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■オープニング本文 理穴での騒動を受けて石鏡の首都、安雲では徐々にだが軍備の強化が進められる事となった。 「とゆー訳でっ!」 長髪の女が空におかっぱの天儀人形を翳して叫んだ。手乗りサイズの人形の目がぎょろりと動いた気がした。無駄に禍々しい。 「今こそ我々の力を見せる時が来たんだぜ、ヤローどもッ!!」 言うのは陰陽師の破軍山姫子、白髪赤瞳、瞳の中に不気味な光を宿し、目の下には妙にドスグロイ隈がある。無駄に禍々しい。 自称して「安雲の北斗七星」他称して「災禍の変人女」「狂気の人形遣い」「狗の姫将軍」など、さまざまな呼称で以って呼ばれる少女である。 周囲の白い塊にまたがった男女から手があがり「おー」と声もあがった。各々の手に持っているのは符であり禍々しい符であり無駄に禍々しい符であり、そしてやはり無駄に禍々しいナニカであった。要するに彼等は(ちょっと偏った)陰陽師の集団であった。 基本、石鏡は巫女の国であるので、陰陽師な彼女等はそれに比較すると珍しい集団である。陰陽師でなくても珍しい集団であっただろうが。 彼らが乗っているのは馬でもなく牛でもなく、もふら様であった。特注の鋼鉄の兜をかぶらせ鞍をつけ、手綱をつけている。温厚な事で知られるもふら様だが、体長十尺(3m)の巨躯に獣を象った鉄兜をかぶられると、容易に「もふもふ」と言った侮りを感じさせない何かがあった。とは言っても、もふら様である事に違いはないので、やはり本質はもふもふであり、実際にもふもふなのであったが猛々しい鉄兜はそのもふり加減を容易くは感じさせない。まこと見た目とは大事なものであった。 「団長! ついに我々の時代が来るんですね!」 鋼のもふらさまに騎乗し禍々しい人形を抱える気の良い青年が言った。無駄に美形だ。目がきらきらしている。 「うむ、我々ヒューマノイド・モッフーン団の輝かしい歴史をこの乱世に打ちたてるのだ!」 ベラリエース大陸(ジルベリアのあれだ)の各言語にも精通しているという無駄な才能をもつ姫子が答えた。御歳、華の十七歳の少女。無駄に目がギラギラしている。 「そりゃー素晴らしい! イーヒッヒ! イーヒッヒ! イーッヒッヒッヒッヒ!」 美形の青年が壊れたように笑い始め、他の部隊員達も一斉に笑い始めた。怪しすぎる。誰か病院もってこい、と通りすがりの別部隊の兵士Aが思ったが、いつもの事なので結局は思っただけでその兵士は見ないふりをして中庭を通り抜けて行った。 「やがてくる戦で功績をあげれば! 上の連中も我々の実力を正しく評価してくれるだろう! 頑張ろうぞ団員諸君!」 ジルベリア産の黒のドレスメイルに身を包む姫子が人形を抱きつつ、ひらひらの袖を払い、ビシッと朝日を指して言った。 「そうですね! なんでか知らないけど我々って不当に扱われてますもんね! 結構アヤカシ倒してるのに!」 団員の一人が勢い込んで言った。こちらも結構、はじけた化粧をしている男だ。 「そうですよね! 割と頑張ってるのに、巫女さん達からは廊下ですれ違う度に目を逸らされますし!」 夜叉の仮面をかぶった女の団員が言った。肩にはやけに髪の長い人形を乗せている。髪の毛がうねうね動いているように見えるのはきっと目の錯覚だろう。 「うむ、悲しいのだ。あれは悲しいのだ。だから我々はもっと頑張って我々の存在を周囲に認めさせるのだ! 我々のべすと・ぷれいすって奴をこの石鏡の中に作るのだよ!」 姫子が言い、団員達が「おー」と気合の声をあげる。そんな中、一人、鳥の仮面をかぶった少年は声をあげなかった。 「団長」 少年は言った。 