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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 数々の星座アヤカシを打ち倒してきた開拓者たちの前に突如示されたもの。それは導星の社(どうせいのやしろ)と呼ばれる謎の施設の正体である。 竜座ドラゴン曰く、 『導星の社とはアヤカシを創り出す瘴気と人間の想いを混ぜるための装置のようなもの。私達を星座アヤカシたらしめているのは、元はあなた達人間が長い時の中で星々に馳せた想いの力なのよ』 とのこと。 そんなものを人間が創りだすとは考えにくい。創り出せるとは考えにくい。よって、導星の社とはアヤカシが建造なり建立なりしたと考えるのが妥当だろう。それならば現地の人間が誰もしらないのも、記録に残っていないのも頷ける。 アヤカシが創りだしたと思わしきより強力なアヤカシを作るための設備が、星の一欠片という力を人類に与えたのは皮肉という他ない。 しかし、それはどこにあるのだろうか? 集星のどこかには違いないのだろうが、そんな建造物は知られていない――― 「さて、今回の星座アヤカシはカシオペア座、カッシオペイア。カシオペアで統一します」 「お、ということは神話的に女性型で?」 「うん。色気アリアリの、30歳くらいのジプシー風のアヤカシだって」 「解散」 「なんでよ!?」 ある日の開拓者ギルド。 今日も今日とて星座アヤカシの依頼を担当するのは、西沢 一葉と鷲尾 亜理紗の二人組。 30歳くらいという年齢を聞いて速攻やる気をなくした亜理紗。やはり旦那の趣味に毒されてきているのかもしれない。 「冗談ですよ。30なんてまだまだ女ざかりです」 「……既婚者は余裕だこと。それはともかく、ジプシー風だけあって踊るように戦うんだけど、これがちょっと特殊でね?」 一葉が言うには、このアヤカシは直接人間に害を与えるようなことはしないらしい。 自己顕示欲が強く、踊ることで自らの美しさ、靭やかさを見せつけているのだとか。 問題なのは、抵抗力が低い人間が彼女の踊りを見るとつられて踊り始めてしまい、悪くすると死ぬ一歩手前まで踊り狂わされるという。 そうして、もう止めたい、勘弁してくれという負の感情を瘴気に還元する。本人的には気持ちよく踊っているだけらしいのだが。 「基本的に、開拓者ならつられて踊るようなことはないみたい。ただ、彼女は剣閃だろうが弾丸だろうが術だろうが、ありとあらゆる攻撃を踊りながら跳ね返したり受け流したりすることができるのよ。自動命中の術すら、軌道を変えられて術者に跳ね返したっていう報告もあるの」 「そんなのどうやって倒すんですか……? 手数で押すとか?」 「石鏡軍の部隊がすでにえらい目に遭ってるけど、それでもよければ」 「う……。ま、まぁ開拓者さんたちは少数精鋭ですから! それはともかく、例の平坂空羅は何者なんでしょうね? なんか英雄だとか暴君だとか眉唾な話が出てきましけど」 「あぁ、本人に聞いてみれば? なんか今回、こっちの依頼に合わせて自分も討伐に向かうとか言ってるみたいだから」 「はぁ? え、なんか石鏡のいいとこの武家の当主……でしたっけ? 自分でも戦えるんですか?」 「あー、星の一欠片を売ってくれとか言ってくるから、私も武芸はからっきしだと思ってたクチなんだけど、どうも本人も結構な腕前らしいわよ。銀河さんが言ってた」 一葉には石鏡の軍人に幼なじみがいる。どうやらその人から話を聞いたらしい。 同時に、不遜な態度が鼻につく嫌なやつである、とも。実力があるので文句も言いづらいらしいが。 「というわけで、平坂空羅に負けないようになんとか撃破をお願いね」 「ところで一葉さん」 「何?」 「不遜な態度なら、銀河さんも大概なんじゃ―――」 「同族嫌悪って言葉、知ってる?」 「お、おう……」 ついに自ら戦場に乗り出す平坂空羅。その実力は折り紙つきであるという。 彼に先んじてカシオペア座を撃破できるのか……それとも――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
