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■オープニング本文 それは、実に清清しい青空広がる初夏の頃だった。 例えばそれは、長雨の合間に見せる自然の美しさであったのかもしれないし、元より快晴を身上とした時節なのかもしれない。むしろそんな事はどうでもいいのだと彼女は思った。 問題は、空ではない。 雨が続くと言う事だ。湿気が多いと言う事だ。そして。 「‥‥『掃除』ですか」 開拓者ギルド受付担当のギルド員が、ひっそり受付台の下に隠し持った団扇を扇がせつつ、依頼人を見やった。 「『掃除』よ。徹底的にね」 彼女はキセルを銜え、綺麗な白い輪を3つ作った。受付員の顔に向かって。 「あたしはね。汚いのが大嫌いなのよ。醜いものも醜悪極まりないけど、汚いものには勝てない。あんなものが存在する事自体、耐え難い。あんたは‥‥どう思う?」 多少ドスの効いた声であった。受付員は煙の迷惑に耐え、頷く。 「それはまぁ‥‥衛生上、宜しくないかと」 何処でどんな風に何が汚いのかなどの説明も無しにいきなり問われ、それでもそれなりに経験豊富にやってきた彼は、当たり障りなく返答を返した。 「そう。衛生上も良くない。評判も良くない。近隣住民にも悪影響。でも何が一番いけないってね‥‥。あたしの顔に泥塗ってるって事なのよ! あの長屋の奴等は‥‥!」 「はぁ。長屋‥‥ですか。そこにアヤカシが」 「住み着いても可笑しくないわね。あたしが管理する長屋がゴミ屋敷と言われるのは‥‥耐え難い。しかも奴等は、それを良しとしている」 「成程」 「断固として、出て行かないなんて意地張ってやがる。この前もウチの奴が掃除に行ったら、罠仕掛けられた上に上からもう半年も干してないような布団を投げつけられたのよ!? 有り得ない、有り得ないわ!」 「し、しかし‥‥きちんと御代を払って生活している以上‥‥」 「えぇ。追い出せない。許しがたい事にね」 ぷかぷかと辺りを白い輪が浮かんでいる。相当な数だ。 「まぁこう見えて、ウチも忙しい最中でね。長雨の季節はいつもそうよ。あちこちでカビが生えただのクモの巣がでかいだの蝙蝠が怖いだの蟻の巣部屋だの、掃除掃除に引っ張りダコ。おかげで人手不足なわけよ。だから、ちょっと人手を貸して欲しいわけ」 「そう言うことでしたら、とりあえずこちらの登録用の紙に詳細を‥‥」 「まず、人死にが出るのは避けたい。けど、ウチの若い者じゃ、奴等の穢れを剥いで清めてついでに改心させる事なんてちょっと無理なわけよ。ま、改心させる事までは求めないわ。でも、ここに出す以上必ず‥‥あの汚らわしい長屋を、住民ごと『綺麗に』してもらう」 「はぁ‥‥。あぁ、依頼主様のお名前を、そちらに」 依頼用用紙に書いて貰いながら、受付員が書き方を指示した。 「あたしは掃除屋。『掃除屋びうてぃころしあむ』の社長、天堂よ」 そう言うと、女は着崩した着物姿で胸を張った。 |
■参加者一覧
フレイ(ia6688)
24歳・女・サ
フリージア(ib0046)
24歳・女・吟
アルセニー・タナカ(ib0106)
26歳・男・陰
レートフェティ(ib0123)
19歳・女・吟
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
ハッド(ib0295)
17歳・男・騎
卜部 美羽那(ib2231)
10歳・女・陰
野分 楓(ib3425)
18歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ● その日、二人の男がひっそりと開拓者ギルドを覗き見していた。 そこには、8人の開拓者と彼らが『敵』認定している、某社長が居る。話は途切れ途切れにしか聞こえないが、どうやら自分達の古巣を無茶苦茶にかき回す作戦のようだ。これは許すまじ。男達は底に穴が開いた湯飲茶碗を耳に当て、聞き耳を立てた。 「サムライのフレイ(ia6688)、フレイ・ベルマンよ。よろしくね」 「あたしは野分 楓(ib3425)。よろしくね」 まずは自己紹介と挨拶からのようだ。挨拶こそは心の洗濯。大事な事である。 「それにしても、イヤですね。汚いのは。健全な肉体に健全な精神が宿ると言うように、汚い部屋ではその住人の精神が蝕まれてしまいますわ」 フリージア(ib0046)が言う事は、ここに集う皆が思う事だ。 「汚い場所は嫌いです。だから、綺麗にしてあげたいですわ」 ジークリンデ(ib0258)も言っている。 「『ゴミ屋敷』と呼ばれる長屋のぅ‥‥」 ハッド(ib0295)は、金髪くるくる巻き毛を指でくるくる巻いていた。 「皆のものよきにはから」 「しかし、ベルマン家の令嬢がゴミ屋敷の来られるとは思いもしませんでした。フレイ様に危険が及ばぬように、私は体を張ってお守りします」 壁から半身出して指をびしぃと丁度男達が潜む辺りへ向け述べたハッドの台詞は、アルセニー・タナカ(ib0106)によって綺麗に上から被せられる。 「開拓者だもの。どんな依頼も受けないとね。貴方はやけに気合入ってるみたいだけど」 「勿論、私は由緒ある帝国貴族の執事、ハウスキーパーのプロで御座います。大いに腕を振るい、フレイ様の為、火の中水の中」 「ひゃっはー、ゴミは消毒じゃ〜〜〜〜!!! なのじゃな」 アルセニーの気合台詞の上から更に被せた卜部 美羽那(ib2231)は楽しそうだ。 「‥‥あ。このキメ台詞じゃと相手は‥‥あっひゃっひゃ☆」 無駄に声まで若々しい実年齢5○歳の美羽那の言葉に、二人の男は思わず動揺する。 「昨日剃ったばかりなのに、何故バレたんだ‥‥!」 「暑いから透け透け着物にしたのが何故バレたんだ‥‥!」 ちなみに男達の場所からは、誰がどの台詞を言っているかは分かっていない。油断ならない女が1人いる、と彼らは断定した。 「とりあえず店長さん。長屋の住民は何人位居るの?」 レートフェティ(ib0123)の質問に、店長の天堂は頷く。15人前後だという事だ。 「15人を‥‥するのは難しいかもしれないわね」 彼女の台詞は小さく、肝心な部分が男達には聞こえなかった。 ともあれ8人は社長から掃除用具一式を人数分以上に貸し出される。大八車に満載だった。 「ところでびうてぃ、はともかく、ころしあむってどういう事? 掃除用具で決闘したりしてるの?」 フレイの問いに、天堂はこう答える。 「日々、汚らわしいもの共に真剣勝負を挑み、徹底的に排除する。それが、あたしらの仕事よ」 ● その長屋は、何かで溢れていた。それは、鬱憤を爆発させたかのように、外に吐き出されていた。 「うぅ‥‥寒気が‥‥。いえ、めげてはいけません。お仕事ですもの‥‥」 菓子折りを持参して正面玄関から入ろうと思っていたジークリンデは、早くも泣きそうになっている。『それ』は、もう建物なんだかゴミ山なんだか分からない状態になっていた。隣の長屋は窓に板張りがしてあり、被害を食い止めようと必死である。 「無理しないで。私が先に行くわ」 ずずい。フレイが前に出る。 「ご立派です、フレイ様!」 ずずい。アルセニーもその隣に立った。 「我輩は、正面から罠を受けきって、ゴミ掃除に勤しむとするぞよ。もにょどもも‥‥者ども、かかれ〜!」 噛んだが、王たるバアル三世はこんな事では動じない。