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■オープニング本文 ●お知恵拝借 「夏の催しを考えて欲しいさね?」 突如迷い込んだ新海への依頼――。 褐色の肌の人々が彼の部屋を訪れたのはついさっきのことである。 「そうサー。うちらは海岸沿いで海の家を経営してるモンらなんやけども、最近客足が遠のいていてなー。ここは一つあんたさんのお知恵を借りたいと思うて」 「なんで俺なのさね? 俺はただの開拓者でそういう企画は…」 そう言い掛けた新海だったが、その言葉は途中で遮られてしまう。 「あんたじゃなきゃ駄目なんサー。鍋の蓋の開拓者…なんたってこの企画には鍋蓋が絡まなきゃいけないサから」 「鍋蓋が?」 どういう事だろう。自然と新海の首が傾く。 「それはわしらの村と『こらぼ』企画だからだべぇ」 「あ、あんたは?!」 そんな彼に新たな来訪者――そう言い切ったのは以前会った事のある伝説の鍋蓋村の住人だった。 「成程、そういうことさね…」 人数分の茶を配り話を聞けば、どうやらこの海の家連合と鍋蓋村とは場所は離れているが、友好関係にあるらしい。そして、どちらも観光客が減っているとあって手を取り合う事を考えたようだ。 「伝説とは言っても物好きがやってくるくらいだでぇ〜、もうちっとお客が欲しい所でよぉ」 鍋蓋村の男が訛りのきいた口調で言う。彼の話ではこの企画に合わせて村のPRも行えば、興味を示して客が来ると踏んでいるらしい。 「こっちも暑過ぎてなかなか苦戦しとるサー。砂浜自体が焼けるように暑くっちゃ海に入るまでに気力も失せてしまうサから」 とこれは海の家連合だ。集まった面子の顔には一様に意気消沈の色が張り付いている。 「こうなったら仕方ないさね…乗りかかった船さぁ! 早速何か考えてみるさね」 そんな彼らをほってける筈もなく、新海は立ち上がるのだった。 ●企画採用 そして――、 「おおっ!! これは面白そうサー」 「成功間違いないでぇ〜」 数日後に企画を携え訪れた新海の案を目にした者達からは歓声が上がる。 「そうさね? うまくいくといいさけども…」 そういう新海だったが、 「大丈夫サー! 見世物としても十分楽しめるこれはいい案サー」 と海の家連合の者達は手応えを確信しているようで早速模擬の準備に入る。 ちなみに新海が提案した企画――それは鍋蓋投擲スピードレースといった内容のものだった。 ルールは至って簡単。鍋蓋を投げてそれを追いかけ、拾った場所からまた投擲を繰り返しつつゴールを目指すというものである。 だが、その投擲場所は海という所がこの企画の面白いところ。ただ遠くに投げればいいというものではない。潮の流れがある海であるから余り遠くに投げ過ぎると、蓋のある場所に辿り着くまでに流されてしまい厄介な事この上ない。しかし、逆に小まめに投げ続ければいいかといえばそうでもなく…その分だけスピードを出せなくなってしまう。 どちらをとるか、それが勝利への鍵になりそうだ。 「でこのレースのタイトルはどうするんでぇ?」 そういう男に新海は白い歯を見せて、 「それなら考えてあるさね。名付けて『相棒は鍋の蓋 私をゴールまで連れてって…勿論だともよーレース』ってのはどうさぁ?」 かなり長いしなんだそりゃなネーミング……だが、 「それでいくサー」 と海の家連合の答えはGOサイン。 このヘンテコな名がまた気を惹き付けるのではないかと考えたようで、俄然新海も乗り気となる。 「俺は審査員をすればいいさぁ?」 折角なら最後まで関わりたいと参加の意思を見せる。すると、 「いえ、出て下せぇ…その方が盛り上がりそうだぁ」 笑顔で返された返事に新海も快く承諾するのだった。 |
