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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 「えっと‥‥今何人判明してるんでしたっけ?」 「名前不明のやつを合わせると五人ね。人型のアヤカシの話は聞いたことあったけど、こんな大人数がいっぺんに行動してるのは聞いた事ないわ。しかも、まるで野良みたいに」 ため息混じりで会話をしているのは、開拓者ギルドの職員、十七夜 亜理紗と西沢 一葉の二人である。 現在二人は神楽の都ではなく、石鏡にある開拓者ギルドで資料を取りまとめている。 本来は神楽の都のギルドに務めているのだが、運悪く初回にこの依頼を担当したためにつなぎを仰せつかったのだ。 石鏡のとある村で狩りという名の食事を行う人型アヤカシ。今は開拓者たちのおかげで被害者は出ていないが‥‥。 「整理するわね。槍を使う女の子、名前不明。剣を使う男、名前はジーク。鎖鉄球を使う女の子、名前はキュリテ。トンファーを使う女、姐さん(仮)。あと、顔は見れてないけどロング髪の女の子。名前はシエル、武器は不明‥‥と」 「大所帯じゃないですか‥‥。っていうかですね、この人たち、アヤカシなんですよね?」 「瘴索結界に引っかかったらしいし、本人たちもそう自称してるけど‥‥」 「‥‥た、食べるんですよね? 人を‥‥」 「‥‥‥‥」 餌だの飯だのという言葉が飛び交っていた以上、それは疑う余地はない。 あまり想像したくない図ではあるが、彼らの仕業で行方不明になった人間の末路を連想して身震いする二人。 前回は好戦的なキュリテがいたこともあってゲームと言う名で引っ張り出すことができたが、今回もそうとは限らない。 それに相手は武器を自在に出したり消したりする上、戦闘力もかなりのものだ。 人数も最低五人。前回は開拓者の読み勝ちで最悪の展開を逃れたが、何度も同じ展開は期待できないだろう。 「全員銀色の髪に、真紅の瞳‥‥。兄妹か何かなんでしょうか‥‥」 「分からないけど、今度はちょっと本気で来るみたいよ。見て、これ」 そう言って一葉が取り出したのは、一通の手紙。 中にはシンプルな字で、『狩りを再開します。いい加減お腹がすいて来たので今度は遊びません』と書いてあった。 「せぇんぱぁ〜い!?」 「情けない声上げないの! いい、連中はこの手紙を村人に拾わせてるの。開拓者を呼び寄せて、その上で犠牲者を出そうとしてるのよ。東西南北、四方向から同時に進むって書いてあるわ。でも、本命はどこか一箇所だけにするとも書いてある」 「本命じゃないところはどうなるんです?」 「ターゲットを見つけたとしても襲わないってところじゃないかしら」 「そんな曖昧な‥‥。でもこの方式だと、相手は最低四人出てくるんですよね? 開拓者の方々も分散するんですか?」 「そこはお任せするしかないでしょ。確実に四方向止めるか、運に任せて一方向に戦力を集中するか。間を取って二方向に半分ずつ振り分けるか」 「いつになく厳しいですけど、知力と戦闘力で頑張っていただきたいです‥‥!」 銀髪の人型アヤカシ集団は、餌となる人間を求めて三度動き出す。 今の条件ではどうしても受身になってしまうので、何とか攻勢に出たいところではあるのだが‥‥。 犠牲者を出さずに撃破することが出来るのか。今回は、大きな岐路を産み出すかも知れない――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
小伝良 虎太郎(ia0375)
18歳・男・泰
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
