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■オープニング本文 「たっ大変だぁっ!?」 大声で叫ぶ男の声に耳を貫かれ若干眩暈を覚えながらお美津は頭を振った。何事かと思い部屋の襖を開けると、そこには使用人の為吉が涙を浮かべて庭をぐるぐる回っていた。その度に庭に咲いた紫陽花がゆらゆらと揺れる。さっきの叫び声はこの為吉。 「どうしたんですか為吉さん、こんな朝っぱらからそんな大声出して‥‥」 眉を顰めて問い掛けるお美津に為吉はおろおろと落ち着き無くそこら中を行ったり来たり。 「はうあぁぁぁっ! どこに行っちゃったんだぁ!!」 「だから‥‥あぁ、もう。落ち着きなさい」 余りに気が動転して話を聞かない為吉の頭にお美津の手刀がずびしと命中。 「‥‥痛いですお嬢様」 目に涙を浮かべた為吉が恨めしそうな目でお美津を見る。そんな為吉にはふ、と溜息をつくお美津。 「いいから。何があったの?」 「あ、はい‥‥実はもふらさまがいなくなったんです」 「‥‥え?」 ぽかんと口を開けるお美津に為吉は今朝起きた出来事を話し始める。 為吉の一日は屋敷で飼っている四匹のもふらさまに食事を与えることから始まる。だが今日の朝、ちょっと目を放した隙にそのもふらさまがいなくなっていたのだ。慌てて探すも為吉には見つけ出すことができなかったようだ。 「もしかして‥‥逃げ出した?」 「いえ‥‥屋敷の周辺の人にも聞いてみたのですが、もふらさまらしき姿は誰も見かけてないそうで‥‥」 お美津の疑問に首を横に振る為吉。 「このままむふらさまが見つからなかったら‥‥私‥‥私っ」 「あー、もうわかったから。とりあえず開拓者さんにでも協力お願いしてみたら?」 「わ、わかりました! 早速依頼を飛ばしてきます!」 言うが早いか為吉は一目散に屋敷の外へと駆け出していった。 ●求ムもふらさま探しのお手伝い。 うちの四匹のもふらさまの行方を捜してください。 ・もふの介‥‥体長三十センチ程。色は薄い赤。食いしん坊。 ・もふ麿‥‥体長五十センチ程。色は白。柔らかいところが好き。 ・もふ乃‥‥体長一メートル程。色は黒。暗くて狭いところが好き。 ・もふ次郎‥‥体長三十センチ程。色は薄い青。隠れんぼが好き。 |
■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
ダイフク・チャン(ia0634)
16歳・女・サ
貴水・七瀬(ia0710)
18歳・女・志
香坂 御影(ia0737)
20歳・男・サ
蘭 志狼(ia0805)
29歳・男・サ
霧葉紫蓮(ia0982)
19歳・男・志
剣桜花(ia1851)
18歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●捜索開始。 「すみません皆様、わざわざお越しいただいて‥‥」 「いや、気にしないでくれ。これも仕事のうちだ」 苦笑を浮かべながら礼を述べるお美津に対して律儀に答えたのは蘭 志狼(ia0805)。戦うこと以外は余りしたことがない志狼にとって今回のような依頼は未体験。故に全力で臨まなければと気合十分だ。 「あー、なんだ。この朴念仁は放っといて気楽にしてくれ。皆やる気満々だから」 霧葉紫蓮(ia0982)は志狼の肩に手を乗せながらちらりと後方に目を向ける。 「もふらさま‥‥早く見つけてもふもふしたいです」 並々ならぬ決意を胸に小さな拳をぐっと握るは鈴梅雛(ia0116)。