|
■オープニング本文 前回のリプレイを見る ●天儀暦10XX年。 「こうして見事舘三門の少年を救い出した一行は、一先ず弥栄村で休むことにしたのじゃ」 「最後砦が崩れたんだよね!? その時のあの二人はどうなったの!?」 「ん? それはのぅ‥‥」 「それは!?」 「‥‥‥‥‥‥秘密じゃ」 「えぇぇぇーっ!?」 焦らしに焦らした挙句の老人の言葉に、少年はあからさまに不満の声をあげる。 「ほっほっほ、そこは後ほどの話じゃよ。ここで問題になるのは、弥栄村の方じゃ」 そう言って老人は広げた地図の上――呉内城を指差した。 「ここにおる女は舘三門の少年を亡き者にしたい。それを頼んでいた二人組が失敗。更に追撃を掛けた何者かがおる――ここまではよいか?」 こくりと頷く少年。 「では少年を狙う者たちは、次にどうすると思う?」 「え? えーっと‥‥と、とにかくこの男の子を狙うわけで、でも何回か失敗しちゃってるわけで‥‥失敗しないようにがんばる、とか」 「ほっほっほ、頑張るか。まぁ確かにそうじゃの」 少年の答えに笑みを浮かべる老人。 「頑張るというのとはちと違うが‥‥彼らはついに強行な手段に出てきたのじゃよ」 「きょうこう?」 「そうじゃ。つまり」 老人は呉内城を指した指を、つつっと弥栄村に滑らせる。 「――攻めたのじゃよ」 ●恐慌の弥栄村。 「ほ、本当なのですか!?」 声を荒げた舘三門辰巳に、その従者であるお琴はこくりと頷いた。 「はい。呉内城から出撃した兵士は二千。そのほとんどが周辺諸国より腕自慢のならず者のようですが、中には城仕えの兵士も混じっているようです」 お琴の言葉にわなわなと拳を奮わせる辰巳。 「そんな‥‥このままでは関係のない人たちまで巻き込まれてしまう‥‥!」 このまま弥栄村に留まれば、戦火は確実にこの村を飲み込むだろう。 まして相手は元々がならず者のという性質の悪さ。たとえ目標である辰巳がいなかったとしても、村に及ぼす影響は甚大となるだろう。 「‥‥お琴――」 「いけません」 口を開いた辰巳をお琴は言葉で制する。 「貴方様のことです。自分と引き換えに兵士たちに撤退を促すおつもりだったのでしょうが、それでは何のためにここまで逃げ延びてきたのかがわかりません。それでは――」 と、そこで口を閉ざし、ぐっと何かの言葉を飲み込む。 少しの沈黙。 「‥‥それでは兄様が浮かばれませぬ」 これには辰巳も項垂れるより他なかった。 既に自分が生き延びる為に犠牲となった者がいる。ここで自分が命を投げ出せばその者に申し訳が立たない。 「では‥‥ではどうすれば良いというのですか!?」 声を荒げる辰巳に、お琴はしばし思案する。 「‥‥あの方々にお頼みするより‥‥ありません」 「開拓者の皆様、ですか」 辰巳の言葉にこくりと頷くお琴。 「私たちは、あの方々に頼りっぱなしではありませんか」 「しかしそうでもしなければ私たちは生き残ることすら難しかったのですよ?」 「それはそうですが‥‥」 「それに、報酬はきちんとお支払いしているのですから」 開拓者という職業柄、受けた仕事はきっちりと全うしてくれる。それが一般の人間が開拓者に依頼する信頼でもある。 「‥‥わかりました。しかし今からではどうやっても間に合いは――」 「ご心配には及びません。そろそろお春が開拓者ギルドに着く頃です」 「どうあっても頼んでたわけですね」 「申し訳ありません。生き延びるためにはこれしか‥‥」 頭を下げるお琴に、辰巳はふるふると首を振った。 「いえ。ここまで来たら何としても生き延びて、呉内城を再び取り戻しましょう」 「はっ」 恭しく頭を下げるお琴を横目に、辰巳は自室の窓から呉内城のほうに視線を向けた。 |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