「ん、なんだい、ニンジロー君?」 「いえ、僕は時任、次郎、であってニンジローではありませぬ! ではなくてヒメコ団長! 功績をあげる前に我々が周囲に認められる為にはまず成すべき事がある‥‥! とは、思いませんか?」 「なに‥‥成すべきこと、だとっ? なんだそれは!」 「我々の存在が空気のように無視される理由、それは僕が思うに‥‥見た目、かと」 「見た目‥‥?! 我々の見た目の何処がいけないというのだ!」 ズガーンと衝撃を受けたような顔で姫子。 それにニンジローは答えて言った。 「僕が思うに‥‥地味、なのではないか、と!」 「じ、地味だとうっ?!」 「こうイマイチ、インパクトに欠けると思うのですよ! 配色的に皆黒ばっかだし! 右も左も黒黒黒! もっと赤とか黄色とかあっても良いと思いませんか?!」 「なるほどッ! そいつぁー確かに盲点だったッ!! ニンジロウ君、人形一体!」 「はっ、ありがたき幸せ! でも団長! 僕はニンジロウではなく時任次郎です!」 彼らが受け入れられる日はかなり遠いだろう、やはり通りすがりの兵士Bは朝食に取ってきた饅頭を食べながら中庭を通り過ぎ、そんな事を思ったのだった。 ● 「‥‥ひゅまのいど・もっふん団だぁ?」 秦人の偉丈夫、劉益翼は話を聞いて盛大に眉を潜めた。 「安雲の陰陽師隊の事ですよ。安雲の北斗七星とか名乗ってる女が隊長の」 「ほぉ、北斗七星ね」 ギルド員の言葉に興味を持ったらしく益翼は相槌を打って先を促す。 「なんでも、もふら様に兜をかぶせて乗り回してるらしくって、正気の沙汰とは思えない連中ですよ。それで訓練相手を募集しているそうなんです。志体の持ち主限定で」 「ほっほほぉ? もふらに? 聞いた事ねぇな確かにそんなの。だが、しかし、そりゃなかなか‥‥」 実際に相手にするとなると厄介そうだな、と思った。馬ならば弓矢を射って殺せるがもふらさまとなると簡単にはいかない。パワーもあるから、突進で小型のアヤカシなら吹き飛ばせるし悪路にも強い。何よりタフだ。 「だがしかし、志体ってのは‥‥ああ、仙骨か。なんでまたそれに限定を? 達人としかやらねぇってのかい?」 「いや、重装甲の陰陽師がもふら様に乗って駆けながら斬撃符と吸心符とで攻撃を仕掛けるのが連中の戦法らしくてね。術ってのは、ほら、加減をつけるのが難しいでしょう? 志体の持ち主なら少しくらい傷を負っても大丈夫だし、すぐ治るから」 「なるほど、だからギルドに訓練相手の募集を、か」 「単純に他の部隊が相手をするのを嫌がったってのもあるらしいですけど。ちなみに騎馬戦‥‥というか、もふ戦みたいですよ。騎乗戦をこなせないとこの依頼は受けられません」 「ふーん‥‥変わってるなぁ」 と、顎鬚を撫でて益翼。 「お兄さん、受けます?」 「いや、オレ、もう他の依頼受けてんだ」 「そうですか‥‥って、ひやかしか!」 受付の娘がノリツッコミで叫んだ。 「え、いや? だって、はっはっは、他にどんなのあったか気になるだろ?」 「こっちだってそんな暇じゃねぇんですよ! ほら、とっととその受けた依頼に行った行った!」 「つれないねぇ」 がっはっはと笑いながら大男は出てゆき、そしてこの依頼は別の開拓者達へと回されたのだった。 |
■参加者一覧
柄土 仁一郎(ia0058)
21歳・男・志
陽(ia0327)
26歳・男・陰
虚祁 祀(ia0870)
17歳・女・志
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
向井・智(ia1140)
16歳・女・サ
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
