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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 メダルの数もそろそろ40に届こうかという昨今、狼座によって新たな事実が判明した。 普通のアヤカシは闇雲に負の感情を瘴気に還元していることが多いが、どうやら星座アヤカシたちはとある目的に添って行動しているらしい。意志があるなしに関わらず……だ。 その目的とは、最強の星座を蘇らせること。導星の社はそのためにアヤカシが建造したものと思われる。 ハッキリ言ってどの星座が最強なのかというのは全く不明。現時点では黄道十二星座の一つではないかとささやかれているが……? 「最強って言ったら蟹座一択よ」 「はぁ?」 「……あんた今心の底から『何言ってんだこいつ』って思ったでしょ」 「ぎく。や、やだなーかずはさん。そんなことないですよー」 「嘆かわしい! いい!? 世間一般じゃ蟹座って随分虐げられてるけど、本当は凄い星座なんだから! 良き友人でもある異父兄弟を助けるために強大な敵に共に立ち向かった勇気と義の星! 力及ばず敗れはしたけど、その心意気を認められて星座になったんだからね!?」 「……大分脚色してありませんか……?」 ある日の開拓者ギルド。 目の色を変えて蟹座の擁護に走るのは西沢 一葉。それを微妙な面持ちで聞くのは鷲尾 亜理紗。共にギルド職員である。 星座の最強談義など基本的に不毛極まるのだが、一葉には譲れない何かがあるようだ。 「天儀じゃあまり知られてないけど、泰国じゃ蟹座は積尸気っていう死者が通る道を内包してて、死を司る恐るべき星座だし。あと他にも―――」 「一葉さん一葉さん、それ長くなります? 今日は巨嘴鳥座の説明するのがお仕事なんですけど」 「むむむ」 「何がむむむ、ですか。とりあえず一葉さんは放っておいて説明しますね」 いつもと立場が逆な気がするが、亜理紗は客に向かって説明を開始する。 今回現れた星座アヤカシは巨嘴鳥座トゥカナ。その姿は普通の巨嘴鳥ではなく、何故か巨大なペリカンのようだという。 嘴が大きければなんでもいいというわけでもあるまいに、また誰かの特別な想いが反映されているのかもしれない。 全長は5メートルほどで、もちろん空を飛ぶ。最大の特徴は、どういう理屈か口の中から小型のアヤカシを大量に生産し放つこと。 その時々によって出てくるアヤカシは違うようだが、基本的に素早く厄介な能力を持っていることが多い。 専門家の話では、本体である巨嘴鳥座さえ倒せば小型アヤカシも消滅するだろうとのことだが……。 「えっと……記録では『金属を食べる』とか『布だけを溶かす液を吐き出す』とか『自爆する』ですとか、嫌な言葉のオンパレードです。とりあえず、ポンと出てきたんでこれが最強の星座っていうことはないんでしょうけど」 巨嘴鳥座なのにペリカンというわけのわからない星座アヤカシだが、まぁ気にしたら負けである。 鳥モチーフだけに相手の飛行能力への対策も練っておく必要があるだろう――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
高崎・朱音(ib5430)
10歳・女・砲
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
アムルタート(ib6632)
16歳・女・ジ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●発進! 目的地に辿り着いた開拓者たちは、すでに上空を飛び回っている巨嘴鳥座の姿を苦もなく発見した。 問題は、そのすぐ側にペガサス座……例の翼を持つ白い少年忍者がいたことである。 巨嘴鳥座は基本的に会話に適さない。遠目からでもなんとか言うことを聞かせられないかと悪戦苦闘している様子が手に取るようにわかった。 「……何やってんだお前」 「……もう来たのか。困ったね……」 轟龍の背に乗りツッコミを入れた鷲尾天斗(ia0371)の言葉に、ペガサス座は文字通り困った顔をする。 その手には生の鯖。どうやら餌付けするつもりで持ってきたようだが、食べてくれないらしい。 すぐさま開拓者たちに気付いた巨嘴鳥座は、 『ペーリカーン!』 と叫びつつ距離を取る。やはり本体はあまり積極的ではない様子。 「最初から彼が居るのは厄介ですが……退くわけには行きません」 「その通りじゃ。