|
■オープニング本文 褌―――。 それは男女問わず着用する肌着であり、その着用感は一度味わうと手放せなくなる程の素敵な道具。 更に気を引き締めて、という意味で『褌を締める』という言葉まで出来る程、褌着用時には力が漲ってくる‥‥ような気がする。 かつて、そんな褌に命を賭けた者たちがいた。 全領土に褌を推奨し、褌を模した旗―――時には褌そのもの―――を掲げ、全力で褌を守り抜き、中には褌を普及するための宣褌師なる職業までもが存在した、褌愛好者たちの集まり。 彼らはかつて、一つの村を創設した。 その名は―――どきどき☆フンドシ村。略して『どきフン』。 それはあくまで自分たちで設立を宣言しただけで、決して公になっていない村である。 しかし中には独自の掟が存在し、その掟を破ったものは長により容赦なく罰せられていた。それでも褌を愛する者たちが住民となり、村を支えていたのだ。 だが時と共に人々の褌への関心は薄れ、一人また一人と住民は姿を消していく。 長は非常に嘆き悲しんだが、褌を愛する気持ちさえあれば、と泣く泣く去る者を見送った。 更に村を追い詰めるかの如く、朝廷より『勝手に旗を掲げるべからず』書かれた文が届く。 それだけは、と必死に抵抗を続けた村とその守護者たち。 だが所詮は既に過疎化した村、朝廷の力には及ばず領地を没収され、長はその罪により僻地に流刑となる。数年の後、その長はひっそりとその生涯を終えることとなった。 決して表には出ない黒歴史。 だが、褌を愛する者たちの炎は、再び燃え盛る瞬間をただ燻らせて待っているに過ぎなかった。 「失礼」 声が掛かり顔を上げた受付係は、目の前に男が立っているのに初めて気が付いた。決して注意していなかったわけではなかったのだが。 「あ、あぁ。なんでぇおめぇさんは」 ぶっきらぼうに答える受付係。 「開拓者ギルド、というのはどんな依頼でも受けていただけるというのは本当ですか?」 笑顔を顔に貼り付けたまま問い掛ける男の姿を、受付係は訝しげに見回す。恐らく泰の独特な服装なのだろう、赤地に銀糸で龍の刺繍が施された服。上着の裾がやけに長く膝辺りまである。笑顔のままのその顔は柔和そのもの。目が随分細く笑っていると瞳がほとんど見えない。 「ん、まぁ法に触れない内容ならな、報酬次第で何でもやらぁ」 受付係の言葉にそうですか、と呟いた男は懐から一枚の紙を取り出した。 中には地図らしきものが書かれており、その一部に大きくバツ印がつけられている。 「なんでぇこりゃ」 「これは北面の南に位置する山の周辺地図です。そして、この印はこの辺りを根城にする盗賊団の本拠地です」 眉を顰める受付係に地図を指差しながら懇切丁寧に説明をする男。 「ふぅん、で? こいつらから何かを取り返してぇのかい?」 「‥‥えぇ。とても大事な物が彼らの根城にあるのです。いや、彼らの頭が身に着けているいうべきでしょうか」 「身に‥‥つけて‥‥?」 聞き間違いかと思ったが、頷く男にどうやらそうではないらしいと悟った受付係。 はっきり言うとこの時点で既に何か嫌な予感はしていたのだが、ここまで聞いて帰すわけにもいかない。 「ちなみに‥‥何を?」 恐る恐る聞いた受付係。男はしばらく間を空けると、その細い目を少しすっと開けてこう言い放つ。 「―――褌を」 |
■参加者一覧
斎賀・東雲(ia0101)
18歳・男・陰
シュラハトリア・M(ia0352)
10歳・女・陰
橘 琉璃(ia0472)
25歳・男・巫
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
アルカ・セイル(ia0903)
18歳・女・サ
向井・智(ia1140)
16歳・女・サ
