十二の試練
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 4人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/03/31 21:32



■オープニング本文

 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。
 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する―――


 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。
 数々の星座アヤカシを打ち倒してきた開拓者たちの前に突如示されたもの。それは導星の社(どうせいのやしろ)と呼ばれる謎の施設の正体である。
 竜座ドラゴン曰く、
『導星の社とはアヤカシを創り出す瘴気と人間の想いを混ぜるための装置のようなもの。私達を星座アヤカシたらしめているのは、元はあなた達人間が長い時の中で星々に馳せた想いの力なのよ』
 とのこと。
 そんなものを人間が創りだすとは考えにくい。創り出せるとは考えにくい。よって、導星の社とはアヤカシが建造なり建立なりしたと考えるのが妥当だろう。それならば現地の人間が誰もしらないのも、記録に残っていないのも頷ける。
 アヤカシが創りだしたと思わしきより強力なアヤカシを作るための設備が、星の一欠片という力を人類に与えたのは皮肉という他ない。
 しかし、それはどこにあるのだろうか? 集星のどこかには違いないのだろうが、そんな建造物は知られていない―――
「今回のアヤカシはヘラクレス座、ヘルクレス。ヘラクレスで統一します」
「表へ出ろ」
「それじゃない!」
「■■■■■―――!!」
「それも違う! 何、最近シリアスな感じが続いたからギャグりたいの!?」
「イグザクトリー(そのとおりでございます)」
 ある日の開拓者ギルド。
 今日も今日とて星座アヤカシの依頼を担当するのは、西沢 一葉と鷲尾 亜理紗の二人組。
 ヘラクレス座というと神話の中でもかなりの強者である以上、顕現するアヤカシも相当強力なものと推察できる。
 その割に二人共焦りが見られないというか、呑気な雰囲気がするのは何故だろうか。
「このヘラクレス座は、通常攻撃では絶対に死なずダメージを受けない。撃破するには『ジャンケンで12回勝つ』以外に無いわ」
「……じゃんけん?」
「そ。外見は3m近い巨大な剣を携える鎧の大男。でもその剣を振るうことはほぼ無い。人を殺したっていう話も無いわね」
 話によると、ヘラクレス座は出くわした人間にジャンケンを挑み、24回中12回勝利できれば倒せるらしい。
 ただし、一敗する毎に人間側は負の感情を抜き取られ、二回負けると死にはしないが行動不能になる。
 衰弱するだけなので数時間寝ていれば動けるようになるし、動けなくなったところをヘラクレス座が止めを刺しに来るということもない。それだけジャンケンに自信があるのだろうか?
 そうしてジャンケンに勝つ限り何度でも負の感情を搾取できるのがヘラクレス座の強みと言えよう。
「えっと……? つまり、一人で挑んだら一回負ける間に十二回勝たないといけないと。無理ゲーですねぇ……」
「今回の依頼の場合は8人集まると、二連敗さえしなければ一人3回はジャンケン出来る計算かしら。ちなみにあいこは普通にやり直し、最初はグーの掛け声あり。ただし、最初はグーの時にパーとかチョキを出すと反則負けになるのでヨロシク」
 他にも、後出しや心を読んだり未来予知などをしても反則扱いされ負の感情を抜き取られる。
 要は運も含め自力で何とかしろということなのだろう。
「……なんかこう、12回倒さないといけないっていうのは雰囲気があるんですが、その方法がジャンケンというのがなんとも……。異なる手段で12回倒さなきゃいけない血みどろの決戦とかじゃないんですかぁ?」
「そういうのは他所でいくらでもやってるから。たまにはほのぼのしたヘラクレスがいてもいいでしょ」
