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■オープニング本文 ●経費削減のお話 お店を経営していると、理想と現実の板挟みになる事は、よくある事です。 例えば、予想外に掛かる費用。どうしても使わなければならないお金。断腸の思いで懐から金を出す決断も、時には必要な事なのです。 さて。 開拓者の皆さんの力を借りて少しずつ形になった『秘境のお宿』も、先日無事開店する事が出来ました。 宣伝はして貰ったものの、お客さんが上ってくるには険しい山道です。宿と町との往復便を出せればいいんですけど、馬車を通すのも危険な山道ですから何ともなりません。それでも手段はあるはずです。試しに私は、店長に話を振ってみました。 「マゼンタ、龍持ってたでしょ? 龍」 「そんなのとっくに厨」 世の中には知らなくても良い事も確かにあるのです。 「ヨーシアだって最近手に入れたじゃない。グライダー」 「入れましたけど〜。あれ、一人乗りですよ? ちょっとした荷物くらいなら載りますけど、お客さんは乗らないですし」 「あ、そうだ。駕籠は? 天儀にあるじゃない」 「えー。私、あんなの持ちたくないですけど」 駕籠というのは、一本の長い棒に椅子のような物を吊るし、そこにお客を乗せて運ぶものです。棒の前後に一人ずつ持ち手がついて走るのですが‥‥。 「そうね。一人しかお客乗らないもんね‥‥。今は秋だからいいけど、冬になったら一般のお客さんはこの山登るの厳しいから何か手段考えないと」 「んー‥‥」 まぁそう言う時は、『困ったときの開拓者』です。どちらにしても、私達の宿はまだまだ問題が山積みでした。 「運ぶと言えば、畳の事なんですけど」 「あぁ、あれね。天儀から輸送するとなると結構お金かかるからどうしようかなって。商人もぼったくるだろうし」 宿には開拓者の職を語った部屋がそれぞれあります。今の所3種類ですが、来店者の評判も上々でした。今は床に布団を置いている部屋も、近いうちに畳を入れなくてはなりません。天儀で買って直接自分たちで持ち帰るのが安くあがるのですが、生憎私達には輸送手段がありませんでした。 「よし、開拓者に運んで貰おう」 「ついでに天儀で安く色々買って来て貰うのもいいですよね」 「安い船に乗って貰って、途中で龍で運んで貰えば少しは安くつくかな?」 「そうですねぇ」 「そう言えば、最近新しい儀への道が開いたって? 我先にと向かってる人達も居るらしいけど、空賊なんかも動きが活発になってるかもしれないよね」 「賊もきっと新しい所に向かってますよ。新しい事には飛びついたほうが儲け話になりますしね」 「あんたは行かないの?」 「私、こう見えて用心深いんです。まだまだ安定してなさそうなあんな所に飛び込んだりしませんよ。それよりマゼンタだって。向こうにはきっと色んな珍味とかあるかもしれないのに」 「あ、私は行くつもり。でも龍やグライダーじゃ突破できないから誰かの船に乗って行かないと駄目だしね。色んな所あたってみるけど」 「お店をやっているから、2人同時に抜けるのは厳しいですよねぇ」 「ま、最悪シアンに任せれば何とか」 「シアン一人じゃ無理ですよ。やっぱり常雇を雇わないと〜」 幾ら忙しくないと言っても、一人ではさすがに店を営業して行く事は難しいものです。 「たま〜に来る開拓者のお客に、宿泊料と引き換えに働いてもらうとか」 「そんな火の車な操業っぽいのは嫌ですよ? 後の問題は‥‥」 さて。 私たちの問題は、何時になったら綺麗に片付くのでしょうか。 ● ヨーシア・リーリスは読み物書き屋である。 今回はごく一般的な依頼書をギルドに提出し、『お話』と題打った紙は酒場の隅にぺたりと張っていた。これで宿の話は3作目になる。