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■オープニング本文 昼下がり。 まだ残暑といっていいこの季節、北面にある開拓者ギルドには一人の男が訪れていた。 聞けば北面の来たに位置する村から来た岡っ引きの元締めらしい。 対するはギルドの受付係としてまだ日の浅い一人の少女―――本人は子ども扱いをされるのを極端に嫌がっているが―――表情という表情をほとんど表に出さない受付係は、手元に渡された依頼書に視線を這わせて溜息を一つ。その後で北面では珍しい銀髪をサラリとなびかせて再度男に視線を送った。 「‥‥内容はわかりました。つまりはこの謎の屋敷を調査、且つここに残されているであろう岡っ引きの一人を救出すればいいというわけですね?」 「あぁ。元々調査さケるつもりで送り込んだんだが、どういうわけか出られないらしくてな‥‥」 「‥‥面目丸つぶれですね」 「はっはっは、耳が痛いな」 冷めた視線を送る少女に後頭部に手をあてて苦笑を返す男。 勿論男としても自力でそれができるならばそうしているのだろう。 だがここ開拓者ギルドに来たということはそうはできない理由があるということだ。 「取り残されているのは銭金ペイジっつってな。岡っ引きとしちゃまだまだ半人前なんだが、どうにも厄介事に見舞われる性質でな‥‥アイツに関わった仲間は皆ひでぇ目に合うってんで、誰も救出に行きたがらねぇんだ」 岡っ引きというのは子供か―――と少女は喉元まで出掛かった言葉を何とか押し込めた。 まぁ岡っ引きといっても薄給で役人の手伝いをする善意の人々であって、実際はほとんどが一般人であるが故仕方がないことではあるのだが。 「まぁそんなわけでちっとやそっとじゃ怯むことのねぇ開拓者の皆様方に、一つ手を貸してもらえねぇかと来たわけだ」 言いながら男は再び後頭部に手を当てる。 勿論ギルドとしては人道に外れるようなことでない限り、報酬さえ貰えばどんなことでもすると銘打っているため断る気などはさらさらない。 「正規の報酬がある依頼ですので、こちらとしては断る理由はありません」 「そう言ってもらえると助かる‥‥すまんが宜しく頼む」 手元の資料を机の端でトントンと揃えながら淡々と言葉を吐く少女に男は深々と頭を下げた。 翌日、開拓者ギルドの依頼板に一枚の依頼状が張り出されていた。 ●求ム調査人 北面が北方に位置する村の外れに『空栗屋敷』なる一軒の屋敷あり。 調査に向かった村の岡っ引きが一人、屋敷内に取り残されている模様。 屋敷内部の調査と共に、岡っ引きの救助をお願いします。 |
■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
阿羅々木・弥一郎(ia1014)
32歳・男・泰
ロウザ(ia1065)
16歳・女・サ
金寺 緋色(ia8890)
13歳・女・巫
そよぎ(ia9210)
15歳・女・吟
レヴェリー・ルナクロス(ia9985)
20歳・女・騎
古廟宮 歌凛(ib1202)
14歳・女・陰
羽喰 琥珀(ib3263)
12歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●突入開始。 ペイジの救出。 その依頼を受けた開拓者八人は、早速件の屋敷の入り口へと足を進めていた。 一見すると普通の屋敷ではあるが、所々に怪しげな絵や装飾が施されている。 「ここが問題の屋敷ですか‥‥確かに怪しい建物ですね」 まるで人目を避けるかのようにひっそりとした入り口を見回しながら呟く三笠 三四郎(ia0163)に古廟宮 歌凛(ib1202)は静かに首を縦に振る。 「うむ。何とも奇妙な屋敷じゃ。瘴気とは違う別の何かが渦巻いておる‥‥」 「へ、変なこと言わないで‥‥‥‥ほんとに?」 言いながら不適な笑みを浮かべる歌凛に、初依頼で気合の入るレヴェリー・ルナクロス(ia9985)は恐る恐る訊ねてみる。 「‥‥何も感じぬか?」 歌凛の問い掛けにレヴェリーは辺りを一通り見回す。特に何があるわけではないのだが、言われてしまうとどこか気になってしまうのが人の性というもの。何もないことが逆に妙な圧迫感を感じてしまい、レヴェリーは思わず身震いした。 「そこはかとなく嫌な予感だけは感じてるけど‥‥」 「ほれやはり何かあるではないか」 そんなレヴェリーに、ほれみたことかと胸をそらす歌凛。 「うぅっ‥‥此処で臆して何が騎士なものですか‥‥!」 遅い来る不安を振り切るように首を振ったレヴェリーは自分を奮い立たせて力強く頷いた。 そんな不安を抱く仲間とは対照的な者もいる。 「カラクリ邸かー、面白そーっ」 「まずはペイジさんの救出が先よ。この空栗屋敷の中できっと‥‥何が起こるか楽しみだわ」 中のカラクリ興味津々の羽喰 琥珀(ib3263)を嗜めるつもりが既に興味が屋敷そのものに向いているそよぎ(ia9210)。 二人とも既に依頼というよりはちょっと遊びに来たと言わんばかりだ。勿論本人たちはペイジ救出が最優先だとわかって――― 「あ! なんだあれ! 何か飛び出てる!」 「え? ど、どこ!?」 ‥‥わかっていると信じたい。 「こにちは! ろうざ きた! ぺいじ いるか?」 屋敷内に響き渡る程の大声で叫んだのはいつも元気一杯な天然野生児ロウザ(ia1065)。 勿論返事が返ってくるはずもない。 「もしかして返事ができない状態にあるのかもしれませんね‥‥早くペイジ殿を助けないと」 「そうだな。まぁ簡単にくたばるよーな人間でもなさそーだけどな、ペイジってのは」 返ってこない言葉に不測の事態を想像してぐっと拳を握る金寺 緋色(ia8890)に、事前に仕入れたペイジの情報を思い出して苦笑を浮かべる阿羅々木・弥一郎(ia1014)。 と、ロウザが鼻をくんくんと言わせて辺りの臭いを確認する。 「ぺいじ まだ いきてる! ろうざ さがす!」 言うが早いか屋敷内をずんずんと進み出すロウザ。 「え、あ、ちょっと!」 慌てて後を追う緋色。歌凛・レヴェリー・琥珀・そよぎの四人も後に続く。 「‥‥誰も臭いでわかるのか、とか聞かないんですね‥‥」 「あれだ。常識ってのは時に孤独を伴うもんだ。ま、気を落とさず俺らも行こうぜ」 どこか寂しそうな三四郎の肩をぽむと叩いた弥一郎。 こうして、開拓者一行は屋敷の奥へと足を進めた。 ●罠がいっぱい。 進み始めて間もなくのこと。 開拓者たちの目の前には階段が現れた。 それも、どうぞ引いてくださいと言わんばかりの紐が三本ぶら下がった階段である。 「早速出ましたね‥‥皆さん気をつけてください。ここから先は危険がいっぱ―――」 「ひも! ひっぱる!」 あからさま過ぎる罠を前に注意を呼びかける三四郎の言葉が終わる前にロウザが紐を引っ張った。 カコン、と音がしたかと思うと、ロウザの後ろのレヴェリーの床がスコンと抜ける。 「へ? あ‥‥きゃあぁぁぁぁっ!?」 落下するレヴェリーの腕を寸でのところで琥珀がきゃっち。 