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■オープニング本文 北面の北部に位置する小さな村。 ちょうど都や東房に向かう街道の関所の役割も兼ねたその村では、何かと問題の種が持ち込まれることが多い。それ故に村を自衛するために国から一部の志士が派遣され、そこに私設兵団が加わって村の警護にあたっていた。 村の北側にある兵士たちの詰め所―――と言っても簡素なつくりの小屋のようなものだが―――の中で、一人の男性が古びた机の前で手にした資料とにらめっこをしていた。 北面の志士、火鏡団十郎。 この小さな村に派遣され、護衛兵を纏める立場にある齢五十を超える老兵である。 彼が今目を通しているのは最近の北面や都の情報と、村で起きた失踪事件の情報。 前者は人手が足りないので救援を出せる村や町は出して欲しいという要請の物。 後者は先日から姿を消した一人の兵士の情報。 どちらも彼にとっては頭の痛い話ではある。 そんな団十郎の耳に、頭痛を増すような慌しい足音が飛び込んでくる。 「隊長ー、隊長ー!」 声と同時に若い男が団十郎のいる部屋に駆け込んでくる。 「騒がしいぞ宗馬。何事だ」 言いながら眉を顰める団十郎。入ってきた青年―――宗馬はお構いなしに団十郎のいる机の前に来ると、だん、と両手を叩きつける。 「大変です隊長! 村の北にアヤカシの群れが!」 来たか、と呟いた団十郎は手元の資料から宗馬へと視線を移す。 「北か‥‥そりゃもう北面の領土じゃねぇな」 「えぇ、既に都の直轄地なんですが‥‥」 ふむ、と右手で顎を摩る団十郎。 本来であれば都の直轄部分は都の軍が処理する領域。国を越えた場所にある揉め事に首を突っ込むというのは基本ご法度である。北面と遭都の間柄といえど、多少の問題になる可能性がある。だが、ここ最近各地でアヤカシの不穏な動きが次々と報告されており、各地の軍は手一杯。団十郎が見ていた資料にも人手を求める旨が書かれている程である。都とて例外ではないだろう。 「数はどれ程だ?」 「はい。現在見張りが確認した限りですと大鬼が一匹と小鬼が五匹、後火の玉のような物がいくつか確認されております。どうやら方々から集まっているようです」 「多いな‥‥」 苦い表情を浮かべる団十郎。 この村の兵士は全部で二十人。そのうち志体を持つ兵は自分と宗馬と後一人、僅か三人。 だがその一人は先日から行方不明のため、実質二人しかいない。 とてもじゃないがまともに戦って勝てる相手ではない。 「現状動く様子はなさそうですが‥‥どうしますか」 指示を求める宗馬の瞳は既に戦闘を覚悟しているようだ。 しばしの沈黙の後、団十郎は深い息を一つ吐いた。 「こんな辺境に来てくれるかどうかはわからんが‥‥開拓者に頼むしかないだろうな。彼らなら国境は関係ないはずだ」 そう言うと団十郎は紙を一枚取り出して筆を走らせると、それを宗馬へと差し出した。 「これをギルドに。だが期待はするなよ? 今はどこも人手不足だ。集まらなければ仕方ない。どちらにせよ依頼を出したらすぐに帰って来い」 言いながら団十郎はゆっくりと席を立つと、壁に立てかけてあった一本の刀に手を伸ばす。 「‥‥最悪、護るだけはせねばなるまいな」 後日、開拓者ギルドに一枚の依頼書が張り出される。 『北面最北の村付近にてアヤカシ集結の不穏な動き有り。 調査をお願いされたし』 |
■参加者一覧
川那辺 由愛(ia0068)
24歳・女・陰
当摩 彰人(ia0214)
19歳・男・サ
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