アムルタート(ib6632)
16歳・女・ジ
霧雁(ib6739)
30歳・男・シ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰
緋乃宮 白月(ib9855)
15歳・男・泰 |
■リプレイ本文 ●舞い踊れ、死のダンス 「うっは〜マジでお仲間だ! ずっと会いたかったぜ、お前にナァ!!」 スビシィッ! とカシオペアを指さし叫んだのはアムルタート(ib6632)。 それに対し、言われた本人は涼しい顔。自分を見てくれる観客ができたとでも言うように両手を広げてみせる。 「ようこそ、妾のステージへ。妾という存在を心に刻みこんでおくれ」 だだっ広い石鏡の草原は、遮蔽物も隠れるところもない。そんなところに一人ぽつんと佇んでいたカシオペア。 季節を無視したかのような薄手のジプシー衣装。ひらひらした布地にアクセサリー。 褐色に近い肌は、エキゾチックとも言える魅力を醸し出している。 「というわけで踊ろう! レッツダンスだよ♪」 「ふむ、そちも舞に覚えがあるか。よかろう、妾のバックダンサーくらいは努めさせてやる」 「ふふーん、そっちがバックダンサーにされないようご注意だよー♪」 ジプシー同士通じるものがあったのだろうか。カシオペアとアムルタートは少しの距離を保ち、踊りの体勢に入った。 「ミュージック、スタート!」 カシオペアがそう叫ぶと、どこからともなく情熱的な音楽が流れてくる。これは彼女の能力だろう。 「おー、便利ー♪」 自由気ままにステップを刻む二人。他の開拓者たちはあえてそれを止めようとはしない。 観察する機会があるならそれもいい。カシオペアの踊りを見て、癖やリズムを掴めるなら僥倖。 だが……一同はカシオペアの動きに、踊りに魅入り、自然とため息を吐いてしまう。 魚座のように根拠の無い魅力ではなく、しなやかな動き、体捌き、整った身体など、その全てが芸術的であると感じる。 実力に裏打ちされた自信。刻む自己満足のビートは、決して虚仮ではない。 「む……来たようでござるな」 「あれが平坂空羅……」 二人のステージが絶好調であったその時、遠くから近づいてくる影を霧雁(ib6739)が捉えた。 堂々と歩み寄るその姿。野太刀を佩き、不敵な笑みを浮かべるその青年こそが平坂空羅。 その名を呟いた真亡・雫(ia0432)のように線の細い感じはまるでなく、がっしりとしたいかにも武士と言った風体。歴戦の開拓者から見ても手強いと感じさせるに充分だった。 「ふっふっふ……どうやら出遅れてしまったようだな。貴様たちが噂の開拓者か」 「此奴……何処かで会った気がする?」 「え、何だお前、両刀か? 既婚者のくせにこんなガチムチにまで興味があるとか……」 「いいんじゃありませんこと? 人の好みはそれぞれ……存分に付き合えばいいですわ。ただしお姉様とキッチリ別れてからな!」 「氏ねよテメーら」 鷲尾天斗(ia0371)は空羅にデジャヴュを感じたらしく、神妙な顔で呟いたのだが……その空気を何 静花(ib9584)と各務 英流(ib6372)が粉々に打ち砕く。 しかしこれが彼らのノリであるということも先刻御承知なのだろう。空羅は鼻で軽く笑うと、舞に興じているカシオペアとアムルタートへ視線を投げた。 「あれがカシオペアか……その力、是非手に入れたいものだ」 「先に到着したのは僕達です。