メダルと試験と彫刻コンビ
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/08/02 20:10



■オープニング本文

 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。
 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する―――


 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。
 そのメダルが増えてきた頃、黄道十二星座は魚座からとある情報がもたらされた。
 星の一欠片はただのメダルではなく、アヤカシが星の力を封じたものだという。
 集星と呼ばれる地域は星の力が集まりやすい土地とかで、それを核にすることでアヤカシたちは強力または特殊なアヤカシとしてこの世に顕現するらしい。
「というわけで、前回告知しましたとおり、星の一欠片を使うための準備というか調整が終わりました。今回は星座アヤカシを倒すと同時に、その使用試験も行なって頂きます」
「ちなみに今回戦うアヤカシは彫刻具座、カエルムと彫刻室座、スクルプトルのコンビよ」
 開拓者ギルド職員の十七夜 亜理紗と西沢 一葉。今回は説明することが多いので巻きが入っている。
「まず敵の情報から。今回のアヤカシと戦うのには、戦闘力は一切必要ないわ。というより、あっても仕方がないと言ったほうが正確だけどね。言えるのは、この二体が物理だろうが魔術だろうが通常攻撃では決して死なないこと」
 彫刻室座のアヤカシは、集星の平原に突如として現れた。
 一軒家ほどの規模がある正立方体。そこに一つだけドアがあり、中に入るととあることをさせられ、失敗すると負の感情を吸い取られるが、どの被害者も死んでいないらしい。
 何故わかるかというと、中から被害者たちの声がまだするから。食料を持っていたのが幸いしたようだ。
 一応、開拓者ならドアをぶち破って外に逃げることも可能らしいが、あいにく今捕まっているのは一般人である。
「早く助けないといずれ餓死しちゃうからね。で、彫刻具座はその中にいて、姿はノミとトンカチ。それを使ってカエルムとスクルプトルが満足する芸術品を作れたらその二体は消滅するみたいよ」
 被害者を引き込み、生かさず殺さずで負の感情を吸収し続ける。わりと効率はよさそうだ。
 戦闘力が必要ないこともあり、星の一欠片で一儲けしようという連中がこれからも引っかかる可能性は高い。
 移動せず攻撃もしてこないので、素直に何かしらの芸術品を創り上げることが重要だろう。
「続きまして、星の一欠片の使い方のご説明をします。その前に……カウント・ザ・メダルズ! 現在、開拓者が使えるメダルは!」

 馭者座、山猫座、テーブル山座、三角座、南の三角座、海豚座、アンドロメダ座、ポンプ座、望遠鏡座、魚座、鳳凰座、矢座

「12枚かぁ……結構増えましたねぇ。で、注意事項は以下のとおりです。1つ、集星の中でしか使えない。2つ、行動力と気力を消費して使う。そして3つ。同じメダルでも使う人によって効果が違う。ドゥー・ユー・アンダスタンンンンドゥ!」
 メダルを手に持ち、念じるだけでいい。そうすれば行動力を1、気力を2消費しメダル毎に異なった効果を発動する。
 ただし、同じメダルでも使用者によって効果が違うのでどんな効果が出るかは使ってみないとわからない。それどころか、同じ使用者でさえ効果が違うこともあるらしい。
 頼るにはあまりに不確定だが、時に思わぬ効果で開拓者たちを助けてくれるかもしれない。
 星座の力を信じるか否かはあなた次第……といったところか。
「そうそう、大事なことを忘れてました。持っていけるメダルは『参加者一人につき一枚まで、途中交換は不可』です。理由は不明ですが、どうやら複数持って行ったり交換したりすると各メダルの力が干渉して逆に力を発揮出来なくなるとか。事前にしっかり決めておいてくださいね」
 ついに実用化の目処が付いた星の一欠片。星座の力は果たして助けになるのか否か。
 彫刻コンビを打ち倒し、メダルを増やしつつ被害者を救助していただきたい―――


