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■オープニング本文 ●とある村の近くで 本格的な夏の前。雨上がりの空。咲き乱れる紫陽花が露に濡れる。 「ここまで上手く行くとはなぁ」 「猫又とはいえちびっこだ。大した力は持ってなかったってことだな」 ワハハハハ……と笑う男達。 その腕の中には、荒縄でぐるぐる巻きにされ、ぐったりとした仔猫又2匹……。 「よし。とっととお頭のとこ持ってこうぜ」 「ああ、見つかったら厄介だしな」 足早にその場を去ろうとする男達の前を横切る一陣の風。 何かが彼らの足元を走り抜け、ずしゃーーーっと言う音を立てて止まる。 「追いついたにゃ! お前達! 妹達たちを返すにゃーっ!」 「返さないと、頭からバリバリ食ってやるにゃー!」 口々に叫ぶ2本の尻尾を持つ小さなケモノ。 捕まった仔猫又の兄弟が、危機を悟って追いかけて来たらしい。 「おーおー。こいつは飛んで火に入る夏の虫ってとこかね」 「こいつらも捕まえて帰るとするか」 威嚇する2匹の仔猫又。 その姿に、男達は下卑た笑いを浮かべた。 ●拐かされた猫又 「いない! 子ども達がいないにゃ!」 「え? 子ども達って……仔猫又のこと?」 「そうにゃ! 消えちゃったんだにゃ!!」 顔を見せるなり、半狂乱で叫ぶ猫又に茫然とする開拓者達。 ――今から1か月程前に遡る。 開拓者達はとある漁村で盗みを働いた母猫又を懲らしめ、5匹の仔猫又と共に就職先を世話したことがある。 彼らの就職先であるその村は、新しく『猫又神社』を建立し、6匹の猫又を祀る村としてじわじわと知名度を上げつつあった。 猫又がいるだけでも珍しいのに、更に珍しい仔猫又が見られる。 更に、運が良ければ猫又達と遊べるらしい……。 そんな噂は、地域住民は勿論、開拓者達の耳にも入ることとなり――。 ここにいる開拓者達も、新しく出来たという名所を見たり、猫又達と遊べることを期待してやって来たのであるが……。 「落ち着いて下さい……。一体何があったんですか……?」 どうどう、と宥める開拓者に、猫又はハッとして……がっくりと肩を落とす。 「……子ども達が隣の村にお使いに行ったんだにゃ。すぐ近くなのになかなか戻って来ないから、村の人が心配して様子を見に行ったんだけど……」 「周囲を探したんですが、姿が見えんのです。隣の村にも行っていないそうで……」 猫又の言葉を継いだ村人。それに、開拓者が首を傾げる。 「んー? その猫又、子どもなんだろ? どこか遊びに行ったんじゃないのか?」 「いえ。遊びに行くとしても、黙って行くような仔達ではないんですよ。真面目に仕事をしてくれていますし……仕事を放ってどこかに行くとは思えないんです」 「何かあったのかもしれないにゃ。お願いにゃ。子ども達を探してにゃ……!」 言い募る村人と母猫又に、顔を見合わせる開拓者達。 仔猫又を良く知る彼らの見解が一致している以上、何事かあったと考えた方がいいのかもしれない――。 分かった、と短く答えた開拓者達。さてどうやって探そうかと考え始め……。 その頃。最後の1匹である仔猫又は、全力疾走していた。 「おかーにゃに、みんなに、早く報せるにゃ……!」 子どもである自分達は、まだ猫又として半人前だ。 上手く術も使えない。 2匹の兄弟達が男達を足止め出来るのも、ほんの僅かな時間だろう。 だから速く、速く、速く……! 小さな身体。短い手足を必死に動かし――。 目指す村の入り口が、もうすぐ見えそうだった。 |
■参加者一覧
ヘラルディア(ia0397)
18歳・女・巫
荒屋敷(ia3801)
17歳・男・サ
クロウ・カルガギラ(ib6817)
19歳・男・砂
ユエン(ic0531)
