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■オープニング本文 仁生の片隅に、今人気の女流作家が住んでいるという。 代表作に「いとしのもふら様日記」や「秦国ぶらり放浪記」があり、幅広いジャンルを網羅。女性らしい繊細な描写が、読者に受けている。 読書好きの草崎流騎(iz0180)はシノビという職業柄、その噂をかなり前から知っていた。特に今回は諏訪からの依頼で、彼女の身辺警護をしている。彼は毎日のように、仁生の書斎へと足を運んだ。 女流作家の名は、西萩アカネ。よく喋る方ではないが人当たりはよく、流騎にも気軽に接した。 彼はいい環境で粛々と仕事をこなしたが、いつまで経ってもアカネに危険が迫る気配がない。流騎は「はて」と首を傾げた。 「身辺警護、と聞いておったのだが‥‥」 その疑問は、日を重ねるごとに膨らんでいく。この書斎を訪ねてくるのは、アカネの担当者と友達くらい。周辺に不審者の影すらなく、さすがの流騎も判断に迷った。 ある日のこと。 流騎は仕事を始めるにあたって、本人から率直に護衛の理由を聞いた。依頼人が本音を隠すのは、どこにでもある話。流騎はうまい言い回しで聞き出そうと努力する。 「アカネさん、あなたの身に危険が迫ってからでは遅いのです。どうか本当の理由をお聞かせ願えませんか?」 彼女は観念したのか、少しうつむきながら流騎を書斎に案内した。そして来客が座る椅子に流騎を導き、本当の理由を話し出す。 「実は身辺警護って、3日後に行く日帰り旅行のことだったんだけど‥‥」 どうやらアカネは、流騎が信用に足る人物かをずっと観察していたらしい。この手の文学者が過度に警戒するのは仕方ないことだと、流騎は気にしなかった。 「いやいや、お眼鏡にかなって何よりです。ところで、どちらへご旅行に?」 「ええ、なんでもネギが食べ放題の畑があるらしくって。景色も空気もすごくいいらしいの。そこを見に行こうと思って‥‥」 流騎は固まった。そして不自然な間を置き、片方に釣り上がった唇がかろうじて言葉を発する。 「‥‥ネギ畑、ですか‥‥」 「ええ、素敵なネギ畑。たくさんのお料理も出るって聞いてるの。流騎さんも骨休めできていいと思うわ」 緑と白のコントラストを想像しただけで失神しそうな流騎。彼はもはや、正気ではない。そんな畑に行ったら、間違いなく気絶して任務が果たせなくなる。 そこで彼はアカネにある申し出をした。 「ア、アカネさんほど有名な方が、私の護衛だけでは心許ない! そ、そうだ! 私が開拓者ギルドに掛け合って、信頼のおける方々を募りましょう!」 「私は別に流騎さんだけで構いませんけど‥‥」 「なっ、何を申されます! 私と一緒に歩いていて、よからぬ噂が広まってはいけません! せっかくの旅行ですから賑やかに! ほ、朋友も同行してもらって!」 もはや口から出任せしか言えない流騎だったが、アカネは「朋友」という言葉に反応してくれた。 「あ、私‥‥朋友と一緒にいる開拓者の方をあまり見たことがないので、それは魅力ですね」 流騎は「ここが好機!」と踏んだ。そして相手の興味に付け入り、ついには「朋友と一緒にピクニック」を決めてしまったのである。 「依頼に関する手続きなどは、すべて私にお任せください。楽しい旅になるといいですなぁ、はっはっは」 ふと気を抜くと、ネギの脚のように頭が真っ白になってしまいそうな流騎であった。 3日後のピクニックは澄んだ青空の下、たくさんのネギが植わった畑で行われる。 |
■参加者一覧
日御碕・かがり(ia9519)
18歳・女・志
日御碕・神音(ib0037)
18歳・女・吟