「危なかったねー。大丈夫?」 琥珀の言葉にこくりと頷いたレヴェリーはふと視線を足元にやる。 落とし穴の深さは大したことはない。が、その底には何やらうぞうぞと蠢くモノが。 「う、うなぎ‥‥!? あの琥珀さん、絶対離しちゃダメですからね?」 「んー? ほーい」 「絶対に絶対ですよ!?」 「わかったー」 言うが早いかするりと手の力を緩める琥珀。 「うにゃあぁぁぁぁぁっ!? 何するんですかぁぁぁっ!?」 謎の悲鳴と共にレヴェリーはうなぎの海へダイブ。それを笑顔で見守る琥珀は自分の頭をこつんと小突く。 「ありゃ、ワリィ。あんなに念を押すからてっきり離して欲しいんだと思ってさー」 「そんなわけないじゃ―――あぁっ!? そ、そんなところに入ってこないでぇぇ!?」 それを後ろから見ていたそよぎは、耐え切れなくなって我慢していた笑いを吐き出した。 「わ、笑わないで助けてくださいーっ!」 「ご、ごめんなさ‥‥でもさっきの顔すっごい面白くて‥‥!」 お腹を抱えて笑うそよぎに恨めしそうな視線を送ったレヴェリーは手近なうなぎを投げつける。 突然の反撃に驚いたそよぎは慌ててそれを避ける―――が、バランスを崩して近くの紐を引っ張る。 カコン、と再び音がしてそよぎの頭上から金盥が落下。ちょうど見上げてしまったそよぎの顔面にクリーンヒット。 「あうっ!? いったぁい‥‥」 呻きながら鼻の辺りをさするそよぎ。 「‥‥痛い、程度で済むもんなんですか‥‥? 結構いい感じで当たりましたよ?」 「あはは、ほら、あたし石頭だから」 心配そうな三四郎にあっけらかんと笑ってみせるそよぎ。 またしても常識に取り残されてしまった三四郎の肩を、弥一郎がさりげなくぽむと叩いた。 「弥一郎さん‥‥私が何か間違えているのでしょうか‥‥」 「いや、お前は何も間違ってない。ただな、周りが全員自信満々に間違ってると‥‥そんな錯覚に襲われるだけだ。強く生きろ」 最早慰めにもなってないような言葉を投げかける弥一郎。彼もまた常識を持つ非常識人であった。 ●一番の敵は味方? 階段前の罠を一通り堪能―――いや、踏破した一行は、そのまま二階へと足を進める。 目の前に現れたのは妙に長い渡り廊下。これまた何かありますと言わんばかりの穴や出っ張りが一杯散りばめられていた。 「随分と長い廊下ですね‥‥一体何の為にこんなモノを」 屋敷の製作の意図を探ろうと考えてはみる緋色だったが、やがて溜息と共に首を振る。 実際のところ趣味的な要素が多すぎてそもそもの意図などあったかすら怪しいものではあるが。 「さて、ここはどうやって行きましょうか‥‥」 慎重に慎重に、と一人呪詛のように呟きながら三四郎は思案する。勿論深く考えなければいいだけなのだが、性格などはすぐに割り切れるものではない。と、そこで今まで沈黙を守っていた歌凛が手を挙げる。 「ふっ。わしにいい考えがある」 にやりと笑みを浮かべた歌凛は、言うが早いか懐から符を取り出して念を込める。 「仮初の形を与える。見聞を報せよ」 符は小さな鼠の姿を模る。 「なるほど人魂か。確かにこれなら罠に引っかかっても大丈夫だな」 「凄いです歌凛さん!」 納得顔で頷く弥一郎に目を輝かせて褒め称える緋色。 歌凛は当然だと言わんばかりに胸を張る。 「さぁ、行って来るのじゃ」 歌凛の言葉にとてとてと進みだす鼠。と、その先でカコンと音が。。 「む、なんぞ罠が‥‥ふん、わしは痛くも痒くもなぐぎゃあああ!?」 同時に突然耳を押さえながら悶絶して転げ回る歌凛。 