11歳・女・砲
リシル・サラーブ(ic0543)
24歳・女・巫
紫上 真琴(ic0628)
16歳・女・シ
クリス・マルブランシュ(ic0769)
23歳・女・サ
黒憐(ic0798)
12歳・女・騎 |
■リプレイ本文 ●まさかの事態 「最近町おこしを成功させた村があると聞きましたので、見聞にと思ったのですが……どうしてこんなことになったのでしょう……」 突然降って沸いた状況に戸惑いを隠せないリシル・サラーブ(ic0543)に頷きつつ、遠い目をした紫上 真琴(ic0628)。 ついこの間来た時は長閑な漁村だったのに、今や観光名所になっているというから驚きだ。いや、驚いている場合じゃないんだけど……。 「またあの子達にこんな形で関わる事になるとはね……」 「はい。……まさか誘拐の被害者となるとは……この猫の黒憐の目をもってしても見抜けませんでした……」 深々とため息をつき、ぽつりと呟く黒憐(ic0798)。 また騒ぎを起こすのは猫又達だと踏んでいて、いつでも説教をしてやる気満々だったのだが。世の中、何が起こるか分からない。 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。 そして、その横から湧き上がる怒気。 クロウ・カルガギラ(ib6817)とユエン(ic0531)が、憤怒の形相で仁王立ちしていた。 「今日は猫又と戯れられると聞いて楽しみにしてたのに!」 「ユエンは、誘拐犯をぜーーーーったいに許さないんですっ!」 「そうだそうだ! 俺だって猫又、相棒に欲しいくらいなんだぞ!」 「ユエンだって!」 普段陽気なクロウと、ほえほえとしたユエンがここまで怒りを露わにするのは珍しい。 クリス・マルブランシュ(ic0769)も、どす黒い炎を背負い、ふふふ……と怪しい笑いを漏らす。 「お二人を怒らせるなんて、今日は雨でしょうか。雨と言っても血の雨ですけど」 もう一度ふふふ……と笑う彼女。 今のクリスは、自分でも冷静ではないとはっきり分かる。 わーい! また猫又達を抱き上げられるー♪ と意気揚々とやってきたのにお預けという理不尽。到底許せるものではない。 彼らには、己の愚行を存分に悔いてもらわなくては――。 仲間達がそんな事をしている頃、ヘラルディア(ia0397)は村に辿り着いた仔猫又の手当をしていた。 凄い勢いで戻って来て、開拓者達や村人達に事情を説明した後、その場でばったり倒れ込んだ子猫又。診てやって欲しいと母猫又に請われて、この状況がある。 「で、どうだ? 仔猫又の具合は」 心配そうな荒屋敷(ia3801)に、ヘラルディアは笑顔を返す。 「大丈夫です。怪我はしていません。疲労が溜まったのでしょう。休んでいれば回復するはずですね」 「良かった……」 「ありがとにゃ。寝かせておくにゃ」 安堵の溜息をついたリシルにこくりと頷いた母猫又。昏々と眠る子猫又の姿に、開拓者達の怒りが増す。 「よし。そろそろ行こうぜ。奴らが逃げちまう」 荒屋敷の言葉に頷いた仲間達。そのまま外へと向かおうとして……クロウは、思い出したように振り返る。 「子供達は俺達が必ず取り戻す! だから無茶すんなよ」 声をかけられた母猫又はもう一度頷くと、子ども達を宜しく頼むにゃ……と、呟き、頭を垂れた。 ●仔猫又救出大作戦 バダドサイトで大幅に視力を高めたクロウと、聴覚を極限まで研ぎ澄ませた真琴が暴れる仔猫又と格闘する誘拐犯を捕捉したのは、村をでて間もなくのこと。 同時に、男達と対峙する仔猫又が捕まるのは時間の問題という状況も分かり、開拓者達に緊張が走る。 「このままじゃ残りの子も捕まっちゃいます!」 「ええ、この格好が恥ずかしいとか言ってる場合じゃないですね……」 「え? そう? 