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■オープニング本文 ●夏の風物詩。 照りつける太陽、空に浮かぶ入道雲、突然の夕立。 汗ばむ身体、吐き出す吐息、耳を劈く蝉の声。 響き渡る祭囃子、轟音に打ち出される花火、そして突然の告白! 今年も開放的な季節がやってきました! しかしやはりこの季節に欠かせないモノがある。 もうおわかりですね? そう‥‥夏の夜を彩る怪談の数々! 人々を恐怖に陥れる存在でありながら、何故か親しまれ続ける怪談の数々。 今年も身近に体験してみませんか? 今年も北面を恐怖に誘う、真夏の冒険浪漫譚の開幕開幕〜♪ 「よし、宣伝文句はこんなモノか」 誰ともなしに頷いて筆を置いたのは一人の青年。 彼の名は間宮三郎。北面の飛び地に位置する楼港で大工を営む青年だ。 普段は大工として精を出す三郎だが、この季節になると別の作業に勤しむ。 それがこの化け物屋敷の製作である。 化け物屋敷、といっても勿論本物が出るわけではない。 その実態はカラクリと人力による仕掛けではあるのだが、最初にやったモノが思った以上に高評だったらしく、毎年この季節になると屋敷作りに忙しくなる。 そしてやるからには全力で作成するというのが大工魂。その完成度の高さには子供だけでなく大人も泣き出す程だと大層評判のようだ。 「大将〜、頼まれてたモン持ってきたわよっ」 言いながら現れたのは半被姿の一人の女性。見た目は十五・六に見えるがこれでも二十歳は過ぎているらしい。女性の正体は近所に住む花火師である。 「おうチャコ、すまないな」 「アタシは阿茶子(あさこ)だって何度言えばわかるのよ!」 三郎の言葉にわかりやすい怒りの仕草をする女性―――阿茶子。 「んでもアンタが今やってんのっていつもの化け物屋敷でしょ? こんなモンどーすんのよ」 言いながら阿茶子は手に持った壺に目を向ける。 火気厳禁という札が貼られたその壺は、どうやら火薬であるらしかった。 「へっ、そりゃあ見てのお楽しみさ。ただ今までの仕掛けとは一味も二味も違うぜ」 そう言って三郎はにやりと笑みを浮かべる。 確かに現在花火や銃器以外で火薬を使うことなどそれほどあるわけではない。 まして化け物屋敷でなどというのは聞いたこともない。 「でも危ないわよ、火薬。アンタのことだから心配ないと思うけど‥‥何かあったら大変よ?」 「だろうな。だからよ、今回は試しが必要なんだよ」 「試し‥‥?」 小首を傾げる阿茶子。 「そうだ。万が一火薬に何かあっても何とかしてくれる、それでいて化物屋敷を純粋に楽しんでくれる―――」 『開拓者!』 話の途中で気付いたのだろう、三郎と阿茶子の声が重なった。 「確かにそういうことならうってつけよね」 「あぁ。今回は新作のカラクリもあるからな。ついでに実験させてもらうさ」 「そっかー。じゃ、報告だけ楽しみに待ってるわ。あ、そろそろアタシんとこもやるから、今度櫓だけ建てに来てよね! じゃっ」 勢い良く手を振りながら去っていく阿茶子に、三郎は苦笑しながら再び筆をとった。 今度は開拓者たちへの依頼のために。 |
■参加者一覧
有栖川 那由多(ia0923)
23歳・男・陰
ガルフ・ガルグウォード(ia5417)
20歳・男・シ
シルフィリア・オーク(ib0350)
32歳・女・騎
カメリア(ib5405)
31歳・女・砲
籠月 ささぐ(ib6020)
12歳・男・騎
ヴァレリー・クルーゼ(ib6023)
48歳・男・志
サイラス・グリフィン(ib6024)
28歳・男・騎
コニー・ブルクミュラー(ib6030)
