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■オープニング本文 天儀の中心都市たる神楽の都。 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら――― 「亜理紗、買い出しの途中でこんなもの貰ったんだけど食べる?」 「食べますー♪」 ある日の開拓者ギルド。 昼食時になり、今日はたまたま弁当を持参せず買い出しに出かけていた先輩職員、西沢 一葉は、帰ってくるなり後輩職員の鷲尾 亜理紗に小さな包み紙を見せた。 それは飴玉であり、絶賛食事中の亜理紗はデザートにしようと一も二もなく受け取ったのである。 五段式の重箱をつつく亜理紗と、既成品の弁当を食べる一葉。食べ終わるのがほぼ同時というのはどういうことなのだろうか? お茶を飲んで一息つき、一葉から貰った飴玉を口に放り込む亜理紗。キラキラと輝くような薄桃色の飴は、あげた一葉から見ても美味しそうに見えたという。 「んー、甘くておいひいれすー♪ 一葉さんは食べないんですか?」 「今から食べたら仕事中にも口の中に入ったままじゃないの。あなたも、お客さんが来たら一旦出すなり噛み砕くなりしなさいよ?」 「ふぁーい。んー、でも、ホントに美味しいです。なんていうかこう……海が見えるような爽やかさで……」 この段階で、一葉は亜理紗の様子がおかしいことに気付き始めた。 目がトロンとしていて、なんだか扇情的に見える。そして一葉に擦り寄り抱きついてきたのである。 「ちょっ!? 何やってるの?」 「んー? んふふー……一葉さん、いい匂い……」 「こ、こら、私はそういう趣味ないんだから! そういうことは旦那さんとやりなさい!」 「ねー、一葉さぁん。もっと飴玉くださいよぅ……」 「飴……って、もしかしてこれ舐めたせい!? お酒臭いわけじゃない……これ、何が入ってるの……!?」 「かぁずぅはぁさぁん。飴ー。あめくださいー」 「駄目よ! 一個舐めただけで正体失くすような飴、あげられるわけないでしょ!」 「いいからドーピングだっ!」 「や か ま し い」 ごんっ! という鈍い音が響き、ギルドの休憩室は静かになったという。 一時間後。昼休みはすっかり終わってしまったが、亜理紗はようやく目を覚ました。 殴られたせいで痛むこめかみを押さえつつ、辺りを見回す。 「うーん……危うくスーパーガールになるところでした……。でも一葉さん、こめかみはヤバいですって……」 「私があげた飴玉でああなっちゃったのは悪いと思うけど、あの場はぶん殴るしか方法がなかったのよ」 目を逸らしつつ弁明する一葉。しかしすぐに気を取り直して、自分の分用に残しておいた飴玉を机の上に置く。 「調べてみたんだけど、どうも最近この飴玉があちこちに出回ってるらしいのよね。私が貰ったのはいつも贔屓にしてる八百屋さんで、そこでも『貰い物だから』って言ってた。食べた人はさっきのあなたみたいに酔っ払ったみたいになって錯乱気味になるんだって」 「あー、あの八百屋さんお弁当屋さんのすぐ近くですもんね」 「で、どうも中毒性があるみたいで、ちょっとした問題になってるのよ。でも飴玉の出所がわからない。みんな『貰い物だから』って言われて貰ってるの。専門家の中じゃ、最初はただでばら撒いて中毒が進んだ頃に高値で売りさばく気じゃないかって」 「性質悪っ! まぁ確かにふわっとしていい気持ちにはなりましたけど、そう聞くと二度と要らないです」 「……? 一個舐めただけで中毒症状起こす人が多数らしいんだけど、あなたは平気なのね?」 「はっはっはー。薬膳料理やちょっと毒っぽいメニューまで幅広く食べてきたお陰ですかね!」 「……どういう食生活してきたわけ……? とにかく、職員にまで被害者が出たらギルドとしても放っておけない。この一件の調査と、あわよくば製造元を割り出してとっ捕まえるっていう依頼を出したわ。私達で担当するからよろしく……って、何飴玉持ってにじり寄ってるのよ」 「いや、一葉さんがこの飴食べたらどうなるのかなーって。酔った一葉さんとか見たことな―――」 ごすん! と再び鈍い音が響き、亜理紗だけが休憩室に取り残されたという――― |