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
水月(ia2566
10歳・女・吟
不破 颯(ib0495
25歳・男・弓
各務 英流(ib6372
20歳・女・シ
何 静花(ib9584
15歳・女・泰
サドクア(ib9804
25歳・女・陰
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰


■リプレイ本文

●メ・ダ・ル! メダルメ・ダ・ル!
 石鏡の国は集星にある平原。そこに、遠目からでもわかる真四角を重ねた立方体が出現していた。
 縦横高さ、それぞれ15メートルオーバー。中に複数人数人がいてもおかしくない。
「ではまずメダルの力を使ってみますねぇ。はあ……テーブルに山盛りのご飯か出てきたりしないですかねぇ」
 おっとり……というか眠そうな口調ながら、いの一番に星の一欠片の力を試そうとしているのはサドクア(ib9804)。
 彼女が選んだのはテーブル山座なので、密室でいきなり山が出現しても困る。実験という意味も含め、ここで使っておいてもらうのは悪い話ではない。
 黄金に光るメダルを握りしめ、念じることでその力は発動する……!
「あらぁ? あらあらぁ?」
 ただでさえ大きなサドクアの胸が、服の上からでもわかるほど大きくなっていく。
 人の頭……いや、衣服で抑えられていることを考えればそれ以上は確実。服がちぎれないか心配なレベルである。
 人を超えたレベルの爆乳……いや、超乳へと進化した!
「……いや、なんつーかよォ。ものには限度ってモンがあってだなァ」
「確かに見事な山2つ……けどいくら男が乳好きって言ってもこれは無いねぇ」
 鷲尾天斗(ia0371)と不破 颯(ib0495)は立派な成人男性である。女性の胸に興味も夢もあろう。
 しかし明らかに人としての体のバランスが崩れている上、サドクア本人も胸の重みでふらふらしている。これが彼女限定のメダルの効果だとしたら、いいんだか悪いんだか。
「あ、戻りましたねぇ。良かったです〜」
 数分もすると、サドクアの胸は元の大きさに戻った。それでも十分大きいのだが。
 メダルの恐ろしさ、不確定さを目の当たりにした一行は、気を引き締め直して彫刻室座に向き直る。
 唯一のドアはすぐに見つかり、その中からは人の声も聞こえる。どうやら被害者は全員無事らしい。
 堂々と中に入った開拓者達。救出対象は部屋の隅に固まっており、すぐに見つかった。
 全部で五人、全員男。とりあえず食料を与えて観察してみたが、外傷などはなく空腹だったという点以外は全員健康そうである。
「……数日入ってるんだろ、便所とかどうしてるんだ?」
『ヒャッハー! 芸術に極限状態なんて御法度! 食事は無理だがトイレ、睡眠、風呂なんかは安心保証だぜ!』
 何 静花(ib9584)がふと疑問に思ったことを聞いてみると、声というか思念のようなものが頭に響く。
 見やると部屋の中央に台のようなものがあり、そこには丸太とノミとトンカチが。
 どうやらあれが彫刻具座。この部屋そのものである彫刻室座とセットの星座アヤカシだ。
 彼の言葉の後に、部屋の角に穴が開き衝立のようなものが現れる。どうやらトイレや風呂などは必要に応じて彫刻室座が形態変化し用立てるらしい。
「毎度の事かもしれませんけど、八十八星座のアヤカシ退治は他のアヤカシ退治とは趣きが違いますね。まさかアヤカシに生活を保証してもらうなんて」
「それで人間と呼べるかは微妙なラインですわね。愛の無い人生なんてっ!」
『ヒャッハー! 愛なんて粘膜が作り出す妄想さ! 芸術は裏切らない! そこに真実がある!』
「芸術というのは……ふと、自分の中で感じた感動を形に表すことだと考えます。よって、強制されるなんて間違っているっ」
『むむ……言うねぇ! だが俺達はそう在るからそう在るだけ! 文句があるなら芸術で殺してみなっ!』
 緋乃宮 白月(ib9855)は、いつものことながらバラエティに富んだ……というかぶっ飛んだ設定が多い星座アヤカシに驚いたようなため息を漏らす。
 まぁ、各務 英流(ib6372)や真亡・雫(ia0432)に言わせれば結局やっていることは他のアヤカシと同じ。方法はどうあれ撃滅することに違いはない。
 緋乃宮もそれに異論などない。幸い被害者たちも協力できることはすると言ってくれているので、後は芸術とやらで二体の星座アヤカシを納得させ打ち負かすのみ。
「ん……それじゃ、芸術開始なの……」
 水月(ia2566)の可愛らしい声が響き、一同は気を引き締める。
 彼女の声はいつもよりテンション高めだったいうが、その時気づいた者はいない―――