あのような臆病者に我を見下ろす事など断じて許さんのじゃ」 真亡・雫(ia0432)と高崎・朱音(ib5430)も朋友の龍に乗り空を征く。 「敵はきょちゅちょーじゃだね! きょしゅしょー、ちょきちょー……書記長座だ! 教育してやるぞ!」 「かーわーいーいー!」 鷲尾も大喜び、10歳のロリっ娘ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)。格好もなんだか色々やばい気がするのは気のせいか? この年で滑空艇を乗りこなしているのだから実力はあるのだろうが。 それぞれ得物を取り出し巨嘴鳥座に向かうよう龍に指示を出すが、その前にペガサス座が立ちふさがる。 「そうはいかない。巨嘴鳥座にはもう少し負の感情を集めてほしいからね」 「ふっふーん、それじゃお兄さんが相手してくれるのかな? 空のダンス、踊ってみるかい!?」 鷲獅鳥に乗るアムルタート(ib6632)はビシッとペガサス座を指さし、挑発する。 しかしペガサス座は軽く首を振ると、 「まだ僕が動く時じゃない……。あくまで巨嘴鳥座の援護に回るよ」 言うが早いか巨嘴鳥座のすぐ近くまですっ飛んでいき、先ほどの鯖を手に声をかける。 「巨嘴鳥座、このままじゃ君は勝てない。僕と協力して戦うんだ。いいね?」 『ペーリカーン……』 なんとなく嫌そうなイントネーションだが、仕方なしといった具合にも聞こえた。 「いくよ巨嘴鳥座。アヤカシの素だ」 説明しよう。アヤカシの素とは、ペガサス座が雰囲気で勝手にそう呼んだだけでただの鯖である。 元々巨嘴鳥座が距離を取っていたのと、ペガサス座のスピードが速かったこともあり、巨嘴鳥座が鯖を食べることを妨害することは叶わない。 「ちっ、相変わらずすばしっこい野郎だァ……!」 「……? 何かするつもりですよ?」 「もういい加減こんなビックリドッキリアヤカシ退治は終わりにしたいものじゃのう」 「それ俺の台詞な」 そうこうしているうちに巨嘴鳥座の中で何かが完了したらしく、高らかに宣言する。 『今回のワクワクテカテカアヤカシ、発進!』 やたら甲高い声を出した巨嘴鳥座が嘴を大きく開くと、そこから蜻蛉型の小型のアヤカシが続々と飛び立っていく。 「もしかしてあの羽根……刃になってない?」 「ぞろぞろと……五十ではきかぬのう」 「ガイロン、君なら行けるはずだ!」 開拓者たちに真っ直ぐ向かってくる蜻蛉型アヤカシ。アムルタートは、日光を反射しギラつくその羽根を見て苦笑いする。 敵は多い。高崎も真亡も龍を駆り接近する敵を迎撃に回った。 「わわっ、ちょっと! 滑空艇が壊れちゃうよ〜!」 流石に刃で攻撃されると滑空艇では即死に繋がりかねない。ルゥミは魔槍砲でスパークボムを放ち、辺りを薙ぎ払おうとする。 その見た目とは裏腹に、ルゥミは数多くの修羅場をくぐって来た開拓者。それが放つ範囲攻撃は、飛び回る蜻蛉型を次々と吹き飛ばし瘴気に戻してしまう。 それでもまだ敵の数は多い。とはいえこのまま行けば遠くない時間に制空権は取れる……そう思われた時だ。 「アヤカシの素、おかわり」 『!?』 周囲をブンブン飛び回る蜻蛉たちに手を焼いているところに、ペガサス座は鯖をもう一匹巨嘴鳥座に与える。 すると当然のように、再びアヤカシが吐出される……! 『追加のワクワクテカテカアヤカシ、発進!』 今度は小型のライオンのようなアヤカシが次々と地面に落ちていき、地上で待ち受ける開拓者たちに向かう。 「……下からの援護なんてさせないよ」 「こいつ……!」 頭の悪いアヤカシをフォローする役目も担っている。ペガサス座、侮れない……! 「……言っておくけど、巨嘴鳥座はまだまだ食べられる。さて、保つかな……?」 気だるそうな声からは、愉悦も憤りも憐れみも感じることはできなかったという――― ●やぁっておしまい! 「毎度、あれこれとあって飽きませんね。その分だけ、気を引き締めていきましょう」 「あの翼野郎がいたんじゃなぁ」 「のんびりしてる場合じゃありませんわ! ささ、盾になってくださいまし!」 「え? いや、その……」 制空権を取り巨嘴鳥座を地上に落とした後にとどめを刺すための地上組。 神妙につぶやいた雪切・透夜(ib0135)を盾代わりにその後ろに隠れるのは各務 英流 (ib6372)。半ば諦めたように言いつつ地上戦を喜ぶ何 静花(ib9584)。 そして……迫り来るライオン型の小型アヤカシ。