵を連れた春香王が座っていた。 斉藤の追いかけてきた怪しい人影は確実にその春香王を狙える位置に移動していたのである。 そして今正に、その男が弓を放ったと同時に、斉藤が咄嗟に男と春香王の間に入った。 もっとも、その動きが外部に知られて事が大きくならないよう、秘密裏に斉藤は楯となったのである。 その結果、腹部と胸部に矢が突き刺さったものの、すぐさま近くの警備兵によって暗殺者は取り押さえられた。 「‥‥全く‥‥わしでなかったら死んでいたぞ‥‥」 と告げるものの、斉藤の身体はすでに大会には出られないからだとなっていた‥‥。 ──そして個人戦決勝 見事に決勝までコマを運んだのは、紅動じようの赤マント(ia3521)と斉藤晃。 ここまで全勝で勝ち残ってきた二人。 そして最後の戦いなり、春香王自ら二人の名を読み上げた。 そして会場が興奮の坩堝にオチていくと同時に決勝戦は始まった。 (‥‥おかしい。斉藤の動きがいつもと違う‥‥) すぐさま赤マントが斉藤の異変に気付く。 だが、そんなことはお構いなしに、斉藤は次々と攻撃をしかけていった。 (い、いかん‥‥血が足りぬ‥‥ここで負けるわけにはいかんというのに‥‥) 衣服の下は血まみれの包帯。 そんな中での戦いには、さすがの斉藤も限界であった。 だが、そんな二人の戦いを見ている人たちには、その異変は全く気が付かない。 どう見ても赤マント優勢の戦いにしか見えていなかった。 (どういうことだ? どうして怪我をしている?) 接近戦での戦いのさ中、赤マントがそう斉藤に問い掛ける。 (暗殺を止めたらなぁ、こうなっちまった‥‥まあ、ここはオマエに花を持たせるとしよう‥‥) と告げると同時に、斉藤の意識がスッと消えていった。 「ふざけるな。こんな戦いは向うだ。お互いにベストの状態の時にやり合うぞ!!」 そう斉藤に向かって叫ぶ赤マント。 そんな赤マントに対して、春香王が勝ち名乗りを上げた‥‥。 ●全てが終った。 そして全てが終った。 団体戦、そして個人戦の表彰が始まった。 擂台の上では、春香王が自ら紅道場の拳士たちの名前を読み上げ、そして紅大龍王の称号を授けた。 そして個人戦の勝者である赤マントにも、凰凱大龍王の称号が授けられた‥‥。 擂台賽の影に潜んでいた暗殺事件も無事に解決したものの、風龍八十八聖の動きは今だ未知のまま。 それでも今は、勝利の美酒に酔いしれる一行であった。 ──Fin |