何故なら、王は掃除界でも王だから! ハッドがびしぃと指を差すのと同時に、フレイが数歩進んだ。 「はい! みなさ」 「フレイ様! あぶなーい!」 どふっ。今まさに声を張り上げようとしたフレイは、不意に横から突き飛ばされる。 「あぁ‥‥。落とし穴と吹き矢の罠に気付いてようございま‥‥フレイ様!?」 「‥‥落ちたわ、アルセニー。落ちたわよ!」 突き飛ばされたフレイは、そのまま隣の落とし穴に嵌っていた。 「あぁ‥‥何と言う事でしょう‥‥! このゴミ大地の下にこのような穴が無数に掘られているとは‥‥! このアルセニー、フレイ様を体を張ってお守りすると誓いましたのに‥‥。こうなったら、私も穴に落ち」 「主従愛は後にしてくれんかの。わしが真正面から乗り込むのじゃ」 美羽那が玄関口‥‥と思える場所へと歩いていく。その後ろから、ジークリンデが菓子折りを両手で抱えたまま、そろそろとついて行ったのだが‥‥。 「きゃあああああ!!」 不意に後方から上がった悲鳴に、美羽那は振り返る。 「アレが‥‥●様(口にも出したくない黒いアレ)が‥‥!」 敵地へ突入前に、既に涙目になっていた。それはまぁ居るじゃろうな、当然。煙など焚いて追い出せば百や二百じゃ済まんじゃろうなと美羽那は思ったが、今から少女を演じるつもりなので敢えて口には出さなかった。 しかし、背の低い美羽那にはこの登りたくもない山を越えるのは一苦労である。よじよじと登りつつ長屋と思われる所を見つめると、隙間から顔を半分出している男と目が合った。 「うっ‥‥」 ここはなまじ女性として5○年間生きてきたわけではない、彼女の見せ所である。不意にその双眸から涙が零れ始めた。 「うぅっ‥‥うわ〜ん」 否、声を上げて泣き始めた。 「目が痛いです〜かゆいです〜」 「ん‥‥? これ、唐辛子ね」 既に自分も用意済みの唐辛子爆弾を隠しつつ、楓が呟く。楓が言うまでもなく、美羽那の周囲には赤い粉が舞っている。 「けほっ、ごほっ」 「こうなったら、私がアムルリープで眠‥‥きゃああああ●様が! アークブラスト、アークブラストぉー!」 すっかりジークリンデはテンパっている。消滅させるべく最大限のパワーで持って今まさに憎き奴を倒そうとした瞬間。 ぐしゃ。 「1匹くらいで使っていたら、練力使い果たすわよ」 レートフェティがしっかり踏んでいた。 「靴‥‥洗って下さいね?」 「後で洗うわ。大体、このゴミ山の下に虫なんて腐るほ」 「エルファイ」 「はいはい。それは後から、後から」 ずるずるずる。レートフェティに両脇を両腕で絞められ、ジークリンデはその場から退場となった。 「とにかく、こっちも手加減する必要はなさそうだね」 「私は煙で燻してみようと思いますわ」 フリージアは既に用意された焚き火に火をつける。 「フレイさん! 宣言はまだ?」 完全に構えた格好で楓が前方に問う。穴に半分嵌った状態で、フレイがもぞもぞ動いた。 「えーと、ちょっと待って。このとりもちが強力すぎて‥‥」 「フレイ様! もう少しで取れますので!」 「美羽那が居ない方向がいいと思うわ」 「正面以外だね! フレイさ〜ん! まだ〜?」 「うわ〜ん、うわ〜ん、おかーさーん!」 「どうして世の中には黒くて素早い虫が居るのでしょうか‥‥。あの山の下に‥‥うぅぅ‥‥」 「風向き良好ですわ。これで住民の方が追い出されてくれると良いのですけど」 もくもくもく‥‥。ゴミ山に白い煙が被さった。美羽那の姿もその中に隠れ、見えなくなる。 「よぉし、取れた! 私の外套をこんな風にして‥‥許さないわよ」 「はい。断じて許してはなりません!」 