■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅(ia0224)
18歳・女・志
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
ネオン・L・メサイア(ia8051)
26歳・女・シ
叢雲 怜(ib5488)
10歳・男・砲
乾 炉火(ib9579)
44歳・男・シ
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔
不散紅葉(ic1215)
14歳・女・志 |
■リプレイ本文 ●事件は食事処で起きてるんじゃない! 今、巷を騒がす飴玉。それは一つ舐めるだけで中毒症状を起こし、依存症になることもあるという。 出処は今のところ不明。被害者は口を揃えて『知人からもらった』と話している。当然、譲った人間も同じ。 奉行所も勿論捜査はしているのだが、今のところ有力な手がかりは掴めていない。ギルドの依頼で開拓者たちも独自の捜査に乗り出すこととなったわけだが、果たして。 「げっほげっほっ! なんかけほけほ言ってるが……もしかしてこの飴、副作用で咳も出んのか?」 「いいえ? そんな話はないはずですけれど……それだけ特別なんでしょうか?」 開拓者たちはバラバラに捜査を開始し、それぞれの成果と情報交換をするためとある食事処に集まっていた。 乾 炉火(ib9579)は一葉が所持していた残りの飴玉を譲ってもらい、その毒性や素材を絞り込めないか食してみたのだが、中毒症状を起こす前に何故か咳き込んでしまった。 道端や何処かに隠れて落ち合うよりは自然だろうとここに集まることを提案した真亡・雫(ia0432)は、咳き込みのことは調査の上で全く聞かない情報であったのにと首を傾げる。 「綺麗だった。虹みたいな、色(こくこく)」 「で、実際のところどうなの? そんなに効き目あるのかしら」 「あぁ、シノビとしての率直な意見を言わしてもらえば『口にすんな』ってのが正直なところだ。劇的な効果が無い分性質が悪い。ギルドのねぇちゃん、よく無事だったな」 不散紅葉(ic1215)はキラキラ輝いていた飴玉の姿を思い出し、乾を見上げる。 雁久良 霧依 (ib9706)も乾に向き直り飴玉の感想を問うてみるが、乾は飴玉を皿の上に吐き出すとすぐさま死毒の技で体内の毒を滅した。 詳しい成分までは分からないが、大麻よりも遥かに危険な感じがする。というより、薬膳薬味にも用いられる大麻と違い、自然の恵みを感じない……とでも言うべきなのか。 毒にも精通するシノビの言葉だけに、一同は美しく輝く飴玉に背筋を寒くするのだった。 「で、でも、それらしい人物の話を聞けましたよ……。なんでも、最近あまり見なかった紙芝居屋さんが現れるようになったとか」 「紙芝居とは、また随分斜め上な感じですね」 「いいや、そうとも限らんさ。餅は餅屋だが、紙芝居屋は紙芝居だけでなく菓子も専門だ」 共に捜査をしていた雪ノ下 真沙羅(ia0224)とネオン・L・メサイア(ia8051)は、首を傾げた真亡の気持ちもわかるといった顔をしながら言葉を続ける。 「飴屋が飴を売るのは当たり前だが真っ先に疑われてしまう。そういった事態を避けるためだろうよ」 「しかしだな、それじゃガキどもが真っ先に中毒にならねぇか?」 「し、調べてみたんですが、被害者に子供がいないんです……。