雲母坂 優羽華(ia0792)
19歳・女・巫
御剣・蓮(ia0928)
24歳・女・巫
王禄丸(ia1236)
34歳・男・シ
嵩山 薫(ia1747)
33歳・女・泰
煉(ia1931)
14歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●不穏。 今回問題となった北面最北の村に辿り着いた八人の開拓者たちは、まず依頼を投げかけてきた私設兵団の詰め所へと足を運んだ。更に一行は現状を確かめるべく、兵団の団長である火鏡団十郎から村の様子とアヤカシの姿を確認した状況を話してもらった。 「―――以上が内容だ。わかっていただけたかね」 「うむ、把握した。把握した上で尋ねたいことがあるのだが」 団十郎の言葉に頷いたのは開拓者の中でも一際巨体の王禄丸(ia1236)。今回の話を聞いたときからずっと気になっていたことがある。そしてそれは他の仲間も感じていたようだ。 「例の行方不明の兵士さん、ですね」 代わりに言葉を発した御剣・蓮(ia0928)に王禄丸は静かに頷く。 「アヤツのことか‥‥アヤツが何か関係しているのか?」 「この状況だから、気にはなるのよね‥‥」 苦い表情を浮かべる川那辺 由愛(ia0068)はカリッと爪を噛む。どうやら考えるときの癖のようだが、由愛が考え込むのも無理はない。今回は情報が余りにも少なすぎる。 「どないな情報でも気になるコトは早めに潰しとかなあきまへんよってなぁ」 「そうだね〜☆ まぁ俺が役に立てることなんて女の子と話すぐらいしかないけどね〜♪」 独特な訛りと何とも緊張感のない声で話す雲母坂 優羽華(ia0792)に、これまた緊張感のない当摩 彰人(ia0214)。開拓者という存在は基本自由奔放だと聞いたことがあるが、その通りだなと団十郎は思わず苦笑を零す。 「まぁよかろう。宗馬!」 声から少しして、一人の青年が部屋へと入ってくる。どうやらまだ新兵なのだろう、どこか動きがぎこちない。 「宗馬、儀平の似顔絵を出してやれ。探してくれるそうだ」 青年――宗馬はコクリと頷くと手近な棚から一枚の紙を取り出した。一行が覗き込むとそこには一人の絵姿が描かれている。 「こやつの名は儀平。この村じゃ数少ない志体持ちだったんだが、数日前から行方がわからん。こちらでも探してはみたが見つかったという報告は聞いておらん」 「‥‥万が一の時は、覚悟しておいてくだされ」 いつになく神妙な顔で北条氏祗(ia0573)が団十郎の顔を見る。 しばし目を合わせたまま固まる氏祗と団十郎。 と、そこで団十郎が若干苦い表情を浮かべると、一言。 「判断はそちらに任せる」 団十郎自身どこか疑心を抱くことがあるのかもしれない。尤も彼の口からそれが出ることはないだろうが。 一通りの説明を受け詰め所を後にした一行は村の北にある関所へと向かう。 本来受けている内容は村の北に集結するアヤカシの調査及び撃退。だがどうにも嫌な予感がする一行は班に分かれて行動することにしたのだ。 「じゃ、打ち合わせ通りあたしたちはアヤカシの動きを監視するわね」 そう言って由愛は手をひらひらと振る。一人では危険だということで嵩山 薫(ia1747)がその護衛として同行。 「殴るしか取り柄の無い身の上ですものね。情報収集はお任せして、今回は護衛に専念させていただくわ」 「頼りにしてるわよ?」 「出番がない方がいいのでしょうけど‥‥任されたわ」 互いに笑みを浮かべて拳を合わせた由愛と薫はそのまま関所から北へ向けて姿を消した。 「さて、俺たちも気合入れて行くか」 煉(ia1931)の言葉に一同は静かに頷くと、村の周辺と内部の班に分かれて捜索するべく行動を開始した。 ●捜索班〜周辺。 村の中には入らず、外周を中心に捜索を開始したのは王禄丸・氏祗・煉の三人。 今回彼らが最も恐れた事態は、アヤカシの別働隊が村の周辺に潜んでいる可能性。 つまり現在見えているアヤカシの集団は実は陽動ではないかということだ。 「どうだ、何か見つかったかね?」 「いや、こっちには何もない」 王禄丸の言葉に苦笑して首を横に振る煉。二人は心眼を使用して物陰などに怪しい生物反応がないかを確認しているが、特にそれに類似する反応も見当たらない。 「儀平殿の目的がわからぬ以上、捕らえて聞き出すのが一番なのだが‥‥」 言いながら氏祗は表情を曇らせる。 心情的には国のために姿を晦ました、と思いたいところではあるが、現状の状況から考えても恐らくその線はないだろう。何故なら、それならば隠れる必要がないからだ。 「これほど探し回って何の反応もない所を見ると、伏兵の心配はないようだな」 「最悪の可能性だけはなかった、ということか」 「どうやら、な」 王禄丸の言葉に煉が応える。 今回最も伏兵の危険性を憂いていたのは王禄丸だ。村の外にいるアヤカシが陽動でこちらに複数の別働隊が存在する―――これが王禄丸の考えた最悪の状況である。だがこれほど探し回っても影一つ見せないとなれば、恐らくは杞憂だったのだろう。 「後は村の中、か」 そう言って氏祗が村の方へと視線を移したそのとき―――大きな声が村に響き渡る。 一瞬顔を見合わせた三人はそれが仲間の声だと認識すると、互いに頷きすぐさま村の方へと駆け出した。 ●捜索班〜村内。 一方村内の捜索にあたっていた彰人・優羽華・蓮の三人は、それぞれが村の中を歩き回っていた。勿論今回は予め特徴などを聞いていたため聞き込みをする情報は十分にあった。だが聞き込みで居場所を探す、というのは既に捜索していた兵団の仲間がやったことではあったため、期待していたほどの成果は上がらなかった。 「そうどすか‥‥おおきに♪」 言いながら優羽華は目の前の男にぺこりと一礼する。 色々と歩き回りながら人々から話を聞いていた優羽華は、余り芳しくない反応に少し滅入っていた。 「ふぅ‥‥どうにも見つからしまへんなぁ」 呟いて溜息をつく優羽華。どのくらいの時間が経ったのか正確には覚えていないが、少なくとも自分の身体が疲労を感じるぐらいには歩き回っている。 「雲母坂様」 掛けられた声に振り向くと、そこには同じように聞き込みをしていた蓮の姿が。 「あ、御剣はん‥‥そちらはどうどした?」 「ダメですね‥‥数日前に村を出る姿を確認されて以降、誰も見てはいないそうです」 優羽華の問いに苦笑した蓮は静かに首を横に振る。 「そうどすか。やはりそない簡単にはいかしまへんなぁ」 「えぇ‥‥とりあえず最後に見たという場所に向かってみましょうか? 方角的には当摩様が聞き込みをしている辺りですし」 蓮は村の南口のほうに視線を送る。 「そやねぇ。彰人はんとも情報交換しときたいよってなぁ」 のんびりとした優羽華の言葉と共に二人は移動を開始した。 一方村の南側を中心に聞き込みをしていた彰人は――― 「えぇ〜、どうしよっかなぁ」 「そんなこと言わずにさぁ☆ 何でもいいんだから♪」 にこやかな笑顔を浮かべながら女性の肩に手を回す彰人に、満更でもなさそうな表情の女性。 傍から見ればどこをどう見ても軟派にしか見えないが、本人にとっては聞き込みのようだ。とはいえこちらも収穫というほどの情報は得られてはいないようで、既に女の子と話すことが目的になってしまっていたが。 「じゃあ何か見かけたら教えてあげるわ」 「うん、すぐ教えてね〜☆」 手を振りながら女性と別れた彰人は、ふと自分を見つめる視線を感じる。 