 よくわからない理屈だがツッコむとヤバそうな気がしたので黙る亜理紗であった。
 ジャンケンでしか倒せないという謎のアヤカシ、ヘラクレス座。星の一欠片は役に立つのだろうか―――


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
各務 英流(ib6372
20歳・女・シ
何 静花(ib9584
15歳・女・泰


■リプレイ本文

●邪拳
 穏やかに水が揺蕩う三位湖のほとり。風光明媚なその場所にそぐわぬ大男が仁王立ちとなり開拓者を待ち構えていた。
 身の丈以上の大剣は威圧感充分だが、使うことがないとわかっていると拍子抜けではある。
「よく来たな……命知らずの四人組よ……って少ねぇな!?」
「こっちにも事情があるんだ。わかるね?」
「アッ、ハイ」
 何 静花(ib9584)の有無を言わせぬ迫力に、ヘラクレス座はあっさりと従った。
 今まで挑んできた相手は最悪でも6人体勢だったので、まさか4人という少人数で敵が来るとは思っていなかったのだろう。図体がでかい割に細かいことを気にするようだ。
「例え人数が少なかろうが手加減はしねぇ! ジャンケンの英雄と呼ばれたこのオレの力を見せてやるぜ!」
「じゃんけんの英雄……」
「じゃんけんなァ……」
 真亡・雫(ia0432)は誇れるんだか誇れないんだか分からないその言葉の響きに苦笑いをしたが、鷲尾天斗(ia0371)は単純に野郎と戦うことが面倒くさかっただけである。
 命を削るやりとりなら偽悪者として振る舞うのも絵になるが、じゃんけんではそれも虚しいだけ。そのくせ条件は妙に厳しく、人数不足もあり勝算も薄い。ふんだり蹴ったりとしか言えない。
「じゃんけんだとほぼ運頼み……これでは私の右手に封じられた力を見せられないっ! 残念ですわ……今度こそ私の真の力を解放する機会だと思いましたのに」
「くっくっく……いい気合だ。ではあっという間に片付けてやろう!」
 拳をぐっと握ってヘラクレス座を睨みつける各務 英流(ib6372)。そのハッタリをしっかり真に受けつつ、ヘラクレス座は大剣を地面に突き刺しジャンケンの準備に入る。
 やはり剣は使わないらしい。最初の相手は誰だと息巻いていた時である。
「だが待って欲しい、とりあえず座ろう」
 何はそう言うと、持参した茣蓙を敷きテーブル山座のメダルを使い何の変哲もないテーブルを出現させた。
「貴様ァ……ジャンケンを馬鹿にしているのか!? ジャンケンとは体全体を使い荒ぶる魂と勝利への執念を込めて繰り出す格闘技! テーブルに座ってちまちまなどやっていられるか!」
「僕の知ってるジャンケンと違う……」
「黙っといてくれ。だが、公平でなくちゃいけないだろう? 台に肘を着いて手を出す、これなら不正のし様が無い。座る事で互いの姿と出した手を確認しやすくなる。どうだ、いい考えだろう」
「むぅ……正々堂々戦いたいということだな! よし、その条件を飲もう!」
「こいつもしかしなくてもアホだろ……」
 何の提案をあっさり受け入れるヘラクレス座。真亡と鷲尾は疲れる一方である。
 各々武装した開拓者が4人と、アヤカシである大男が1匹、湖の畔でテーブルを囲んで座っている。なんともシュールな光景だった。
「それじゃ先鋒は私だ。言い出しっぺだからな」
「くっくっく……良かろう。恐怖のズンドコに叩き落としてくれる!」
「ズンドコ……?」
「止せ止せ。ツッコむだけ疲れるわァ」
 何の提案通りお互いテーブルに肘を置いているため緊張感もへったくれもない。
 だが24回中12回勝たなければならないという縛りがある以上、まずは幸先良いスタートとしたいものだが……?
『最初はグー! ジャンケンポン!』
「ぐっ……!」
「ふははは、俺の勝ちだ! 威勢の割には大したこと無いな!」
 何がグー、ヘラクレス座はパー。何はいきなり敗北し、負の感情を抜かれてしまった。
 それはまるで一瞬で長距離を走ったかのよう。目が眩み体の芯から力が抜けていく。
 だがまだ動ける。可能性上、ここから12連勝もありえないわけではない……!