どうやら聴覚にダイレクトに響く罠であったようだ。 「ま、当然そういうことも予想されてるわな」 「気付いてたんですか‥‥」 「ん。まぁほら。誰か引っかかってくれたほうが面白れーじゃん」 平然と言ってのける弥一郎に、やっぱりこの人もか、と三四郎はただ嘆息した。 しばらくして。漸く歌凛が悶絶から復活してよろよろと立ち上がる。 何もしていないのに既に満身創痍な歌凛の肩を緋色がそっと持つ。 「だ、大丈夫ですか‥‥?」 「だいじょう、ぶじゃ‥‥なに、もう一度アレの跡をたどれば、どうちゅうきけんは‥‥」 ふらりとしながら一歩前へと踏み出した歌凛。そしてお約束のカコンという音。同時に歌凛の足元で何かが動く音がした。 「‥‥! 危ないっ!!」 それが落とし穴の発動を意味すると感じた緋色は、咄嗟に歌凛を突き飛ばす。 まだ足元のおぼつかない歌凛は、突き飛ばされてふらりと壁にもたれ掛かる―――が、同時に壁がくるりと回転。 「なんとぉ!?」 奇声と共に歌凛は必死に手を伸ばし、なぜか傍にいたレヴェリーのマントをがっしと掴む。 「え? ちょっ!?」 急激に圧し掛かる体重に耐えれるわけもなく、そのままレヴェリーと歌凛は回転扉の向こう側へ。その先はお約束の滑り台。 「ぬあぁぁぁぁぁ‥‥‥‥」 「きゃあぁぁぁぁ‥‥‥‥」 徐々に消え行く悲鳴と共に二人は壁と一緒に回転して姿を消してしまった。 「あぁっ!? 私ってばまた‥‥早く助けないと! えと、えと‥‥そうだ、紐を使って―――」 と、目に付いた紐を引っ張る緋色。当然それは助けるための紐などではなく。 ガゴン! ゴゴゴゴゴ‥‥ 今までの音とは全く異質の、例えるなら巨大な歯車の回る重厚な音が廊下に響き渡る。 同時に一行が立つ廊下が徐々に傾斜を帯びていく。慌ててバランスを取る七人。そこでそよぎの懐から皆のお弁当にと持ってきたおにぎりが転げ落ちていく。 「あ! せっかく持ってきたおにぎりがっ!!」 叫ぶそよぎの言葉に反応したのは琥珀。わんぱくな少年はやはりお腹も空くのだろう。 「あちゃー、それは勿体無いなー。あれってねーちゃんの手作りなの?」 「‥‥うん。お母さんのね‥‥」 無邪気な少年の何気ない疑問だった。しかしそれは余り触れられたくない場所にピンポイントだったようで。 少し落ち込んだような様子のそよぎに琥珀は偶然手にした木彫りのもふら像をそっと渡す。 「これ、あげるから元気出しなよ」 「‥‥ありがとう。ってこれ何?」 「ん? そこに置いてたー」 見ればあからさまに怪しい台座に、ちょうどそよぎが持つもふら像を置く空間がぽっかりと空いていた。 一瞬の沈黙。 すると傾斜が一定のところで止まり、廊下の先―――今は坂になっている廊下の坂上部分の壁がガコリと開き、そこから褌姿の一人の男が飛び出してきた。 「ふああぁ! やっと出れたッスよー!」 大きく伸びをして体を伸ばす褌男は開拓者たちに気付くとにこやかな笑みを浮かべてこちらへと歩き出す。 「やぁすみませんッス! 俺っちは銭金ペイジって岡っ引きで‥‥ん?」 勝手に自己紹介を始めた褌男―――ペイジは、何やら必死で自分を指差す開拓者に首を傾げた。 「どうしたッス―――」 「ペイジさん! うしろーうしろーっ!!」 怪訝な顔のペイジの耳にそよぎの声が流れ込み、ペイジはそっと後ろを振り返る。 見えたのは自分の倍近くはあろうかという大きな岩が、傾いた床のせいで徐々に自分に迫り来る光景だった。 「ぬおあぁぁっ!?」 慌ててこちらに走り込んでくるペイジ。