元々社交的ではない彼女は狭いところ好き。しかしどうやらもふら様にも自分と同じような性格のがいるらしいと聞き、その期待に胸を躍らせる。 「みゃーみゃみゃ〜☆もふらさまみゃ〜☆」 嬉しそうに目を細めるダイフク・チャン(ia0634)はもうもふらさまに触りたくて仕方がないといった表情。 「ふふ‥‥名前にもふだぜ‥‥もふもふなんだろうなぁ‥‥寧ろ抱いて寝てみたりとか‥‥うわぁ、やべぇ! 超やべぇ!」 「七瀬‥‥涎、涎」 妄想全開で手をわきわきさせてにやける貴水・七瀬(ia0710)に香坂 御影(ia0737)がにこやかに手拭いを渡す。七瀬は顔を赤らめながら御影から手拭いをひったくった。 「よーし、とうとう拙者の力を見せるときが来た! 皆気合入れて楽しくやろうぜーっ!」 うおーっと叫びながら北条氏祗(ia0573)は両の拳を天高く掲げる。 「こんなご時勢ですからね‥‥明日のおまんま食べるためには仕事が必要なんです‥‥そして次の仕事を貰うのです‥‥!」 こちらは何だか暗い世情を嘆きながら呟く剣桜花(ia1851)。彼女にとってはきっと切実な問題なのだろう。触れてはいけないんだと皆その呟きは聞かなかったことにした。 「‥‥‥‥な?」 にこやかに親指を立てる紫蓮にお美津は何だか目からしょっぱい水が出てきたような気がした。と、そこで志狼がお美津の肩をがしっと掴む。 「ひあっ!?」 「‥‥任せろ」 限りなく真剣な顔で迫る志狼。ここでお美津の意識が一瞬天に召されたことは後から知った話。 こうして開拓者たちのもふらさま探しはゆるーい感じで始まった。 ●捜索開始。 「よーし、拙者たちはもふの介の捜索だな! 頑張ろうぜ!」 腕をぐるぐると回す氏祗は後ろからちょこちょことついてくる雛に向かって声を掛ける。 「はい‥‥ひいなも、探します」 こくこくと頷いた雛はその小さな拳をきゅっと握り締める。 まず二人が目を付けたのは炊事場。為吉情報によればもふの介は食いしん坊だとか。 「食いしん坊なら、食べ物のある所に、居そうなのですけど」 雛の呟きに二人は炊事場の中を見回した。まず少し離れた壁際におかれた二つのかまどを捜索した二人だったが、結局かまどからは特に何も見つからなかった。更に炊事場の捜索を進める二人は水瓶の中や棚の上、そして食材置き場に至るまで満遍なく探し回ったが、結局もふらさまらしき姿は見当たらなかった。 「ここにはおらんなぁ‥‥」 「はい‥‥では次は貯蔵庫、ですね」 言いながら二人は炊事場の外にある貯蔵庫へと移動する。 普段より保存の利く食材をいれておくための貯蔵庫は普段人が出入りするということが余りない。更に保存状態を良くする為に日の当たらない場所に建ててある。 「本当に真っ暗だな‥‥雛、灯りを」 「はい」 ヂヂッと音がして雛の持つ提灯に火が灯る。同時にぼんやりと映し出される室内。主に干し肉の類が所狭しと並んでおり、壁際には恐らく漬物と思しき樽が並べられていた。 「ひいなは、もふらさまが逃げない様、ここに立ってます」 言いながら入り口の扉をカラカラと閉める雛。それを確認した氏祗は揺らめく提灯を雛から受け取り、照らされた光で慎重に捜索を開始する。漬物樽を一つずつ開けていき、干し肉の束を一つ一つ探っていく。いくつかの干し肉を調べ終えた頃、氏祗の耳に不思議な音が聞こえてくる。首を傾げた氏祗は提灯を音のする方へと向ける。見えてきたのは小さな蠢く赤色。一心不乱に何かを貪っている。