八十神 蔵人(ia1422)
24歳・男・サ
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
以心 伝助(ia9077)
22歳・男・シ
グリムバルド(ib0608)
18歳・男・騎
无(ib1198)
18歳・男・陰
ソウェル ノイラート(ib5397)
24歳・女・砲 |
■リプレイ本文 ●先行。 村に向かって進む軍。 その報せを受けた舘三門辰巳は、村の人間に避難を呼びかけるべく走り回っていた。しかし村人たちは彼の言葉に半信半疑の状態で、何かが向かってきていることを認識した上でも、ほとんどの人間は避難するというところまでには至ってはいなかった。 「はぁはぁ‥‥このままじゃ手遅れに‥‥」 走り回っていた辰巳は、息を切らしながら悔しそうに下唇を噛む。 自分のせいで多くの人が死ぬ――それは辰巳にとって耐え難いこと。 「辰巳様‥‥」 心配そうに見つめるお琴に、力ない微笑を返す辰巳。 「とにかくもう一度呼び掛けて――」 「辰巳様、あそこを!」 そう言って上空を見上げたお琴につられて、辰巳も視線を上に向ける。 視界に映るは旋回する高速艇の影と、そこから降ってきた三つの人影。 「のぉぉぉぉっ!?」 悲鳴と共に落下してきた人影に、ある者は逃げ惑い、ある者は何事かと見守る。 降り立った衝撃と土埃を舞わせた人影は四つ。 「押すなって言ったよねぇ!? ねぇ!?」 「逆に押せって意味だと思ったンだよ」 「どうしてそうなるんだYO!」 「だァから悪かったって」 降り立って早々、若干涙目の喪越(ia1670)の叫びに鷲尾天斗(ia0371)が苦笑交じりに謝罪する。 どうやら高速艇で何かあったようだ。何があったかは察しておこう。 そんな一行の周りには既に人だかりが出来ていた。突然の空からの来訪者に、村人たちが何事かと様子を見に来たのだ。 「辰巳様!」 人波の中からいち早く辰巳を見つけたお春が駆け出す。 「皆さん‥‥それにお春も」 見慣れた面々に顔を綻ばせた辰巳だったが、その表情はすぐに翳りを見せる。 「すみません、避難してもらおうと思ったのですが――」 言葉の途中、酒々井 統真(ia0893)が辰巳の肩に手を乗せる。 振り向いた辰巳の瞳を、動かした統真の視線が捉える。 少しの間をおいて、辰巳はゆっくりと首を縦に振る。 統真もまた頷きを返すと、今度は周囲を囲む村人たちに視線を移す。 「皆聞いてくれ!」 咆哮を思わせるような声が響き、視線が統真に集まった。 「突然すまねぇ。実は――」 ●遅参。 先行の四人が村に落ちてから少しして、今度は村より呉内城に向かう街道への入り口に三人の開拓者が降り立った。 「さすがに‥‥多かったすね」 視線を街道へと向けたまま呟いた以心 伝助(ia9077)に、ソウェル ノイラート(ib5397)は思わず肩を竦める。 「そうだね。多勢に無勢とはこのことだと言いたくなるね」 二人の隣では无(ib1198)が自身の懐の辺りをそっと撫でている。 「縁があるので引き受けましたが、また随分大勢で‥‥」 呟いた无はゆっくりと視線を村へと移す。 「少し手間取っているんですかね?」 「かもしれやせんね‥‥ただ気になるのは――」 伝助の言葉にソウェルは頷きを返す。 「思った以上に近いね」 彼らは村まで全力で来たはず。予定では敵が到着するまでもう少し余裕があったはずなのだが、先程見た限りではそれほど時間は掛からなさそうだ。 「こちら側も見られていたのかもしれませんね」 无は口元を少し歪める。 確かに街道は直線、こちらが櫓で見渡せるように、飛んでくる高速艇なども相手からは見えていたのかもしれない。