「さっさと続けるぞ……! 最初はグー、ジャンケンポン!」
 グーとグーであいこ、次の対戦も同手であいこ。そして……
『最初はグー、ジャンケンポン!』
「なっ……!」
「馬鹿め! グーグーグーと続けば普通は手を変える! ならばパーに勝てるチョキを出すのが王道よ!」
「くっそ……! た、倒れる前に、一つだけ聞いてくれるか……!?」
 意識が朦朧とする中、何はポツリと呟いた。
「ところで私はヘラクレスよりコーカサスの方が好きなんだ」
『知らんがな』
 総ツッコミを受けつつ、何は自らが用意した茣蓙の上に倒れ伏したのであった―――

●究極! ジャンケン仮面
「次は私の番ですわね……状況は絶望的ですが、私には秘策がありますッ!」
 何をどかした各務が懐から何かを取り出す。
 白い布のように見えるそれを、各務は徐ろに……被る!
「フォォォォ……! 滾るッ! 滾りますわぁぁぁッ! 今の私は……究☆極! ジャンケン仮面ッ!」
「……おいこら。お前、それまさか……」
「お姉様のパンツですが何か?」
「パ、パン……!?」
「オイィィィッ!? 俺の嫁のパンツに何してくれてんだァァァ!?」
「盗んだんじゃありませんわよ。きちんと事情を説明して依頼のためにお借りしたのです。文句を言われる筋合いはありませんわッ!」
「亜理紗さん何してんのォォォ!?」
 スーパーハイテンション状態の各務、ツッコミが追いつかない鷲尾、真っ赤になってうつむく真亡。ヘラクレス座はすっかり置いてけぼりである。
 各務曰く、ジャンケンは精神力が物を言うので戦意を高めるために是非貸してほしいとねだったらしい。
 普通なら亜理紗も断ったのだろうが、人数が少なかったために少しでも勝率が上がるならと了承したようだ。
「……もう始めてもいいか?」
 話しについていけない……気勢を削がれたヘラクレス座の音頭で勝負が再開される。
 ただでさえシュールな光景に、パンツを被った女忍者が加わりもはや意味がわからない。
『最初はグー! ジャンケンポン!』
 お互いパーであいこ。しかし今の各務はノッている。
『最初はグー! ジャンケンポン!』
「ぐわぁぁぁっ!?」
「今の私に勝てると思って!? 最高にハイ! ってヤツですわァァァァァハハハハハーッ!」
 ジャンケンに負けただけで何故か左肩の鎧が砕けるヘラクレス座。しかしそれに構うことなく勝負は続く。
『ジャンケンポン!』
『ジャンケンポン!』
『ジャンケンポン!』
『ジャンケンポン!』
「オーッホッホッホ! 今の私は無敵でしてよ!?」
「ば、馬鹿な……このオレが4連敗だと……!?」
 パンツの力(笑)で強化されている各務はまさに鬼神の如き活躍を見せる。
 鎧のあちこちが破壊され口の端から血さえも流すヘラクレス座だったが、彼もこのまま終わりはしない。
『ジャンケンポン!』
「くぅぅっ!? まさかっ……!」
「調子に乗るなよ! パンツ仮面に狩られたとあってはジャンケンの英雄の名が廃る!」
「ふ、ふふふ……一度くらい負けないと張り合いがありませんものね。しかしッ! 私の身体ぅわぁぁぁ! 我ぁ↑がお姉様への愛の結晶であり、誇りであるぅぅぅ! つまり! 全人類を越えたのどぅあぁぁぁ!」
 負けてなお士気高揚、一歩も引かぬ各務。ただし顔には女物のパンツを被っている。
『ジャンケンポン! ジャンケンポン! ジャンケンポン!』
「がはぁっ!? こ、こいつまだ……!」
「例えパンツを被ろうとも最終的に……勝てば良かろうなのですわぁーーー!」
 一度負けてからのグーチョキパーで3連勝。これで各務はたった一人で7勝をたたき出し、半分以上のスコアを記録する。パンツ恐るべし。
 ヘラクレス座の兜が割れ額からも血を流し始めるが、彼はアヤカシなのでただの演出だろう。
「(いかん……流れを変えなければ! このままでは本当にこいつ一人に12敗しかねん! こいつにはそれだけのスゴ味があるッ!)」
 負けが重なり、一旦冷静になるヘラクレス座。
 こちらはあと4敗までできるが、あちらは1回負けたら終わり。焦るな、オレの有利は動かない。
 自分に言い聞かせ相手の手を予想するが、ジャンケンで相手の手を読み切るなど土台無理なのだ。
 だからこういう作戦に出る。
「言っておく。次にオレはパーを出す」
「古典的な挑発ですわね……そんなものに私が引っかかるとでも?」
「こういうのは言うことに意義があるんだ。結果は終わってから論じればいい」
 ニヤリと笑う一人と一匹。心理戦まで混ざり始めると否が応にも緊張感が高まる。
『ジャンケンポン!』
 突き出されたヘラクレス座の手は……パー。そして各務は……!