どうやらあの飴玉、子供には効果が無いみたいで……」 「ホントか!? なら、それ舐めてみたいの」 「……俺がいっぺん口に入れたんだぞ?」 「厨房で洗わせてもらうからいいんだぜ! そんじゃ、行ってくるー!」 雪ノ下の言葉で目を輝かせた叢雲 怜(ib5488)は、呆れ顔の乾を他所に意気揚々と食事処の厨房へと走っていった。実に微笑ましい。 実際のところ、被害者の中に14歳以下の男女はいない。元々成分上そうなのか、子供からは大金は巻き上げられないだろうからあえて除外したのかは不明。 戻ってきた叢雲は、幸せそうな顔をして飴を転がしていた。 「甘くて美味しいの……! 蜜柑とメロンを足して二で割った感じー」 「ふぅん? 子供には無害で大人には毒、か。昔話だと逆なんだけどねぇ」 「そうですね。確かお寺の住職さんが、小坊主に水飴を食べさせないようにさせるための嘘……でしたか」 「……美味しい? 美味しいってどんな感じ……?」 雁久良と真亡の評を聞き流し、不散紅葉は興味あり気に叢雲を見つめる。 とりあえず、これでおおまかなことは分かった。雪ノ下とネオンの調査の他に、真亡が調べた結果、被害者が妙に子持ちの夫婦が多いという事実と繋がる。 ただ、いくら子供には無害と言っても子供に渡した飴が全て例の飴ではすぐに目をつけられてしまうだろう。恐らく、袋に5個飴を入れたのなら中毒を起こす飴は恐らく1〜2個。 食べきれなかった子供が親にあげるなり親が勝手に食べるなりして、運が悪いと中毒を起こす。そうやって徐々に徐々に拡散させていき……という手口なのだろう。 『手間のかかることを!』 全員が口を揃えて言うが、目立たない上に事実上その作戦は成功している。馬鹿に出来たものではない。 中毒を起こした人間は、飴が手に入らなくなると困る。よって、奉行所に申し立てたりせず捜査にも非協力的になってしまうのだろう。 つまり、奉行所ではなく開拓者が捜査し始めたことに意味があるとも言えた。 「ふむふむ……それじゃ、その紙芝居屋とやらに接触してみましょうか。上手く話を進められれば製造元まで割り出せるかもしれないわね」 雁久良の意見に反対するものはいない。 一同は今日のところは一旦解散し、紙芝居屋が来るという明日に備えることとなったのだった――― ●現場で起きてるんだ! 「……で? 真亡くん、どうして私が待機なのかしら?」 「そりゃ、あんな作戦を聞かされたら……」 物陰に潜みつつ、ずずぃと詰め寄る雁久良に対し、冷や汗タラタラで応対する真亡。 広場では、ネオンと雪ノ下が二人で紙芝居屋の到着を待っている。つまりは彼女らが接触係。 確認したところ、雁久良はとてもギルドの報告書に記載でき無さそうな方法を取ろうとしていたので、接触係から外されてしまったのである。 聞いていた真亡は真っ赤になり、意味が理解できなかった叢雲と不散紅葉は援護も擁護もしてくれなかった。 「ま、あいつらの計画も大概だが、おまえのよりかは数倍マシだったからな」 「あっちも気持ちいい、私も気持ちいい。最高の方法なのに」 「おぉ! そんないい方法があるのかー。どんな方法なんだぜ?」 「おめーにゃまだ早い」 「うに……残念なの……」 「それはね……」 「教えないでください! と言うか知ってるんですか!?」 叢雲に耳打ちしようとする不散紅葉を慌てて止める真亡。 彼女が好奇心が旺盛ということは知っているが、まさかそういう知識もあるのだろうか? ……無いと思いたい。 と、楽しげなところに紙芝居屋が現れる。子供たちが群がり、遠巻きにネオンと雪ノ下が見張る。 年は40くらいだろうか? 人の良さそうな人相の中年男性だった。 何の変哲もない紙芝居が始まり、それが終わるまで30分ほど。終わると同時に子供たちが菓子をせがみ、男は笑顔でそれに応える。 やがて子供がいなくなり、男が紙芝居を畳んで帰り支度を始めた時……ついにネオンと雪ノ下が接触を開始する。 