■参加者一覧
ガルフ・ガルグウォード(ia5417)
20歳・男・シ
和奏(ia8807)
17歳・男・志
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
奈々生(ib9660)
13歳・女・サ
戸隠 菫(ib9794)
19歳・女・武 |
■リプレイ本文 ●参加者 「はいー、ウナギ入り冷やし中華おまちっ」 海の家『海馬』では白い耳を揺らして可愛い少女が働いている。 彼女の名前は奈々生(ib9660)と言った。開拓者である彼女であるが、なんとなく夏を感じたくてここのバイトに応募したのだ。そしてその容姿をかわれて見事採用。ただで夏をエンジョイが決まったのだが、現実はそう甘くない。お客が少ないとはいえ彼女は終日彼らの対応に追われるものの、充実感は半端ない。 「インドアな私だけど、きてよかったー」 キラキラ輝く海面を見つめ、砂浜には鍋蓋を投げる男達。 「……なんだろ、あれ?」 普通の海ではありえない光景。目を擦ってみてもやはりそこには鍋蓋を投げる男達が存在する。 「店長、あれは?」 「ああ、あれは明日行なわれる鍋蓋投擲レースってやつに出る奴らじゃないかな?」 「鍋蓋投擲?!」 なんだかよく判らないが何かの催しらしい。 「店長、私もあれに」 「出たいのかい? いいよ、行ってきな」 瞳が輝いたのを見せられては止めようがない。それに彼女は真面目に働いてくれているのだから、多少の希望は組んでやりたいと彼は思う。 「やったーありがとう」 彼女はエプロンを剥ぎ取り飛び出した。 下に着込んでいたのは白いフリルのビキニ――バストは発展途上だがこの浜辺では十分視線を惹き付けるだろう。 一方明日に備えて参加者達は入念な準備に入る。 「師匠、手加減なしで頼みますよ?」 白のパーカーに黒のサーフパンツで眩しい位の笑顔で新海に声をかけたのは、ガルフ・ガルグウォード(ia5417)だ。ぴかぴかに磨かれたのは以前仕事で貰った鍋の蓋。ガルフにとっては大事な物らしく取っ手には名前の千社札が貼られている。 「もちろんさねっ! 正々堂々勝負するさぁ」 新海も主催者側としてこの催しを盛り上げるべくやる気は十分。手にはこの為にわざわざ名前を掘り込んだ鍋蓋が握られている。そして、二人は早速練習とばかりにそれを投擲し、真夏の海へと飛び込んでいく。 「あぁ、成程。つまりはこのレース…鍋蓋を投げて追いかければいいのですね」 それを見て和奏(ia8807)はようやくこのレースのルールを大まかに理解した。 なんとなくやってきた海。そこであの新海がプロデュースした夏祭りがあると聞き、流れに任せて参加手続きを行なったのだが、実際は何をどうするのか全く判らなかったのだ。 「コースはどうなるのでしょうか?」 前日であるからまだ位置取りが出来ていないようで広がるのは海ばかり。これでは迷子になりかねない。 「とりあえず自分も試して見ますか」 水着に着替えてまずと一投――器用な性格ゆえ難なく遥か先まで鍋蓋は飛んでいく。 「ふむ、簡単ですね」 彼はポツリと呟いて着水した鍋蓋を見つめる。 「わー、すごいね! あたしも負けてられないわ」 そんな彼の横にもう一人の参加者が姿を現した。名前は戸隠董(ib9794)――コバルトブルーの水着に腰のリボンがチャームポイント。細身の身体であるが、どこか健康的な印象を与える。 「あなたも出るんですか?」 「勿論。さっきギルドでこれ引いたの。だから強引かもしれないけど、これも縁よね?」 ぱちりとウインクして彼女の手には新品の鍋の蓋。相変わらずギルドはこれを籤の中にひそませている様だ。 「そうですか。ではお互い頑張りましょう」 流されていく鍋蓋を余所に彼は彼女と握手するのだった。 ●とんでけー そしてレース当日、女二名男三名の計五名でこの正式名称『相棒は鍋の蓋 私をゴールまで連れてって…勿論だともよーレース』が開催される事となる。参加者は思うほど集まらなかったが、それでも思惑通り物珍しさからか観客はそれなりに集まり、海の家の売り上げは上々のようだ。 「そういや今回は宣伝も兼ねてるんだよな? だったらこういうのはどうだろう?」 以前鍋蓋村での仕事を請け負った事のあるガルフ――新しい鍋蓋菓子の提案を持ちかけて、どうやら早速売り出し中のようだ。臨時で作られた簡易テントの方が賑わっている。 「さぁ、やるなら全力でチャレンジあるのみよー!!」 「俺も本気で行くぜ!」 董とガルフは共に気合十分、残りの面子も準備運動を始めている。 「あそこにいるのはうちのバイトだ! だから応援してやってくれよ!」 そんな中、奈々生の応援に店長も少しだけ抜け出してくれたらしい。店の宣伝も兼ねて…ということもあるだろうが、それでもやはり嬉しいものがある。 (「泳ぐのは得意じゃないけど、運の神様、お願い!」) 軽く店長に手を振って見せて、心中ではそう神に願う。 「それでは位置について…よーい、どん!」 そうして火薬の音と共に一同はそれぞれ鍋蓋を投擲――飛び出したのは新海と董だった。 ほぼ同位置に鍋蓋が着水する。 『おわぁぁ!!』 だが、注目の的となったのはそちらではない。 大きく振り被って投げ放とうとした瞬間ずるりと砂に足を捕られ、何処かの氷上の妖精のようにふんぞり返った和奏がいたからだ。どっと観客から笑いが起こる。 「おい、大丈夫か!」 近投を心掛けていこうと考えていたガルフがそれに気付いて彼の元に駆け寄る。 すると和奏は小さく答えて、上体を起し大事無いようだ。 「和奏がこういうの…珍しいな」 ガルフはにかりと笑って無事を確認すると、自分の鍋蓋の下へと戻る。 「どうしたんでしょう、何か嫌な予感がします」 普段は感じた事のない胸騒ぎ――だが和奏はそれの重要性を知りえない。 「まあ、考えても仕方ありませんしね…」 彼はあっさりとそう言って、内の警告をスルーするのだった。 さて、レースは序盤戦。作戦を有効に使ってダントツ飛び出したのは意外にも奈々生だったりする。 「いけるかも…私いけちゃうかも」 死に物狂いで鍋蓋を遠くに投げ置いて、それを必死に目指す作戦。泳ぎが得意でないと言っていたが、それでも流される前に到着できているのは立派だ。カモメが彼女の上を羽ばたいている。 「すごーい」 そんな陸では味わえない光景に感動さえ覚える。しかし、それもつかの間だった。 「わわっ」 突如カモメが彼女の元に飛来したのだ。攻撃されたのかと思い、思わず目を閉じる。 「大丈夫ですか?」 そこへなんと和奏猛スピードで追い上げたのかあっさり横を通過し、己の鍋蓋に手を伸ばす――が、 ばしゃんっ 延ばした先にあった筈の鍋蓋は何処へやら。一瞬目を疑う…その行方は、 「上よ!」 と今度は董だ。彼女が指差した先にはさっきのカモメ…二人の鍋蓋を咥えて別の方角に向かっていく。 「そっそんな〜」 魚と間違えて咥えたというのは考えにくいが、奪われたのは事実である。返してもらうべく、それを追う。 「ふふふ〜、お先にー」 そんな二人を尻目に董は余裕を見せる。ガルフと新海は鍋蓋が流されるのを恐れて近場に蓋を投げているようで、彼女には遠く及ばない。主催者側の仕掛けた網なのだろうが、それも難なく交わして早々と折り返し地点を目指す。 けれど、彼女の順調もずっとは続かなかった。 「な、なによこれ!!」 投げた先が悪かったようで彼女の鍋蓋のある場所に浮かぶのはクラゲの集団――数もさることながら、大きさも彼女位あり一匹が脅威となる。 