「突き飛ばしたのはアルセニーだからね」 「も、申し訳ございませ」 「はい! 皆さん傾注ー!!」 フレイの『咆哮』が周囲に広がった。 「私たちは、この長屋のオーナーに雇われたハウスキーパーよ! これから皆さんのお宅を掃除にいくわ。安心して。お金は取らないわ! 反対意見があるなら、聞いてあげましょう! さぁ、何かない?」 「うるせー!」 親切そうな彼女の笑顔にも、返って来たのは罵声である。 「‥‥他には無いかしら?」 「鬼女の手先はとっとと帰れー!」 「暴力はんたーい!」 どん、と長屋の屋根らしき辺りに立て札が立てられた。『我々にも生きる権利がある!』と書かれてある。 「言い分は分かったわ!」 「お前らがギルドで悪巧みをしていたのは知っているぞ!」 立て札を持った男がフレイを指差した。実に綺麗に潔く頭部の中央部分に鶏のとさかのような形の髪が生えている。 「俺達は負け‥‥ぐほっ」 男の頭に唐辛子爆弾が激突した。そのままゴミの中に落下する。 「あ‥‥フライングしちゃった。ごめん、ついうっかり」 楓お手製唐辛子爆弾レシピ。 一、良く乾燥させた唐辛子を石臼で念入りに挽いて細かくします。 二、大きな笹の葉を編んで作った玉の中に、唐辛子の粉を沢山入れた物を作ります。 三、二十個作ります。 四、投げます。 以上の構成で出来ています。 「じゃあ‥‥強制的に掃除を始めるわね!」 フレイの号令と共に、本格的な戦いが始まった。 ● さて。ハッドは、堂々と裏口に回っていた。本当は正面から罠を受けきりつつ王道を貫く予定だったのだが、余りに正面が混雑していた為、裏口突入を試みたのである。 「‥‥うわ!」 「裏口は質素じゃの。お主、ジューミンであるな?」 うっかり裏口周辺で足挟みを用意していた住民と遭遇した。うっかりなのは住民のほうである。 「貴様‥‥その派手な衣装、何奴!」 「我輩はバアル三世。王である。よきにはからえ」 「王っ‥‥!?」 男は動揺して数歩下がった。 「ふむ。これはゴミじゃな」 ぽーい。箪笥が彼方に飛んで行った。行った先で新たな障害を作っていた別の男にぶち当たった。 「あぁ、次郎が! てめぇ、帰りやがれ!」 「『退かぬ、媚びぬ、顧みぬ』。王の道は前進あるのみである」 ずんずんとハッドは裏口から建物内へと侵入していく。慌てて男が後を追った。 「ところで、王たる我輩に茶の一杯も出さぬのかな」 「茶を飲んだら帰りやがれ!」 「これもゴミじゃな」 ぽーい。文机が壁に当たって周囲の物が崩れた。 「ゴミじゃねぇええ!」 「王の臣下がこのような仮住まいでは話にならんぞよ。ぴかぴか長屋にせねばな」 「しっ‥‥臣下!?」 「ごほっごほっ‥‥。わしにも当てるとはどういう事じゃ!」 突然、薄暗い長屋の中に光が差し込んだ。窓が開き、白い煙と赤い煙と埃にまみれた美羽那が現れる。真剣に泣いていた。唐辛子爆弾で。 「ごめんごめん。でもだいぶ倒したよ」 「あら。もう中にいらっしゃったのです?」 美羽那と楓の後ろから、フリージアが中を覗き込んだ。 「中も酷いですわね‥‥」 「でも住民はだいぶ倒したよ」 「大龍符でも脅しましたし、しばらく一画に居てもらいましょう‥‥おや、まだ中に人が」 アルセニーが札を構えた瞬間、ハッドの傍に呆然と立っていた男が、素早く冷茶を用意してハッドに差し出す。 「俺は、この方の臣下だ!」 「まぁ‥‥。そうなのです?」 「ついさっき、そうなったのである」 「では手伝ってもらいましょうか」 「きゃあああああ!!」 外からはジークリンデの悲鳴が聞こえていた。煙に燻されたのは人間だけではない。虫も鼠もその他色々も、大地を這って逃げていた。 「あ。