と、そこで自分を照らす灯りに気付いたのか、その赤色はゆっくりと氏祗の方へと振り返り、一言。 「‥‥もふ?」 「見つけたぁぁぁぁぁっ!」 「もふっもふーっ!?」 思わず叫んだ氏祗に驚いた赤色―――もふの介が口に加えていた干し肉をぽろりと落とし、氏祗の横をささっと擦り抜けて出入り口へと向かう。だが当然その先には雛が待ち構えている。 「逃がさない、です!」 「もふ〜‥‥」 立ち塞がる雛に目を潤ませて見上げるもふの介。しばらく見詰め合った一人と一匹。 「‥‥‥‥あう。可愛い、です」 ある意味負けたのは雛。へにょっと顔を緩ませてもふの介を素早く抱きしめるとそのままもふもふとしつつぎゅーっと抱きしめる。一方のもふの介は驚いた表情を浮かべるも、観念したのか大人しくしている。 「‥‥これ、食うか?」 言いながら氏祗が取り出したのは元々餌として使用するつもりだった鶏肉と大根をそっと差し出す。もふ乃介の目がキラリと輝いたかと思うと、瞬く間に鶏肉に食いついた―――氏祗の手を一緒に。 「‥‥うおぉぉぉぉっ!?」 「あ、動かないで、です」 「もふもふ〜♪」 各々の叫び声が薄暗い貯蔵庫に響き渡り、提灯の灯りがただ静かにその影を揺らしていた。 もふの介―――確保。 ●好きな者たち。 一方こちらはかくれんぼ好きのもふ次郎を捜索するためにまず庭に降り立った七瀬と御影。七瀬がまず心眼で周辺の生物の存在を探る。だがどうやらこの屋敷、野良猫などもいるようで、あちらこちらに気配が存在していた。 「‥‥どう?」 「ダメだ‥‥うまくいくと思ったんだけどなー」 御影の言葉に残念そうに首を振る七瀬。 「じゃあ先に風呂場探そうか」 「だな」 顔を見合わせた二人は早速脱衣所に移動。 脱衣所の籠は服やら手拭いやらがどっさりと積まれ、さらに風呂釜にはしっかりと水が張られている。 「‥‥どう見ても‥‥これ、だよな」 苦笑を浮かべながら脱衣所の籠を指差す七瀬。積まれた洗濯物の束の底の方、何やらもぞもぞ動いたような気がした。 「なんというか‥‥何で為吉はこれが見つけられなかったんだ‥‥」 御影も溜息をつきながら籠の上に乗っていた一枚の布切れを手に取った。それはやたらと長い布で所々に使い込んだような跡がある。一瞬何かを考えた御影、ふと隣の七瀬と布を交互に見る。 「‥‥な、何だよ‥‥?」 「‥‥‥‥これってもしかして‥‥さら―――」 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 言い掛けた御影の言葉を遮って大きな悲鳴が木霊する。 御影がまじまじと見つめていたのはさらし。この家でさらしを巻く必要があるのは当主の奥方かお美津のみ。当然この場合お美津なわけだが。そしてこれまた偶然に通りかかったお美津が自分の着用済みさらしを持ってまじまじと眺める男を目撃してしまったわけである。 「ち、違う! それは誤解―――」 「変態ーっ!!」 慌てて弁明する御影にお美津の右掌が炸裂。錐揉み回転で倒れる御影の先には脱衣籠―――御影が地面に到達すると同時に、反動で中身をぶちまける籠。 やれやれと肩を竦めながらも余程楽しいのかくつくつと笑いを堪える七瀬は視界に違和感を感じて視線を動かす。舞い散る洗濯物の中に混じった大きな白いもふもふ―――もふ麿だ。 「そこだっ!」 叫んだ七瀬の瞳がキラリと光り、今まで見えたことのないような動きでその白いもふもふを捕まえる。 「ももももふっ!?」 