「痛ッ!」 長い触手に触れて、びりりと痺れる身体。毒はないようだが、それでも痛みは体力を奪っていく。 「まだいける! 折り返しだけは通過するんだから!!」 遠投班の攻防――それは体力との戦いだった。 鍋蓋が流される前にいかに追いつくか? 奈々生も和奏も距離を一気に稼いでいるが、遥か先の状況は把握できず網にかかったりクラゲ地帯に鍋蓋が落ちてしまい、取りに行くのに四苦八苦している。 だが、それとは逆に近投を実行していた二人はまだ沿岸にいた。 「なんだか前が騒がしいさね〜」 レースであるはずなのだが、思いの他のんびりとした歩みで新海が進む。 「なんで俺が最後なんだー!」 あれだけ練習したというのにガルフはどうもうまく鍋蓋を投げれていないらしい。 水中で立ち泳ぎをしながら、物を投げるというのは案外難しいものだ。次第に距離が開いていく背中を見つめていると切なさが込み上げてくる。 「くそー、反撃のとりゃあああ!!」 そこで持ち方を変えて縦投げから横投げに変えてみれば風の抵抗が減ったのかぐんぐん距離が伸びるが、挽回は無理だった。しかし、それでもぐっと新海の背中へは近付く。 「この投げ方、いけ…ってあいた!」 だが、油断大敵。そこにはくらげが待ち受けていたのだった。 ●根気と体力 ガルフがクラゲに足を捕られた頃――折り返し地点を曲がり、勢いづいていたのは董だ。 「お先に失礼♪」 通りすがりのイルカの登場に力を借りて、遠く先の鍋蓋へも何のそのあっという間に到達する。 それとは反対に出会いたくない相手にあったのはまたしても和奏だ。背びれだけを海面に出して、イルカとは正反対の海のハンター…そう相手は鮫である。 「参りましたね…」 鍋蓋を手に接近する鮫に身構える。参加者が開拓者だけとあって、救助用の船は用意されず、漁船が彼らを見守る。 こちらには気付いて居る様だが、彼の元へはまだ時間が掛りそうだ。 徐々に接近する鮫と対峙する彼…クールな彼であるから表情一つ変えないが、内心ははらはらである。 そんな折、鮫が動いた。和奏のしなやかな足を狙って強靭な尾鰭で水を掻きぐっと距離を縮める。 (「仕方ありません!」) 彼はそう思い、手にした鍋蓋を突き出した。すると、それは見事鮫の口にはまり逆に鮫がもがき始める。 「あんたすげーな!」 やっと到着した漁師が彼に言う。残念ながら長くはもたず、鍋蓋は噛み砕かれたようだが、それまでもたせたのはさすが開拓者と言う所だろう。相棒がなくなってしまってはレースは続けられない。彼はここでリタイアとなってしまうが、彼自身は大して気にしていないようだ。 「冷たいものが食べたいです」 漁船の上で彼はぽつりと呟いた。 鮫ゾーンを難なく抜けて、早々に岸を目視した女同士の一騎打ちが始まる。 運よくトラップは回避し地道に進む奈々生と強引にでも距離を稼いで進む董の二人である。 「負けないんだからー」 ばさりと一掻きし、奈々生は鍋蓋の元に辿り着く。だが、 「それはダミーよ」 先行く董の指摘に手を確認すれば、それは確かに鍋蓋であるのだが彼女の相棒ではない。どうやらこの地帯には、主催者側のダミー鍋蓋も浮いているらしい。ハズレとでかでかと書かれて、参加者の心を刺激する。 「うぬぬぬ〜」 それに気付いてぽいっと投げ捨て、本当の鍋蓋を探す。 「これであたしの勝ちは濃厚ね」 だが、彼女に再び試練の時――折り返した後の戻りのコース。それはスタートした場所に戻るのではなく、堤防に挟まれた岸へ戻るという事になっている。その堤防の存在が参加者にとっては大問題なのだ。 「あれ、流されてる…」 前へ進もうと必死で水を掻く彼女。しかし、思うようには進まない。それどころが押し戻されて居る様な感覚に陥る。 