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
針野(ib3728)
21歳・女・弓
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
魚座(ib7012)
22歳・男・魔 |
■リプレイ本文 ●畑に向かう道中で あれから3日後‥‥西萩アカネの日帰り旅行は、開拓者や朋友で大賑わいとなった。 双子の姉妹である日御碕・神音(ib0037)と日御碕・かがり(ia9519)は、道中ずっとアカネと楽しく談笑。かがりの傍に浮くミヅチのくーも、たまに「くーくー」と相槌を打ったりする。 「あら、くーちゃんもそう思うの?」 アカネがそう言えば、くるんと一回転しながらかわいくお返事。それを見ていた神音の朋友・はにの丞も対抗して、ぎこちなく一回転して「は〜に〜♪」とアピールする。 「あらあら〜、はに君はナイスガイではなかったのですか〜?」 「ボクは、ケースバイケースはに〜!」 その細い目は、口ほどに物を言う。はに君の陽気さが、さらに場を盛り上げた。 肝心の草崎流騎(iz0180)は、食材を背中に乗せた駿龍・疾風を引き連れる振りをして、ずっと畑に背を向けていた。 「なぜ私がわざわざネギ畑などに‥‥」 アカネには聞こえないように、決して言ってはならんセリフを口にする。 そんな彼のネギ嫌いを知るエルディン・バウアー(ib0066)とリィムナ・ピサレット(ib5201)は、つかず離れずの距離を保って歩く。もっともエルディンは、のんびりした性格で歩みの遅いもふらのパウロに合わせていた。 「過去の経緯から、ネギ畑を見た流騎殿が暴れてしまうことも予想されます。気をつけないと」 「早くネギ食べたいでふ〜」 同じ場所に行くというのに、こうも発言が変わるものか。リィムナの相棒である迅鷹のサジタリオはクールな表情そのままに、魔杖「ドラコアーテム」の上で首を傾げた。 「うーん、サジ太も反応に困ってるっていうかー」 それを聞いた神父様も目を閉じて「そうでしょうね」と頷く。その時、リィムナはアカネへの自己紹介をしていないのに気づいた。 「あ! アカネさん! 杖に乗ってるのが、あたしの相棒のサジ太!」 自分の身の丈より高い杖をかざし、迅鷹の紹介をするリィムナ。サジ太も片方の翼を開き、それに応じた。 「その杖の上がお気に入りなのかしら?」 「うん! サジ太は竜の装飾の上に止まるのが大好き! 寝る時もこれに止まって寝るんだよー」 アカネは「そうなんですね」と感心していると、パウロは「僕は布団でいいでふ」とそっけない感想を述べる。さすがは怠け者で有名なもふら様、その辺はまったくブレない。この一言で周囲は笑いに包まれた。 朋友の影に隠れる流騎とは対照的に、魚座(ib7012)は炎龍のローズと並んで歩いていた。 名前の印象とは違ってオスなのだが、同行する誰もがその名前を覚える。なぜなら頭に、薔薇の花で作った冠をしているからだ。もちろんこれは魚座のお手製である。普段はお留守番のローズも、今日ばかりはご機嫌だ。 「くーんくーん」 誰が見ても念入りなお手入れが施されており、魚座の愛情が見て取れる。 それを下からじーっと見てるのが、針野(ib3728)の人妖・しづるちゃん。その視線は不思議と羨望の眼差しにも見える。彼女はトコトコと針野の元へ戻った。 「ねーねー、はりちゃん。たまには違う服も‥‥着てみたいな」 「うおっ?! まさかシヅがそんなことを言うなんてさー!」 突然のリクエストに驚きを隠さない針野だが、かがりは「よくお似合いの服ですよ」と率直な感想を口にした。 