いつもとは毛並みの違う視線に振り返ると、村のちょうど出入り口にあたる木製の門のような場所に、一つの笠を被った人影があった。その影はゆっくりとこちらに歩いてくる。 「どう見ても俺のファンってわけじゃない、よね〜」 思わず苦笑いを浮かべる彰人は、辺りに他に人がいないのを確認すると静かに息を吸い込んだ。 (大声を出せば誰か気付いてくれるでしょ☆) ●アヤカシ監視。 「‥‥おかしいわね」 「えぇ」 ぼそりと呟いた由愛に薫が頷く。 アヤカシの集団を見張っていた二人、そのあまりの動きのなさに疑問を抱き始めていた。アヤカシからすれば目と鼻の先にある餌の集まり、あえて狙わない理由など本来はないはずなのだ。 「一体何が目的なのよ‥‥」 集合したまま一向に動かないアヤカシにイラつきながら爪を齧る由愛は、符を取り出して何度目かの人魂を飛ばす。 アヤカシの動きがあればその動きを察知するために放つつもりだった人魂だが、余りに動く気配のアヤカシを不安に思いこうして何度か飛ばしているのだ。 「集まっている様子もないの?」 「ないわね‥‥少し増えた感じはするけど」 アヤカシから視線を外さずイラつく由愛の肩に手を乗せた薫は、アヤカシが大規模に集結することを懸念していた。だが現状では鬼火のようなアヤカシが少し増えたぐらいで、大きな増減はないようだ。 「正直、一番嫌いなのよね‥‥待つの」 呟く由愛に苦笑する薫。とはいえ薫も拳を振るう拳士、待つことが性に合わないのは同じこと。 「私たちには一番向かない仕事ね‥‥」 言いながら一瞬空を見上げた薫は、再び視線をアヤカシへと戻す。 アヤカシに動きがない限りは彼女たちは動けない。 本来合流する予定だったのだが、肝心の合流方法を決め忘れたため彼女たちもアヤカシも動かぬまま、ただただ時間だけが無意味に過ぎていった。 ●儀平。 「はぁ‥‥ちょっとキツイかもしれないね」 呟いた彰人は既に息があがっており、身体の至る所に浅い斬り傷を負っていた。 彰人の上げた合図代わりの咆哮と同時に、笠の影は彰人に襲い掛かってきた。刀も防御に使って避けることに専念していた彰人だったが、速さでは相手に分があるようで徐々に追い詰められていく。痛みを感じない分自分の消耗度がわからないが、息があがってきたということはそれなりの血を流してしまったのだろう。 「けど‥‥一応目的は達成だよね」 呟いた彰人は目の前の影を見据える。 その顔に既に笠はなく、この村に来たときに見せられた似顔絵そっくりの顔がそこにあった。どうやら消えた儀平に間違いはないようだ。違う点といえばその顔には生気が宿っていないということ。 「当摩様!」 「あらあら、これは随分やられはりましたなぁ〜」 元々向かっていた優羽華と蓮が自分の後ろから姿を見せた。 「あ、優羽華ちゃん蓮ちゃん〜‥‥やられちった〜」 弱々しいながらもいつも通りの軽口を叩きながら手を振る彰人。 血だらけの彰人に駆け寄った二人は、彰人に手をかざしすぐさま意識を集中させる。彰人の身体を暖かな風が包み込み、傷が徐々に塞がっていく。だがご丁寧に完治を待ってくれる相手ではない。一瞬身を沈めた儀平は一気に地を蹴りその距離を縮めてくる。間に合わないと判断した彰人は二人の身体を両側に弾き飛ばす。同時に振り下ろされる儀平の刀。両腕を構えようとする彰人、だが間に合わない。 ギィン。 鈍い金属音が響き、彰人の眼前で二本の刀と一本の斧が交錯する。 一本は儀平。そして残りは――ー 「間一髪、だったな」 儀平を睨みつけながらにやりと笑う氏祗、そして。 「合図をもう少しわかりやすいものにしとけばよかったな」 言いながら苦笑する煉。 