上空の蜻蛉型もそうだが、大きさは三十センチくらいのもので、見ようによっては猫のようにも見えてしまう。 しかし、油断はしない。雪切は突っ込んできたライオン型を剣で一刀両断にするが……! ずどぉぉぉん、と爆音が響きライオン型が爆裂する。幸い雪切は盾を所持しているので、それを構えることで事なきを得た。 しかしその威力は決して無視できるものではなく、雪切も盾がなかったらと思うと背筋が寒くなる。 それが何十という数迫ってきている。当然上空への援護など気が回せるわけもない。 「経験値貰えるんだよな! 貰えるなら倒すぞ!」 格闘主体の何の場合、ライオン型を殴り倒した時点で爆発に巻き込まれる可能性は高い。だが開拓者にはこれがある。黄金に光る星の一欠片……! 何は矢座のメダルを発動し、『拳を振るう度にエネルギーで出来た矢を放つ』という効果を得る。 威力や命中力は通常攻撃と同等だが、遠距離攻撃ができるのは現状ありがたい。 「本当はあのペリカンが地上に落ちた後にお見舞いしたかったのですが……!」 各務も竜座のメダルを発動。この際出し惜しみしている余裕はない。 その効果は『両腕に龍の顔を模した盾を装備する。ただしこの状態だと武器攻撃ができない』というもの。 各務は盾でライオン型をぶっ叩き、そのまま防御姿勢という流れで処理していく。 「孔雀座……どうかな……!」 雪切が使用したのは孔雀座のメダル。その効果は『孔雀の羽が周囲を竜巻のように覆う防壁を作る』というもの。一見吹けば飛びそうだが、爆風も防ぐ羽のバリアである。 ただし攻撃能力はないので、壁の内側から剣で敵を撃破、爆発前に腕を引っ込めるという動作は必要になってくる。 しかし、これで形勢は大分傾いた。数は多いがこのまま処理を続ければ地上は問題ない。 一方、上空の方も…… 「君、空を走れるんだ? なら、敵の多そうなところ……行ってくれるかな?」 真亡が使った場合、小狐座のメダルは『オートで動き爆発して攻撃するオーラの子狐を出す』。それは空中も短距離なら走れるらしく、飛び回る蜻蛉たちに突っ込み爆発四散させる。 「おー、すごーい! あたいもメダル、使っちゃうぞー!」 ルゥミは鳳凰座のメダルを握りしめ発動させる。すると急に体がぽわぽわして頭に霞がかかったようになっていく。 「はにゃー……んふふー、なんかいい気分にゃのよー……」 「こ、これは……酔っ払ってる!?『酒も飲まずに即酔える』能力!?」 「体には良さそうだね……ってそんな場合じゃないよもう〜!」 プラスの効果とは限らない。それが星の一欠片。 ルゥミのスパークボムがなくなったのはかなり痛いが……。 「ッつーか、そろそろマジで導星の社の事も調べなきゃならねェッつーにによォ。しゃーねェ、騎乗した砂迅騎の本気、見せてやらァ」!」 砂迅騎の本領、騎乗しての格闘戦。乙女座のメダルを発動し、イェニ・スィパーヒで準備しそのまま突撃! 突っ込んでくる蜻蛉型を魔槍砲で振り払い、巨嘴鳥座に――― 「……させないよ」 ズドン! と衝撃が襲い、鷲尾が乗っていた轟龍がぐらりと体勢を崩しよろける。 地面にクレーターを作るような例の蹴り。ペガサス座が正直邪魔である。 「……ところで、乙女座の効果は?」 「……多分『家事全般が十年選手になる』ってとこじゃねェか? 頭ン中にレシピやらおばあちゃんの知恵袋的な知識がポンポン出てくるからよォ」 「……それは……乙女……?」 「俺が知るかァ!」 魔槍砲で砲撃を加えるも、ペガサス座はしれっと回避。 だが、これが逆に功を奏した。巨嘴鳥座自体は敵から離れる習性があるので、鷲尾と交戦中のペガサスから当然のように距離を取ったのだ。 それを見逃すアムルタートではない。鷲獅鳥を上空へやり、急降下で巨嘴鳥座を狙う。 それに気付いた巨嘴鳥座は蜻蛉たちの他に新たに梟を多数吐き出し、アムルタートの迎撃を当たらせる。 しかし…… 「よっしOK! いくよイウサール!!」 アムルタートが振るう鞭は小型アヤカシたちをことごとく撃ち落としていく。 どうやら今回は布を溶かす小型を出していないようで、梟は真空波を放ったりするものの彼女を止めるには至らない。 急降下し巨嘴鳥座の足に鞭を巻きつけようとするアムルタート。援護のためポンプ座のメダルを使用……しようとしたが止めた。なんだかとても嫌な予感がしたためである。 もし使っていたら、アムルタートが自分の意志とは関係なく『その場で30mの高さまでジャンプ』したであろう。 