当然岩も追従して開拓者目掛けて徐々にその速さを増していく。 一行が踵を返す中、岩の前に堂々と立ち塞がる影一つ―――ロウザだ。 「ろうざ ちから つおい まけない!」 一瞬にして筋肉が盛り上がるような感覚がロウザの腕を支配する。サムライのスキル、鬼腕。 転がる大岩。待ち構えるロウザ。そしてその間に挟まれたペイジ。 「あなたの力‥‥信じるッス! どうか俺っちごと受け止めて―――」 「ろうざ いわ こわす!」 ロウザが大岩を受け止めるものだと思っていたペイジは、ロウザ目掛けて勢いよく飛び込む。だがロウザに受け止める気などこれっぽっちもなく、大きく息を吸い込んでぐるぐる腕を回すと、そのまま拳を岩目掛けて突き出した。 「アッーーーー!!」 断末魔に聞こえなくもない悲鳴が、屋敷内に木霊した。 ●救出? 「ひどいッス‥‥あんまりッス‥‥」 「わはは! ちいさい きにする よくない!」 いじけるペイジの背中をバシバシと叩くロウザ。 どうやら迫ってくる岩しか見えていなかったらしく、殴り飛ばした後でペイジがいたことに気付いたようだ。 「そんなに落ち込まないでください。何というか‥‥私、ペイジ殿の気持ちがよくわかる気がします」 救われないペイジの手をそっと握る緋色。ペイジの一生懸命さと裏目に出る結果は、どこか自分と重ねる部分があったのかもしれない。 「わかるッスか‥‥わかってくれるッスか!」 「えぇ‥‥真面目にやってますもんね‥‥!」 「そうなんス! 初めてわかってもらえたッス‥‥!」 瞳を潤ませて見つめ合う二人。何やら通じるものがあったらしい。 「おー? にーちゃんとねーちゃん、そのままちゅーでもすんのかー?」 にしし、と笑みを浮かべる琥珀に、緋色は真っ赤な顔で慌てて否定。一方のペイジは―――よくわかってないようで首を傾げていた。 と、そこに漸く回転扉の先から帰還した歌凛とレヴェリーの姿が。 歌凛はペイジを発見するや否や即座にダッシュ。そのまま頭目掛けて足から飛び込んだ。 げふあっと悲鳴を上げて倒れこむペイジの頭を更に手に持った陰陽采配でべしべしと殴りつける歌凛。 「わしはこんな屈辱‥‥ひっく‥‥助けに来たぞ貴様! ‥‥ひっく‥‥貴様貴様貴様ーっ!」 叩かれているペイジには何のことやらさっぱりである。 勿論ただの八つ当たりではあるが。 「よく無事だったわねー。あの扉の向こうってどうなってたの?」 「え、えぇ‥‥牢屋みたいになってました。これ、おみやげです」 興味深々に尋ねてくるそよぎに、レヴェリーは牢屋で拾ってきた骨を手渡した。 「え‥‥っきゃぁっ!? いらないわよこんなの!」 全力で投げた骨がペイジの頭を直撃したのはきっと運命だったに違いない。 「何というか‥‥一気に疲れた気がします‥‥」 そう言って大きな溜息をついたのは、今回最後まで常識人だった三四郎。罠にかかったわけでもなければ戦闘をしたわけでもないのに疲労感だけが身体を包み込む。そんな三四郎の隣には常識人に見えていた弥一郎。 「ほれ、雨降って地固まるって言うじゃねーの。ペイジも救出できたし結果おーらいよ」 無駄に爽やかな笑顔で親指を上げる弥一郎に、もう二度とこの人に常識は求めないと強く思う三四郎だった。 その後空栗屋敷は、開拓者たちによって内部の全容が岡っ引きの元締めに報告され、余りの技術の高さを勿体無いと感じた開拓者の一人、琥珀の進言によって危険そうな罠以外を残して、遊戯施設へと生まれ変わり、今も人々に愛されているらしい。 〜了〜 |