嵩山 薫(ia1747)
33歳・女・泰
煉(ia1931)
14歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●褌争奪戦 〜行動開始前〜 鬱蒼と生い茂る北面南部の森林地帯に建っている小さな砦。かつては戦禍の中の拠点防衛用として設立されていたのだろうが、その役目を終えた今、柄の悪い連中が根城として使用するのみとなってしまっていた。 砦の入り口付近、今回盗賊の頭が持っている―――というか履いている褌を奪還すべく集まった開拓者たちは、砦の様子を伺うために木々に紛れてひっそりと様子を伺っていた。入り口には恐らく盗賊の一味なのだろう人影が三人。何故一味とわかったか―――それは三人とも下半身が褌のみであったから。 「なんちゅーか‥‥まんまやな」 呆れた顔で呟いたのは斎賀・東雲(ia0101)。どこからともなく面白い匂いを嗅ぎ付けて参加した彼は、一目でそれが間違いではなかったことを理解した。 「ふふ‥‥あの褌のもっこり感‥‥早く触りたいわぁ‥‥はぁ♪」 見張りの盗賊の姿を遠目に見るだけで胸の高鳴りを抑えられないシュラハトリア・M(ia0352)は妄想の渦に飲み込まれて一人目をトロンとさせながら身をくねらせる。そんなシュラハの様子を見て橘 琉璃(ia0472)ははふ、と溜息を一つ。 「何で‥‥自分ここにいるんでしょうか‥‥」 「それが運命という奴かもな。おじさんも既にアレ見ただけでめげそうだが‥‥まぁ気楽にやろうぜ」 苦笑しながら琉璃の方をぽむと叩いたのはアルカ・セイル(ia0903)。 そんな二人の横で入り口の男たちを―――というより褌をガン見している小さな鎧が一つ。 「褌を奪還するなんて聞いたことがないですけど‥‥もしや褌には隠れたすごい能力があったりするのでしょうかっ!?」 こちらは違う意味で暴走した向井・智(ia1140)。既に間違った幻想を抱く彼女はキラキラと輝いた目で褌を見つめる。 「しかし盗賊も何でまた褌なんか‥‥って見ればわかりますね。っと、戦闘前に仮面つけないと‥‥」 依頼を受けてから相川・勝一(ia0675)がずっと抱いていた疑問も目の前の男たちで何となく、でも割とはっきり目に解決したようだ。そして勝一はいつものように懐から仮面を取り出すとスチャリと装着する。 「ねぇ、中の様子はどう?」 「‥‥中にいるのは数人、真ん中にある気配が頭かもな。後は前の三人だけみたいだ」 嵩山 薫(ia1747)の問い掛けにすっと目を開けて答える煉(ia1931)。どうやら心眼で中の様子を探っていたらしい。暴走する仲間たちの様子は見ない振りと言わんばかりに真剣な面持ちだ。 一通り内部と外部を観察した一行。事前にもらっていた地図と見た目から、砦には裏口らしきものが存在することがわかっている。 「じゃあ作戦通り、シュラハ、琉璃、勝一、智は入り口の見張りをお願いね。私と東雲、煉とアルカは内部に侵入して頭とやらを抑えるわよ」 薫の言葉に頷きを返す一同。 こうして、世にも奇妙な褌奪還作戦が開始された――― ●褌争奪戦 〜入口編〜 「‥‥!? 何モンだ!」 砦入り口に仁王立ちで立っていた三人の男は、突如目の前に現れた小さな人影に声を荒げて手に持っていた刀を構える。 「ん? おにぃちゃん達ぃ、だぁれぇ? ココで何してるのぉ?」 立っていたのはシュラハ。小首を傾げて問い掛ける幼い少女―――しかも巨乳―――に男達に動揺が走る。何せ盗賊なんて稼業に女っ気などない。目の前に突如振ってきた上玉をここで逃してはこの先二度と巡り合えないかもしれない、そんな邪な思考に支配される男達は明らかに下卑た笑いを浮かべながらシュラハの方へと歩み寄る。 