19歳・男・魔 |
■リプレイ本文 ●いざ突入。 北面楼港。天儀の娯楽の全てがあるとさえ言われるこの街の片隅にひっそりと佇む一つの屋敷。 いかにもな雰囲気を醸し出す佇まいは、さすが仕事人の技とでも言うべきか。 「へぇ、雰囲気あるねぇ。こういうトコには‥‥集まるって言うよなぁ?」 屋敷を前に不敵な笑みを浮かべた有栖川 那由多(ia0923)は、隣にいるはずの籠月 ささぐ(ib6020)の方へと視線を向ける。 しかし那由多の目に映ったのは、こそこそとその場をはなれようとするささぐの姿。 「‥‥と、お前、何処行く気だ?」 「ひゃうっ」 がっしと耳を掴まれたささぐはぎぎっと音がしそうな仕草でゆっくり振り返る。 「ほら、こばらがすくでしょ、だからおかしかいに」 「心配するな。皆ちゃんと準備してある。さっさと行くぞ」 あたふたと言い訳を連ねるささぐを引っ張りながら、那由多は屋敷に歩みを進める。 「ふん、こんなもの所詮作り物であろう。人が作ったものなど、アヤカシ退治を生業としている我らにとっては恐るるに足らず!」 連れて行かれるささぐを横目に、ヴァレリー・クルーゼ(ib6023)は意気込みながら自身の眼鏡をくい、と押し上げる。 そんなヴァレリーの様子をキラキラした瞳で見つめているのは、ヴァレリーの弟子であるコニー・ブルクミュラー(ib6030)。 「さすが先生です! どんなときでも堂々としていらっしゃる」 「堂々‥‥ねぇ。まぁ問題起こさなきゃいーんだけどな」 尊敬の眼差しのコニーとは対称的にどこか不安げな表情を浮かべるのは、同じくヴァレリーの弟子であるサイラス・グリフィン(ib6024)。 「何をしているサイラス、コニー。仕事だ、行くぞ!」 「あ、先生待ってください!」 羽ペンと手帳を手に厳しい視線を向けて進むヴァレリーと、その後を慌てて追い掛けるコニー。 「ふふ、あの方達がお話に聞いていたお師匠さんと弟弟子さんなのですね」 柔らかな笑みと共にサイラスの隣に現れたのはカメリア(ib5405)。 「あぁ‥‥まさかこんな形で引き合わせることになるとは思わなかったけどな。しかしカメリア‥‥」 「はい?」 「‥‥浴衣はとても似合ってると思うんだが、その腰周りの何とかならなかったのか?」 その可愛らしい容姿に良く似合った浴衣。その中腹にぶら下がる工具ベルトと一丁の短銃―――台無しである。 「これがないと困りますよぅ、色々調べたいのに‥‥さ、そんなことより私たちも行きましょ〜」 「ちょっ!? そっち違うって!」 笑顔を浮かべながら全く違う方向に歩き出しそうになっているカメリアを無理矢理屋敷に向かわせながら、サイラスは早くも前途多難な光景を思い浮かべていた。 次々と屋敷に入っていく仲間を見ながら、何とか自分を奮い立たせようと奮闘する者が一人。 「大丈夫‥‥大丈夫だ。今度は皆と一緒じゃないか‥‥!! そ、それに今日こそは克服するって決めたじゃないか‥‥!!」 屋敷の入り口でただひたすらに大丈夫と繰り返す浴衣姿の金髪青年―――ガルフ・ガルグウォード(ia5417)である。 どうもこういった類のモノが苦手らしく、現在までお化け屋敷号泣率百%を誇るというから驚きである。 「今度こそ治すんだ‥‥!!」 「治すって、何をだい?」 突然掛けられた声にびくりと振り返った先には、扇子をぱたぱたと仰ぐシルフィリア・オーク(ib0350)の姿。 「な、ななな、何でもねぇっ」 シルフィリアの今にも零れそうな胸元の刺激と独り言を聞かれたかもしれない羞恥心が、ガルフからいとも容易く平常心を奪い去り、彼は慌てて視線を外す。 