似合うよ?」 「……ともあれ、急ぎませんと……」 そんなやり取りをするユエンとクリス、真琴と黒憐。 銘々、愛らしいワンピースを着て、手にはパラソル、バスケットなどを持ち、さながら『観光に来たお嬢様』という雰囲気を醸し出している。 「万が一捕まったとしてもまだ追いつける距離だ。大急ぎで頼む」 「計画通りに行くぜ。用意は出来てるか?」 受け答えたクロウと荒屋敷は、薄汚れた町人風の格好を着崩して、破落戸のよう。 その言葉に、お嬢様達4人はこくりと頷くと、スカートの裾をつまんで走り出す。 「本当にこれでいいんでしょうか……」 「大丈夫です。皆さんきっと上手く演じて下さいますね」 パリッとした役人風の出で立ちで、頭にでっかい冷汗を浮かべるリシルに、同様の格好でどこかズレた返答をするヘラルディア。 そう。彼女の言う通り、仲間達の力量は十分だと思うのだが……。 ちょっと……その。『計画』が……ね? 心配というか、何というか……。 「私達も参りましょう」 「そうですね……」 仲間達を援護する為には、術が届くギリギリの距離にいなくてはならない。 ヘラルディアとリシルは走り出した仲間達の背を追う――。 「手間取らせやがって……イテテ。引っかき傷だらけだぜ、オイ」 「まあ、手土産が増えて良かったじゃねえか」 「早いとこ帰ろうぜ」 満足気に頷き合う男達。その手には、4匹の仔猫又。 思ったより抵抗されたが、首尾は上々だ。 連絡役に手を振り、さて帰ろうかと思ったが――。 道に響き渡る、絹を切り裂くような悲鳴。 振り返ると、揺れるパラソルが見えて……。 目を凝らすと、4人の娘達がこちらに向かって走って来る。 「きゃーーーーっ!」 「助けてーーーーーー!!」 「来ないでよ! この変態!」 「誰かーーー!」 それを追うのは――そう。男性陣2人による『猫又と戯れに来た可愛い娘さん達と戯れ隊』の面々である。 「おじょうさーんっ! 俺達と一緒に遊ぼうよー♪ ほらっ。怖くないよーっ」 さも軽薄そうな調子で声をかける男。 お嬢さん達を追いかける姿も、何か裏がありそうで怪しい。 最初はどうして俺が、とか、何言ってんだ自分、とかブツブツぼやいていたクロウだったが。 「まてまてー! こいつーぅ!」 それにしてもこの男、ノリノリである。 「なあ、いいじゃんかよー、俺らと楽しいコト、しようじゃね〜か〜」 ニヤニヤ笑いながら追いかけるもう1人の男。 荒屋敷も負けじと迫真の演技を……というか、彼の場合は地で行けばいいだけなので違和感もない。 目の前で展開されるお嬢様と、破落戸による追いかけっこ。 何が起きたか分からず、男達は唖然とする。 「……何だ? アレ」 「俺に聞くなよ……」 「……無視でいいよな」 そんな薄情なことを呟く彼ら。とりあえず、やってきたお嬢様達を避けようとして……。 「そこのひとたちっ、助けてくださいーーーーーっ!」 どーーーーん! 全速前進。まっすぐに突進し、男達を勢いよく吹っ飛ばすユエン。 いや、轢いたという方が正しいかもしれない。 男達はへぶぅ、とか妙な叫びを上げて地面に膝をつく。 「お前ら、何す……!」 「お願いです。怪しい人たちに追われてるんです。助けて下さいません?」 そこに、いつもと違うハキハキとした口調で畳みかける黒憐。 食ってかかろうとした男達だったが、彼女の妙に説得力のあるうるうるとした瞳で見上げられて何も言えなくなり……。 そこに生まれた隙。 ――貰いました! 囁くクリス。リシルが舞で脚力を上昇させてくれたのか、身体が軽い。 機動力が上がった彼女にとって、その隙は十分過ぎる程の時間。 ひらひらのスカートを翻し大きく踏み込むと、流れるような動きで男達の腕に正義の鉄槌を叩き込んでいく。 