お客も自由に読むことが出来、感想も貰っていた。何時か推敲を重ねてこれを本にしようと彼女は考えている。 彼女が考える当面の問題は、『輸送』であった。物、人の輸送。秘境にあるという事を売りにしている店だが、店である以上、来客があって収入があってこそ成り立つものだ。登って来たい人は登って来ればいいのだが、やはり便利さも欲しい。麓から人を運ぶ手段が欲しかった。 物資もそうだ。天儀風の料理レシピも多いし、天儀から来る商人から買っていたのでは割高である。自分たちで行って買ってくる、或いは自作するのが安くつく。或いは特定のルートを持つ商人と仲良くなるか‥‥。ここジルベリアでも、天儀物を作っている場所があると聞くが、コネは一切ない。 もう一つ。当面の問題があった。 今の所経営は、赤でも黒でも無く進んでいる。だが目標として、もふらさまを購入するというものがあった。この貯蓄が全く進んでいない。他にも畳を買うだとか今後も様々な出費が予想される。その為、開拓者達が支援者を募ったのであるが、肝心のもふらさま購入支援金は全く集まっていなかった。どうやら話を聞いた時は盛り上がったようだが、後になって冷静になって考え直したりしたらしい。 「‥‥ニーナはもふらさま好きだったかなぁ‥‥」 開拓者が作ったもふらさまぬいぐるみの手を動かしながら、ヨーシアはぼやいた。 とにかく、金を一番持っているのが貴族と商人というのは間違いない。以前の支援者と新しい支援者。どちらからも何とか金を頂かなくては。 |
■参加者一覧
黎阿(ia5303)
18歳・女・巫
アーニャ・ベルマン(ia5465)
22歳・女・弓
ジルベール・ダリエ(ia9952)
27歳・男・志
フラウ・ノート(ib0009)
18歳・女・魔
リン・ヴィタメール(ib0231)
21歳・女・吟
ライディン・L・C(ib3557)
20歳・男・シ
エーディット・メイヤー(ib3831)
24歳・女・魔 |
■リプレイ本文 私の呼びかけに集まってくれたのは、黎阿(ia5303)、アーニャ・ベルマン(ia5465)、ジルベール(ia9952)、フラウ・ノート(ib0009)、リン・ヴィタメール(ib0231)、ライディン・L・C(ib3557)、エーディット・メイヤー(ib3831)、そしてイリア・サヴィンの計8名。 顔見知りも多いけれど、無事に経費節減を実現できるのでしょうか? ● 「巫女にして女中のレアよ。よろしくね」 次から次へと難題がふってくるわねぇ、ヨーシアと、親しげに黎阿が挨拶をする。 もう挨拶をしなくとも判る仲なのだが、それはそれだ。 そして今回はアーニャに背負われていないのは、ほんのり体力がついたのでしょうか。 「故郷を思わせる土地どすな」 リンは猫を思わせる笑顔を浮かべつつ、宿の周囲をきょろきょろと見回す。 その手には、巫女服が数着抱えられている。 巫女服だけではない。 袴はもちろんの事、千早と扇子、そして何故か鏡と榊も完璧です。 「お手伝いしてもええどすやろか? 難儀してはるんやったらお手伝いしますわ♪」 どうやら宿の部屋の内装に使うらしい。 あまりに沢山なのでヨーシアが急いで半分受け取って、二人で宿の中に運び込む。 「ふむむ、宿も形になってきましたけど、資金難なのですね〜」 この宿の再建に常に関わって来たエーディットは宿を見上げる。 ごく普通の町の宿に勝らずとも劣らずな良い宿だというのに資金難とはまた苦しい。 けれどエーディットの興味は良い仲に見える開拓者カップル(?)×2のようだ。 荷物をリンと一緒に運び終えて戻ってきたヨーシアに「ライディンさんとシアンさんが一緒に外回り〜‥‥きっと近い将来、二人の結婚式ですよ♪」と楽しげに話し出す。 