と、後ろからにゅっと手が伸びてきて、そのままガルフの頭を柔らかい何かが包み込んだ。 一瞬で意識を飛ばしそうになったガルフが、自分がシルフィリアの胸元に抱えられていることに気付いたのは数秒経った後だった。 勿論、気付いたところでそれを楽しむような余裕はガルフにはなかった。 「どうだい‥‥少しは落ち着いたかい?」 妖艶な笑みを浮かべるシルフィリアに、ガルフはただただ首をがくがくと振る。 当然落ち着いてなどいられるわけもないわけだが。 どこを見ても前途多難―――それは屋敷内に入っても何ら変わることはなかった。 ●仕掛けいっぱい。 「ぎゃー○□※△×!!」 最早言葉にすら聞こえない悲鳴が屋敷内に木霊する。 と言っても入ってすぐの場所からずっとこの調子だ。 「叫びすぎだろ‥‥ったく随分臆病な騎士サマだな」 やれやれと肩を竦める那由多を上目遣いで見上げるささぐ。 「うぅ、だって、そんざいがもうこわい‥‥ごしゅじんさま、なんでこわくないの。もやしなのに」 「もやして、お前が言うな‥‥ってほら行くぞ」 「おきざり、ヤっ!」 取り残されそうな雰囲気を感じたささぐは、ぶるりと震えて那由多の腕にガッシとしがみ付く。 「ったく‥‥ほら、後ろ見てみろよ。お前と違って堂々としたもんだぞ」 那由多が指す方に顔を向けると、確かにそこには姿勢正しく歩くヴァレリーの姿があった。 ただし、その隣を歩く弟子のコニーは完全に挙動不審になっていたが。 「コニー、気をしっかり持ちたまえ。怯えていると何でもない物事にさえ動じてしまうものだ」 諭すように言うヴァレリー。コニーはそんな毅然としたヴァレリーに憧憬の眼差しを向ける。 そしてもう一人。ヴァレリーの隣を歩くガルフもまた、堂々たる佇まいに尊敬の念を抱いていた。 「先生はやっぱり凄いなぁ。僕だって堂々と‥‥!」 「よし、俺だって‥‥! これは任務なんだ‥‥お化けはアヤカシ、そしたら怖くない怖くない、大丈夫」 目の前の師を真似てみようとするコニーと、念仏のように自己暗示に入るガルフ。 と、そこで先頭を歩いていたカメリアから「あっ」という声とガコンという重い物音が聞こえる。 「どうした?」 先頭で固まるカメリアをサイラスが後ろからひょいと覗き込む。 その足元には踏んだら何か起きますと言わんばかりの床が、綺麗に凹んでいた。 顔を見合わせる二人。 と、前方で何か光ったかと思うと発火音と共に何かが飛来する。 紅い炎を放ちながらこちらに向かってくるソレは、生首。 作り物とわかっていても思わず避けてしまう物体は、一行の傍を火花と共に通過していく。 「ぎゃー!!」 逃げ惑うささぐ。 「なっなっ‥‥く、くるな‥‥ひっく」 泣き出すガルフ。 「無理ですー! やっぱり僕にはまだ早すぎましたぁ!」 隠れるコニー。 「ぬおぉぉぉぉっ!!」 叫んでしゃがむ―――ヴァレリー。 「‥‥‥‥」 「‥‥‥‥先生?」 ぽかんとするコニーの声に我に返ったヴァレリー。こほんと咳払いを一つし、眼鏡をくいっと上げて立ち上がると一言。 「ふ、ふん。床を確認していただけだ」 そんなヴァレリーを指差しながらささぐは小さく。 「‥‥どうどう?」 「すまん、俺が間違えてた」 那由多は頭を押さえながら詫びた。 「今のはちょっとびっくりしたかねぇ〜」 首が飛んでいった方向に視線を送りながら、シルフィリアは自分のはちきれんばかりの胸元を押さえてほぅと息を吐いた。 「仕掛けだって高を括ってはいたけど、案外予想外のところから来るもんだねぇ〜」 「本当ですね〜。どうやって動かしているのでしょうか‥‥捕まえたかったです‥‥」 他の仲間とは違う意味で予想外だったカメリアは、カラクリを調べれなかったことが残念で仕方がないようだ。 