「うふふふふ、もう逃がさない‥‥うりゃーっ」 掴んだもふ麿を前ににやりと笑みを浮かべた七瀬は、そのままもふ麿の身体に頬を擦り付ける。 もふもふもふもふもふもふ―――七瀬がこのもふっと感から逃れられるのはしばらく後のことだった。 「もふ次郎ではなかったか‥‥少し読みが外れたか?」 「んなこたどーでもいいよもう‥‥あぁ‥‥幸せ‥‥俺このまま死ねる‥‥」 お美津の誤解も無事に解けた御影の少し残念そうな呟きは、もふ麿を抱えたまま恍惚の表情を浮かべる七瀬の耳には届いちゃいなかった。 もふ麿―――確保。 ●恋心は突然に。 「あ、あの‥‥私の部屋はもう探してあるんですけど‥‥」 自分の部屋をがさごそと探す志狼と紫蓮に為吉はおどおどと声をかけた。勿論、そんなことを聞く二人ではないが。 「ふむ‥‥やはりあそこが怪しいと思うのだが」 「志狼もか? 奇遇だな、俺もだ」 何やら頷きあう二人の視線は部屋に飾ってある掛け軸に向けられている。 「ちょっ‥‥そこには何もな―――」 妙に慌てた為吉を紫蓮がガシリと捕まえる。びくんと震える為吉、その耳元で志狼にすら聞こえない声で紫蓮は何かを呟いた。数瞬後、為吉は「違う‥‥違うんだぁぁっ!?」と叫びながら耳を塞いで蹲った。 「‥‥お主、何を言ったのだ‥‥というか掛け軸の捜索は?」 「ふふ、秘密だ。というかお前気付いて言ってたんじゃ‥‥ま、いいか。ここにはもう何もない。次の部屋に行こう」 呆れ顔で問い掛ける志狼に不適な笑みで答える紫蓮はさっさと次の部屋へと歩を進める。 このとき為吉は思った―――勘が鋭すぎる人は敵だ、と。 「さて、次はこの物置部屋だが‥‥こりゃヒドイな」 言いながら眉を顰める紫蓮。それもそのはず、部屋の中はごっちゃごちゃになっていて足の踏み場もない程だ。さすがの志狼もこれには驚いたようで襖を開けたまま固まっている。 「色が黒いからな。薄暗さと同化してなければいいが‥‥」 言いながら部屋に入る紫蓮。さすがに高そうな品もあるためその足取りは慎重そのものだ。一方の志狼は部屋の入り口で仁王立ちしたまま捜索する紫蓮の様子を眺めていた。と、そこで着物を入れる箪笥の上に奇妙なものを発見する。暗闇でかなり目を凝らさなければ見えることはないのだが、その闇の中にうっすらと光る二つの丸―――目だ。 「‥‥な、に‥‥ど、どうすれば‥‥‥‥」 額から汗をたらりと流しながら固まる志狼。そんな彼の呟きを耳にした紫蓮が思わず後ろを振り返る。だがその足元には無造作に転がされた壺が。まるで芝居のように壺を踏みながら転ぶ紫蓮。 「‥‥うおっ!?」 背中からどすんと倒れる紫蓮と同時にぴゅーんと宙を舞う壺。その壺はそのまま箪笥の上の黒い物体に命中。驚いた黒い物体は慌てて飛び出し志狼の顔面へ。黒い物体―――もふ乃の体当たりを顔面に受けた志狼もまた、その場に仰向けで倒れる。 「な、何事!?」 起き上がった志狼の目の前には目をうるるんとさせたもふ乃の姿が。目を合わせられると何故か動けない志狼。再び見詰め合う瞳と瞳。と、そこで起き上がった紫蓮がもふ乃にぽむと手を乗せる。 「さっきはすまなかった。僕達はお前を探していたんだ。彼は王子様だぞ」 満面の笑顔でとんでもなく適当なことを言う紫蓮に、志狼は恨みの目を向けようとするが、もふ乃の瞳が何だか輝きを増していて離す事ができない。 「あー‥‥よろしく、な?」 次の瞬間もふ乃の愛の体当たりを食らったことは言うまでもない。 もふ乃―――確保。 ●最後の子。 「もふらーや、もふら〜♪」 「その歌は何なのみゃ‥‥?」 