そうなれば結果的に相手の進軍速度は早めてしまったことになる。 「相手はゴロツキとはいえ数が多いっすからね。何とか村に着く前に止めやせんと」 伝助は静かに目を閉じる。 体中を冷たい血液が行き渡るような感覚。同時に心の中がすっと冷えていく。 (昔と同じ‥‥ただ、それだけ) それは伝助なりの、覚悟―― 「それに‥‥ゴロツキだけとは、限りませんしね」 无の懸念は姿を消した蛇尾と花音。ギルドに調べては貰ったが依然として行方は掴めない。生死すら不明のままだ。 と、そこで二人の思考を大きな声が遮る。 慌てて振り返った二人の耳に「急げ! 急がなきゃ死ぬぞ!」「セニョリータ! さぁ俺と一緒に――」「馬車が後から来る! それまでに準備だけ済ませてくれ!」といった叫び声が飛び込んでくる。 「‥‥ちょっと人手が足りてないのかな?」 ソウェルの言葉に伝助と无が頷く。 「どうしやす? もう少し猶予はあると思いやすが」 進軍速度が速くなったとはいえ、今すぐに辿り着くわけではない。一瞬考える仕草を見せた无。 「避難をお手伝いしてきます」 「あ、じゃあ私も行くよ」 「わかりやした。余り時間はありやせんが、あっしは周辺に簡単な罠だけでも作ってみやす」 頷きあった三人。 伝助は街道脇の森へ、无とソウェルは村へとそれぞれ駆け出した。 ●避難。 最後に村に辿り着いたのは二人と馬車。 既に遠くで炸裂音が響いているところを見ると、どうやら予測より速く敵が来ているようだ。 いち早くそれを感じ取った八十神 蔵人(ia1422)は思わず額を押さえた。 「あちゃー。こら早よせな‥‥おーい!」 叫ぶ先には既に馬車の到着を待つのみとなっていた村人たちの姿。 馬車を視界に捉えた村人たちは、我先にと荷物を持って駆け出してくる。その姿からこの先で行われている戦闘の激しさが垣間見えるようだ。 「落ち着いてくれー‥‥っても難しいよな」 慌てる村人たちにグリムバルド(ib0608)が声を上げるものの、遮るように鳴り響く戦闘音は一般の人間には恐怖以外の何物でもない。 それを気にせず落ち着けというほうが無理があるだろう。 尤も報告に聞いてる限りの数が攻めて来ているのであれば、それでもまだ静かなほうである。 「‥‥それにしても、やること派手だなー。後々の事とか考えてやってんのかねぇ‥‥」 「そんなん考えてへんやろ‥‥」 戦闘音の聞こえる方角に視線を送りながら呟いたグリムバルドに、蔵人も思わず苦笑を零す。 「にしてもここまでやるかー? 一体あの坊ちゃんに何があるっちゅーんや」 「ただ命を狙われるにしては大袈裟すぎるけど‥‥ここまでになると理由自体は単純なものかもしれないねぇ」 「せやなぁ‥‥っと、考えててもしゃーないわ。取り敢えず避難終わってからや!」 蔵人は女子供を優先的に誘導し、グリムバルドが馬車へと乗せていく。 余りに突然訪れた戦争の香に戸惑う村人たち。特に子供にいたっては泣き声が止まらず、共にいた男性が何とか宥めようとするものの上手くいかない。 「ちょいどいてみ?」 言いながら蔵人は懐をごそごそ探し、飴玉を取り出して子供の前にそっと差し出した。 「ほれ、これやるからさっさと行き?」 口調こそ少し乱暴ではあるが、そこには優しさが感じ取れる。それは子供にも伝わったようで、大声での泣き叫びから一転、きゅっと表情を引き締めると蔵人の手から飴玉を受け取り、こくりと頷いた。 「えぇ子や。ほな行っといで」 にこりと微笑んだ蔵人が言うと、子供は嬉しそうに頭を下げて馬車へと駆け出す。 「扱い慣れてるねぇ?」 「気のせいや。それより‥‥これであらかた乗せ終わったか?」 言われてグリムバルドは周囲をさっと見渡してみる。特に逃げ遅れているということはなさそうだ。 「大丈夫みたいだよ」 「おおきに。