ある意味では天然である彼女が一番強いかもしれない。 そしてそれはその後も遺憾なく発揮されることとなる。 ●追撃? 「あっ」 再び先頭を行くカメリアの小さな声。同時にどこからか風が吹き荒れるような大量の空気音が響く。 「またか‥‥」 やれやれと溜め息をつくサイラス。 以前会ったときからふわふわした印象のカメリアだったが、まさかここまで見事に仕掛けを作動させていくとは思ってはいなかった。 実験する意味ではこれほど先頭に適した人もいないかもしれない。 「お? 今度は何だ?」 一方興味深々に問い掛ける那由多の表情はとても明るい。 こちらは次から次へと出てくる仕掛けを、純粋に楽しんでいるようだ。 「えっと、何か踏んだみたい、ですー」 振り返ってあはは、と笑みを浮かべるカメリア。 見る人が見ればそれはもう一瞬で目を奪われるほど可愛い仕草。 その後ろからリアルな首がにょろりと持ち上がっていなければ。 「ぎやぁぁぁぁ!!??」 「ひぃぃぃぃ!?」 「ぜ、全然触りたくねぇぇぇ!!」 現れたろくろ首にささぐ、コニー、ガルフの三人が悲鳴を上げてそれぞれがわたわたと身を隠す。 ささぐは那由多の後ろに。コニーはサイラスの後ろに。そして――― 「ひゃっ。こら、どこに隠れてるんだい」 可愛らしい声を上げたシルフィリアの胸元にうずまっているガルフ。 「へっ? わ、わー!? す、すまねぇ!」 慌てて身を離すガルフに、苦笑を浮かべたシルフィリアが手に持った扇子でぺしんと一撃。 「こらこら‥‥もうちっとシャキッとしたらどうだい?」 言いながらも抱きかかえるようにガルフの頭を包んでいるのは彼女の持つ母性の為せる業なのか。 抱えられてるガルフは怖いやら恥ずかしいやら嬉しいやらで、完全に目を回している。 余りに自由奔放な仲間の状況に耐えられなくなったサイラス、何とか落ち着けようと呼びかけようとしたところで、視界にいい年したおじさんが蹲る姿が飛び込んできた。 「皆さんちょっと落ち着いて―――って先生?」 呼ばれたヴァレリーはびくりと身体を震わせると、こほんと咳一つ。 「ゆ、床の仕掛けをだな‥‥」 「いや、床はもういいですから立ちましょうよ」 溜め息交じりのサイラス。しかしヴァレリーは無言のまま動こうとしない。 「先生‥‥? まさか‥‥」 「ちっ違う! これはアレだ‥‥じ、持病でだな」 この瞬間、サイラスの背中に荷物が増えることが確定した。 ●そして終焉へ。 半数以上が怖がりというある意味最適な一行は、恐らく最後の山場であろう場所、墓場へと差し掛かっていた。 まず出迎えたのは無数の灯。ただ一般的な火の玉とは違い、その光は点いては消え、また別の場所で点いては消えを繰り返していた。 「ふわー、なんでしょう‥‥?」 興味津々、慌てて止めようとするサイラスを余所に、カメリアは灯の方にそっと近付いてみる。 ぱっと散るように点る灯は、良く見ると極小の花火だ。 「へぇ、こりゃ凄い」 「仕掛けって言ってもこういうのもあるんだねぇ」 同じように灯の傍に来た那由多とシルフィリアもまた感嘆の声をあげる。 「ふん、所詮はカラクリではないか」 「そういう台詞は俺の背中から降りてから言ってくれ‥‥」 今更ながら強がるヴァレリーに、心なしかげっそりとしたサイラスが呟く。 「これなら、へいき」 綺麗に咲く花火に夢中のささぐ。 それを見た那由多が悪人のような笑みを浮かべて静かに何かを呟いた。同時に手元に一つの物体が現れる。那由多はそれを確認するとそっとささぐの頭に乗せた。 首を傾げて手を伸ばしたささぐ。ぬめっとした感触が手に張り付く。 