謎の歌を歌う桜花に首を傾げるダイフク。彼女たちはかくれんぼ好きというもふ次郎の捜索にあたっていた。基本的にはダイフクが出入り口の封鎖、そして桜花が部屋の捜索という形にしいているようなのだ。 「‥‥なかなか見つかりませんねぇ」 お美津の部屋とその両親の部屋を探していた桜花ではあったが、もふらさまらしき影はなかなか姿を現さない。 「‥‥はぁ、ダイフクさん、少し交代を‥‥」 言いかけた桜花の動きがピタリと止まる。桜花の視線の先は部屋の入り口、本来ならばダイフクが退路を塞ぐべく見張っている場所。確かにそこにダイフクはいた。ただし――― 「‥‥もう入らないにゃよ〜‥‥にゅふふふ‥‥♪」 暖かい日差しの中真っ白いお布団の上でコロコロと気持ちよさそうに転がるダイフク。その姿はまるで借りてきた猫のようだ。元々は柔らかいところが好き、というもふ麿を探し当てるために白いふかふか布団を敷いていたのだが。 「ダイフクさん‥‥お仕事しましょうよ‥‥私達の生活がぁー‥‥」 しくしくと涙を流す桜花はしばらくダイフクを揺さぶっていたが、全く起きる気配がないことを悟ると泣く泣くもふらさま捜索へと戻っていく。 どれ程時間が経っただろうか。少なくとも探し疲れた桜花がダイフクの横で眠りにつくぐらいの時間は経っている。 ふと目を覚ましたダイフクは庭の方に視線を向けると、鮮やかに咲いた紫陽花が風に揺られて揺らめいている―――が、一部だけが全く動いていない。 「‥‥? 見間違いかにゃ‥‥?」 寝ぼけ眼をくしくしと擦りながらじっと紫陽花のほうを見つめるダイフク。と、紫陽花だと思っていた部分がもそっと動いて振り返る。愛くるしい目に遠目からでもわかるそのもふもふ具合―――もふ次郎である。しばらく遠目に見詰め合っていたダイフクともふ次郎。と、ダイフクが匍匐前進のようにのそのそともふ次郎の傍まで移動する。特に捕まえるわけでもなくただ傍にいるダイフク。最初は驚いていたもふ次郎だったが、次第に警戒心が解けやがてうつらうつらと眠りに付き始める。そこでいつの間にか傍に来ていた桜花がもふ次郎をがしっと捕まえた。 「ふふふ‥‥おまんま捕まえたです‥‥」 「もふもふするのみゃ〜☆」 「も、もふぅ〜!?」 それぞれの思いと共に迫る二人にどこか悲痛なもふ次郎の叫びが庭に木霊した。 もふ次郎確保――― ●もふタイム。 全てのもふらさまを発見した一行は庭に集合し、依頼人である為吉に報告を済ませた。 「ありがとうございました! おかげで全てのもふらさまが見つかりました‥‥って皆さん聞いてます?」 為吉の前に広がる光景―――それは。 「待て! 人間ともふらさまではさすがに釣り合いがっ!」 「そう言わずにもふ乃の愛を受け入れてやれって―――わぁっ!?」 何やら言い争いながらも黒いもふ乃に圧し掛かられて倒れる志狼と紫蓮。 「もふもふ‥‥やめられません」 「へぇ〜‥‥さすがにもふもふしてんだなぁ」 もふの介をぎゅっと抱きしめたままそのもふっと感に顔を埋める雛に、初めての感触に驚く氏祗。更にその横ではダイフクがもふ次郎と一緒にすやすやと眠りについている。 「うふふ‥‥次の仕事よ‥‥次の‥‥」 不気味に呟く桜花は最早別の世界へ旅立たれたようだ。 「はぁ‥‥もふもふ〜」 「七瀬‥‥もう完全に虜だな」 もふらさまもふもふしつつ脳内花吹雪状態の七瀬に溜息をつく御影。 「これ、持ち帰りは‥‥」 「「ダメです」」 珍しく為吉とお美津の息が、無駄にぴったりに合った瞬間であった。 〜了〜 |