この落とし穴使えるわね。このまま埋めればいいと思うわ」 一通り周囲の罠を確かめていたレートフェティの目の前で、それらが落とし穴に落ちて行く。 「貴方達だって、こんな『住民』と暮らしていたら病気になると思うの。ごみに埋もれていたら、人としても腐っちゃうわ」 そして、周囲で倒れている住民に向かって、そう告げた。 「宝物も中にはあるのかもしれないから、少しでも心が安らぐように歌を歌うわね」 「‥‥」 「それとも、銭湯が先がいい?」 「‥‥銭湯‥‥」 唐辛子塗れの男達は、かろうじてそれだけ伝えた。 ● 清清しいほどの青空が広がる日中であった。 皆は外も中もあらゆるゴミと家財道具と衣類その他を取り出す。ジークリンデがエルファイヤーで燃やし、水も用意した。 「疲れました‥‥。いいえ、でも、私は燃やすだけですもの。どんと焼きで厄払いだけですもの。大丈夫‥‥」 「大釜の用意できたよー」 衣類は全て沸騰した湯の中で煮込まれた。 「新しい服を社長さんから貰ってきましたわ」 アルセニーが、倒れて動けない住民達を大八車に載せて数回に分けて銭湯に運んだ後、フリージアが貰ってきた着物を持っていった。唐辛子爆弾以外で戦闘不能になった住民達は綺麗に掃除した一室に軟禁し、レートフェティが小まめに様子を見に行っては歌い語った。その間にも、皆は大量のゴミ山を処理していく。 「どうじゃ。見知らぬ子供を泣かせたとあって、罪悪感に駆られたじゃろう?」 ぱたぱたと低い所を見事な動きであっという間に片付けていく美羽那が、数人の住民に向かって笑う。 「俺達子供嫌いだし」 「何じゃと! 子は宝! 孫も宝じゃぞ! この愚か者共が〜!!」 ぺち。ぺち。美羽那に頭をこつかれる男達。 「良いか。わしは50過ぎのババアじゃ! 騙されおってこのうつけどもめ! 主婦歴50年の掃除の冴えをおぬしらに見せてやる。よぉく見て、これからはしっかりと掃除するが良い!」 「動きがババ臭いよな」 「この構えが一番掃除しやすいんじゃ! 家事は効率第一じゃぞ! よぉく見ておれ!」 高速だった。その見事な動きで適度に手抜きするのが主婦業というものだが、それを他人に感じさせてはならない。お〜、という男達の感嘆の声を聞き、美羽那は満足そうに頷いた。 「良いか。この技を少しでも‥‥っと、届かんっ‥‥」 梯子を使っても届かない天井に手を伸ばしていると、男が1人立ち上がって梯子を昇る。 「俺がやるよ」 「お主‥‥」 「故郷の母ちゃん思い出した。懐かしいなぁ‥‥」 「わしで良ければどんと呼ぶが良いのじゃ」 そうして、住民達は懐柔されていった。 ● ゴミ城は美しい長屋へと生まれ変わった。長年のゴミの重みで明らかな斜め建ちになっていたが、畳の張替えなどは後日社長が行うらしく、畳の上にゴザを敷いて、皆はそこに座る。アルセニーが井戸水で作った麦茶と茶菓子を机に置き、皆に振舞った。 「そもそも、何でこんな事になってしまったのですか? 原因を突き止めないと、根本的な解決には至らないと思います」 麦茶を飲んで一息つき、フリージアが尋ねる。 「もしかしたら、元が汚いから汚してもいいという意識が働いているのかもしれませんわ。今、これを見てどう思います?」 住民達は皆一様に、綺麗なのは素晴らしいと告げた。 「物は何でも置いておくのではなく、捨てたほうがいいわ。捨てる勇気も大事よ」 レートフェティの言葉にも頷く。 「あの社長は怖いからな‥‥。あんた達みたいな人達が時々来て、こうやって様子見てくれれば俺達だって、もうゴミは溜めないと思う」 色々酷い目に遭ったが楽しかったよと住民代表が告げ、彼らは皆に感謝の意を述べた。 |