余計な手出しは御遠慮願います」 「もっともだ。共闘してもいいのだが……ふ、貴様らはオレを信用できんだろう。オレとて折角勝っても星の一欠片を手に入れる権利がお前たちにあるのでは骨折り損……高みの見物といこう。……む?」 緋乃宮 白月(ib9855)の忠告に、空羅は意外にも素直。諸手を上げて手出しはしないとアピールする。 だがその緋乃宮と、雪切・透夜(ib0135)が自分のことをじっと見ていることに気づき眉をひそめる。 「何か用か?」 「何故、あなたはメダルを集めているのですか? このメダルや滅びの時とはいったい……」 「所詮子供だな。聞けば何でも答えてもらえると思っているのか? 知りたくば自らその答えに辿りつけ。……で? そちらの男も同じようなことを言うつもりか?」 「違う。……僕は英雄云々なんて輩は絶対に信じません。戦うのは全て自身の為。誰かの為などではない」 「気が合うな。オレもそうだ」 「何……?」 「英雄などというものはなるものではない。行動した結果『なっているもの』だ。オレはオレの覇道のために星の一欠片を求め、歩むのみ。その結果他人がオレを英雄と呼ぶのか、暴君と呼ぶのかなどは興味はない」 不敵な笑顔。不遜な態度。確かなのは、彼の意志は固そうだということ。 啖呵を切った雪切の問いに応えた空羅は、そのままくいっと顎でアムルタートたちの方を指し示す。 空羅に注目していて気付かなかったが、踊りも音楽もラストスパートであることがわかる。 初めて聞く曲だろうに、即興でもきっちりカシオペアに追従するアムルタートは流石と言おうか。 やがて音楽が終了し、ピタリと二人の動きが止まる。 お互いを見据え、片や汗一つかかず、片や汗を流しながらも満足気に笑顔を浮かべていた。 「フフ〜いい感じ! 凄く楽しいね♪ ユニットとかしちゃう?」 「強がるでない。妾に追従したことは褒めてやるが、所詮は人間。汗が吹き出ておるぞ」 「まだまだぁ! こんなんじゃ踊り足りねーぜ!」 再びビシィッ! とカシオペアを指さすアムルタート。そこに…… 「舞い散る汗も踊りの魅力ですよ」 真亡の言葉に、カシオペアはようやく自分が包囲されていることに気づく。どうやら夢中になっていたのは彼女も同じらしい。 空羅は先ほどの言葉通り高みの見物らしい。野太刀を放り出して草の上に座り込んでいる。 「よかろう……やってみるがいい。今度はその体に死の舞を刻んでやろうぞ」 パチン、とカシオペアが指を鳴らすと、先ほどとはまた違った音楽が流れ始める。 闘志を鼓舞するかのような激しい音楽。それに合わせ、カシオペアはタンタンとステップを開始した。 「この大熊座最強の盾と爪は、星の一欠片最高の硬度を誇るのですわーッ!」 大熊座のメダルを使い、巨大な鈎手甲を両腕に装備する各務。最高の硬度を誇るかは定かではないが、その巨大な一撃をカシオペアに振り下ろす。 しかしカシオペアはそれを体勢を低くして回避し、爪の後ろに回り込みつつ掌打を放って軌道変更、各務自身の脇腹を叩かせた。 悶絶する各務。続いて絶好のタイミングで何が突っ込んでくる。 「材料がなくてお立ち台が作れなかった恨みぃぃぃっ!」 「知らん」 繰り出された蹴りを片手で払い、何が左回転するところに自分も回転して右のエルボーを合わせる。こめかみを打ちぬかれ地面に倒れる何の姿に、開拓者たちは驚きを禁じ得ない。 カシオペアの一連の動作が余りに流麗で、ただ踊っているようにしか見えなかった。 「なら、そのステップを封じれば……!」 テーブル山座のメダルを手に、真亡が突っ込んでいく。 彼が使った時の効果は『一定の範囲に自分をも巻き込む高重力場を発生させる』である。 カシオペアの、というかジプシーのカウンターは足捌きが命であると踏んだ真亡は、それを殺しに来たのだが……。 