そのまま急降下し巨嘴鳥座の足に鞭を絡め、そのまま地上に引きずり降ろそうとするが、巨嘴鳥座は全力で羽ばたきそれに抵抗する……! しかし……それで充分。機動性をウリにする鳥型アヤカシが動きを止めたらどうなるか……。 「今がチャンスのようじゃの。ふっ、押しつぶされて地上に転がるがよいのじゃ! 我を見下ろすような不届き者はの!」 蜻蛉や梟を迎撃していた高崎は、そのチャンスを見逃さない。テーブル山座のメダルを使い、追撃をかけようとする。 その効果は『上空から隕石が敵味方問わず降り注ぐ』である。狙っているわけではないので運が良ければ動かなくても当たらないこともあるが……。 『ペーリカーーーン!?』 運悪く左の翼に隕石を受けた巨嘴鳥座は、錐揉みしながら地面に激突したのであった――― ●お楽しみの……? 「ふっふっふ……さぁて、ママより怖いお仕置きだべぇ〜ですわ!」 「おい、鮎吐いてるぞ」 地に落ちた鳥はまな板の上の鯉と変わらない。ライオン型を全滅させた地上班は、悠々と近づくことができた。 各務は巨嘴鳥座の首を締め上げているが、苦しくとも死にはしないらしい。口から鮎型のアヤカシを一匹だけ吐き出したが、ビチビチと跳ねるだけのようだ。 「なんだ、あっけないな。服だけを溶かすとかいうから色々邪推してきたのに。なぁ?」 「いや、僕に同意を求められましても。僕はきちんとそれ対策に天幕も用意してきたくらいです」 「……クソが付くくらい真面目な奴め」 「いいえ違いますわ何さん! 女性の肌くらいいつでも見られる、見飽きているという天然ジゴロならではの余裕ですわーーー!」 「違いますよ! まったく……上の皆さんが降りてくる前に、さっさとケリをつけてしまいましょう」 ペガサス座は上空で絶賛戦闘中。助けにもメダルの強奪にも来られまい。 雪切の振りかざした太刀が、巨嘴鳥座にとどめを刺そうとしたその時である。 先ほど吐き出された鮎型アヤカシが爆発を起こし、液体となって周囲に降り注ぐ。 これこそ例の布だけを溶かす液体。もろにひっ被った雪切、何、各務の服だけが溶けていく。 「きゃあ!? み、見ないでくださいまし! 私の身体はお姉様だけのものなのですわー!」 「す!? すす、すいません!」 「うーむ、まぁ量が量だけにスッポンポンとは行かないみたいだな。だがまばらというのも、なんだ。チラリズムというやつで悪く無いか。なぁ?」 「で、ですから僕に同意を求めないでくださいってば!? 天幕が向こうに用意してありますから、そこで着替えてきてください!」 「それは構わんが……あいつ、逃げたぞ」 「あぁもう!」 真っ赤になって一人巨嘴鳥座を追う雪切。翼は使えなくとも走ることはできるらしく、巨嘴鳥座は意外と頑張っていた。 上空でそれを確認した真亡、ルゥミ、高崎は朋友に指示しそれを追跡。ペガサス座はそれを見て潮時と考えたのだろう、そのまま全速力でどこかに消えてしまった。 鷲尾とアムルタートも巨嘴鳥座を追い、いよいよ大詰めである。 「何故あの状態から取り逃がすのじゃ馬鹿たれ」 「色々ありまして。気をつけてください、あいつ本当に服だけを溶かすアヤカシを―――」 言っている側から巨嘴鳥座は鮎型アヤカシを大量に吐き出し、即座に爆発させる。 ビチャビチャと雨のように謎の液体が開拓者たちに降り注ぎ、服をまばらに溶かしていく。 「……素晴らしい……!」 「……兄ロリ、姉ロリに言いつけちゃうぞー」 「あ、すいませんそれはマジ勘弁してくれ」 ルゥミ、高崎は歴戦とはいえ外見上は10歳程度の少女。その肌が顕になっていくことを喜ぶ人間も居る。 一方、気恥ずかしさで目を逸らす真亡、雪切のような人種も居る。趣向は人それぞれだ。 「そ……こぉ!」 機を見て鞭を振るい、再び巨嘴鳥座の足に巻きつけたアムルタート。 地面を擦った巨嘴鳥座に、今度こそ雪切と真亡は容赦しなかった。 「僕達の!」 「精神安定のために!」 なんだか最後は当初と違った理由で屠られた哀れなアヤカシである。 地に落ちた黄金のメダルを拾い上げ、ルゥミと高崎はご満悦のようであったが、その服の半分以上は溶け落ち、もう少しで大事な部分まで届こうかという非情に危険な状態であった。 「あ! おむつ穿き替えてくるの忘れちゃった! あははは! 可愛いでしょ!」 「……ぬ? ふむ、着替えを持って来るべきじゃったかの」 「……桃・源・郷」 「……兄ロリぃ〜?」 「はっ! つい本音が!」 『あぁもう、早く着替えてくださいよ!』 真亡と雪切による珍しいトーンのハモりが響き渡り……事件は終わりを告げたのであった――― |