「へへ‥‥嬢ちゃん、俺たちゃ盗賊なんだぜ」 手に持った小刀の柄を遊ばせて近寄る男達に、シュラハは一瞬にやりと笑みを浮かべてすぐ笑顔に戻す。 「盗賊さん達かぁ…こんなお山で暮らしてるくらいだしぃ、イロイロ溜まってるのかなぁ?」 言いながら腕を寄せてその身体に似合わぬ大きな胸を強調するシュラハに男達の視線は釘付け。口々に「ひゅー」だの「いえす!」だの叫んでいる。それを見たシュラハ、つつっと盗賊の一人の傍に近寄ると、褌の辺りを優しく撫でるように指を這わせる。 「良かったらぁ…シュラハが出してあげよっかぁ?」 「おぉぉぉぉ‥‥おほぅ」 妙な声を上げながら悶える盗賊と頬を赤らめながら妖艶な笑みを浮かべるシュラハ。他の二人も羨ましそうな視線を送る。 「お‥‥俺もう我慢できねぇっ!」 「ふふ‥‥いやぁん♪」 叫んだかと思うと服を脱ぎ捨て褌一丁になる盗賊。シュラハはぽっと頬を染めながら褌の上から一枚の符をぺたりと貼り付ける。符はうぞうぞと動き出すと黒いミミズのような姿へと変貌する。 ―――一瞬の停止。 「ぬおぉぉぉぉっ!?」 黒いミミズはしゅおしゅおと謎の音を立てながら男の生気をぐんぐん吸い上げていく。股間を押さえて蹲る盗賊。他の二人も見てるだけで何かを感じたのか思わず自分の股間を抑える。 「うん‥‥まぁアレは同情しますよ」 突然肩を叩かれビクリと振り向いた盗賊、目の前には扇子片手にどこか遠い目をした琉璃。慌てて刀を構えようとするもあっという間に縄で縛られ近くの木にぶら下げられる。しかも股間を抑えたままの姿で。 「や、やめろぉぉぉぉ!? せめて手を‥‥手の位置をぉぉぉっ!?」 まるで血の涙を流さんが勢いで叫ぶ盗賊。 「な、何なんだてめぇらは‥‥ん?」 残された盗賊が慌てふためきキョロキョロと辺りを見回す。が、自分の下半身に何やら熱い視線を感じてふと下に目を向ける。そこには褌に穴が開くのではないかと思うほどマジマジと男の下半身を見つめる智の姿が。 「これが‥‥噂の褌‥‥一体どんな効果が‥‥」 ぶつぶつと呟きながらそーっと褌に手を伸ばす智。 「あー‥‥色々といいのか? それ。いや、俺は構わんが」 「へっ‥‥? い、いえいえいえっ!? 私何かしちゃってましたかーっ!?」 困った顔で進言する盗賊の声ではっと我に返る智は、手と顔をぶんぶんと振りながらずざーっと後ずさり。盗賊は何だか悲しくなったのか「いや、そこまで下がらんでも‥‥」と呟いていた。と、そこで頭上から甲高い声が響き渡る。 「ふははは! 現れたな、悪の盗賊達! この私‥‥正義の狐仮面が直々に成敗してくれる!」 盗賊は気を取り直して声のしたほうに顔を向ける。日の光を背に受けて高い木の上に照らし出された勝一はびしっと盗賊を指差すと高笑いをしながら言い放つ。何故か今日は狐のお面を被っていた。 「‥‥まともなのはいないのか」 「一番まともだろーっ!?」 うんざりした顔で頭を振る盗賊に精一杯の抵抗を試みる勝一。 「ま、まぁいい。今からそこに行くからちょっと待ってろ!」 そう言ってうんしょうんしょと木を降り始める勝一。木の下で智が「ふぁいとですよーっ!」と声を掛ける。盗賊は既に脱力して地にガクリと膝をついた。 「あなたも大変ですね‥‥」 瞳に涙を浮かべながら見上げた盗賊の視線の先には、やはり遠い目をしたままの琉璃。しかしその手にはピシンと音を立てて張らせた一本の縄。 「もう‥‥好きにしてくれ‥‥」 「では遠慮なく」 即答した琉璃は慣れた手付きで男に縄をかけて瞬く間に縛り上げ、先程と同じように木に吊るし上げた。何だか亀の甲羅のような縛り方になっていたのはきっと気のせいだろう。 