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■オープニング本文 ● 『流星祭』の時期、街中はいつもと違った喧騒に包まれる。 祭は西の空が薄紫に染まる頃に始まる。次々と灯が灯る祭提燈風に乗り聞こえてくる祭囃子。祭会場となっている広場は大層な賑わいで、ずらりと並んだ屋台からは威勢のいい呼び込みの声が響き、浴衣姿の男女が楽しげに店をひやかす。 時折空を見上げては流れる星を探す人、星に何を願おうかなんて語り合う子供達、様々なざわめきが溢れていた。 ●星が降り注ぐ夜 流星祭。 毎年、決まって夏にやってくる流星群。それに合わせて開催される。 闇夜に、流れる星。人々は空を見上げ、願い事を唱える――。 「今年の流星祭は賑やかですわね」 のど自慢大会があったり、相棒さん達のかくし芸大会があったり……と、指折り数える山路 彰乃(iz0305)。 「ああ。この間は櫓が崩れそうだし、先程は威勢のいいケンカも見かけた。別な意味でも大騒ぎだなあ」 「そうですわね」 開拓者の言葉に頷く彰乃。浴衣姿のその手には、輪投げで獲得したというもふらさまのぬいぐるみ。 その様子に、開拓者達から笑いが漏れる。 「彰乃さん、流星祭を満喫してるんですね。羨ましいなあ」 「あら。流星祭の本番はこれからですわよ。……皆さま、そろそろ『星が降り注ぐ夜』がやっていらっしゃるのはご存知?」 「星が降り注ぐ夜……?」 「何だ? それ」 頭の上に疑問符を浮かべる開拓者達に、それはですね……と彰乃が続ける。 沢山の星々が流れる流星祭。 その中でも特に沢山星が流れる時があり……その時が新月に重なり、流星が良く見える日を『星が降り注ぐ夜』と呼んでいるのだそうだ。 「わぁ。沢山星が流れるなら、お願いごともし易そうですね!」 「そうだな。じっくり見てみたいものだ」 「わたくし、星をご覧になるのに良い場所を知っておりますわ。ここから少し行ったところに、月城の高台と言う場所があるのですが……」 ――月城の高台。 眼下に街並みを一望できる、静かな高台。 山の中腹にあり、普段は月の名所として知られているその場所は、阻むものが何もなく。新月の夜は星が素晴らしく良く見えるのだそうだ。 高い場所。手が届きそうに近い満天の星々。その合間を縫うように走る流星がとても幻想的で――。 「へえ。良さそうな場所だな」 「山路さんはどうしてその場所を知っているの?」 「子どもの頃に、連れて行って戴いたことがあるんです。とても、綺麗でしたわよ」 少し遠い目をする彰乃。目線を開拓者達に戻すと、もふらさまのぬいぐるみを抱え直して続ける。 「空を駆け抜ける流星に祈りを捧げると、願いが叶うと聞きました。何方かお誘いになって、星見を楽しんでいらしたら如何ですか?」 その言葉に考え込む開拓者達。 事件解決や、アヤカシ退治に忙しい毎日。 たまには、息抜きをするのも良いかもしれない――。 「月城の高台の場所を、お教えしますね。折角ですし、浴衣もお召しになって……あ! そうですわ。月城の高台周辺は暗くて、今回は月の光も期待できません。灯りを忘れずにお持ち下さいね」 微かに微笑んだ彰乃に、開拓者達は頷き。 そして、誰を誘おうかと考えながら、身支度を始めるのだった。 |
■参加者一覧
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
サフィリーン(ib6756)
15歳・女・ジ
黒葉(ic0141)
18歳・女・ジ
御堂・雅紀(ic0149)
22歳・男・砲
ラシェル(ic0695)
15歳・男・魔