●芸術≒彫刻
 まず挑戦することになったのは、音頭を取った水月。
 彼女は丸太を目の前にするやいきなり山猫座のメダルを取り出し、躊躇なく発動させた。
 星の一欠片に関わり始めてから、この山猫座のメダルを使うことを夢見てやまなかったというのだから無理もない。
 喜べ少女。君の願いは、ようやく叶う―――
 すると、水月の頭に真っ白な猫耳がぴょこんと生える。フサフサの尻尾がお尻の上辺りからスラっと伸びる。そして手足はもふもふとなり、柔らかな肉球を持つねこのそれへと変化した。
「はわ……ふわぁ……♪ 猫さんなの……!」
 あちこち自分の体を触った後、水月は至福の表情で自らの手と肉球を見つめる。
 その姿は子猫を連想させ、その場にいる者の心を鷲掴みにする。水月ちゃんマジ子猫。
 水月は被害者の一人に頼み、自らをモデルに彫刻を彫ってくれと依頼する。
 食料で腹も膨れた男は、二つ返事でそれを了承した。
 笑顔とヴィヌ・イシュタルを発動させ、モデルとなる水月。男は彫刻具座を使い、あっという間に仕上げてしまった。
 男の作品は見掛けによらず繊細で、素人にしては躍動感もある。どうやら彫刻具座を使うと芸術技能が上がるようだ。
『ヒャッハー、完成だな!? よーし、判定は如何に!?』
 すると部屋の真正面にあるスクリーンのような布地(?)に文字が浮かび上がる。
『素晴らしい出来ですがモデルのほうが可愛いのでアウト』
 だそうである。
「ンだよそりゃ!?」
「判定は彫刻室座の方に一任されているわけですね。難しい……」
「別にいいの〜。これ、普通の木だから……記念に持って帰るの……♪」
 鷲尾や緋乃宮を他所に、自らを象った木彫りの彫刻を抱きかかえてご満悦の水月ちゃんであった。
「遂に来ましたわね……私の愛を天下に示す日が! アヤカシさえも唸らせる私の愛を!」
 次に名乗りを上げたのは各務。そのリクエストに応え、台の上に石工用の石が現れる。
 各務も彫刻を始める前に星の一欠片を発動。彼女が選んだのは……望遠鏡座。
「見える……私にもお姉様が見えるぞ……!」
 他の面々には全く分からないが、今の各務には遠く離れた神楽の都にいる十七夜 亜理紗の姿が見えている。
 地形とか距離とかは全く関係ない。とにかく彼女だけには想い人が今何をしているのかライブで見えていた。
「……おい、なんか一番渡しちゃならねェやつに望遠鏡座渡しちまったんじゃ―――」
「デュフフフフ! あぁっ、お姉様ったらそんなはしたない! いくら暑いからってそんなに胸元をはだけて……! 今日は非番ですものね……って、あら、もしかして行水でもなさいますの!? 行水してしまいますの!? なんという僥倖、なんという強運―――」
 言い終わる前に各務の視界が元に戻る。まるでコインが切れたかのように制限時間となったらしい。
「ちっ、この機を逃す手はありませんわ! なぁに、錬力ならいくらでも―――」
「五月蝿ェよ。いいからさっさと彫れ」
 げしっと鷲尾が背後から蹴りをかまし、彫刻具座のメダルが地面を転がる。
 鷲尾が拾うとまずいので、被害者の男の一人に拾ってもらい保管してもらうことにする。
「ちょっとぉぉぉ!? アヤカシ退治に必要でしたのよ!? 何さんも何とか言ってやってくださいまし!」
「……いや、流石に覗きはまずかろうよ。私は掃除婦、私は掃除婦……」
「誤魔化さないでくださいな!?」
 すったもんだの末、各務は渋々作業に入る。