「間に合わなかった‥‥」 「頑張ったのにねぇ‥‥せっかくだからシュラハがご褒美あげちゃうよぉ♪」 呟きながらガクリと膝をついた勝一の顔にシュラハが持っていた符をぺたりと張り付ける―――先程股間から吸い上げた吸心符を。 「うにゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!? 何か生温いぬくもりがぁぁぁぁっ!?」 勝一の断末魔にも似た叫び声が辺りに木霊する。合掌。 一方の智は縛りあげられた男をくるくると回しながら、もっこりとした股間をじっと見つめていた。 「こ、この出っ張りが特殊機能なのでしょうか‥‥」 「いや、それは違うと思う‥‥」 琉璃の冷静な突っ込みは風に流れて智の耳に届くことはなかった。 ―――入口制圧完了。 ●褌争奪戦 〜突入編〜 表の入り口で一悶着あった頃、残りの開拓者は砦の裏口から内部に侵入、そのまま頭のいるであろう場所まで一気に走り抜けていた。まだ表の騒ぎは内部には伝わっていないようで、時折出会う盗賊は一様に驚いた表情を浮かべている。 「煉、真ん中の気配はまだ動いてない?」 出会い頭の盗賊に拳をぶち込みながら薫が尋ねると、煉は静かに首を横に振る。 「いや、まだ特に目立った動きはない」 「なら‥‥一気にボスんとこまでイっちまおうぜ!」 叫んだアルカの前方にたまたま姿を現してしまった盗賊が一人。ニヤリと笑みを浮かべたアルカは目の前の盗賊に標的を定め、走る勢いのまま右、左と順番に両手の木刀を振り下ろす。 「せいせいせいせいせいせいっ! せいやぁっ!」 しこたま連弾をぶち込んだ後にトドメの一撃。呆気なく沈黙する盗賊。 「あんましこっちで騒いだらあかんのちゃうか?」 「なぁに言ってんだ。見られたら口を封じりゃいいんだよっ!」 若干不安に思った東雲に豪快な答えを返すアルカ。 「それもそやな」 「‥‥いいのか、それで」 あっさりと納得した東雲に煉は苦笑を浮かべた。 過去に拠点として使用されていた砦、当然お偉いさんがいる場所というのはそれなりに変わらないもので、砦最深部にある一室にそいつはいた。 「何だてめぇらは!? どっから来やがった!」 部屋に響き渡る怒号。発したのは熊のような大男―――おそらく頭なのだろう。無造作に伸ばした髭面にぼさぼさの髪、そして何より褌を除いて全裸だ。そして男が着用している褌には『漢』の文字が。 「あなたの腰に巻いてる物の返却を望んでいる人がいるの。素直に返せばよし、返さないなら‥‥力づくよっ!」 叫んだ薫は右拳を前に突き出し、重心を低く落として構えをとる。 「ちぃっ! これが狙いか! 野郎ども、やっちまいなぁっ!」 声と同時に数人の男がわらわらと部屋になだれ込んでくる。全員が革鎧に下半身だけ褌という異様な格好だが、それぞれが手に小刀を持っている。 「‥‥俺の出番だな」 小さく呟いた煉はスラリと刀を抜き放つと一味目掛けて一気に加速する。同時に刀の刃を逆さに向けて一閃。横っ腹を薙ぎ払われた男が吹き飛んで壁に激突。一瞬の出来事に固まる男たち。その隙に距離を詰めていたアルカ、男たちの側頭部に次々に打撃を放り込んでいく。 「オラオラぁっ! こんなんじゃおじさんは満足しねぇぞぉ!」 嬉しそうに男たちを殴り飛ばしていくアルカは傍から見てれば完全に女王様だ。更にその後に気力を練っていた薫が続く。 「嵩山流泰拳が継承者、嵩山薫。推して参るわ!」 男たちの振るう斬撃をするりとかわしながら急所目掛けて的確に掌打を置いていく薫。その動きは実に滑らかで、まるで舞を舞っているかのようだった。 「ちいっ! 開拓者の奴等か‥‥! そうとわかりゃ長居は無用だ‥‥っ!?」 次々とやられていく部下達の姿に焦りを覚えた頭は今のうちに逃げ出そうと、部屋の出口へと体を向ける―――が、足が動かない。