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■オープニング本文 ──事件の冒頭 ザワザワザワザワ 大勢の人々で賑わう街。 ここ泰国中央にある『凛安(りんあん)』と呼ばれる小さな街では、現在とある事件が起こっていた。 というのも、ここ最近、どこからか流れてきたはやり病が町の中に蔓延、大勢の人たちが倒れてしまっていた。 人が死ぬほど危険なはやり病ではないらしいが、高熱が何日も続き、身動きが全く取れなくなってしまう。 どのような薬でもまったく回復する見込みがなく、さらには『生命波動』のような練によっても回復が見込めないという。 ひどい人になると、数週間は寝込んだままになってしまうらしい。 「しかしまあ‥‥ここまで酷くなるとは‥‥」 街の寄合所では、この病に対してどうするか集まって話し合いが行なわれていた。 が、これといった話は纏まらず、唯一町の中の薬師である『鉄山先生』が、遠くの島で流行っていたらしいこの病を思い出した。 「確か、この病には特効薬があります」 「そ、その薬とは?」 「摩沸散薬という散薬です。高山に生えているという『摩笙花』という植物の根を粉にしたもので、その薬はいかなる高熱をも冷まし、身体を癒すと言われています」 「それだ!! その薬を下さい」 「それが、処方箋は頭のなかにあるのですが、肝心の『摩笙花』がありませんで‥‥それを取ってきてください」 「と言われても‥‥あの山だろう? あの山はいつもアヤカシが徘徊しているっていうじゃないですか。それに、その花はどんな花ですか‥‥」 ということで、腕に自身のある泰拳士は数アれど、アヤカシと戦うとなると話は別。 「花は私が姿を書きましょう、ですからどなたか頼みます‥‥花を取ってきてください」 ということで。 偶然通りかかってしまった皆さんの健闘を祈ります。 |
■参加者一覧
恵皇(ia0150)
25歳・男・泰
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
樹邑 鴻(ia0483)
21歳・男・泰
皇 輝夜(ia0506)
16歳・女・志
玲璃(ia1114)
17歳・男・吟
鬼灯 仄(ia1257)
35歳・男・サ
巴 渓(ia1334)
25歳・女・泰
嵩山 咲希(ia4095)
12歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●流行病をなんとか ──凛安 ザワザワザワザワ‥‥ 大勢の人々が集まっている酒場『大凛安飯店』。 そこで開拓者たちは、まずは件の摩沸散薬を取りに行く樽の情報を集めていた。 「で。その摩笙花の咲いている山っていうのは、一体どんなアヤカシが出るんだい?」 「もし宜しければお聞かせ頂きたいのですが」 そう酒場の客に問い掛けているのは、御存知恵皇(ia0150)と玲璃(ia1114)の二人。 「あ、ああ。あそこの奴か。巨大な大熊猫だな」 「肉食で、かなり狂暴な奴だ」 「白と黒のブチのある大熊猫で、興奮すると全身が真っ赤になるらしい」 「俺が見たのは体長2mほどだったかな?」 「前足が4本、後ろ足が2本で、かなり凶悪だっていう噂だな」 「食用にすると美味しいらしい。煮込み料理が最高といっていたな」 とまあ、色々な情報が飛び交っている模様で。 ちなみにアヤカシは喰えないから。 幾つかガセネタも混じっているようですね。 「これは、かなり注意しないと危険のようですね」 そう告げる玲璃に、恵皇も静かに肯く。 そんな中、三笠 三四郎(ia0163)もまた情報収集を行なっている。 「ちょっと教えて欲しいのですが。この当たりの山の地形や天候はどんな感じですか?」 「ああ、あの山のことか。麓はでっかい森林地帯になっていてな。百足型やでっかいアヤカシがうろうろとしているぜ」 「山頂付近は結構荒れている事が多いらしいな」 「山頂は広く開けていてな。色々な植物や鳥が訪れているらしい。ひょっとして、摩笙花でも取りに行くのか?」 その問い掛けに、三笠は静かに肯く。 「ええ。流行病を沈める薬を作る為に向かおうと思っています」 「なら、山頂近くにでっかい岩がごろごろと込めろ勝っている場所がある。そこにひときわでっかい岩がある筈だから、そこを目指してみな。その岩の近くに摩笙花は生えているって言う話しだ」 そこまで細かい情報が選られるとは思っていなかった三笠。 「一つ懸念事項があるのですが‥‥」 そう情報提供してくれた男性に問い掛ける三笠。 「ん? なんだ?」 「この辺りにも風龍八十八聖は出没しているのでしょうか‥‥」 そう問い掛けられると、情報を伝えてくれた男性が、飯店の奥を指差す。 