「かがりちゃんと同じです〜。私もそう思います〜」 「銀色の髪と純白の服が、よく似合ってます。針野殿もお出かけということで、張り切ったのではありませんか?」 神音とエルディンも一緒になって褒めると、しづるは顔を赤くして針野の足元に隠れた。 ●緑と白の衝撃 自己紹介が済んだ頃、いよいよネギ畑へと到着した。自然を満喫できる畑に、澄み渡る青空がよく似合う。 「あんなわたがし、食べたいでふ〜」 「ボクはあんな色になって、もっとスタイリッシュになりたいはに〜」 空に浮かぶ雲を見ながら、パウロとはに君が呑気にトーク。食材の準備をする流騎は、笑いを堪えながら作業にいそしむ。 「ふふっ‥‥これでよし。魚は青い箱で、肉は赤い箱。ここにない野菜は緑の箱で、その他はこっちの籠にあるから」 しっかりと準備したにも関わらず、流騎の視線はあさっての方向を見ている。神音は「何かあるのかしら〜」と同じ方を見るが、さっぱり原因がわからず小首を傾げた。 そこでエルディンは耳打ちをし、流騎がネギ嫌いであることをそっと教える。すると神音は、小声で「それは残念です〜、人生大損しています〜」と答えた。神父は思わず「流騎殿ひとりになったら、もう一度それを囁いてください」とお願いする。 「足りない食材は畑から取っていいそうだから、後はみんなに任せるよ」 そそくさとその場を離れようとする流騎に駆け寄り、神音がさっきの言葉を復唱。それを聞いたネギ兄こと流騎は、直立不動になって動かなくなる。その姿はまるでまっすぐに生えるネギのよう‥‥きっと彼は今、男としてのプライドが音を立てて崩れたのだ。 「流騎さーん、サジ太の食べるお肉は‥‥あれ、どーしたの?」 リィムナの問いかけにも応じられない流騎を見たエルディンは、胸の前で静かに十字を切った。 ピクニックを盛り上げる料理作りが、いよいよ始まる。 針野はリィムナに頼んで、冷水をリクエスト。少女は桶に張った水にフローズをかけ、氷水を作り出した。 「リィムナちゃん、ナイスなんよー!」 そこに陰殻西瓜を入れ、あとは冷たいデザートになるまで待つだけ。 きゅうりとナスは近くの畑にあるので、すぐに使う分はリィムナがサジ太と同化して必要な分だけ取りに行く。さっそく空に舞った少女は、眼下を見渡してきゅうり畑へ急行。 「お! あれに見えるはきゅうり畑! 行け、サジ太! 急降下収穫だぁ!」 その様子を地上から見た針野としづるは、ざるを持ってその場所へと向かう。 これを見ていた魚座があることを閃いた。これだけの大自然をローズと満喫するチャンスはなかなかない。情熱的な青年は炎龍の背中に乗り、青空へと繰り出した。 「ローズ、広ーい空だね! とっても気持ちいいね!」 魚座は鞍の上で思いっきり両手を広げ、存分に空を仰ぐ。そしてローズの背中を抱きしめてキスすると、空で「くるーんくるーん」と楽しそうな声を響かせた。 それを見ていたアカネとかがりが「空を舞うのも気持ちよさそうですね」と微笑む。すると急に、はにの丞がアカネを抱きかかえ、ご陽気にその辺を歩き回るではないか。 「ボクに空は無理だけど、この辺ならできるはに〜!」 いきなりの展開に神音もビックリして止めようとするが、当の本人は笑っており、はにの丞のもてなしが気に入っている様子だった。 「はにの丞さんもがんばってることですし‥‥ね」 妹のかがりに言われ、神音も「そうですわね〜」と容認。はに君の活躍をしばし見守った。 エルディンはお食事を待つパウロの目の前で調理を開始する。 新鮮なネギを細かく刻んで水にさらし、リィムナが取ってきたニラを混ぜる。ネギ畑から目を背けたい流騎が火を管理しているので、そこで餃子を焼きに行く。 