リーズ(ic0959)
15歳・女・ジ |
■リプレイ本文 「肌の色が小麦だと、やっぱり薄い色の浴衣の方が合うのかな? 紺も着てみたいんだけど……」 「サフィリーン様は、紺地に明るい挿し色が入ったお召し物でしたら似合うと思いますわ」 「大胆な柄とかも似合いそうですよね」 「そっかあ。今度お2人に選んでもらおうかなぁ……」 談笑するサフィリーン(ib6756)と山路 彰乃(iz0305)、そして柚乃(ia0638)。 淡い色の浴衣に髪を結いあげた柚乃と、朝顔柄の浴衣にぽっくり姿のサフィリーンは、闇夜に咲く花のようだ。 「もうすぐ着くからな」 「「はーい」」 灯篭を片手に先頭を歩く星見 隼人(iz0294)に、素直に返事をした2人。 その様子に、彰乃がため息をつく。 「……隼人様、まるで引率の先生のようですわ」 心の友を誘いに来た柚乃と、ばったり出会ったサフィリーン。色々話しているうちに、お互い星見に向かっていることが分かって……。 そういう事なら皆で行きましょうとトントン拍子で話がまとまり、隼人が案内役を買って出て……今の状況がある。 「こんな暗い中お前達だけで行かせるのも心配だしな」 「あら。お優しいですこと」 「やかましいぞ、彰乃」 主従のやり取りにくすりと笑いを漏らす柚乃。 隣のサフィリーンも肩を震わせて……その度に、アンクレットがシャラシャラと音を立てる。 何とか笑いを抑えようと上を向くと――満天の星空が目に飛び込んできて……。 「……綺麗」 そう柚乃が呟く間にも流れて行く星。 ああ、そうだ。願い事。 柚乃の願い事は……。 彼女の頭に浮かんだのは、1人の少年の顔。 先日、神楽の都で見かけた少年。 面影が幼馴染にそっくりで――。 でも……あの少年が、彼であるはずがないのだ。 事情は深くは知らないが、亡くなったと、聞かされたから……。 ――ずっと一緒にいられたらいいね。 過ぎし日々。戻らぬ時間。守られることのなかった約束。 それでも、叶うなら――。 「でも……会ってどうするの?」 「柚乃様?」 思考の海に沈んでいた柚乃。思わず声が出てしまったらしい。心配そうに覗きこんで来る彰乃に、笑顔を返す。 「大丈夫ですよ。ちょっと、幼馴染のことを考えていて……」 「幼馴染……?」 「ええ」 そう言いながらハッキリ思い出した。 ――そうだ。 柚乃にはただ一人、幼なじみがいた。 もふもふの耳と尻尾。明るい笑い声……。 どうして今まで忘れていたんだろう? あんなに大切だったのに……。 「今頃思い出すなんて、薄情ですよね」 「いいえ、それは違います」 幼い少女には受け止めきれぬ程の厳しい現実。 悲しくて、信じたくなくて。 記憶を閉じ込めるより他になかったのだろう。 「……そう、なんでしょうか」 自嘲的に笑う柚乃に、頷く彰乃。 ……友人の言う通りであるのであれば。 柚乃にも、願う権利があるのだろうか……? 叶うなら、もう一度会えますように――。 柚乃の願いを乗せて、流星が空へと消えて行く。 そして、その近くにちょこんと腰かけ、サフィリーンも静かに空を眺めていた。 ――この間行った鈴蘭の丘での素敵な思い出。 それが切欠で、とても素敵なお友達が出来た。 綺麗なその人が、抱く恋心は……取り巻く状況が複雑で、簡単に行きそうもなく。 一方で、別な友人の悲しい別れが風の便りで届いたりして――。 人と人とが想い合うのは、とても素敵な事なのに。 どうして上手く行かないのだろう。 誰かのコトでも。ちょっぴり胸が痛い……。 「どうした? 渋い顔して」 隼人の声に、振り返ったサフィリーン。 思考が顔に出ていた事に気付かず慌てるも、思い立って口を開く。 「あの。