斎 朧(ia3446)
18歳・女・巫
アイリス・M・エゴロフ(ib0247)
20歳・女・吟
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
劉 那蝣竪(ib0462)
20歳・女・シ
ノエル・A・イェーガー(ib0951)
13歳・女・陰 |
■リプレイ本文 ●奇策 六月某日、晴れ。 三度この村を訪れた開拓者たちは、村人たちに事情と作戦を説明し、奇策と言える戦法を実行に移していた。 すでに二度も開拓者に助けられていることもあり、村人は協力こそ惜しまない様子だったが、作戦内容を聞いて不安を漏らす者も少なくなかった。 即ち‥‥『四方向から同時進行してくるという黒マントたちに対し、標的となりうる村人全員を連れて北側に布陣する』というものである。まさかアヤカシ側も開拓者がこんな手を打ってくるとは思わないだろう。 ただ村の北側には百人を優に超える村人たち全員を収容できるような建物はないため、吹きっさらしの状態の大人数を守りながら戦うということになってしまうのが痛い。 とりあえず開拓者たちは、村人を中心にして北に3人、南東・南西に2人ずつに分かれ護衛をするつもりのようだ。残り一人は遊撃役である。 かくして時は進み‥‥黒マントたちが予告した時間がやって来る。 果たして、この奇策は功を奏するのか‥‥それとも――― ●南西 「‥‥来る!? そんな、北側はまだ接敵してないんじゃないの!?」 「数はお分かりになりますか?」 「‥‥足音は一つだけみたい。ごめんなさい、すぐに行動に移るわ」 南西を預かるのは、緋神 那蝣竪(ib0462)と斎 朧(ia3446)の二人である。 斎は本来北側担当の予定だったが、北は少しでも速く敵を撃滅したいこともあり、急遽火力のあるメンバーと配置換えされていた。 緋神が超越聴覚で足音を聞きつけたのはいいが、南西が一番早く敵とかち合うのはどういうわけか。 村の北に全員が集まり、その北端に開拓者がいるのだから、普通に考えれば最初に接敵するのは北側の三人でなければおかしいのだ。 しかし事実は待ってくれない。緋神は物陰に姿を隠し、斎だけが残される。 そして、走るでもなくすたすたと歩いてくる黒マントの姿が‥‥! 「瘴索結界、発動。アヤカシと確認。歩いてきた方向から考えると、西からいらっしゃった方ですか?」 優雅な微笑を絶やさない斎は、瘴索結界の範囲ギリギリくらいのところで立ち止まった黒マントに声をかけた。 黒マントは声にこそ出さなかったが、こくりと頷いて見せる。 少し距離はあるが、村人たちから動揺の声が上がり始める。なるべくなら恐怖が伝染しないうちになんとかしたいものだが。 と、斎が考えていた時。 「ふッ!」 『‥‥!』 物陰に隠れていた緋神が早駆で一気に接近し、漸刃を発動して斬りかかった。 黒マントはフードを目深に被っており、顔を見せない利点はあるが不意打ちへの対応が今一歩遅くなる欠点も持っている。 今回もその例に違わず、緋神の刀が黒マントの頭部を横一文字に斬り飛ばした‥‥!? 「違う、フードだけ!?」 緊急回避した黒マントだったが、フードを真っ二つにされてしまった。 そこには、やはり銀髪で赤い瞳の少女の顔。 ツインテールに髪をまとめ、困ったような表情をしている。 「あ、あわわ、フードが! あうぅ、酷いッス‥‥」 「あらあら、今までの黒マントさんの誰とも違うみたいですね。六人目ですか?」 「可愛い女の子なのはいいけど、どこまで増えるのかしら‥‥」 すぐさま離脱していた緋神は、斎と並び黒マントを警戒する。 緋神はすぐさま呼子笛を吹き鳴らし、仲間に黒マント出現を伝えた。 すると、少し遅れて南東の方からも呼子笛が響いてくる。