 普通のノミとトンカチでは全く歯がたたないであろう石も、彫刻具座を使うとまるでプリンを掬うかのようにさくっと彫れる。先ほど一般人が水月の姿をあっさり彫れたわけである。
 8割ほど完成したその彫刻。どうやら誰かの裸婦像のようだが、妙に気合が入っていて、上手いが恐い。
 それを前に、各務が額の汗を拭った瞬間。ズガァァァンッ! と派手な音がして、製作中の石像が木っ端微塵に砕け散った。
 やったのは……鷲尾。魔槍砲を仕舞い、何事もなかったかのように座り直す。
「重ね重ねなんということうぉぉぉぉぉ!?」
「その幻想をぶち殺した」
「あなたやる気有りますの!?」
「ねェよ! つーかお前が言うなっ!」
 ちなみに彫刻室座の判定は『熱意は認めるが完成できなければアウト』だそうである。ごもっとも。
 次に作品を作るのは緋乃宮。彼も実験のために鳳凰座のメダルを持ってきているのだが、彼には幾許かの不安があった。
 鳳凰座といえば格好良さげだが、それを落としたアヤカシをなまじ知っているだけに気分は晴れない。
「僕は鳳凰座のメダルを使います。……使った途端に、愚痴を言いだしたりしないと良いのですけど」
 再び設置された丸太を前に、緋乃宮はメダルの力を発動させる。
 しかし、特に何も起こらない。外見の変化もなければ性格の変化も、勿論愚痴も言わない。
 どういうことなのかは分からないが、パッと見ではわからない能力なのかもしれない。仕方なく緋乃宮は鳳凰を象った彫刻を仕上げていった。
 デフォルメされた鳳凰の、地面に座り込んで酒樽に嘴を入れている姿を彫ってみたわけだが、その判定は……
『可もなく不可もなくです。もう少し頑張りましょう』
 微妙に腹の立つ採点であった。
 埒があかないということで、サドクアと何、鷲尾、不破は同時に作業を開始する。別に一人ずつ挑まなければならないとは言われていない。
 各々人数分に分裂した彫刻具座を使って作品を作っていくが、こいつも随分器用なアヤカシだなと思わざるをえない。
 やがてサドクアの作品が完成し、採点に望む。
 サドクアが作ったのは、持ち込んだ黒い岩で作ったおとしごちゃん。
 おとしごちゃんとは彼女が好んで使う黒い粘泥型の式で、口や目も付いている。
 肝心の採点は……
『なんだかよくわからないのが逆に芸術品っぽくはあります。しかし万人受けはしないでしょう』
「万人受けするモン作れってのかよ! お前それでもアヤカシかァ!?」
『リアリストだ』
 よくわからない理屈だった。
 とりあえずそろそろ完成しそうな段階になって、何は思い出したかのようにメダルを使ってみる。
 持ってきたのは三角座。正直、どんな効果が発動するのか予想がつかない。
「チャージアップ!」
 何の掛け声と共に、彼女の周りに赤・青・黄に輝く三角形の光がふよふよ浮き始めた。
 触ってみると結構硬い。カラフルなのが気になるが盾になるかも知れなかった。
「使い方が良く分からん以上に訳が分からない……デュエットでもしてみるか? それとも舞う?」
「とりあえず遠慮しておきますわ」
 くいくいと各務がスクリーンを指さしたので、何もそちらを見やる。
 するとそこには『版画も芸術品ではありますが、僕ら彫刻具なもんで厳しく見ます』の文字。
「減点するな先に言っておけ!」
「ふっふっふ……甘いねぇ。俺のように素直に彫刻を作っておけば問題なかったのにさぁ」
 憤慨する何に、不破が得意げに語りかける。
 不破が作ったのは木と石と金でできた三色のもふら像。