いやいや、二人とも性別同じじゃないのか? それとも実はどちらかが女性? いやいやいやいや、性別同じでも‥‥と、美味しすぎる話題にヨーシアの作家魂に火がついて羽ペンが止まらなくなりそうなのだが、強い意志の力でヨーシアはそれをぐっと我慢する。 今回は経費節減に努めなければならないのです。 でも今回の依頼が終わったら結婚式に向けて頑張ってしまうかもしれませんが。 「こう、金は天下の回りもの、って言うしさ。そろそろ俺らんとこに回ってきてもいい頃だと思うんだっ」 宿にお金がないのと一緒で、ライディンの懐も寒いらしい。 「シアンさんに暖めてもらうといいですよ〜♪」 にこにことエーディットが提案するのをシアンは軽やかにスルー。 何事もなかったかのように「天下の回り物ともいいますが、金は金に集まるともいいますね」とぼそりと呟いた。 なんともクールです。 だが企業戦士ライディンはめげない。 「普通の料理は出来るよね? そしたら、一緒にパン屋に来て欲しいんや」 あんまりお金はないという話だけれども提案があるのだというライディンに、シアンは頷く。 禁断の恋ですわ〜と歌うエーディットのことはとりあえず保留にしているようだ。 「俺も金勘定苦手なんやけど‥‥」 ジルベールは頭を掻きながら、市場に貼り出す予定の張り紙内容を確認する。 今回の買い付けには間に合わんやろけど、とりあえず募集だけでもというその内容は、食材の共同購入。 輸送コストを人数分で頭割り出来る事と、仕入先を同じにする事で値引が期待出来るのがメリットだという。 確かに一人での買い付けでは一度に買える量にも限度があるし、使う分だけを使う時に輸入していたのではコストが高すぎるのだ。 もし彼の案が成功すれば、大幅な経費削減は確実だろう。 「農家と交渉したいんだよね。噂じゃ、ジルベリアにも天儀ものを栽培している農家があるみたいだし」 ジルベールと同じく広告を確認しながら、フラウは農家へのパイプを作ることを提案する。 食材は輸入物は高いし、ここジルベリアで天儀の野菜が手に入るならそれに越したことはない。 広告の内容は農家の育てた野菜や果物等の売買を目的としたもので、ジルベールと相談しながら作ったものだ。 そのジルベールに半ば騙される形でこの宿にやってきたイリアは、既に宿へ来る途中の邪魔な木々を片付けるべく、斧を持って出かけていった。 「ジルベールさんとイリアさんの仲も気になるです〜♪」 と妙にテンションの高いエーディットは完全に乙女属性。 きっとヨーシアといい勝負でしょう。 「あれ? アーニャさんは?」 広告から顔を上げて、フラウが辺りを見回す。 一緒にこの依頼を受けたはずのアーニャが見当たらないのだ。 「アーニャは天儀に向かったはずよ」 抱きつけなくて残念と黎阿は唇を軽く尖らした。 ● そして噂のアーニャは玩具屋『天怪堂』店主に難儀していた。 「ですから、天怪堂の商品をジルベリアに展開しませんか?」 この台詞、早何度目だろう。 天怪堂店主に熱くあつーく秘境の宿について語りつくしたのだが、店主はうーんと困り顔。 ジルベリアに宿があるといっても店主が泊まるわけでなし。 そもそもあまり天儀からでたことがないのかもしれない。 「秘境の宿ではですね、土産物コーナーはアヤカシグッズ大歓迎なんです。出店料をいくらか頂きますが、天儀で注目の作家だと宣伝しますよ? 店のマスコットはもふら様になる予定ですし」 もふら、の言葉に店主の目がカッと輝いた。 あまりの眼光にアーニャ、乗り出していた身をほんのり引いちゃったり。 「‥‥店主、もふら好きですか?」 おずおずと尋ねるアーニャにうむうむと頷きまくる店主。 いそいそと店の奥に行き、ころんとしたもふら人形を持ち出してきた。 でも一般的に売られているもふら様とほんのり様子が違います。 そう、たれているのです。 「え、えと。たれもふら様‥‥?」 