北側は‥‥反応がない。 つまり、南東には黒マントが現れたが北側はまだ接敵していないということだ。 「初めまして、かしら? 貴方がこの狩りの『本命』さんをお探し?」 「あ、は、はい、初めましてッス! ほ、本命を探してるのは自分だけじゃなくて、全員ッス!」 会話で時間稼ぎをしたいと思っていた緋神だったが、思いの他相手が会話に乗ってきたのに驚いてしまう。 どこかおどおどしているというか、焦っているように見える少女。彼女がアヤカシでなければ楽しくお茶を飲めたのに、と緋神は内心溜息を吐いた。 「どちらでもいいけど、少し私にお付き合いして下さる? 相手にとって不足かもしれないけど‥‥私頑張っちゃうから、ね?」 「す、すいません、自分、あんまりゆっくりしていられないッス! 仲間が待ってるッス!」 「‥‥ということは、あなたは本命ではないということですね」 「はい!? な、ななな、なんでそうなるッスか!?」 「本命なら『仲間が待ってる』とは言いません。『仲間を待たせてる』と言うはずですから」 「はぅあ!? あ、頭いいッス‥‥!」 嘘である。斎はあくまで言葉遊びで鎌をかけただけだ。 餌を持っていくのを仲間が待っているという意味でも充分話は通じるのだから。 それにあっさりひっかかったツインテール娘は、純粋というか馬鹿というか。 「ば、バレちゃしょうがないッス! 仲間のためにも、あなたたちを足止めするッス!」 「可愛いわねぇ。ホントにアヤカシでなければ‥‥。斎さん、サポートよろしくね」 「了解です。怪我のご心配はなさらず」 緋神たちに続き、ツインテール娘も構えをとる。 その両手に現れたのは、鋭利な爪が三本付いた鈎手甲‥‥! 「ご、剛爪のリュミエール! お相手するッスよ!」 「来なさい、お嬢ちゃん‥‥!」 緋神の刀とリュミエールの爪が、激突する――― ●南東 南西から呼子笛が聞こえた直後、南東組の前に二人の黒マントが姿を現した。 ここを預かるイリス(ib0247)とノエル・A・イェーガー(ib0951)もまた、呼子笛で接敵を知らせる。 が、やはりおかしい。何故北から笛が聞こえてこないのか。 まさか笛を吹く暇もなく三人がやられるとも思えないが‥‥。 「‥‥東から進んできた方たちですね。随分余裕がありそうです」 「止まってください。ここから先は通行止めです!」 イリスにレイピアを突きつけられた黒マントたちは、ピタリと足を止めた。 戦闘時になると普段の物腰の柔らかさが鳴りを潜めるノエルは、脳をフル回転させて冷静に状況判断をしていく。 この二人は東から来たはずだ。南西の二人が出くわしたのを西から来た黒マントと仮定すると、北と南がスルーされている結果となる。 しかし北は連絡がない。南からの敵はここからも南西側からも見えるはずなのだ。 ぐるぐる巡る思考の中、ノエルは嫌な予感を増大させていく。 と、にらみ合っていた二人の黒マントのうち、一人が自らフードを取った。 被ったまま喋ればいいじゃないかというのは言わないお約束だ。 「フッ‥‥君たちに勝ち目はありませんよ。怪我をしないうちに退いた方が身のためです」 わかめのように波打つ天然パーマの銀髪。そして眼鏡の奥に光る赤い目。 ジークに続く二人目の男であるが、やはり美形だ。 またしても新たな黒マントの中身、である。 「また新顔‥‥!? どれだけ増えるんですか‥‥」 「何、これで打ち止めです。私たちは七人ですからね。今回は全員集合ですよ」 クールというか、慇懃な感じのするわかめ頭。外見からすると頭脳派か? まぁ、メガネをかけているからという先入観からであるが。 「何でも構いませんが、通すわけにはいきません。例え、怪我をしてでも‥‥!」 