しかしネギには敏感な流騎は、餃子の色を見て警戒色を高めた。 「むっ! ネギの殺気!」 「ニラです!」 「しかしその色合いは、間違いなく‥‥」 「ニラなんです!」 意味もなく鋭い流騎は徐々に混乱の色を濃くしていく。 エルディンはすかさずアイヴィーバインドで絡め取り、無駄に暴れないよう、その辺に放り出した。 「うわっ! な、何をする!」 「火もありますし、流騎殿はそこで料理を観察していてくださいね」 神父様は無駄にキラキラしながら、軽やかに調理を始める。これ以上の反抗は天罰ものだと悟った流騎は、静かに目を瞑ってネギ畑だけは見ないようにがんばった。 ●ネギのある食卓 畑から戻った針野は、ばあちゃんから教わったという「素材の味を最大限に生かす」料理を披露する。 きゅうりは薄く輪切りにして酢で和えて、ナスは焼いてすりおろした生姜としょうゆでいただく。シンプルだが味わい深い2品が出来上がった。 「さてと、流騎さんも荒縄で縛ったし‥‥ってアレ? シヅが戻ってないんだけど‥‥」 針野がそう言いながら周囲を見渡すと、ローズの背の上で腕いっぱいにきゅうりを抱えたしづるが、素材のままパリパリとお召し上がりになっていた。 「うおっ! ちょ、シヅ!?」 「さっきから熱心にきゅうりかじってるよ。もう3本目かな?」 魚座の説明を聞くと、針野は慌ててローズからシヅを下ろす。 「だってはりちゃん、野菜はお天道さまの贈り物だもの。残さずいただきますしないとなんだよー」 「だからって、シヅは河童じゃないんよ! あーあー、服も泥だらけにしちゃって‥‥」 服についた汚れを手で払う彼女の顔は柔らかな表情に包まれている。包丁を手にして料理を手伝っていたアカネはしばし手を止め、遠くからその様子を伺っていた。 「朋友との絆、ですね」 ふと隣に目をやれば、隣は姉妹の絆がある。アカネの心にも何かが残ったようだ。かがりも微笑みながら、姉に声をかける。 「アカネさんの次の作品は、どのようなものになるんでしょうか」 「きっと心温まるお話になると思いますよ〜」 神音も穏やかな表情のまま、二八の蕎麦を打つ。水を回して、こねて、寝かせて‥‥手際よく調理を進めながら、力のいる場面ではかがりに手伝ってもらう。 この時期だと大根がないので、普通のつゆを用意。そして生姜などの薬味を準備し、いよいよ蕎麦が完成する。 「ちょっと不揃いですけど、ご容赦くださいね〜。お箸も少し不揃いですけど〜」 ここで使う箸とは、なんと水洗いしただけのネギそのもの。それを見た流騎は、すでに意識を失っていた。 はに君が木の枝でつつくも、まったく反応なし。パウロも「天に召されたでふ〜」と言う始末。 「かがりちゃん、味噌煮はうまくいってる〜?」 妹のかがりは、鯖の煮込みに挑戦していた。くーは調理の前に、小さな魚を一匹もらって上機嫌。ちょっとずつ上品に食べながら、かがりの作る料理を見ていた。 リィムナも収穫してきたネギを使った根深汁を作る。鰹節でしっかりとダシをとり、鶏の皮を少し入れてアクセントをつけた。 「まだまだ作るよー!」 今度はサジ太の好物である焼き鳥作り。ネギと鶏肉を串に刺して炭火で焼く。立てかけられた魔杖の上にいたサジ太も喉を鳴らして完成を待った。 さらに茹でたオクラと納豆、そしてネギで和え物を作ると、食卓はたくさんの料理で埋め尽くされる。 「さ! お料理は皆で食べよう! 朋友たちもね!」 唯一食事できないはに君だが、神音に首からナプキンをつけてもらったこともあってか、気取った風にして食卓に並んだ。 ここで問題なのは、流騎である。こうも露骨にネギが嫌いだとは知らず、針野も魚座も頭を抱えた。 