そしたら後は――」 再び鳴り響く爆発音。 言葉を切られた蔵人とグリムバルドの視線が交差する。 「‥‥やること派手だなー」 額に手をあてがいながらのんびりとした口調で言うグリムバルド。 気持ち的には自分も先陣きって暴れたかったという思いを胸中に押し込めながら、彼は漸く動き始めた避難の馬車を見やる。 「ほんまやで。のんびりもさせてくれへん‥‥なぁ!」 流れるような動作と共に両手に構えられた片鎌槍が淡白い光を放ち、蔵人は右手の槍を思い切り投げた。 地を抉って着地した槍、そしてその真上には一人の男が武器を構えたまま顔を引き攣らせていた。 蔵人の意図を素早く読み取ったグリムバルドは瞬時に身を滑らせ、男の首元に自身の蜻蛉切の穂先をあてがう。 ひっと短い悲鳴を上げた男は彼の睨み一つで慌ててその場を後にする。 その姿を目で追いながら視線を鋭くして周囲を見渡す。 「皆の攻撃を掻い潜ったのがいるのか‥‥」 既に街道では戦闘が始まっている。たかだがゴロツキに遅れを取るような仲間ではないが、如何せん数が多い。中にはこうして抜けてくる輩も――数は少ないが――いるのだろう。 「まいるわぁ‥‥ほら! さっさと逃げんと命保証できんでぇ!?」 突然の騒動に避難準備の手を止めていた村人たちに、蔵人は檄を飛ばす。 慌てて逃げ出す村人たちを横目に、残った二人は周囲に視線を這わせた。同時にいくつかの人影が物陰から飛び出してくる。 「次から次へと面倒なやっちゃで‥‥あ、そうや。えぇこと思いついた――おうこらてめえら何してるんか分ってるんかい!?」 突如声を張り上げる蔵人に、グリムバルドも一瞬目を見開く。 「舘三門家如きがなんや! 各国王に匹敵する権限がある大伴様から北面の芹内王様にも伝わるぞ! よう考えてみい、てめえらこれから自分がどうなるか」 怯ませて無用な戦を避けようと啖呵を切った蔵人。 一瞬静まり返る空気――が、そもそもここにいるならず者たちに、権力の類は通じない。彼らが信じるのは金か力か。 「だーっ! せっかく風呂敷広げたのに意味ないやんかー!」 「はは、嘘ではないけどなー」 若干苦笑いをしつつグリムバルドは長槍を構えなおす。 「はぁ、少しぐらい楽しょーと思ったんやけど‥‥しゃーないな」 溜息交じりの蔵人も、投げた槍を手中に収めて構えを取る。 「傷なら幾らでもくれてやる‥‥その代わり、皆には触れさせねぇよ」 戦場に、二人の槍使いが駆け抜けた。 ●街道沿い。 少し時は戻り。 順調に進軍を続けていた二千名の軍勢。しかし村まで後一歩というところで急に動きが鈍くなった。 「くっそ、誰だこんなトコに撒菱撒きやがったのは!」 次々に聞こえてくる悲鳴。どうやら街道に撒菱が撒かれていたようだ。 決して統制の取れているとは言い難い彼らが味わう混乱。それは当然撒いた本人の意図する形となる。 二千人が目指す先の途中、既に迎撃準備を整えた開拓者たちが彼らが来るのを待ち受けていた。 「クックック、さぁて痛がれクソ虫共」 視界に映る状況に笑みを浮かべる天斗。 しかしそれと同時に忘れることの出来ない記憶が、痛みと共に彼を襲う。 「イライラするぜェ‥‥クソ虫の分際でよォ」 「どうした?」 思わず額を押さえる天斗に、拳の骨をゴキリと鳴らして身体を解していた統真が声を掛ける。 「いや、何でもねェ」 首を振って答える天斗の瞳には、既に凶気の炎が宿っている。 統真もそれを確認して問題ないと判断したのか、「そうか」と短く答えただけで視線を前方へと戻す。 「さて、と。実践で使うのは初めてだけど‥‥」 呟いたソウェルは、手に握られた黄白色の魔槍砲についと指を這わせる。 「少しいいですか?」 声を掛けた无は、ソウェルの耳元で何やらぼそぼそと呟く。 少し考える素振りを見せたソウェルは。 