「フフ‥‥話し合いなどと言い出さないのは評価しますよ。いいでしょう‥‥やろうじゃありませんか」 「‥‥もしかして‥‥この人‥‥」 ついっとメガネを持ち上げる仕草を見て、ノエルは半ば確信する。 イリスの言葉に対するリアクション。言葉の端々から見える、その真実。 そして次の瞬間、それは確信に変わった! 「実は私‥‥着痩せするタイプですからね‥‥!」 マントごと上半身の服を脱ぎ、鍛え上げられた筋肉美を見せつけるわかめ頭。 顔は二枚目で知的なイメージを受けなくもないのに、全て台無しである。 「‥‥やっぱり‥‥この人、知的なメガネキャラのようでいて実は筋肉馬鹿なんですね‥‥!」 「いや、そんなこと冷静に分析しないでください!?」 ノエルに思わずツッコミを入れるイリスであった。 わざわざ黒マントの象徴とも言えるマントを脱ぎ捨てるなど、やはり馬鹿と言わざるを得ないが。 「も〜、相変わらずバカなんだから! 見てるこっちが恥ずかしいじゃん!」 耐えかねたのか、もう一人の黒マントがフードを取ってわかめ頭にツッコむ。 それは、最初に顔が確認された槍使いの少女。右側だけがちょっと長いショートボブの娘だ。 「バカとはなんです。どうせやることは変わらないんですから私の肉体美を披露して何が悪いと?」 「する必要ないから! もういいよ、さっさとやろう。ターゲット探さなきゃ」 その言葉に、イリスとノエルが構えをとる。 にらみ合う四人。そこに。 「ちょーっと待ったぁ! おいらも加勢するよ!」 遊撃役を担当していた小伝良 虎太郎(ia0375)が現れ、イリスと並び立つ。 服に土埃が付いていることを見るに、すでに戦闘をしたようだが‥‥? 「先に南西に行かれたんですか?」 「うん、でも途中から緋神さんが会話で足止めに切り替えたからこっちに来たんだ。向こうにも新顔がいたよ!」 同じ爪使い同士、小伝良とリュミエールはお互い相性が悪かった。 それは人数が多い開拓者には有利に働き、アヤカシ側の足止めには成功している。 そこで、敵の人数が多いであろうこちらに回るべく小伝良は急いで来たというわけだ。 「いいでしょう、誰が来てもかまいませんよ。セブンアームズが一人、零弓のダシオン。参ります」 「同じく、撃槍のクラン! いっくよー!」 それぞれ、弓と槍を出現させて構える黒マントたち。 二人が動く一瞬前に、ノエルの術が完成する。 「呪縛符!」 胴体が鎖になっている蛇が出現し、ダシオンの足に絡みつく。 そして‥‥。 ビターン! とえげつない音が響き、ダシオンが顔から地面に激突する。走りだそうとした時に足を絡め取られたからである。 「‥‥って、なんで弓使いが走りだそうとするのさ!? ノエルもそこは槍使い狙うんじゃないの!?」 「マントで防がれたら意味が無いです。勝手に脱いでくれたのでそちらを優先しましたが、ここまで効果があるとは思いませんでした」 「フフ‥‥なかなかやりますね。この弓が打撃もこなせると見抜いていたとは‥‥!」 「メガネ、ヒビ入ってますよ」 「馬鹿ですね‥‥やっぱり馬鹿なんですね‥‥」 「お遊びはここまでです。私の肉体はこの程度の鎖に負けはしませんよ!」 「付き合ってらんないよー‥‥。ボクは勝手にやるからね!?」 「ならおいらが相手になるよ! 軽そうな君なら!」 しかし、その時‥‥不意に村人たちから悲鳴が上がる――― ●失策 時はほんの少し巻き戻り、北側のメンバーに視点を移す。 こちら担当の三人は、南東と南西からアヤカシ出現の呼子笛が聞こえてきたというのに、こちらには一向にアヤカシが現れないことに焦りを感じていた。 鷲尾天斗(ia0371)、焔 龍牙(ia0904)、ジークリンデ(ib0258)という火力と強さを兼ね備えた布陣は、今回の作戦において真っ先にアヤカシと会い、一人でも倒すために組まれたはずだったのだが‥‥。 