助かった、と安堵する彰人の後ろから更にぬぅっと現れる巨大な影、王禄丸。そのまま手にした長槍『羅漢』を儀平目掛けて突き出す。儀平は後方へと飛び退いてこれを避ける。 「遅くなってすまん」 「いやぁ、さすがに死んだと思ったよ?」 「いいから傷口を見せてください!」 儀平と対峙する氏祗・煉・王禄丸の三人。 再び彰人の治療に専念する蓮と優羽華。 「どうやら話を聞く必要はなさそうだな」 刀を構えた煉は、目の前にいる儀平の生気のない顔を睨みつける。 「既に取り憑かれているな‥‥最早遠慮は無用」 珍しく大斧を構えた氏祗。最後まで儀平の行動を信じていたかった彼故にどこかその表情は悲しみを含んでいた。 儀平は暗い眼でそんな一行を見つめると、突如不気味な低い笑い声を上げた。 「くくく‥‥まさかこっちに残ってるとは驚いたよ。おかげでせっかくの食事が台無しだ」 突如流暢にしゃべりだした儀平に驚く一行。 アヤカシに取り憑かれた人間はその意識はほとんどないと聞く。 「まぁこの身体が手に入っただけヨシとするか」 コキコキと首を鳴らす儀平―――既に儀平ですらないが。 「このまま逃がすとでも思っているのか‥‥?」 「まさか。思ってないさ」 怒気を含んだ煉の声に肩を竦める儀平。 一触即発の緊張感が辺りを支配し、重い空気がまるで周囲の時間を止めたように張り詰める。 時間にすれば恐らく数瞬―――動いたのは開拓者たち。飛び出した氏祗・煉・王禄丸の三人が正面左右から儀平へと斬りかかる。儀平は三人の斬撃と突きを手にした刀と身のこなしでするりと避けていく。 「優羽華さん!」 「わかってますえ〜」 蓮の声と同時に優羽華がその身を舞わせると同時に全員の身体に精霊の加護が舞い降りる。巫女の舞、神楽舞『防』だ。それほど見た目に実感できないものではあるが、あるとないでは大きな差が出る。 「ありがたいっ!」 叫んだ氏祗は振り上げた大斧を持つ両の手に力を込め、一気に振り下ろす。サムライが技、両断剣。さすがに受けれないと判断した儀平は咄嗟に身体をずらしてそれを避ける。轟音と共に地面に着弾した斧は粉塵を巻き上げる。それに紛れるようにして身を躍らせたのは煉。 「もらったっ!」 そのまま刀を滑らせた煉の斬撃は儀平の身体目掛けて射出される。儀平は普通の人間ではありえない体勢でそれをかわすと、そのまま開拓者たちから一気に距離を取る。 「待てっ!」 「ハハハハ! そう焦らなくとも近いうちに会えるだろうよ。最も、そんときゃ俺に構ってる暇なんざねぇだろうけどナァ!」 叫んだ王禄丸は何とか儀平を捕らえようと駆けるが、逃げることに専念した儀平を捕らえることはできず、儀平の残した引き際の言葉だけが、開拓者たちの耳に残された。 ●報告。 儀平を退けた一行は、一旦アヤカシ監視班の由愛と薫と合流をする。 結局アヤカシはその場から一切動くことはなかったそうだ。 「全く、鬱憤たまるわね‥‥」 「そう言わないの。あの集団まで動いてたら厄介は厄介だったのよ?」 どうにも暴れたりない由愛に苦笑する薫。 「しかし逃げるとは思わなかったな‥‥」 こちらも苦い表情の煉。その肩に王禄丸がそっと手を乗せる。 「それだけ向こうも予想外だったのだろう。それに‥‥」 「最後の言葉、やねぇ」 王禄丸の言葉に続けたのは優羽華。 儀平は最後に近いうちに会える、と言った。これが何を意味するのか。 「どうにも嫌な予感がしますね‥‥」 呟いた蓮の言葉。 一抹の不安を残したままではあるが、とりあえず村への被害は食い止めた開拓者たち。 詰め所にいる団十郎に報告をするために再び村へと足を運んだのであった。 〜了〜 |