隼人様は、お友達が苦しんでるのに、見守る事しかできない時……どうしてますか?」 「木刀で素振りをする」 キッパリと言い切った彼にキョトンとするサフィリーン。 隼人は空を見上げながら続ける。 「どうにも出来ないのなら、考えても無駄だからな」 ――そう。彼の言う通りだ。 何か出来る訳でもない。何にもならないと解っているのに。 名前も付けられない、棘のような気持ちの欠片を放すことも出来ず。 握り締めてもがいて――どうしたらいいのかも、自分の気持ちすらも分からない。 ……もう少し、大人になったら解る? 今こうしている間も降り続けている星のように、答えも降ってくるんだろうか。 星の光が、胸につまる色々な事を洗い流してくれればいいのに――。 「……難しい事考えてるんだな、ちびっこなのに」 「ちびっこで悪かったですねっ」 隼人の言葉に、可愛らしく頬を膨らませるサフィリーン。 その様子に少し笑った隼人は、悪かった……と彼女の頭を軽く撫でる。 「俺が言えた義理じゃないが、なるようにしかならんと思うぞ」 「そうなのかな……」 ――でも、私は。 お姉さんにも、お兄さんにも、皆にも。笑顔でいて欲しいんだ――。 お星様。変な話をしてごめんなさい。 こんな話、誰にも出来ないから……。 沢山の人の幸せの為にお祈りできたらいいけど。 やっぱり、大切な人達に幸せになって欲しい。 だから。お願い。 ――皆が、会いたい人に会えますように。 「まずはそこから、だよね」 ぽつりと呟くサフィリーン。 絡まることなく、素直に真っ直ぐ。空に流れる星のように、するりするりと。 彼女の心も、少しだけ解けたような気がした。 俺とアイツの関係は、一体何だろう。 主人と従者? それも何だか違う気がするし、この場合は友達になるのか……? 松明を片手に、考え事をしながら暗い道を歩く御堂・雅紀(ic0149)。 高台に人影をみつけて、目を凝らす。 「お、もう来てたのか」 彼の言葉を遮るように、恭しく一礼する黒葉(ic0141)。 広げた両腕から、シャラリ……と鈴の音がする。 黒葉の身を包むのは、透けるような薄い布を幾重にも重ねて作られた装束。 動きに合わせてひらひらと布がひらめき。足や首につけられた鈴が、軽やかな音を立てる。 ――私の舞は、心は、主様の為だけに。 伝えることの叶わぬ想い。それでも、溢れる想いは燃え上がるように。 軽いステップと共に湧き上がる燐光。 魅惑的な舞は、時として倒錯的にも見えて――。 「……いかがでしたかにゃ?」 再び一礼し、小首を傾げた黒葉。 何だかぼんやりとしていて反応がない雅紀に、彼女はすーっと近づく。 「主様ー?」 「わあっ。何だっ」 「何って……。舞の感想を聞いたですにゃ」 「……え。感想? あ、ああ。良かったんじゃないか?」 あまりの美しさに見惚れていたなんて、コイツには絶対言えない。 「疲れたろ。とりあえずこれでも飲め」 「はい。ありがとですにゃ」 気恥ずかしさを誤魔化すように黒葉に岩清水を差し出した雅紀だったが、勢いよく腕を突き出し過ぎたらしい。 ぐらりとバランスを崩して……。 咄嗟に支えようと手を差し出した黒葉。雅紀も彼女を支えようとして……絡まり合って倒れ込む。 「いてててて……」 「主様、大丈夫にゃ……? 足元は気を付けないと危ないにゃー?」 「ああ。……黒葉は大丈夫か?」 「はいですにゃ」 のんびりとした黒葉の声に安堵した雅紀。何だか、自分の手がものすごく柔らかいものに触れているような気がする。 念の為、怪我はないか確認しようとして……目に飛び込んで来たのは、黒葉のあられもない姿。 水に濡れて透けた衣装。