「ちっくしょう、どうなってんだ! 作戦が見破られてたのか!?」 「どうしたものかな。他の班の手助けに行くわけにも行かないからな!」 「‥‥逆手に取られた、と言うことでしょうか」 ジークリンデの言葉を肯定するかのように、今更になって二人組の黒マントが北から姿を現した。 しかも最初からフードを取っており、姐さんと呼ばれる女とジークであることが分かる。 「お前ら! 同時にスタートしたんじゃなかったのかよ!?」 「したぜ? 待ち構えられてるのが見えて最初は焦ったもんだ」 「でも意図は読めたから、あえて待機してのんびりしてたの。目が良くてごめんなさいね」 「ということは、おまえたちは本命ではないと言うことだな! 時間さえ稼げればいいと言うことか!」 「ご名答〜♪ それでもかかってくる? 逃げまわるけどね」 「かといって後ろを見せるわけにも参りません」 作戦の根幹は、北を撃退してから他の方角に周り時間差で相手するというものだ。その前提である北で遅くまで戦闘が発生せず、しかも相手に逃げ回る宣言をされてしまったらどうにもならない。 そこでジークリンデは気付いてしまった。すでに接敵した二方向も本命の可能性は薄いと。 なら、本命は‥‥! 「‥‥まさかとは思いますが、私たちの作戦を看破してから本命の方角を変えていませんか? あなたがたはテレパシーのようなものが使える様子がありますが」 「ンな面倒なことしねぇよ。誓って言うが、おまえらに運がなかっただけだ」 「いい作戦だったのにねぇ。逆方向でやられてたら大分困ってたと思うわ」 「嬉しくねぇよ。ならせめて、おまえらの首の一つもいただくぜ‥‥!」 「逃げるっつってんのに。まぁいいか‥‥覇剣のジーク、やってやるさ」 「反棍のクレルよ。お相手しましょ」 お互いに構える開拓者と黒マント。しかしその時、背後から村人たちの悲鳴が巻き起こる! 「何!?」 「どこ見てんだ?」 一瞬の動揺を見逃さず、ジークが疾駆する。 ジークリンデが仕込んでいたフロストマインが炸裂するが、マントで防がれてダメージはない。 が。 「おっと? ありゃ、動けねぇ」 「ダメージ以外は受け付けるのか! 『焔龍』の一撃を受けて瘴気に戻れ!」 「二人いるのをお忘れ?」 ガギン、と金属音が響き、焔の紅蓮紅葉の一撃はクレルのトンファーで弾かれてしまう。 ジークが脱出するのと、背後から二人の黒マントが姿を現したのとはほぼ同時であった。 長い銀髪の少女と、セミロングギリギリくらいのショートボブ。キュリテは分かるが、ロングはシエルか。 シエルは二十代くらいの青年の首根っこを掴んで引きずっている。 「‥‥捕まえた」 「遅れてすまんのう。距離があったでな」 「貴様ら!」 「しかし、シエルが捕まえてしまうとはのう‥‥可哀想に」 四人の黒マントに囲まれた三人は冷たいものを感じながら身構えていた。 そこにキュリテが首を振っておかしなことをいうものだから一瞬気が削がれる。 可哀想? どういう意味だ? そう思った、次の瞬間。 「ひっ、やめ―――」 ゴリッ。 シエルは全く躊躇なしの動きで‥‥青年の頭部を『かじった』。 それはまるで大きなパンでもかじっているかのような、慎ましやかな動作。 やがて頭部の半分位を食べ終えると、青年の身体を無造作にキュリテに差し出した。 「相変わらず少食な上に一番酷いところを喰うのう‥‥」 「‥‥けぷ」 「くそ‥‥くそぉぉぉっ!」 痙攣する青年の身体を受け取り、キュリテはジークたちに目配せする。 そしてすぐさま離脱し、辺りには村人たちの悲鳴と嘆きだけが響き続けた。 開拓者の敗北。その現実を以て、この村での事件は終りを告げた――― |