何かと思い掴んで視線の先に持ってくる。見るとそれは小さな蛙。 「×○△□※!?」 声にならない悲鳴と共に蛙を後ろに放り投げる。投げた先には―――ヴァレリーの顔。 ぺちょっという音をたて、張り付くぬめ蛙。 「ぬおあぁっ!?」 いきなりの感触にこちらも悲鳴。慌てて振り払ってしまったので眼鏡ごとすっとんでしまった。そして眼鏡つきの蛙は運悪くカメリアの足元に。突然の障害物にカメリアは足を止めることができず。 ぐにゃっパキャ。 「あ」 蛙もろとも潰される眼鏡。 一方のヴァレリーは視界が封じられたショックで、サイラスにおぶわれていることも忘れて暴れだす。 「ぬおぉっ見えん! アヤカシかっ!?」 「そんなわけないでしょう!? ってか人の背中で暴れないでください!」 慌てるサイラス。と、その足首を何かがガッシと掴んだ。 何事かと視線を落とすと、地面から生えた手がサイラスの足首を掴んでいる。そしてそれは足元だけでなく皆がいる地面を埋め尽くすように存在していた。 「う、うわぁぁぁ!?」 「ちょっちょっと‥‥ひゃっ、どさくさにまぎれてどこ触って‥‥んっ」 当然苦手なガルフが取り乱し、その反動で何故か抱きつかれたシルフィリアが身をよじらせる。 「せせせ先生っ! あし、足に手がっ!!」 「ぬぅ!? からくりがこんなに恐ろしいわけがない! 貴様アヤカシだな!」 「だぁっ! コニー、くっつくな! って先生も俺の背中で暴れないでって何度言えばっ!?」 足をカラクリに掴まれコニーに抱きつかれ、背中ではヴァレリーが我を失って暴れるという三重苦のサイラス。 さながら阿鼻叫喚の地獄絵図のような光景に、足元から伸びる手を掴んで分解しようと試みていたカメリアがそっと笑みを浮かべる。 「ふふ、皆さんも楽しんでますね〜」 「もうその思考が凄いと思うぞ‥‥」 苦笑交じりの那由多がぼそりと呟いた。 ●その後。 漸く屋敷の外へと抜け出した一行は、近くにあった茶屋で今回の屋敷内の報告書を纏めることにした。 「酷い目にあった‥‥」 適当に茶を頼み、ガルフが持ってきていた西瓜を齧りながらサイラスは心底疲れきった表情で呟く。 「そうですか? 私はとっても楽しかったですよ♪」 ふふ、と笑いながらその隣で同じように西瓜を齧るカメリア。 そんな二人を横目に茶をすするヴァレリー。 「ふん、この程度で音を上げるとは情けない!」 アンタが言うなよ―――と思いながらもサイラスは突っ込むことを放棄。 そしてもう一人の弟子はあの惨状を見てもなお、ヴァレリーへの尊敬を揺るがすことなく持ち続けているようだ。 「さすが先生! しかし先生があんなに動揺するなんて‥‥化け物屋敷恐るべし!」 楽観主義といは便利なものである。 「ひっく‥‥俺頑張った‥‥頑張った、よな‥‥」 涙が枯れるんじゃないかと言うほど涙を流したガルフは、屋敷内で気になった箇所などを手帳に書き出しつつこっそりと自分を褒める。それを見たシルフィリアは笑みを浮かべてガルフの頭にぽむと手を乗せる。 「強くおなり?」 「‥‥あぁ!」 改めて決意を燃やすガルフであった。 誰もが疲労を顕わにする中、逆に元気になった者もいた。 「あはははは! たのしかた、もっかい、もっかい!」 心底楽しかったのか、笑い声をあげながら再度屋敷に行こうとするささぐ。 「いや、俺は別にいいが他無理だろ」 はしゃぐささぐに那由多は苦笑を浮かべる。 言われたささぐは少しの間考え。 「ん、じゃあいけるひとだけ! ごしゅじ、コニーちゃん、ヴァレリーちゃん、いこー!」 「明らか人選ミスだろそれ!?」 こうして、開拓者たちの化け物屋敷探訪は幕を閉じた。 〜了〜 |