「さて真沙羅。上手く釣ってやろうじゃないか、な?」 「は、はい。頑張りますっ」 男は近づいてきた女性二人を見比べ、きょとんとした顔をした。 「何か用ですかな?」 「あ、あの……よろしければ、その飴玉……私達にも、いただけませんか……?」 「金は弾むぞ。巷で噂の飴……ここでなら手に入るとな」 その言葉を聞いた男の眼光が鋭くなり、口の端を吊り上げる。 かかった、とでも言いたげな表情。もしくは、またカモが来たといったところか? 「弱ったなぁ、あんまり持ち合わせがないんだけどねぇ。一つ、5でどうだい?」 「無粋なことは言わん。5万文くらい出すさ」 「ほ、話が早いや。毎度あり! 二つで10だ」 飴玉一個に目の玉が飛び出るようなやりとりだが、開拓者の経済力なら出せないことはない。 だが、これが一般人ともなると話が違う。この飴欲しさに犯罪に走る輩が増えてからでは遅いのだ。 「おぉ。待っていたぞ、是非共食べたいと思っていたんだ」 金を支払い、一刻の時を争うような演技をしつつ、ネオンと雪ノ下は飴を口に放り込む。 瞬間、ネオンは理解した。 脳髄が溶けるかのような浮遊感。体の芯が熱くなり、それは徐々に体の末端まで浸透していくような感覚。 ぼんやりとする中、肌の感触だけが敏感になり衣擦れだけでも快感へ誘われる。 だから、慌てず騒がず死毒で体内の毒素を消した。そうしなければ感覚に飲み込まれてしまいそうになったからだ。 乾も同じことをしていたが、よくこの後で平静で居られたものだと感心してしまうほどに……。 「ん、くふぅ……っ。はぁ、此れは、良いなぁ……♪」 「ふぁ……もっと欲しい、いっぱい欲しい……」 ネオンの吐息は演技だが、解毒のできていない雪ノ下の場合は素だ。 その理性は半分以上が吹き飛び、着衣をはだけさせてネオンにしなだれかかっていた。 時刻は夕方。まだ広場には人の目があるので、男は慌てて二人を止める。 「ちょっとちょっと、あんたらそういう関係かい? 俺は別に貰えるもんさえ貰えればあんたらのことに口を出す気はないが、あんまり人目についてほしくないんだがね」 「あ、あぁ……すまない、つい……。頼む。我等は何でもするから、是非とも今後の話をさせてくれ……良いだろう?」 「ん? 今なんでもするって言ったよね」 「……真沙羅はやらないぞ。この娘は我の物なのだからな……♪」 「んふふふふ〜……嬉しいれすぅ、ネオンさまぁ……♪」 「わかったわかった、勝手にしてくれ。ここじゃ何だ、少し移動しようか」 「そうだな。ほら真沙羅、行くぞ」 「んー! キスぅ。キスしてくれなきゃ行きません〜♪」 「やれやれ……悪い子だ。早く飴をもらってベッドに行こう」 やれやれはこっちの台詞だ、とでも言わんばかりの表情で男が溜息をつく。最初の人の良さそうな表情はもう見る影もない。 男が二人を信用したのは、やはり一も二もなく飴を口に放り込んだことだろう。 中毒者の典型的な行動であると踏んだ男は、二人を連れて街を移動する。 すると先ほどの広場から1kmほど離れたところにある、小さな菓子店が見えてきた。 あまり有名では無いようで、店先の状況からあまり繁盛しているとは言い難いようだ。 男はその店の裏手の方へネオンと雪ノ下を招くと、店の裏口の外をタタンタンとリズミカルに叩く。 中から怪しい風貌の男が現れ、顎で『中に入れ』と指示する。 通されたところには、店の主人らしき男がニコニコしながら座っていた。 「ようこそようこそ。私共の新作の飴、気に入っていただけたようで」 「あぁ……まるで桃源郷を歩いているようになるからな。金に糸目は付けないから、数を譲って欲しい」 「ありがたいかぎりでございます。一先ずはどれほど……?」 「どれくらいの数用意できる? 今ある在庫を見せてもらえないか?」 「お安いご用でございます。