「あの一角が風龍八十八聖の奴等だな」 その話に、三笠は指さされた方向を見る。 そこには、数名の男性と一人の女性が椅子に座って談笑している。 「あ、ど、どうして‥‥」 「さあな。今朝方やってきて、何かあの場所で色々と話をしているが‥‥」 そう告げると、男性も静かに自分の席へと戻っていった。 ──その頃 樹邑鴻(ia0483)もまた、飯店で情報収集を行なっていた。 もっとも得られた情報の殆どは三笠達と一緒であったが、樹邑は彼なりの情報を得る事に成功。 「摩笙花は一株で大体10名前後の病気を癒す薬を作ることができる‥‥か」 町医者から聞いた情報。 そして山頂付近には、かなりの数の摩笙花が群生しているという話も得る事が出来たが。 「問題はそこまでの道筋か‥‥」 森林を越えて山に昇りはじめると、やがて山の峰やガケのような場所を通らないと山頂までは進めないらしい。 山師にそれらの話を聞き出すと、それらを大体ではあるが竹簡に書き記していく。 「難所は4ヶ所。これを越えればどうにかなるし、帰りはまたキツそうだが‥‥アヤカシは山頂や山腹には出没しないというから‥‥」 なんとかなると確信する樹邑。 ──さらに飯店の奥 「これは参った‥‥」 静かに情報収集をしようとしていた皇輝夜(ia0506)。 目的の情報は風龍八十八聖だったが、その相手が自分のすぐ後ろの席で楽しそうに談笑しているのである。 「この街を越えれば、まもなく目的の街に向かうルートにぶつかります。そうすれば、目的の城塞都市はもう目の前です」 「そうか‥‥随分と長かったな。あとすこしの辛抱だ、我慢してくれ葉音(はおん)」 「ええ。大丈夫ですわ」 そんな話し声が聞こえてくる。 (目的の城塞都市? いったいそれは何処なんだ?) そう頭を捻る輝夜。 「狼瑪(らんば)様、そういうえばこのあたりは‥‥」 「いうな。その情報はわしの耳にも届いている。今は身体を休め、明日の出発の為の英気を養っておくべきだ」 「了解しました‥‥」 という感じで再び他愛のない話が飛び交う風龍八十八聖の人々。 ──またまた飯店では 「ふぅん‥‥水辺と岩間が生息地ねぇ‥‥」 手渡された竹簡を広げて、鬼灯仄(ia1257)が酒を呑みつつそう告げる。 医者から手渡された『摩笙花』についての覚え書き。 それをじっと眺めつつ、鬼灯は細かい情報を頭の中に叩き込んでいる。 「で、これは山頂付近だけなのかい?」 「ええ。私共の知りあいの山師の話によりますと‥‥開拓者さんたちは龍をお持ちとかで、それを使えば山頂まではあっという間ではないですか?」 「ねぇよ‥‥」 はぁ? という表情で鬼灯を見る町医者。 「だから、あれは開拓者ギルドに預けてあって‥‥ああ、めんどうくせえ。つまりなんだ、俺達がかって気ままに使っていい訳じゃないんだ」 「どうしてですか?」 「あれはギルドから俺達が借り受けしているもので、ギルドに依頼が在ったときしか使えねえの。この話だって、ギルドを通してくれれば、っもと話が早かったんじゃネェか?」 と言われても。 「まあいいさ。兎に角俺達は引き受けた仕事はかならず遂行してみせるから安心しな‥‥と、ねえちゃん、酒の追加を頼む!!」 そう言われて、町医者もホッと胸を撫でおろす。 「でだ、地図なんだが、っもと細かく書かれているやつはないのかよ?」 鬼灯の近くで座って話を聞いていた巴渓(ia1334)がそう町医者に問い掛ける。 「ええ。ですから山師の方が不在でして。いたらもっと細かい地図が手に入ったと思うのですけれど‥‥」 「そうかい。まあ仕方ないか。出来るだけ細かい地図が在った方が、より時間を短縮できると思ってな。その方が、病人を早く救うことができるだろう?」 ニィッと笑いつつそう告げる巴。 「鉄山先生の絵、医者の先生の書いた絵とちょっと違います‥‥」 鬼灯の手にした竹簡に記されている摩笙花の絵を見て、嵩山咲希(ia4095)がそう呟く。 「どら‥‥と、確かに違うが。一体どういうことだ?」 概絵柄はあっている。 が、花弁の形が薬師の鉄山先生のものと町医者のものとでは若干違っている。 「ああ‥‥これはですね‥‥どうしてでしょう? 私の知って居る摩笙花はこれですけれど。まあ、鉄山先生の絵が正しいとは思いますし、横に書かれている覚え書きについては同じですから‥‥」 そう告げる町医者。 「まあ、どっちも持ってきたらいいか。鉄山先生ならそれを見分けて使ってくれるだろうしな」 そう告げて、巴は静かに立上がる。 「それじゃあ出発の準備といこうか」 そう告げて、巴は飯店から外にでていった。 ●ちょっとやっかいな ──山の麓の大森林 予想外に深い森林。 街から街道を抜け、途中から獣道に入り‥‥とまあ、実に複雑な道程を手繰ってようやく大森林へとたどり着いた一行。 「まあ、ここから先はかなり気を付けた方がいいか‥‥」 そう呟く恵皇だが、ゆっくりと背中の籠を降ろして戦闘態勢に入る。 目の前の獣道では、巨大な百足型のアヤカシが徘徊しているのである。 「あれは毒持ってるからなぁ‥‥」 ゴキッと拳を鳴らしつつ、巴も前に出る。 「道幅から‥‥まともに戦えるのは3人という所か」 樹邑も前に出ると、残った仲間たちは嵩山 咲希(ia4095)を護る形でゆっくりと防衛陣形に入る。 周囲に生い茂っている樹木がじゃまで、剣などを満足に振るう事が出来ないのである。 「任せる」 「頼みます」 と告げられて、3名は素早く大百足に間合を詰めていくと、いっきに勝負を仕掛けた。 ──中略 破壊し瘴気の塊となった百足を放置し、さらに一行は先へと進む。 細い小道が突然開け、森の中にポッカリと開いた草原地帯へと出る。 「さて。あれはどうするかねぇ」 一行の位草木には、巨大な大熊猫が寝そべっている。 ちなみに体長は5mほどと、通常のものと比較してもかなり大きい。 「さて、今はゆっくりとお休みになっているようだが‥‥」 そう告げる鬼灯に、三笠が一言。 「出来る限りアヤカシは回避したいです‥‥酒場で聞いた4ツ手2ツ足の大熊猫とは、おそらくこれでしょうから‥‥」 そう告げる三笠の意見に、一同も同意見。 今はまず、摩笙花を探しに向かう必要がある。 余計な戦いに時間を取られている場合ではないが。 「この大きさのアヤカシが出現しているということは‥‥ここは『魔の森』なのでしょうか?」 そう嵩山が告げるが。 「さあな。可能性としては否定できない。この大きさ以上の大アヤカシが出てきても不思議じゃあないからな‥‥」 巴もそう告げつつ、ゆっくりと大熊猫を迂回する。 そして何事もなかったかのように道を通過すると、いよいよ一行は山道へと突入していった。 ●花 ──山頂付近 険しい山肌をゆっくりと昇りつづけている一行。 麓の森で戦を回避しまくった為、予定よりも早くこの場所までたどり着く事が出来た。 そして山道に入ってからは、飯店で聞いた目印の岩を目指してずっと歩きつづけている。 ──ガラガラガラガラッ 時折、山頂付近の岩盤が崩れ、細かな落石が振ってくる。 「気を付けろっ。巻き込まれたら一巻の終わりだっ!!」 そう叫ぶ玲璃に、一行は静かに同意。 既に足元は一尺程度しか残っていなく、重装備を担いだまま、足元と頭上を注意しつつのぼっていくのは かなり困難であった。 やがて日が沈み、夜の帳が静かに降りていく。 一行も少し開けた場所までどうにかたどり着くと、そこで一夜を過ごすことにした。 ──そして やがて日が昇る。 「あれが、鉄山先生の告げていた摩笙花か‥‥」 「凄い‥‥綺麗‥‥」 そう叫びつつ気合を入れて最後の踏頂を開始。 もう視界内に摩笙花の群生地域が広がっている。 やがて昇りきった場所には、岩間と水辺に囲まれた群生地域が広がっている。 「朝露にキラキラと輝いている。これが?」 嵩山は鉄山先生にいただいた竹簡の絵と比較する。 どうやら鉄山先生に教えてもらったものが大半を締めているが、一部町医者から教えてもらった花も存在する。 「ははあ‥‥これはきっと『雄花』と『雌花』ですね。雌花は雄花の群生に囲まれているように咲いていますから‥‥」 三笠の告げるとおりだとしても、どちらを持っていけばいいのか見当も付かない。 が、ある程度の量は必要となる為、均等に摩笙花を根元から掘り起こして回収する一行。 あとは、急いで山を降りて街へと戻らなくてはならない‥‥。 荷物を纏め一服した後、一行は来た道をもう一度引き返していった。 帰り道でもやはりアヤカシの襲撃を受ける一行。 出来る限り戦いは回避していきたかったが、このあたりにはかなり百足型のアヤカシが多く徘徊しているらしく、それらとの戦いが次々と繰り広げられることとなった。 数による暴力。 それにより、全員がかなり疲労している。 この状態であの大熊猫と出会うのはかなり危険、最悪全滅も覚悟という状態であったが、運良く帰りの道では大熊猫に出会うことなく麓の森を突破。 あとは街道をひたすら突っ走るだけであった。 ●救われた人々 ──凛安 開拓者によってもたらされた摩笙花。 それらを薬師の鉄山先生が調合し、摩沸散薬が作られる。 開拓者たちによってそれらは病人の元へと届けられ、凛安を長く苦しめていた病から人々は解放された‥‥。 開拓者たちは再び旅に出る。 また別の街で、困っている人々がいるかもしれないと。 ──FIN |