四方山 連徳(ia1719)
17歳・女・陰
水津(ia2177)
17歳・女・ジ
玲瓏(ia2735)
18歳・女・陰
翔(ia3095)
17歳・男・泰 |
■リプレイ本文 秋のよく晴れた日の朝。 「北斗七星ね‥‥あたしならもっとかっこいい二つ名付けるけどなー」 霧崎 灯華(ia1054)は安雲の街の道を歩きつつそんな事を呟いた。 「実践を考えた訓練とは、実に気合が入っていますね! 素晴らしいと思います! 我々も是非全力を持ってお相手しなければ!」 斧を背中に負っている向井・智(ia1140)が腕をふって言った。気合は十分だ。 「ふむ、もふらさまを騎馬代わりになぁ。面白い事を考えるものだ」 柄土 仁一郎(ia0058)が少し感心したように呟いた。 「腕試しには良さそうだよな。一丁揉んでやろうぜ!」 というのは喪越(ia1670)である。 「どちらかと言うと、胸を借りる側となりそうですけど‥‥」 翔(ia3095)が言った。どうやら噂によれば戦闘能力だけは無駄に高い隊らしい。 「あ、やっぱり?」 「そんな事はありません」 水津(ia2177)がずずいっと出て言った。 「ヒューマノイドだか何だか知りませんが、この焔の魔女が重武装という同じ条件なら巫女の方が優秀だと言う事を思い知らせて上げましょう‥‥」 うふふ、と笑みを洩らして少女は言う。巫女の重武装者として陰陽師の重装甲部隊というのが矜持に触れたらしい。彼女も気合は十分だ。 「そ、そーか」 背後に見える炎に押されつつ喪越。そんなこんなを話しつつギルドで依頼を受けた十人の開拓者達が街外れへと向かう。 そこには既に噂の陰陽師隊の面々が集まっていた。 黒、黄、赤、青、強烈な色遣いと造形だ。遠目からでも鬼の集団と見紛うほどのアヤシサが炸裂している。 「あー、見れば見るほど個性的というか飛んでる人々でござるね?」 皆の連徳おねーさんこと四方山 連徳(ia1719)が言った。 「確かに、あんな格好してんなら白い目で見られても仕方ないわな」 陽(ia0327)がうんうんと頷いて納得している。 「にしても、空気のように無視されているというのは‥‥何かちょっと‥‥」 玲瓏(ia2735)が言った。同じ陰陽師としては待遇が改善される事を願うばかりである。 「実績からすると腕は十分いいみたいだし、あとはそれらしい格好、振る舞いをすれば自然と周りの目も変わりそうなものだけどなぁ」 と言うのは虚祁 祀(ia0870)だ。 「しかし、造りは良い鎧ですね‥‥」 智がぽつりと呟いた。妬ましくは思っていない、断じて。 「相手は重装甲相手だから、あたしは軽装にして機動力と手数で勝負って所かしらね」 灯華が呟いた。奇策で驚かしてやろう、と思う。 「どうせだから面白くしないと、ね」 女はきゃはと笑った。 そんなこんなを話しているとあちらからもふら様に乗った騎兵が四騎やってきた。 「やぁやぁ、貴方達が依頼を受けてくれた人達かな?」 黒のドレスメイルに身を包んだ白髪赤眼の女が言った。目の下にやたら黒い隈がある。開拓者達が頷くと「私が隊長のヒメコだ。今日はよろしくー」などと言った。 一同は軽く挨拶を済ませると、 「俺を含め、馬ならば心得はある者もいるが、もふらさまは勝手も違うだろう。慣熟する時間を少々頼みたいのだが」 仁一郎が言った。 その言葉にヒメコは少し考えたような顔をしてから、 「ん、解った。どれくらい必要だい?」 「できれば昼過ぎまで、試合は夕方からが良いわ」 と言うのは灯華だ。 「うーん、ちょっと長いけど‥‥まぁ良いか。その方が訓練になるものね」 という訳で訓練は夕方から行われる事になった。 ● 翔と智が十尺のもふらさまに抱きついて、その弾力のある体躯と豊かな毛皮の感触を思う存分にもふもふしている。 「もふ‥‥あぁ、やっぱりもふもふです‥‥」 「ええ‥‥実にもふもふなのです」 やはりもふら様はもふもふであったようだ。 一方では陽が(「この手触り‥‥」)と胸中でもふら様のもふ加減に驚愕の呟きを洩らしている。 「これ一匹お持ち帰りとか、駄目?」 残念だが駄目。 開拓者達はルールを再度確認し打ち合わせして、各々騎乗戦の訓練をした。 時は流れて夕刻。 空が茜の色に染まり風に涼しさが増す頃、ついに模擬戦が開幕となった。 会場となる街外れの平野には線が引かれ旗が立てられ審判員の巫女や泰拳士達が並ぶ。 中央、総勢二十騎のもふら兵が集まった。 「我こそは戦況予報士、後半の粘りで我々の勝利よ!」 もふら様の鞍の上で手綱を操りつつ玲瓏が言った。 「ヒーッヒッヒ! ならこちらは序盤でペースを握らせてもらいますよ!」 美形の青年が笑いながら答える。駆け引きは既に始まっているようだ。 「そういえば、あんたの二つ名って北斗七星っていうんだって?」 灯華がヒメコへと問いかける。 「ん、そーだよ」 「それ、由来なんなの? ダサくない?」 灯華は笑みを浮かべて言った。その言葉にヒメコはズガーンとショックを受けたような顔をすると、 「え、だ、ダサイかな?」 「うん」 「そ、そーかー」 ヒメコ、そこはかとなく凹んだようだ。それはヒメコに対する挑発作戦であったのだが、 「き、貴様ァ! 我らが団長に向かって何を抜かすかァ! そこになおれ成敗してくれるううううッ!!」 鳥の仮面をつけた少年が声を張り上げた。別の奴が挑発にかかったようだ。 「どうどうどうどう」 「ニンジロー君、試合が始まったら暴れて良いですから、ね?」 「く、おのれ、女ァ! 貴様はこの時任次郎が倒すッ!」 「女、じゃなくて霧崎灯華よ」 「やかましい、覚悟しておけよ霧崎とやらあッ!」 ニンジローは憤然と手綱を引いてもふら様の首を巡らせると北へと駆けて行った。 「あーりゃー‥‥大分、トサカにきてるわね、あれ」 キャハと笑いつつ灯華。予定とは違うが、まぁあれでも良いか、と思う。 かくて姫子隊の面々は北へ、開拓者達は南へと向かう。 やがて一町五十間(約200m)程度四方の南北端にそれぞれ十騎づつのもふら兵達が並んだ。 中央の巫女が舞いを舞って四方へと一礼すると、法螺貝を口に当て、低くこもった音色を響かせた。試合開始だ。 「さて、いざ参ろうか!」 手綱を左手に右手に風魔手裏剣を握って仁一郎が言った。 「必勝の意気にて参りますッ!」 智が斧を掲げて応えた。 応、と開拓者達は気勢をあげると、拍車を入れてもふら様を駆け出させる。 十騎のもふら兵が北へと向かう。開拓者達は隊を左右に二つに分けて駆けた。北からは姫子隊の面々が横一線で土煙をあげながら津波のごとく南下してくる。 水津は仁一郎と共にそれぞれの隊の先頭を駆けながら仁一郎と自身へと加護法をかけた。 壱班、仁一郎の後方を走るのは喪越と陽の二騎だ。両者、手に荒縄の端と端を持っている。智はそれを護るように駆けている。灯華は外側を走った。 弐班、水津の後方にも同様に翔と連徳が荒縄を持って駆けている。その後方にはさらに玲瓏が続いた。祀は大外のやや後方につけた。 距離が詰ってゆく。 最左翼、端から少年が灯華へと向かってくる。ニンジローだ。 「キャハハハ、凍らせてあげるわ!」 灯華は符を翳すと三連の氷柱を飛ばし即座に手綱をひいてもふら様を横に旋回させる。強烈な氷礫と冷気の渦が少年騎兵を呑みこんだ。 距離11間(約20m)先頭を走る仁一郎へとヒメコと隊員二名がカマイタチを連射する。