「‥‥面白そうだね」 くすりと笑みを浮かべた。 と、そこに一陣の風が吹いたかと思うとさっきまでいなかった伝助の姿が。 「来やすよ」 ぼそりと呟いた言葉と同時、声を上げながらこちらへと駆け出す軍勢。 「よォやく出番ってかァ!?」 嬉しそうな顔の天斗は、手にした重装な鎧を纏ったような槍を振り回して前方に構える。 「なァ、お前等。魔槍砲って知ってる?」 誰にではなく、ただ言っただけ。勿論答えなどは待っちゃいない。 駆けて来た数人が間合いに入る。天斗の槍の宝珠が唸りを上げ、その力を蓄える。 「こういうモンなんだってよォ!」 響く凶笑。轟く砲撃。そして、戦は始まった。 ●戦。 天斗に続けての攻撃はソウェルと无だった。 「ソウェル、準備はいいですか?」 「こっちはいつでもいいよ」 構えるソウェルを確認した无は符を取り出す。 「では‥‥いきますよ」 言葉と同時、彼の手から宙へと舞う符はみるみるうちにその姿を変え、最終的に巨大な龍の姿へと変貌する。 当然向かってきていた者は驚き、その足を止める。 「うろたえるな! ありゃハッタリだ!」 中にはその効力を知る者もいるようで、気にすることなく進軍を開始。しかし。 「はったりじゃないんだよね、これが」 ふふ、と笑ったソウェルは、无が放った龍に合わせて砲撃を放つ。 結果。 巨大な龍がその身をくねらせ次々と人を薙ぎ倒していく――ように見えるのだ。 一度見てしまえばその恐怖は頭から離すことは難しい。 浮き足立つ軍勢に、畳み掛けるように統真と伝助が飛び出す。 とんでもない速さで接近してきた二人。相手が武器を構える隙すら与えない。 敵陣真っ只中に飛び込んだ統真は、一瞬で体中の力を脚に集めて大地を踏み抜く。 静寂。 直後、巨大な衝撃波が周囲に飛散し、辺りの男たちが吹き飛ばされる。 「怯むな! 相手はたった六人だ!」 叫んだ男は恐らくは城の正規兵だろうか。 「その気骨は見事っすけど」 男の背後に現れたのは伝助。慌てて男は武器を構えるが、その攻撃は全て空を切ることとなる。 「お気の毒っすね、いざとなれば傭兵諸共敵を消そうとするような雇い主に雇われちゃって」 伝助の言葉に男はピタリと手を止める。 少しの間男に視線を向けていた伝助は男に背を向けると。 「命が惜しいならとっとと逃げた方がいいっすよ」 言い残して姿を消した。 更に進軍を続ける男たちの中に、どこからか飛来した一撃にやられるという事態が起きる。 どこから来た一撃なのか、男たちにはわからない。 その犯人は―― 「へへ、こういうゲリラ戦ってのは一方的だぁな」 笑みを浮かべる喪越の姿。 相手が喪越の姿を見つけては攻撃を仕掛けようとするが、周囲に仕掛けられた地縛霊によって動きを封じられてしまう。 ただでさえ志体持ち相手だというのに、これではひとたまりもない。 「さぁ俺に倒されるか、依頼主に掻っ切られるか、好きに選べYO!」 戦場は荒れた。 天斗の砲撃が火を噴き、狂笑と共にゴロツキを薙ぎ倒す。 統真の拳が、蹴りが、旋風の如く吹き抜けていく。 无の符から放たれた怨念が、そして実体無き龍が、次々と恐怖をばら撒いていく。 ソウェルの砲撃は、村に向かう男達を正確無比に貫いていく。 伝助の刀は、機械の如く無慈悲に敵を切り裂いていく。 喪越の障害物からの霊魂砲が厭らしく男たちに突き刺さる。 勿論彼らだけでは全員を抑えることはできず、幾人かは包囲網を突破した者も勿論いた。 しかしそれらは軒並み蔵人の二つの鎌槍と、グリムバルドの一槍のもとに無力化されていた。 圧倒的な戦力差で迎えた弥栄村の襲撃。 しかし蓋を開けてみれば開拓者たちの圧勝、という結果となった。 だがこれで終わることはないことを、彼らは理解していた。 そして、それが遠くはないことを―― |