 道具がいいので細かいこだわりも活かすことができ、硬い像でありながらもふらのもふもふ感がよく出ている。
「3色もふらさま完成っとぉ。可愛いだろ? もふもふだろぉ〜? むしろ俺がお持ち帰りしたい気分だなぁ」
 表情がどれもふてぶてしいのが気になるが……彫刻室座の判定は。
『芸術品というよりお守りとか縁起物のような印象を受けるのでアウト。ちなみに金は僕らが消えると同時に消滅するので持ち帰れません。悪しからず』
「いや、わかってたけどさぁ……」
 うまい話はそうそう転がっているものではない。黄金の輝きは瘴気とともに消える運命だ。
 最後に完成させたのは鷲尾。子供を抱いている母親の像らしい。
 優しいながらも苦笑いの表情で、自らの作品をこう評論する。
「……俺には勿体ねェ夢だなァ」
 突出して上手くはないが、確かな想いと願いを感じる。芸術とはやはり人の想いの集大成なのだろうか。
「ん……こわさないの……?」
「一言で言うなら『う……美し過ぎます!』ですわ。流石にあれに手を出すのははばかられます……」
「あぁ……ありゃ惚気じゃない。慈愛だ。それくらいの分別は私達にもつくさ」
 耳をピコピコさせつつ聞く水月に、各務と何はお手上げのポーズを取る。
 これは期待ができそうな気がする。注目の採点は……
『地味』
「よっし、てめェら生きて帰れっと思うなよォ!? 力貸せやポンプ座ァ!!」
 あの話の流れでこれである。
 問答無用で魔槍砲を連打した鷲尾であったが、通常攻撃ではこの星座アヤカシたちは死なない。あとはもう、真打ち登場とばかりに真亡にすべてを託すしか無い。
「せ、責任が重くて緊張しますけど……力を貸してください」
 丸太を前に、真亡が黄道十二星座は魚座の力を解放する。
 すると、真亡の髪が腰くらいまで伸び、顔つきがより女性らしくなり、胸も膨らんだ。
 いわゆる女性化。しかも、美しい銀髪をなびかせる相当な美少女である。
「へ……? え……? あれっ、僕……あれ……!?」
 可憐な美少女が思わぬ事態に目を潤ませる。水月とは違った意味合いで萌える。
「あらあらぁ。真亡さんの服、女の子になるとすごくえっちぃですねぇ」
「そういう目で見ないでもらえます!? あーもう、いいから作っちゃおう!」
 半ばヤケクソ気味に、真亡は彫刻具座を振るう。
 文字通りさくさくとした手応えを感じ……あっという間に一本の笛を完成させた。
 魚座の付随効果なのだろうか? 特別なことはしていないはずなのに、その笛はキラキラと光り輝くようであったという。
 真亡はそれを手に取り、静かに曲を奏で始める。
 その姿はまるで天から舞い降りた天女のよう。全てが調和し、笛を吹く所作も、容姿も、音色も、何もかもがお互いを高め合い美を引き立たせていく。
 真亡が魚座のメダルを使った時の本当の効果は、女体化ではなく魅了……チャーム。ある意味魚座の力を余すところ無く引き出した結果とも言えるだろう。
『反則気味ですが……うつ、く、し……い……ブヒィィィ!』
『ヒャッハー! 俺を使った、つまり彫刻でありながら他の芸術と融合する! こいつは参ったぜぇ!』
 こうして、彫刻室座と彫刻具座は瘴気となってこの世から消え……開拓者たちは二枚のメダルを新たに手に入れたのだった。
「ノミと槌で真っ先に思いついたのが攻撃方法だけだからな、手ごわいヤツだった」
 何は明後日の方向を見つつシリアスにキメる。恐らくみんなが思っていることを。
「ブヒるのはよせよ―――」
 色々台無しな感じにしてくれた敵であった―――