店主はにかっと笑う。 おまけにたれ猫のぬいぐるみまで出してくる。 (「う、売れるのかしら、これ!」) アーニャの心にほんのり不安が湧き上がります。 でも一応交渉成立。 商品補充はアーニャが宿の臨時従業員をしに行くついでにする事になりました。 「いやいや、ほんとに! ここのパン最高だと思うんだっ」 パンパンパンッ。 勢いあまってパン屋のテーブルを軽く叩きながら、ライディンは麓町のパン屋店長に力説。 その頭にちょこんと葉っぱが引っかかってるのはご愛嬌でしょう。 シアンが切り倒したお陰で大分下りやすくなった山道を、下山ついでにさらに危険そうな石などをどかしながら降りてきた為だ。 その横ではこの店で買ったばかりのパンをシアンがその場で手を加え、見るからに美味しそうなサンドイッチを作っていた。 ライディンはそれを指差し、 「ほら、みてみて、この色合い! 鳥と彩り野菜のオリジナルソースの挟み込みの織り成す究極ハーモニー、名付けて巫女サンドや。まちがっても巫女さんどや〜って変なところで区切っちゃだめなんだっ」 強引にライディンに勧められるままにパン屋の店主、巫女サンドをパクリ。 その表情にライディンは勝利を確信! 「パンを宿で使わせてもらって店を宣伝する代わりに、宣伝費をパンの納品で相殺してくれないかっ」 ライディンの交渉に、パン屋店長OKサイン。 これで支援者2人目ゲットです! 「渡り巫女をしていますレアと申します。お見知りおきいただければ幸いです‥‥」 しずしずと子爵に黎阿は頭を下げる。 普段の黎阿を知っているリン達からして見れば『あなた誰デスカ』状態。 見事な猫かぶりだが、もともといい女であろうと常に心がけているからこそ子爵にも見抜かれない礼儀作法が自然と出来るのだろう。 子爵の家を訪れたのは、黎阿とリン、そしてヨーシア。 三人とも、リンが用意した巫女服を着用している。 着物が好きだという子爵には、その方が受けが良いだろうという計算。 その読みは見事に的中! ジルベリアでは洋服ばかりで見飽きたという子爵は、黎阿達のような美麗な巫女三人と会えただけでも目の保養とご満悦。 特に黎阿とは着物話で「どこそこの地模様の着物は‥‥」などと着物談議に花が咲く。 そしてここぞという時に、リンが切り出した。 「行く行くは、宿で着物祭りを開きたいんどすけど‥‥子爵はんに、ええ心当たりがないか思うて訪ねましたんや。共催を引き受けてくれるような、頼もしい人はおらへんやろか?」 期待に満ちた巫女服姿(ここ重要!)のリンの目線に、着物も好きだけれど着物っ子も大好きすぎる子爵が断るはずがない。 二つ返事でOK! 「‥‥この店やな」 アーニャより少し遅れて天儀についたジルベールは、畳屋の前で値段を再度チェック。 この店以外にも数軒、畳屋はあったのだがこの店が二番目に安かったのだ。 ジルベールがしばらく畳の前で悩んでいるふりをしていると、店の頑固そうな親父が声をかけてきた。 「いやー、二つ通り向こうので売っとった畳がもうちょい安くてなー。ただ、この畳のほうが明らかに質が良いもんだから、あの畳より安くなるなら買うんやけどなー」 質と値段がネックなのだと悩む振りをするジルベールに、明らかに良い畳だと褒められた店の親父も満更ではない。 畳に使う草は井草と藁を絶妙にブレンドさせ畳独特の香りを際立たせ、経糸も畳縁にも拘りがあるのだと職人気質の親父は言う。 だからこそ、この値段なのだとも。 「急にジルベリアに帰ることになってなー。良い畳やないと寝られへん」 頭を掻くジルベールは、本当に困っているように見えた。 確かにジルベリアではここまでの畳は手に入らないだろう。 そして急の帰国なら色々物入りになるだろうしと、店の親父は荷馬車の手配をして、こう言った。 ―― 畳は俺の魂だから値引きは出来ないけれど、港まで運んでやると。 何枚もの畳を運ぶには、ジルベール一人では無理がある。 畳を値引けずとも、それでも元々この辺り一帯の畳店の中では二番目に安い店なのだ。 運んでもらえれば十分おつりが来る。 ジルベールは店の親父に深く感謝して、良質の畳を持って天儀を後にした。 ● 「やっぱり気を休めるのですから、執事さんとメイドさんの服装が良いでしょうか〜」 るんたったーるんったったー♪ そんな陽気な鼻歌まで聞こえそうな勢いで、エーディットは華やかな色合いの布をさくさくと仕立ててゆく。 そしてその横では、朗報に目を輝かせるフラウ。 地道に麓の町のお店に広告を貼らせてもらっていた広告に手紙が来たのだ。 件数は少ないものの、多少なら提供できるという家庭菜園系の方々まで合わせれば、輸入野菜に頼らずとも何とかやっていけそうです。 フラウは来た手紙全てを大切に整理し、特に有益であると思われる手紙には付箋もつけてリストアップ。 各農家の連絡先はもちろんの事、どの農家がどんな野菜を手がけているかまで書かれたそのリストは、今は使わない食材でも後々必要になったときすぐに農家に連絡を取れる優れもの。 「完璧ですね」 フラウの手際のよさに素直に感嘆するシアンに、フラウは真っ赤になって俯く。 そんなやり取りを間近で見ていたエーディットはすかさず「ラブラブですわ〜」と楽しげに歌ってさらにフラウの顔が赤く染まった。 「そ、そういえばっ。イリアさんが畑を作って頂けるということでしたがっ?!」 話題逸らしとリストの完璧さの両方含めて、帰国したばかりのジルベールに話を振る。 いきなり話題を振られたジルベールはけれど動じることなく頷いて、フラウを促す。 「見に行ってみるかー? 畝作りまで終わったそうやから、どんな野菜を植えるか相談しよか」 リストに無い野菜を作るのもありだが、よく使う食材を植えるのも良いだろう。 いつの間にか木彫りのもふら様を手にしたエーディットがフラウとジルベールを見て瞳を輝かせているのだが、もう理由は言わずもがなだろう。 「ただいま帰りました。天儀の玩具屋さんからお土産頂きましたよ〜‥‥うあっ?!」 だきゅっ☆ 帰国したアーニャにフラウが有無を言わせず抱き付き突進! 思わずよろけそうになるアーニャを有力商人の元から戻って来ていたライディンが支えた。 「い、一体?」 「猫、かわいい‥‥っ!」 ぎゅうっ☆ どうやらアーニャがサンプルがてら頂いたたれ猫のぬいぐるみが気に入ったらしい。 「やっぱり、数が揃えばうざ可愛くて癖になること間違いなしですよ〜♪」 木彫りのもふら様に余り布で多種多様の衣類を着せていたエーディットは自分のセンスにぐっと確信を持つ。 (「は、流行なのかしら‥‥?」) うざ可愛いは流行の最先端。 そんな雰囲気にアーニャの額にほんのり冷や汗が浮かんだり。 ● 「えーと、まとめて見ますと。支援が得られたのはひぃ、ふぅ、みぃ‥‥おおっ、結構集まりましたね!」 ヨーシュアがぐっと拳を握り締める。 玩具屋『天怪堂』、麓のパン屋、そして着物っ子大好き子爵。 この他にも数件、良い返事を頂いてある。 「この服も可愛いし、部屋数も充実。最高です」 出来立てほやほやメイド服に身を包んだヨーシアの機嫌は絶好調。 手に持った羽ペンで今にも物語を紡ぎだしそうです。 それもそのはず。 巫女の間、騎士の間、陰陽師の間など開拓者ならではの宿の部屋の提案と内装が終わり、そしてなんと宴の内容まで決まったのだ。 その名も『物語の宴』 リンの提案です。 秘境の宿の副店長の傍ら、自分の書いた物語を泊り客に語って聞かせられるのだ。 道も大分整備されて、なんとか馬車も通れるようになり、これから客をどんどん増やしていける事でしょう。 秘境の宿に、幸あれ! (代筆 : 藍鼠 ) |