「甘いぞよ」 「!?」 接近しメダルを発動させた真亡。重力がのしかかって来る直前、カシオペアが手を高く掲げ、滑らせた直後……彼を横殴りの衝撃が襲い弾き飛ばした。 首の上にだけ衝撃が来たので、軽くむち打ちのようになってしまったようだ。 「つぅっ……! 今のは、まさか……重力場の流れを横に変更した……!?」 「察しがいいのう。妾に流せぬものなど無い。妾の足を止めるられるものなど存在せぬわ」 シャララン、とアクセサリーが音を奏でる。 遠距離攻撃や魔術も反射するというのはどうやら誇張ではないらしい。 重力という法則まで捻じ曲げているのだから半端ではない。 「そっか……やっぱりそうだ。ジプシーのイムヒアみたいなもんなんだ」 「つーとアレかァ!? あらゆる攻撃に対して反撃するっつー……」 「そ! しかも強化版だろうから、ちょっとやそっとじゃ突破できないよー」 「チッ! これだからジプシー相手は辛ェンだよなァ」 ぼやきつつカメレオン座のメダルを取り出す鷲尾。 「さあさあいきますとっておき! 何が出るかなメダルア〜ップ♪」 アムルタートもそれに続き、水蛇座のメダルを取り出し、同時に発動する。 効果は事前に確認済み。鷲尾がカメレオン座を使う場合『相手に視認されにくくなる。ただし、気配は消えないし相手に見られている状態でないと発動できない』という効果。 アムルタートが水蛇座を使う時は『鞭または布の攻撃が命中した時、水の衝撃波で追加ダメージを与える』というもの。 ブラインドがかかったようにみえる鷲尾と、戦舞布をはためかせるアムルタート。 魔槍砲がカシオペアの腹を貫こうかという時、彼女は右足を高く蹴り上げ魔槍砲の方向を変えてしまう。 続いて襲いかかってきたアムルタートの戦舞布をかかと落としで迎撃。 仰け反っている鷲尾の腹に回し蹴りを叩き込み、続けてアムルタートの顔面に拳を……! 「させぬでござるよ!」 霧雁はこの時を狙っていた。夜を発動し、カウンター行動の時に時間を止めてしまえば必然的に足も止まる。 続いて散華による苦無の連続投擲。これを避けられるはずがない! 「ちぇっくめいとでござるッ!」 「やれやれじゃのう」 「!?」 足元を狙って放った苦無たち。それらはカシオペアが手にしたナイフで全て払われ回避される。 そしてやっと時間が動き出し、アムルタートは慌てて距離を取る。 「馬鹿な……シノビでもないものが停止した時間の世界に入門してくるなど!」 「言ったじゃろ? 妾に流せぬものはない。それは時間であっても同じこと……」 時間を停止するという夜という技も大概だが、時間を流してそれを無効化するカシオペアもどうかしている。 黄道十二星座でもあるまいに、随分な強敵として顕現したものである。 「どうした。手を貸してやろうか?」 「要りません。それを口実にメダルの権利を主張されても困ります」 「ふ……嫌われたものだ」 ニヤつきながら声をかけてくる空羅の言葉をバッサリ切り捨て、緋乃宮は水瓶座のメダルを手にする。 策はある。あるが、メダルの効果が判明していない。 事前に使ってみた時は何の反応も示さなかったのだ。黄道十二星座とはいえこれは不安だ。 しかし、遠距離も近距離も、星の一欠片による効果も、時間停止さえ捻じ曲げる相手。ハイリスクは承知でハイリターンを狙う以外に勝ち目はない……! 「援護だァ!」 魔槍砲から火線を放つ鷲尾。しかし放たれた砲撃は手でふわりと受け止められ、砲丸投げをするような形で何へと向けられた。 「防御ならばカウンターはありませんわ!」 例の巨大な鈎手甲で割って入り、何をガードする各務。 「くっそ! ちっとは役に立てよこのクソメダル!」 ヤケクソ気味にノミとトンカチを出現させ投げつける何。当然簡単に打ち払われてしまう。 しかし、そこに。