同様に美形青年、黒髪少女、隊員一名が水津へとカマイタチを連射した。それぞれへ六発づつ真空の刃が唸りをあげて飛び、男と少女を直撃する。 「くっ?!」 透明な光を突き破って六発のカマイタチが仁一郎の身を切り裂いた。血飛沫が吹き上がる。深手だ。審判からこれ以上は危険と見なされて縄と神風が飛んだ。仁一郎集中砲火を受けて脱落。 水津は六発のカマイタチを受けながらも呼子笛を鳴らしながら突き進んでいる。鎧が少し傷ついているが本人は無傷。頑強だ。 喪越が人形を翳した。練力が解放され巨大な竜が出現する。竜をスクリーンに敵からの視界をふさいだ。陽と共に綱を張りながら左右へと広がる。 「いざ、尋常に勝ー負っ!」 陽は抜き放った刀を片手に縄を張りながらもふら様を駆けさせる。仁一郎が倒れ、喪越から竜が出てるとなると狙いが向くのはそちらか。姫子隊と正面からやり合うにはちょっと厳しい耐久力だ。 「どんな時でも盾根性ォーッ!!」 智が陽への射線を遮るようにカバーに入った。斧を振り上げて咆哮を飛ばす。姫子隊の隊員達は咆哮にはかからなかったが、隊員は位置関係上の理由から智を狙った。男の手から二連のカマイタチが放たれる。真空波が直撃し、少女の身が切り裂かれた。まだ持つ。 水津が横手へと動き、連徳と翔も縄を張りながら左右へと動いている。その大外を抜けて祀が最右翼へと向かう。カマイタチを飛ばした陰陽師達は方向を転換し、それぞれ左右へと流れ始める。 玲瓏は美形青年と黒髪少女へと向かって人魂を飛ばした。三寸程度の大きさの蜂鳥だ。その視界を遮るように眼前にまとわりつく。 ニンジローは手綱を捌き、反転した灯華を追っている。ぎりぎり斬撃符の射程外だ。届かない。 大外から行く祀へと隊員の一人がカマイタチを連射した。少女の身が切り裂かれて血が舞った。まだいける。突っ込む。隊員はもふら様を旋回させて外へと逃げている。手綱を捌いて後を追う。距離は詰らない。智は旋回した陰陽師を追う。距離が詰らない。旋回すれば速度は減ずるが、その相手を追う為にはこちらも旋回しなければならないので結局は等速。単騎で向かっては肉薄するのは難しい。味方と連携を取りたいが同じ班に接近戦をしかけようとする者がいない。 「落っこちろ〜い」 陽がもふら様を駆けさせながら言う。喪越、陽、連徳、翔、は縄を横に広げながら突っ込む。それぞれ左右、外へと流れる陰陽師隊、壱班、弐班ともに、中央付近にいた者達をぎりぎりで捉えた。斜めからの角度で縄が炸裂する。喪越、陽がひっかけたのはヒメコと隊員の二名、連徳と翔組は美形青年だ。 ヒメコと隊員は手甲で縄を受けた。衝撃が炸裂する。縄を握っている喪越、陽、連徳、翔の身体が勢いよく引っ張られる。 陰陽師側、甲冑を着ていて重い。しかし不意の一撃。開拓者側、縄撃に対して意識がある。それぞれの身体が泳ぎ、鞍上でバランスが崩れる。 喪越、陽、あわや落もふしそうになる寸前で縄から手を離した。手綱をひきつつ、もふら様の頭にしがみついて態勢を立て直す。陰陽師隊の一人が衝撃に耐えきれずに落もふした。脱落。ヒメコ、大きくバランスを崩したが手綱をひきつつ体を捌いて立て直す。 連徳、翔、二対一、端と中央、バランスの崩れが深刻になる前に甲冑を着込んだ青年が力負けして転がり落ちた。美形青年、脱落。 翔、縄を捨て連携を取るべく祀の方へと向かう。祀、陰陽師を追っている。陰陽師は逃げながらカマイタチを連射した。血飛沫が吹き上がって巫女さんストップ。脱落。 喪越、鞍上で振り返ってヒメコを狙う。人魂の射程外へ逃れられる前に「藤吉郎」と名付けた猿型の人魂を飛ばした。猿は少女の背中に取りつくと、襟首の隙間からドレスメイルの内部に入り込んだ。