彼女のたわわな胸には、何故か自分の手が乗っている――。 声にならない叫びをあげて、ずさーーーっと勢い良く後退した雅紀。 顔を背け、耳まで赤くしながら自分が着ていた上着を彼女に押し付ける。 「す、すまん! こ、これはわざとじゃなくて……み、見えてないし、な、何にもない! ほ、本当だ!」 「……そんなこと、分かってるにゃ」 雅紀の反応で、自分が置かれた状況に気が付いた黒葉。 顔を真っ赤にしながら大急ぎで上着を羽織ると、視界の端に、何か光るものを見つけて……。 「あ……。主様見て。ほら、空に……」 「本当だ……」 黒葉が指差す先には、空を過ぎる流星。 月のない夜空に、輝く星々。 その隙間を縫うように、幾つもの星が流れては消えて行く。 「確か願い事……するにゃよね?」 ぽつりと呟く黒葉に頷く雅紀。 彼女は、暫く悩んで……そっと、星空を見上げる。 願い事と言われて、思いつくのはやはり隣にいる男性のこと。 寝ても覚めても彼のことばかり考えている。 ――告白できる勇気が持てますように。 ――主様から好いて戴けますように。 ――好く人に受け入れて戴けますように。 ……どれも、何かが違う。 確かに、これも願い事ではあるけれど。 それは星に頼らず、自分の力で努力すべきものだと思うから……。 それなら、一体何を願おう? 私の願いは……。 ――雅紀様と……一緒に居たい。 今、この気持ちを伝えることは出来ないけれど。 どんな形でも、共に有れば、何時かは答えを出せるだろうから――。 黒葉がそんな事を考えている間、雅紀はじっと彼女を見つめていた。 勿論、自分の上空を流れる星も綺麗だと思う。 それよりも願い事を真剣に考えている黒葉の横顔が、とても美しくて……。 ――流星よりも、彼女の笑顔を見ていたい。 その笑顔を、星への祈りや神頼みなんていう他人の力で守りたくない。 そう、思えたから。 ――俺は誓う。 黒葉の、この笑顔だけは自分の力で守り抜く。 この乱世にあっても、例え神や精霊と戦うことになろうと。 この世の全てを敵に回す事になろうとも――必ず。 「願い事は終わったか?」 想い人の黒い艶やかな髪を頭をくしゃりと撫でる雅紀。 黒葉は、それに優しい笑顔を返して。 「はいにゃ。主様はどんなお願い事をしたんですにゃ?」 「祈らねぇよ、誓ったんだ。ただ、それだけだ。……そういうお前は何を祈ったんだよ」 「秘密ですにゃ」 唇に人差し指を立てる黒葉。その笑顔が眩しくて、何だよそれ……と呟きながら、雅紀は目線を外して――。 2人が、お互いの願いと誓いが同じものである事を知るのは、いつになるのか。 その答えは、空を流れる星だけが知っている……。 「星なぁ……。まぁ、嫌いじゃないが……」 ぶつぶつと呟きながら佇むラシェル(ic0695)。 「ボクも天儀のお祭りは初めてだし、綺麗な星も見れるっていうし、一緒に楽しもうよ!」 ……と。リーズ(ic0959)に誘われたので、こうして待ち合わせ場所にいる。 正直どうしようかとも思ったのだが。断わろうものなら、絶対地の底まで落ち込んで後々面倒なことになるのが分かり切っていたので……。 「おっまたせー!」 その声に顔を上げた彼。目の前に立つリーズは、両手一杯の料理を抱えていて……。 ――星を見るだけだと思ってたんだが……違うみたい、だな。 少しだけ驚いたラシェル。色々ツッコみたいところはあれど、一番聞きたい事を口にする。 「……あんた、それ、食いきれんのか……?」 「え。だってホラ。2人いるし」 「それにしたって量多いだろ! 何でそんなに食いもん持って来てんだよ」 「屋台見てたらどれも美味しそうでさあ。