不意にやってきた鋭い痛みに怯み、腕を緩めた男達。 滑り落ちた仔猫又をユエンと真琴がすかさず抱き止め――。 「真琴さんっ。逃げますよっ」 「任せてー!」 4匹の仔猫又を抱えて走り出そうとする2人。 「……あ! コラ!! 待ちやがれ!」 男達は自分達の手から獲物が消えたことに気が付き、慌てて手を伸ばすも……鮮やかな桃色の髪の乙女が二重にぶれて映り、伸ばした手が空を切る。 「忍法変わり身の術。なんちて」 「……開拓者!?」 ぺろっと可愛く舌を出す真琴。その技で、ようやく気付いたらしい。男達の顔が青ざめる。 「よし! 良くやった!」 仲間達を称え、男達の前に立ちふさがるクロウ。 「お前達、グルだったのか!?」 「今更気付いたって遅ぇんだよ! ……リシル! ヘラルディア! 連絡役を取り押さえろ! 2人いやがる!」 「はいっ! 分かりました!」 「了解ですね!」 荒屋敷の声に応え、走り出すリシルとヘラルディア。 彼の大地を響かせるような大きな雄叫びに、思わず足を止める連絡役の男達。 「あちっ」 「ぐああっ!」 ヘラルディアの作り出した炎に行く手を遮られ、リシルが生み出した空間の揺らぎに、体を捻られ倒れ込む。 あっという間の逮捕劇。 「おっと。そこから動くなよ!」 「動いたらどうなるか……分かってますよね?」 実行犯の男達を取り囲み、凄惨な笑みを浮かべるクロウとクリス。どーんと立ち塞がる黒憐が、無表情のまま手にした鉄傘で彼らを殴打する。 「……これは仔猫達の分。……これは仔猫達の分。……そしてこれは、仔猫達の分です!」 「黒憐ちゃん、仔猫達の分しか言ってないよ」 「てか、こいつら、まだ動いてねえよな」 「いいんですよ! 仔猫又さんたちはもーーーーっと、辛かったんですからねっ。私の分も追加しといてください!」 ビシッと入る真琴と荒屋敷のツッコミ。 仔猫又を奪われ、連絡役の仲間達は捕えられ。黒い無表情の少女に殴打されるとか怪談話になりそうな状況に完全に戦意を喪失している男達を見ても、ユエンの怒りはまだ収まらないようだった。 「さて。この方達の処遇は如何しましょうか……?」 テキパキと男達を荒縄で縛り上げながら首を傾げるヘラルディア。 それに、ユエンとクリスは目が据わったまま答える。 「許せません。ユエンは絶対許せませんーーー!」 「こんなに可愛くか弱い仔猫又を攫おうとした罪、万死に値します! ……とはいえ、本当に一万回とどめを刺す訳にもいきませんけど……」 ……いえ。許されるならやりたいですけど。 ……そうですね。もういっそヤッちゃって魚の餌にでもしちゃいましょうか。 不穏な会話を続ける2人。気持ちが分かるのか、面白がってるのか。荒屋敷はニヤニヤしながら続ける。 「ただ役人に突き出すのはつまら……いやいや。ここはきっちり反省して貰った方が良くねえか?」 「ああ。今後の猫又達の平和な生活もかかってることだしな」 うんうんと頷くクロウに、リシルはうーん、と考え込む。 「そうですね……。では、村への償いは私達の目があるうちにしっかりやっていただく、というのはどうでしょう?」 「うん。その上で、死ぬより怖い目に遭って貰った方がいいんじゃないかなー」 「憐も……それがいいと思います……」 さらっと怖いことを言う真琴に、コクコクと頷く黒憐。 その方針に満足したのか、ヘラルディアも頷き……。 「では、『お勉強』を始めましょうか。大丈夫です。仔猫又の前で血生臭いことはご法度ですから」 「仔猫又さん達に感謝するといいのですよ!」 「……覚悟、出来てるよね?」 腕をパキパキと鳴らすクリスとどす黒い炎を背負うユエン、にーっこり笑顔の真琴が続く。 逃げることも出来ない男達は、ガクガクと震え上がった。 ●仔猫又と観光立村 「さあ、もう大丈夫ですね」 「他に痛いところがあったら言って下さいね」 「ありがとですにゃー」 ヘラルディアとリシルに怪我の手当をしてもらい、ぺこりと頭を下げた仔猫又達と母猫又。 「うおおおお! なんて可愛いんだーーー!」 その愛らしい姿に、目尻が垂れまくりで仔猫又に飛び込むクロウ。 真琴も、仔猫又のふさふさの毛をそっと撫でる。 「浚われちゃったって聞いてびっくりしたよー。大変な目に遭ったねえ」 「本当に、無事でよかった……。ユエンは、心配で心配で……!」 「心配かけてごめんにゃ」 気が緩んだら、涙まで出てきたらしい。自分を抱き上げるユエンに仔猫又が頬ずりを返す。 「あれからちゃんとお仕事も頑張っているのですね。偉いですね、可愛いですねー!」 「おかーにゃが、ご飯を食べるなら、働かないとダメって言ったのにゃ」 わしわしと猫可愛がりするクリスに、えっへんと胸を張る仔猫又達。 そんな彼らに、リシルは優しい微笑みを向ける。 「そうですか。言いつけを守って偉いですね。でも、無理をしないようにして下さいね? お母さんや村の人、私達……皆があなた達を心配しているのですから」 彼女の言葉を頷きながら神妙に聞いていた仔猫又達だったが、クリスがぐらりと傾いたのを見て慌てて駆け寄る。 「ねーにゃ、どうしたにゃ!?」 「あ、いえ。久々の仔猫又成分で少し鼻血が出そうです……」 仔猫又に心配して貰って、鼻血倍率急上昇。 そんな彼女に、リシルと荒屋敷は笑いを噛み殺して……。 「回復なら任せて下さいね」 「おー。どんだけ鼻血出しても大丈夫だ。良かったな!」 これでフォローは完璧……なんだろうか? 「今回は間に合いましたが……今後も私達のように運良く開拓者が通りかかるとも限りません」 「外に行くのは、外の怖さもちゃんと教えてあげてからの方がいいかもね」 「そうですね。我々が迂闊でした……」 そして、村人達と仔猫又の今後について話すヘラルディアと真琴。 恐縮しきりの村人に、クロウはまあまあ、と宥める。 「まあ、誘拐されるなんて誰も思わなかったんだ。仕方ないだろ。せめて、仔猫又達だけで外に出さないようするといいかもな」 「ユエンからもお願いします」 深々と頭を下げるユエンに、村人達は分かりました、と請け負って――。 「とはいえ……村の中のお仕事というのも、限られますよね……という訳でですね。黒憐は、猫又神社内にお茶屋をしつらえて……猫又さん達と戯れつつお茶を楽しめる……『猫又茶屋』が有るといいなぁ……と思うのです……」 黙っていたと思ったら、突然新しい観光名所の提案をする黒憐。 それに、村人達はおおおお……と感嘆の声をあげ、身を乗り出して聞き入る。 「さすが開拓者様! しかし、内装や店員はどのようにすれば……」 「店員さんは勿論巫女装束で……内装はですね……」 「今だったら働き手があるぜ? 内装代もお詫びにこいつらが出すってさ」 そういう荒屋敷が指差したのは荒縄で縛り上げられた男達。 ――彼らのお仕事、決まったみたいです。 男達は、強制労働の後、あまり反省が見られませんね……というクリス教官の判断で刑罰敢行。 荒屋敷の手によって身ぐるみ剥がれ、墨で口周りにヒゲと、褌に猫罰と書かれ。 見せしめに、猫又神社の鳥居に吊るされることになった。 「もう、こんなことしちゃいけません。猫又神様がちゃんとみているのですっ」 「おおお、猫又神社の罰ってのは怖いねえ!」 そんなユエンとクロウの声が、辺りに響き渡った。 こうして、開拓者達の活躍により仔猫又達は無事に救出された。 そして、猫又神社に棲む猫又に害を為すと祟りがあると真しやかに囁かれるようになり。 その噂が行き過ぎたのか、呪詛成就の祈願が増えたとか増えなかったとか――。 |