色々活動し始めた。少女は一瞬目を見開いた後に、顔を真っ赤にして悲鳴をあげ始める。 灯華、後方から追って来ているニンジローに向けて符を装填しつつ氷柱二連。強烈な冷気の嵐が少年を打った。審判から縄と神風が飛ぶ。ニンジロー、脱落。 智は隊員を追っている。二騎が寄せ、一騎が反転するとそれぞれカマイタチを飛ばした。六連の真空刃が炸裂する。審判から縄と神風が飛んだ。 黒髪少女は視界を遮られながらも、二名の隊員もまた、翔へとそれぞれ反転するとカマイタチを連射した。翔が切り裂かれて、脱落となる。 水津、杖を持ち翔へと寄せた手近な陰陽師の方へと詰める。隊員はすかさず旋回して逃げに入るが、反転している為、加速が悪い。水津は杖に火種を起こしつつ突撃の勢いを乗せて杖を振るった。衝撃に押されて隊員が落もふする。 連徳は翔へと寄せた隊員へと向かうと眼突鴉を二羽飛ばした。攻撃を受けた隊員は腕で守っているが苦痛の声をあげる。 玲瓏は全体を見渡し戦況を把握すると、智へと反転した隊員へと詰める。 「ハハッ! 発! 発! はぁ〜つっ!」 陽もまた智へと反転した隊員に迫り霊魂砲を連射する。霊気の弾丸が隊員の鎧を打ち、接近した玲瓏が砕魂符を放った。式が炸裂する。 ヒメコはパニック中。 一班側、三騎の陰陽師は旋回し駆けながら玲瓏へとカマイタチを連射した。玲瓏、脱落。喪越はそれを追い。陽は追いながら霊魂砲を放っている。 二班側、連徳は目突鴉で継続して攻撃中。隊員が耐えきれずに脱落する。黒髪少女が駆け抜けながら連徳へと迫る。距離を取る、という意識は連徳には無い。カマイタチを連射する。連徳は天儀人形の恨みちゃんで受ける。ぎりぎり凌いだ。水津は少女を追っている。 灯華は反転して中央へと駆ける。大外に出ていた陰陽師隊員も反転して駆けた。 陰陽師の三騎は反転すると喪越へ向かいカマイタチを連射した。喪越脱落。陽は霊魂砲を連射している。 連徳は吸心符で吸収を試みるべく隊員へと向かう。間合いに入る前にカマイタチが飛んできた。連徳脱落。戻って来た灯華がその隊員へと氷柱を三連打した。隊員、ぎりぎり耐える。 ようやく解放されたヒメコが攻撃を思い出す。陽へと横手から詰める。陽は霊魂砲で迎撃する。弾丸を受けながらもヒメコは真空波を飛ばした。陽脱落。 灯華は例によって旋回して距離を取りつつ、追ってきた陰陽師隊員を射程外から吹雪を浴びせて打ち倒す。黒髪少女は追ってくる水津から逃げ回りながらカマイタチを乱射している。水津は加護が切れてかすかに打撃を受けているがまだまだ余裕。 ヒメコと三騎の陰陽師が灯華へと向かう。灯華、旋回して逃げつつ鞍上で振り返り隊員へと吹雪を浴びせる。あと一押し。 四騎は包囲するようにばらけ、灯華に迫った。会場には制限があるので一方向へ逃げ続ける事は出来ない。先に打撃を与えた隊員へと旋回し、突撃しながら吹雪を浴びせる。一騎が倒れた。そちらから包囲を抜け出んとする。ヒメコが追いすがり二連の真空波を放った。 ぎりぎりまで追い込まれた灯華は偽装失格を試みる。まぁ乗騎を駆けさせながら降参すると言っても聞かぬだろうから、それをやるには足を止める必要がある。 「んーさすが隊――」 皆まで言い終える前に真空波が飛んできた。まぁ戦闘中に攻撃の手を緩める者はあまりいない。灯華脱落。 水津は隊員達の攻撃を装甲で弾き飛ばし粘ったが、逃げ撃ちされながらヒメコの真空刃によって削り倒されて脱落した。 以上が試合結果である。 縄作戦などの開拓者達の戦法は参考になったらしく訓練評価は上々であった。 また祀などの助言を受けて隊の在り方が少し変わる可能性が芽生えた事を追記しておく。 |