ついつい色々買っちゃって……」 エヘヘ……と困ったように笑顔を浮かべるリーズに、ラシェルは深々とため息をつく。 ここで待ってろと言うから待っていたが、買い物をするなら最初からそう言えばいいだろうに……。 彼はもう一度溜息をつくと、ぬっと手を差し出す。 「ん? 何?」 「何、じゃないだろ。半分寄越せ」 「うん! 着いたら半分こしよーね!」 そうじゃねーよ……。 ツッコむ気も消え失せたラシェルは、にっこり笑う彼女から荷物を奪い取る。 「……あんたも一応女だしな。あんただけに、持たせてるわけにはいかないだろ」 「あはは。ありがと! ラシェルは優しいねえ〜」 「そんなんじゃねえよ。ホラ、とっとと行かないと置いてくぞ」 「あっ。待ってよー!」 スタスタと歩き出したラシェルの背を、慌てて追うリーズ。 間もなく、高台へと到着して……。 「ふわぁ……っ! すごーい! 星ってこんなにあったんだねっ」 「そりゃあそうだろうよ……」 歓声をあげるリーズに苦笑を返すラシェル。そんな彼の様子に気付く様子もなく、彼女は空を指差す。 「あっ、あの星知ってるよ。ねぇねぇ、ラシェルは星とか星座はどんなの知ってる?」 「んー。そうだな……。あんたはあの星、知ってるか?」 2人の口から次々と溢れて来る、以前本で読んだ星や、今まであちこちで見て来た星の話。 それに纏わる不思議な話や、伝承――。 「後はー……あっ、あそこの星とあっちの星を繋げて、ラシェル座とかどうかな? で、ボクの星座はその隣〜♪」 ――さすがにそれは無理があるんじゃないか? リーズの談にツッコみかけたラシェルだったが、彼女があまりにも楽しそうなので黙っておいた。 「なーんてねっ。でも、これだけ星が見えれば、新しい星とか見つけられちゃいそうだよねっ」 「……新しい星、か。そうだな。見つけてみるのもいいんじゃないか?」 ラシェルの言葉に、うんうん、と満足気に頷いたリーズ。 思い出したように料理を広げ始める。 「せっかく買った料理が冷めちゃうし、食べよっか! ラシェル、嫌いなものあったりする?」 「見た感じ食べた事の無い物もあるみたいだが……大丈夫だろ。全部は無理そうだが」 「んー。ちょっと買いすぎちゃったかなぁ? あ、でも残った分は持って帰って明日の朝ごはんにすればいいよね!」 話がまとまったところで、いただきます……と両手を合わせたリーズ。 ラシェルは箸を手にしたまま、空を見上げて――。 「……星は、何処に居たって見えんだな」 捕えられていた過去。 逃げ出して、もう自由だというのに……見える星は、あの頃と何一つ変わっていない。 ……でも、違うことが、ひとつだけある。 「……俺がここに居るのはあんたのおかげ、か」 「ん? おいしい? もっと食べていいよ!」 小さく囁き、笑みを零す彼に、笑顔を返したリーズ。 ……友人の、こういう能天気なところに、正直救われている部分もある。 本人には口が裂けても言えないが――。 ラシェルがそんなことを考えている間に、流れる星が、長い尾を引いて夜空を滑り落ちて行って……。 「あっ! 流れ星! ラシェル見た!?」 「はいはい、見えてるって」 「すごい! 流れ星もいっぱい! あ、流れ星にお願いを言えば、叶うかもしれないんだよね」 ぐっと拳を握りしめたリーズは、えーっと……と考えた後、がばっと顔を上げる。 「ラシェルともっともっと色んな所を見て回れますようにっ!」 「……声に出して願って大丈夫なのか?」 「大丈夫、大丈夫! また一緒にお出掛けしようねっ」 「……考えとくよ」 にぱっと明るく笑う彼女に、ラシェルはやれやれと肩を竦める。 星々が振り続ける中、2人の語り合う声が、いつまでも響いていた。 |