「どういうことなの?」 苦しいのを我慢して、一旦立ち泳ぎに切り替え辺りの様子を観察する。すると見えた来たのは潮の流れだ。 寄せては返す潮が堤防に挟まれて特殊な流れを作り出しており、それは丁度彼女達を阻むような位置に発生し、二人を寄せ付けないようになっている。 「離岸流ですか」 最後の難関は自然のトラップ――主催者側はしてやったりだ。 後少しとあって砂浜からは声援が飛びそれに答えようとする彼女達であるが、なかなか前に進まない。そしてあえなく、 「む…無念よ」 「あうぅ〜、もう無理ですぅ〜」 遠投作戦を実行した二人は自分達が思っている以上に体力を消費していたらしい。岸が見えていたにも関わらず、体力不足で漁船に拾われる事となる。 「よく頑張ったよ、奈々生!」 残念がる彼女に店長の言葉…それで少し元気が回復する。 二人が落ちたのを見て俄然やる気を出したのは新海だった。 運にも味方され、彼もイルカの手助けを受け再びガルフを引き離す。一方のガルフは鯨と遭遇し、潮吹きに巻き込まれたおかげで多少前進したようだが、それでも師匠と仰ぐ新海の背中は遠い。けれど、勝負の神は彼を見放さなかった。 離岸流手前のダミーゾーンでまずはジョブ。 「これも、これも、これも違うさね〜〜」 海にはダミー鍋蓋の他にも特産品鍋蓋煎餅も投げ入れられている。触った瞬間、ふやけて消えていくそれに新海は涙目だ。 「よし、いける!」 そこでなんとか追いついて、最後の難関を前にする彼。ぐっと鍋蓋を握り締める。 「俺とこの鍋蓋の力、ここで証明してやるぜ!!」 最後までこの鍋蓋と共に…彼は近投を繰り返す。 「俺だって負ける訳にはいかないさね!」 そこへへろへろになりながらも追い縋ってくる新海。だが、投げた先が悪かった。流れの渦に呑まれて、投げた場所についた時にはすでにまた後方へと鍋蓋が移動し、無限ループのような状態にはまり始める。 「師匠、さらばです!」 ガルフも何度か捕まったが、彼ほどではなかった。一旦離岸流から離れて、気を静めてからの渾身の一投は岸に突き刺さる。ならば後は泳ぐのみ――全力の平泳ぎが彼に栄光をもたらす。 「勝者、ガルフー!!」 盛大な拍手の中、彼は勝利を噛み締める。新海もゴールは果たしたもののが、その時間の差は大きい。 「負けたさぁ〜」 勝者には酒が送られ、その後はお疲れ様宴会へと雪崩れ込む。 「どうよ、これ! あたしが作ったんだからね」 董と主催者側の計らいで行われる事になった食事会は観客も交えて盛大なものだ。 もうすっかり元気を取り戻したらしい董が金魚の浴衣に衣装を変えて、自慢の腕を奮う。 彼女、こう見えても料理の腕は一級品。武僧としての下積み時代に磨かれたものらしい。焼きそばやお好み焼きは勿論、シンプルな冷やし西瓜も忘れない。 「すごくおいしいし、いい思い出ができました♪」 満足げにぴこぴこ耳が動かし奈々生が言う。 「カキ氷、おいしいです」 とこれは和奏だ。黙々と頂いている。 「あぁ? もっとがつんと来るものを食った方がいいさねー! でないと力つかないさぁ」 そんな彼に新海はスタミナ料理を勧めて…どうやら彼の鮫との武勇伝はまだ聞いていないらしい。 「これはスポーツとして成立するかもしれない!」 そんな中海の家連合は今日確信していた。明日から大々的にこの競技を布教し、これをメインに客寄せを本格的に考え始める。そして、鍋蓋村も、 「改良は必要そうやけど頑張ってみるけぇ」 と今日の売り上げからガルフ発案の鍋煎みたらし餡の寒天のせの商品開発に手ごたえを感じて意気込みを見せている。 鍋蓋村と海の家連合の活性化…それがうまく行くかは別として、今日においては大成功を収めたのは間違いなかった。 |