「流騎さんのネギ嫌いは、ホント筋金入りですね‥‥」 そこに現れたのは、神々しさを纏ったエルディン。ふたりに「ここはお任せください」と言い、流騎の前に立った。 「流刃の騎馬と呼ばれるシノビのプロが、依頼人の前で醜態を晒すことはしませんよね?」 あまりにも痛いところを突かれ、流騎は地面に目をやって「ぐぬぬ」と悔しがる。 「シノビとしても、ネギを見ただけでうろたえるなんて、仕事にも支障があるでしょう。さぁ、皆の待つ食卓へ参りましょう」 じっくりと諭された上で拘束を解かれた流騎だが、「辛抱できるかわからん」と弱気な態度を見せた。 ●いざ、実食! 今回の依頼人にして主賓であるアカネは、食べ物に好き嫌いはないという。 パウロは「僕と一緒でふ〜」と言うと、彼女も「そうですね」と微笑んだ。よく喋らないという説明だったが、この旅行中はよく喋り、そしてよく笑っている。 一方の流騎は、顔が引きつっていた。ネギの浮かぶ味噌汁ならまだしも、ネギの箸で食う蕎麦を目の当たりにして失神寸前。しかし隣にはエルディンが控えており、粗相は絶対に許さない雰囲気に包まれている。まさに生き地獄だ。 そこで魚座が、究極の助け舟を出す。薔薇の花を鼻に押し付け、せめて匂いをごまかしたらどうかと勧めたのだ。 「そこまでダメなら、これも手段のひとつだと思うよ」 「おおっ! そ、そうか!」 ところが流騎は何を聞いていたのか、薔薇の花びらをちぎり、それをシノビのテクですばやく鼻の穴に詰め込んだ。鶏肉を食べていたローズも、ポカーンとした表情を浮かべる。 「これにゃら、だいたい食えるとおみょうぞ」 完全な鼻声のまま、さっそく根深汁を頬張る流騎。しばらくは口の中でモゴモゴしていたが、すぐにゴックン。すんなりと食べることができた。 「む、むひろ薔薇のにひょいで酔いそう‥‥」 少しは我慢できることがわかり、流騎は薔薇を取ってネギ蕎麦にチャレンジ。これも蕎麦として味わうよう心がけたおかげで、なんとか克服できた。 流騎がネギを食べられるようになれば、もはや問題ない。おいしい食事のおかげで会話は弾み、朋友たちも腹いっぱいになるまで食べた。 食事の後始末は、恐怖を克服した流騎が行うと名乗り出た。 神音はお腹いっぱい、幸せいっぱいの表情を浮かべている。かがりもくーちゃんと小さな用水路の近くで、しばしくつろぎの時間を過ごす。 はに君はナイスガイというキャラだけでなく、スイートボイスも出せるようにしようと、魚座とローズの元で情熱的な表現の勉強をしていた。すべては神音のためなのだろう。かなりの努力家だ。 エルディンはパウロをもふもふしていると、近くにアカネがやってきた。パウロが「僕ね〜、アカネのことが好きでふ」とご主人様に話すではないか。アカネは「私も好きですよ」と言うと、神父様は「今度、私の教会に遊びに来てください」と誘った。 するとパウロは、唐突に「じゃあ、流騎のことは好き〜?」と聞く。そんなことを聞かれるとは思ってなかったアカネは驚き、「そ、そんなこと聞くものじゃありません!」と慌てて止めた。 「でも、信頼はなさっておいででしょう?」 エルディンがそう言うと、アカネは「そういう意味です」と勢いよく返事する。そこへおマセさんのリィムナと、素直な針野がやってきた。 「出会いなんてそんなもんだと思うよ! サジ太ともそんなんだったし!」 「そうそう。また何かあったら、流騎さんに頼めばいいじゃないさー」 何かと意味深なセリフを聞いて戸惑いながらも、アカネは「今日のピクニックは最高の思い出になりますね」と答えた。 晴れやかな空に夕日が浮かぶのは、まだ早い。楽しい時間はしばらく続きそうだ。 |