「だからパーを出すと言っただろう?」
「まさか……お姉様への愛が……私が、こんなところで……!」
「勝ったッ! オレは勝った! 勝ったんだぁぁぁーーーっ!」
 各務が敗北を喫しどさりと倒れた後、ヘラクレス座は思わず立ち上がり拳を天に掲げた。
 強敵との血で血を……洗ってはいないが戦いを制したヘラクレス座は、勝利の雄叫びを上げるのだった―――

●ジャンケンという名の
「それでは次の相手は僕です。よろしくお願いたします」
 真亡が穏やかにそう告げたのを聞き、ヘラクレス座は思わず動きを止め真亡の顔を見つめた。
 数秒後、あからさまにしまったという顔をした後、茣蓙にちょこんと座り直し……
「すいません。マジすいません。勝負が終わった気でいました」
「は、はぁ。素直でよろしいかと思います……けど……」
 テーブルに手をつき頭を深く下げるヘラクレス座。恥ずかしくて顔を上げたくないという意味もあるのだろう。
 その人間臭さにちょっと好感が持てた真亡であった。
 ともあれ、各務が7勝も稼いでくれたので気持ち的には大分楽になった。残りは二人、真亡が3勝して鷲尾が2勝すればそれで勝てる。当初の一人平均4勝以上に比べれば大分現実味がある。
「ではいきますよ。最初はグー、ジャンケンポン!」
 真亡と交代しての初手。
 真亡はこれまでのヘラクレス座の手から、同じ手が続くこともあるし基本的に順番はバラバラ、つまり下手に考えても攻略法は見つからないという判断に至った。
 ただ一つ……あるヒント。あれが有効であるならば勝算はある。
 だが、無常にも真亡の出したグーは敗北し後がなくなってしまう。
「くっくっく……どうやら貴様はジャンケン仮面ほどの力は持っていないようだな!」
「いや、流石に各務さんと一緒にされましても……」
 全身の気だるさと目眩に必死に抗いながら、真亡は頭を振る。
 手痛い一敗。だが、これが後の布石になるならば……!
『ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!』
「ぐぬっ!」
「まだまだ! 続けていきます!」
 相子が続いた後、真亡がパーを出し勝利、ヘラクレス座の腹部の鎧が破損する。
『ジャンケンポン! あいこでしょ!』
「がっ……!? こいつ、調子を上げてきている……!?」
「直感と運でいくしかないんです!」
「……それで私は速攻負けたわけだが……」
「それは……運がなかっただけかと」
 衰弱状態ながら手を上げて抗議した何。応えてあげる真亡も付き合いがいい。
「ジャンケン……ポン!」
「ぐあぁぁぁっ! ば、馬鹿な……貴様さっきからグーチョキパーの順でしか出していないだろう!?」
「おや、気づきました? 考えてもわからないなら、基本の順で出すのも悪くないかなって」
「だがその戦術はバレたぞ! おまえの次の手はグーだ! グーなんだ! オレはパーを出すぞ!」
「ご自由に。でも僕が本当にグーチョキパーの順でしか出さないのなら……ですよね?」
「むむむ……!」
 出し方がバレた後でまで同じ順で出す意義は限りなく薄い。だが、その逆にあえて同じ手を出すという戦法もある。
 ヘラクレス座が唸りつつ次の手を考えていた時だった。
「……どうして、殺さないんですか?」
「なんだと?」
「どうしてジャンケンに勝って衰弱した相手を殺さないのかな、と。アヤカシなら身動きできなくなった相手を殺さない理由がないでしょう」
「ふん、オレはジャンケンの英雄だ。ジャンケンが全てだ。ジャンケンで勝てば瘴気が還元でき使命は全うできる。敗者に唾を吐くような真似は英雄のすることではないからだ!」
 相変わらず堂々と、胸を張って答えるヘラクレス座。その答えに、真亡は穏やかな笑みを浮かべる。
 あぁ、彼もカシオペア座と同様信念と誇りを持った存在なのだと。
 相容れない敵であっても、リスペクトできる戦士なのだと実感する。
 勝負は勝負。しかし、やるからには気持ちのいい勝負でありたい……!
『ジャンケン……ポン!』
 真亡の出した手は……グー。ヘラクレス座の手は……チョキ!
「ぐがっ……! 何故だ、何故グーを出せる!? グーチョキパーと三連続したら、もう手を変えるだろう!?」
「仮に変えたとして……あなたが何さんに言ったように同じ手で三連続したなら変える可能性が高いのはパーかチョキだけ。でもね、僕の場合はグーチョキパーの順を変えるだけでいい。グーパーチョキでも要件は満たせます。グーチョキパーの次にグーが出てこない保証なんて無いでしょう?」
「そこをオレは勘違いして、グーは来ないと踏んで負けないチョキを出してしまった……!」
 これで合計11勝。後1勝で勝利が決まる。
 こちらにはまだ無傷の鷲尾もいる。いつの間にか形成は逆転していた。
「これで最後です」
「最後になどさせんッ!」
『ジャンケンポン!』
 戦ってもいないのにズタボロになってしまったヘラクレス座。その手が形作っていたのはパー。
 対する真亡は……。
「いい勝負でした。ありがとうございました」
「……結局、お前は最後までグーチョキパーを貫いたのか。深読みしすぎたオレの……負けだ……!」
 真亡の手はチョキ。今度こそ変化してチョキだけはないと判断しパーを出したヘラクレス座だったが、裏目に出たようだ。
 その巨体にノイズが走ったようになり、足元から瘴気へと還っていく。
「……そこのお前。最後に泣きの一回、頼めるか?」
「俺か? まァ構わねェが」
 結局出番がなくなってしまった鷲尾に対し、ヘラクレス座は勝負を申し込む。
 ジャンケンが全て。ならば消えるその時までジャンケンを優先させたい……!
『ジャンケンポン! あいこでしょ!』
 グーであいこの後、鷲尾のパーで決着。泣きの一回は敗北を重ねただけだったが、ヘラクレス座は満足そうであった。
「嫁が言ってたんだよ、悪運のグーってな。だから最初のあいこでさっさと変えさせてもらった」
「そういえば俺も一回もグーで勝っていない気がするな……。またの機会があれば……覚えて、おこう……!」
 やがて消滅しきり、黄金のメダルだけが地に残される。
 それをさっさと回収し、鷲尾たちは一息吐いたのであった。
「やれやれ……4人だってのに随分濃かったな」
「俺の嫁は参加人数が少ないからって手ェ抜いたりしねェんだよ。勿論、手心も加えない……だろ?」
 惚気とも取れる鷲尾の言葉。しかし他の三人は穏やかな笑顔で頷くのだった―――
「あ、英流。パンツはきっちり返せよ」
「ちっ、気づかれた!」