慌てて視線を下に移すと、何やら触手のようなものがうねうねと絡みついていた。 「なっ‥‥なんじゃこりゃあっ!?」 「はーっはっはっは! わいを忘れてもろたら困るでぇー!」 振り向いた頭が見たのは腕組みをして笑い声を上げている東雲。その手には数枚の符が握られていた。何とか逃れようと必死にもがく頭。 「無駄や無駄やっ! これはわいがりありてぃを追及して考えた式神、名付けて『お触りくんあるふぁ』や!」 東雲の声に反応するかのようにうぞうぞと動く触手たち。更に触手は徐々に褌内部へと侵入を開始する。 「あぁっ!? こ、こらっそこは‥‥うおぉぉぉっ!?」 他の盗賊を片付けた薫とアルカと煉が視線を戻した時には、妙に艶やかな声を上げる頭とそれを見ながらにやにやしている東雲の姿。その様子はもう混沌としか言い様がなかった。 「とりあえず目的だけ済ませちゃいましょうか」 苦笑する薫の言葉に二人も頷く。 「さすがに女性にアレを取らせるわけには‥‥」 「そうか? じゃあヨロシク」 即答するアルカにちょっと後悔した煉は溜息を吐きながら未だ謎の攻防を繰り広げる頭の元へ。 「‥‥悪く思わないでくれ」 そう言って煉はすっと褌―――何だか色んな液体のようなモノがついてたようにも感じたがそこはあえて見ない振り―――を剥ぎ取った。 褌とは当然下着である。 それを剥いでしまえばどうなるか。 残されるのは生まれたままの自然の姿のみ。 思わず目を背ける薫。そして対照的にわなわなと肩を震わすのはアルカ。 「こっ‥‥この破廉恥がぁ‥‥何粗末なモン見せてくれてんだ、あぁん!? ブチ撒けられてぇかぁ!」 「そ、そんな理不尽なぁぁぁぁぁっ!?」 その後アルカの拳は頭の意識が完全になくなるまで振るわれ続けた。 ●褌は永遠に。 「ふっふっふ‥‥獲ったどぉーっ!!」 頭から剥ぎ取った褌を棒に巻きつけて天に掲げた東雲は、よくわからない感想を空に向かって叫ぶ。 「褌、凄いですね‥‥着け心地ってどうなんでしょうか‥‥」 まだ褌の能力を解明することを諦めていない智が、ひらひらと靡く褌に感嘆の声をあげながら新たな境地へと勝手に走り始める。 一方盗賊たちはというと、琉璃によってやはり縛りあげられて転がされていた。最早その縛り技は達人の域に達しているようにも思われる。 「ふふ‥‥かぁわいいー♪」 どこかうっとりした表情で縛られた頭の下半身を見つめるシュラハ。既に褌を剥がされているので代わりに薫が用意した拳布が巻きつけられていたのだが、褌よりもぴったり感が強いため色んな場所が強調されている。 「ちょっとマッサージでもしてあげちゃおうかなぁ‥‥えい♪」 「ぬおぉぉぉぉっ!? 刺激が、刺激がぁっ!」 悶える頭―――アルカにボコボコにされたため顔だけでは判別しにくいが―――はシュラハの手の動きに合わせてびくんびくんと体を震わせる。そんな頭に刀を突き付けながら鋭い目付きで睨む勝一。 「さて、それじゃあなたには褌を盗んだ理由を聞かせてもらいましょうか」 凄む勝一。しかし頭に答える余裕はない。 「うぅっ‥‥最後ぐらい格好良く決めたかったのに‥‥」 「ふふ、勝一おにぃちゃんもお疲れ様♪」 涙目の勝一にシュラハが微笑みながらその頭を撫でる―――さっき何かを握っていた手で。 「その手は嫌だぁぁっ‥‥ふにゃあぁぁぁ‥‥力が抜けるよぅ‥‥」 「あれぇ!? なんでぇ?」 へたりとしな垂れる勝一に困惑するシュラハ。どうやら勝一は頭を撫でられると骨抜きになってしまうようだ。 「何というか‥‥もう突っ込みどころすらわからん‥‥」 最早苦笑しか出てこない煉の呟きは、ゆるりと流れる風に乗って砦の中へと消えていった。 〜了〜 |