材料が特殊なものでして、現在は300個ほどでございますが、随時生産中ですので……」 そう言って、店の主人は木箱に入り紙で包まれた飴玉をネオンたちに見せる。 すると雪ノ下が目の色を変え、そのうちの一つを鷲掴みにして口の中に放り込んだ。 「あふ……ネオンさまぁ……まだですかぁ……?」 「お行儀が悪いぞ、真沙羅。すまないな、今の分も払おう」 「はっはっは……お連れ様には随分気に入っていただけたようで」 「ではとりあえず50個ほど用立ててもらおう。またすぐ来ることになるとは思うが、ね」 「毎度ありがとうございます。おい、お包みしろ」 「へい」 ネオンの場合、夜春という技を使用しているのもあるが、注文した数が現実的なのも良かった。いきなり全部くれなどと言い出すと逆に怪しまれてしまっただろう。 例の飴が50個袋に入れられ、ネオンが懐に手を入れたその時だった。 「話は聞かせてもらった! お前たちは滅亡するのだぜ!」 「どこの誰の影響だそりゃ。さ、観念しな」 「な、何者ですか!? 私達はしがない菓子屋でございまして……!」 裏口の戸を蹴破り、叢雲と乾が屋内に踏み込んでくる。そしてそれに雁久良も続き、ほぼ下着状態の雪ノ下を見て一言。 「……私でもあまり変わらなかったんじゃないかしら?」 「真沙羅さん、ショーツ云々までは踏み込んでない、し……。時間の問題な気もするけど……」 不散紅葉の的確なツッコミであった。 ドタバタしているうちに逃げ出そうと、菓子屋の主人が動いたその時。 「おっと……逃しはしない。おとなしく縛につけ」 「お、おまえっ……!? まさかこいつらの仲間……!?」 「フン、中毒患者相手に商売しようっていうんならその中毒患者に刺される覚悟もしておけということだ。不用意なんだよ」 「そ、そんな! そっちの娘は中毒なのに……!」 「あー……それは、まぁ、なんだ……可愛いから許せ」 思ったよりも飴玉の効果が強烈だったとは言いたくないネオンであった。 「ちぃっ!」 扉を開けた怪しい風体の男が身を翻し逃走しようとする。 しかし振り向いた直後、その喉元に刀の切っ先が突きつけられた。 「はいそこまで。逃しはしませんよ」 「ば、馬鹿な……正面から……。店内に居たやつらは……!」 「あぁ、あのお菓子屋さんっぽくない人たちですか? 当然、寝てもらってますよ。……思うんですけど、この店が流行らなかったのは味云々の前に強面が多すぎたからじゃないですかね?」 涼しい顔でにこりと笑う真亡。彼の後ろには十人近い大の大人が床に転がっていた。 がくりと項垂れた男後頭部に、不散紅葉が鞘の一撃をくらわせ昏倒させる。 「……や、やりすぎじゃありません……?」 「この方が、連れて帰るのが、楽。暴れたりされると……、嫌」 「そらそらー、キリキリ歩くのだ! ……ところで、子供には効かないならこの飴いくつかもらって行ってもいいかなー?」 「あ、後学のため俺も10個ほど……」 「だ・め・で・す! 怜くんには僕が後できちんとした飴買ってあげるから!」 「ねぇん、私は駄目かしらぁん?」 「余計にダメです……ってもう一個食べてるじゃないですか!? ちょっ、色んな意味で危ないから吐き出してー!?」 「身体が熱いのよぉ! ねぇ真亡さぁん……し・ず・め・て……♪」 「だから貴女には食べさせたくなかったんですよぉぉぉっ!?」 こうして、一時神楽の都を騒がせた飴玉は、開拓者の活躍によりすぐに人の記憶から消えていった。 後に判明することだが、どうやら成分には人工の、大麻のような症状を起こす薬が入っていたらしい。 作り方は完全に処分され、方法を知る人間も処断されたので二度とこの世に出るまい。 ドタバタやれるくらい平和なのがいい。真亡は苦笑いすると、まだ飴玉の効力が抜け切らない雪ノ下と雁久良が脱ごうとするのを止めに回るのだった――― |