瞬脚で一気に間合いを詰め、崩震脚を放つ緋乃宮の姿……! 「吹き上げるタイプのこの技ならば……」 「それはどうかのう?」 ダンッ! と力強くカシオペアが地面を踏むと、二人の周囲がクレーターのように陥没する! 「崩震脚の威力を、下に流した……!?」 「まずは一人!」 カシオペアが振るったナイフが、緋乃宮の首筋に突き刺ささろうとした時……! 「なんじゃと!?」 緋乃宮の首から冷水が発生し、ナイフとそれを握っていたカシオペアの手を弾き返す。 これこそ緋乃宮が使う水瓶座の効果。『物理攻撃を受けた時、一度だけそれを無効にし−30℃の冷水で反撃する』。 ステップこそ止めなかったが、注意が逸れた。再び真亡が接近し、テーブル山座を発動! 「無駄じゃ!」 「えぇ……僕一人なら、ね」 「なんじゃこの光……ぐぁっ!?」 突如カシオペアの目を眩ませたのは、雪切が磨きに磨いた太刀で反射した太陽光。 それに気を取られ、カシオペアは今度こそ真亡もろとも重力場に巻き込まれ、その足を止める! 「これで……終わりだ!」 アヘッド・ブレイクで急接近した雪切が、太刀を振りかざし止めを刺しにかかる。 このままではヤツも重力場に巻き込まれ動けなくなるのでは? カシオペアがそう考えたのは自然な流れである。 しかし、彼女は知らない。真亡と雪切が親友であり、共に数々の修羅場をくぐり抜けた存在であるということを。 雪切の攻撃のタイミングに合わせてメダルの効果を切ることくらい、真亡には苦ではない……! 振り下ろされた白刃。肩口から腹の辺りまで斬り裂かれ、カシオペアは悶絶する。 それでもなお、これでもなお、雪切りが発動した聖堂騎士剣の効果を太刀の根本に流し致命傷を避けたのだからたまったものではない。 だが……。 「ま、まさか妾が直撃を受けるとはのう……! 生憎丈夫な方ではなくてな……!」 聖堂騎士剣の効果を避けてなお、雪切の一撃で戦闘能力の殆どが失われてしまったらしい。カウンターに特化しすぎた結果だろうか。 カシオペアは自嘲するように笑ったが、痛む体に鞭を打って姿勢を正す。 彼女=踊りなのだ。彼女が踊りをやめる時は死ぬ時。 ならばと、アムルタートが歩み出て、静かにステップに加わった。 「……ステップ、ずれてるよ」 「無理でも妾に合わせい。気の利かぬバックダンサーよ……」 やがて……踊るように舞うように瘴気が散り、音楽が止まる。 それは開拓者たちが見てきた中でも稀有な、美しいとさえ言えるアヤカシの消滅であった――― ●空羅という男 「メダルは確保したでござるよ」 感傷に浸る間もなく、霧雁は仕事をする。 夜で時間を停止しカシオペア座のメダルを拾い、例の少年忍者に備える。幸いにも今回は現れなかったが。 「さて、どうなさいます? 私達から奪いに回りますか?」 「止めておこう。ギルドの上前をはねたとあっては後々やりづらくなる。倒したのは貴様らなのだから貴様らが持つのが自然な流れだ」 意外にもあっさり身を引く空羅。立ち上がって伸びをし、野太刀を拾い上げて不敵な笑みを浮かべる。 「どのみちいずれはオレのものになる。今日は挨拶程度だ」 そう言いつつ野太刀を抜く空羅。開拓者たちも構えるが……! 構えた直後、開拓者たちの間をエネルギーの刃のようなものが超高速で通り過ぎていった。 もし当たれば怪我では済まなかったかもしれない。わざと外してくれたようだが……。 「蝿座と六分儀座の複合技だ。今度は直接対決と行きたいものだがな……はっはっは……!」 高笑いをしながら去ってゆく空羅。その背中を見送った後に、誰かがやっとの思いで呟く。 「……星の一欠片を、二重がけ……!?」 一人につき一枚しか使えず、複数所持すると干渉を起こすはずの星の一欠片。 謎は深まり、空羅が今までにない脅威として立ちはだかる予感がするのであった――― |