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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 天儀の中心都市たる神楽の都。 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら――― 「はい、というわけで獣骨髑髏です」 「どんな入り方よ‥‥。藪から棒にもほどがあるでしょ」 ある日の開拓書ギルド。 職員の十七夜 亜理紗は、先輩職員の西沢 一葉に向かって不意に告げた。 その手には紙が二枚あり、一枚は一葉もよく知るギルドの依頼書だ。 「例の研究記録らしきものの解読がやっと終わりました。一部読めなかったので省いているところもあるそうですが、大体の事は書きだしてもらえたそうです」 そう言って、亜理紗は一葉に紙を差し出した。 文字を目で追う一葉の表情が、どんどん険しくなる。以下にそれを記載しよう。 6月12日。第二研究所で開発していたアヤカシ兵器が完成する。攻守に優れた素晴らしい逸品である。思考が不安定気味なのは多数のアヤカシを合成した所為か。 6月15日。二体目の制作にかかるが合成が上手くいかない。一体目は偶然の産物だったのか。試作品として割り切り、一体目の詰めにかかるのが効率的か。 6月21日。式として開発したはずだが命令を聞かないことが多くなってきた。このままでは暴走もあり得るか。 6月23日。洞窟内で暴れだしたため緊急措置を施す。どうやら生存本能が最優先事項になってしまっている模様。破棄するのが得策か。主に従えないような式は必要ない。 6月24日。アヤカシ兵器を破棄することを決定。バラバラにして封印し、この国のあちこちに放り出そう。 6月26日。第二研究所を破棄。次はどんな研究をしようか。アヤカシ兵器封印の旅をしながら考えよう。 「で、あとは文字ではなく獣骨髑髏の絵入りの図解ですね。ただ、ここから分かるのは獣骨髑髏が分離可能なこと、パーツが七つに分かれていること、それが自由意志で動かせることくらいしか分かりません」 「それ、前回判明しておいて欲しかったわね‥‥」 「解析してくれた人たちも頑張ってくれてはいたんですよぅ」 「分かってるわよ。で、パーツが七個っていうことは‥‥頭、右腕、左腕、右足、左足と‥‥後は?」 「胴と腰じゃないですか? 前回、腰部分が尻尾込みで復活したんですし」 生存本能最優先ということは、無駄な破壊や殺戮をせず戦いでも無理をしないということか。そしてそれ故に自らの体を完全な状況に保ちたいのか。何にせよ厄介である。 記録を信じるならば、獣骨髑髏のパーツは石鏡のあちこちに封印されているということになる。その一つが前回の社だったのだろうが、何か意図はあったのだろうか? 「ちなみに依頼書の方は獣骨髑髏の出現報告と撃退要望です。今度は三位湖の西にある小島付近に現れたみたいですね」 再び低空に現れ、小島付近を漂っているという獣骨髑髏。しかも今回は、たまに三位湖に潜ることすらあるという。 「でも、三位湖の西に小島なんてあった? 社でもあるの?」 「いいえ、なーんにもありません。小島と言ってもせいぜい五十メートル四方弱の規模ですから」 「‥‥島じゃなく、三位湖の中に何かあるのかしら‥‥?」 「どうでしょう。どちらにしろ、また朋友の手助けは必須でしょうね‥‥」 下が水面なら落下は多少無視できるが、水中戦も想定されるとなると厳しい。 かと言って放置すればまたパーツが復活し、より凶悪な存在になるかも知れない。 迷惑を振りまき続ける失敗作。悪意が、また牙を剥く――― |
■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
シュヴァリエ(ia9958)
30歳・男・騎
龍馬・ロスチャイルド(ib0039)
28歳・男・騎
メイユ(ib0232)
26歳・女・魔
朽葉・生(ib2229)
19歳・女・魔
叢雲 怜(ib5488)
10歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ●手違い? 「あーあ‥‥あれは事前調査は無理そうですねぇ」 「すでに現れているからこそ依頼が来たわけですしね‥‥」 「今度は湖上に出現か、やり難い所ばかり現れやがって」 石鏡の中央より少し上に位置する巨大な湖、三位湖。石鏡に大きな恵みをもたらしているというある意味象徴的な自然地形だ。 その西の端っこあたりに現れた獣骨髑髏は、特に何も無い小島のようなものの上空に浮かんで、たまにうろうろしていたりする。 龍馬・ロスチャイルド(ib0039)は出来れば事前に島を調べておきたかったが、どうも獣骨髑髏が退く気配はなく、島に近づこうとすれば否が応にも戦闘に突入してしまうだろう。 苦笑いをし、すぐに表情を引き締めた真亡・雫(ia0432)は、一番最初に獣骨髑髏と戦ったことのある勇士の一人である。今回はリベンジといったところか。 そういう意味であればシュヴァリエ(ia9958)たち前回の参加者も同じことが言えるわけだが。 今回も朋友に頼らざるをえない空中戦が主となる。水中戦に対応した朋友が入れば話は別だが、生憎そういうアテは誰にもなかったようだ。 真亡はガイロン、シュヴァリエがドミニオンという龍に騎乗中‥‥なのだが。 「やはり島の上にお運びするしかありませんか‥‥途中で狙われないと良いのですが」 「数匹で運べばそこそこ速く行けるんじゃないでしょうかー」 「俺は乗ってても撃つだけだから構わないのだぜ」 「す、すいません‥‥お手数おかけします」 志藤 久遠(ia0597)と井伊 貴政(ia0213)は、龍馬のアーマー、ロートシルトを見下ろしながらあれこれ考えている。叢雲 怜(ib5488)だけは楽しそうに笑っているが。 志藤の篝、井伊の帝釈、叢雲の姫鶴の三匹+αで持ち上げればまぁどうにかならないこともあるまいということで、上から縄で括っている最中だ。 一人だけ飛行できない朋友だが、案外拠点防衛という観念で運用すれば活躍できる‥‥かもしれない。 「妙な地形ではありますが、飛行船の事故報告などはなし‥‥あそこだけ台地のようになっているわけですよね」 「さて‥‥アイアンウォールを設置している暇があるでしょうか‥‥」 少し離れ場所から獣骨髑髏の様子を伺っている開拓者たち。 メイユ(ib0232)と朽葉・生(ib2229)もまた、炎龍(未命名)とボレアという龍に騎乗しているわけだが、事前策が実るかどうかは微妙なラインである。 例の小島は周りの深さを鑑みれば不自然ではあるが、自然にはこれより遙かに奇妙な光景も存在するのだから深読みのしすぎもよくないかも知れない。 獣骨髑髏は小島の上空をフラフラしているので、小島の周りで何かしようとすれば襲いかかられる可能性は高い。だから龍馬も事前調査を断念したのだ。 こうして談義している間にも、いつ獣骨髑髏がパーツを復活させてしまうか分からない。 今回は明確な作戦の方向性もあることだし、小島のことはさておいて攻撃に移ろうということになったようだ。 「帝釈、大丈夫? トラウマになってないといいけどねぇ」 井伊の心配を他所に、帝釈は低い唸り声を上げて獣骨髑髏を睨んでいる。 傷も血も元に戻った。恐怖を悔しいという思いが上回ったのだろうか? 「いい子だ。さて、推して参りましょうか!」 『応ッ!』 風を切り、水飛沫を上げ、七匹の龍と一体のアーマーが戦場へと向かう――― ●激戦、再び 開拓者たちと龍たちが接近してくるのを、獣骨髑髏は敏感に察知した。 前回よりも遠くから発見されたというよりは、前回よりも早期に警戒されたと言ったほうが正しいだろうか。 獣骨髑髏は真紅の光を瞳部分に宿し、ロートシルトを運搬中の志藤と篝に向かい無刃を放つ! 「防いで、ガイロン!」 前衛として先んじていた真亡とガイロンが割って入り、霊鎧を発動し援護防御する。 ダメージが軽いわけではないが、ぶっ叩かれるよりは全然マシである。 「よお、久しぶりだな髑髏野郎。元気そうで何よりだ」 「できればあまりお会いしたくない相手ですけれども」 シュヴァリエとドミニオンはオーラショットと火炎で、朽葉はブリザーストームで遠距離攻撃を仕掛ける。 あまり近寄りたくないというのも確かだが、朽葉は回復役という重要な使命があるためあまり無茶はしてほしくないのが本音だ。 知覚系の攻撃を嫌い、高度を下げる獣骨髑髏。そこへ重い音と共に、一発の銃弾が叩き込まれる! 頭を大きく揺さぶられたものの、湖面を滑るように移動し再び上昇した。 「た、タフなやつなのだぜ‥‥」 「投下完了! 後はご自分の判断でお願いしますね〜」 「篝、今度は止めはしません、思うさま暴れなさい!」 例の小島に龍馬が乗るロートシルトを降ろした井伊たちは、縄を切り離し上空へ向かう。 砲術士の叢雲はともかく、井伊と志藤ははやり接近戦で真価を発揮するだろう。 井伊は尻尾警戒のため少し距離を保ってのヒットアンドアウェイに徹するようだが。 長期戦は不利。前回の戦いでそう確信した志藤は、篝を駆り真っ直ぐ突撃する! 仲間たちの援護を受け、篝は炎を吐きつつ接近。そしてヒートアップ、炎龍突撃と全力全壊で激突する! しかし胴を狙ったその攻撃は、右手を突き出すようにしてガードされてしまう。 ぶつかり合う力と力。お互い押されまいとして引こうとしない‥‥が、不意に獣骨髑髏が上昇し力のベクトルがずれる。 「ちっ、背後からでも気付くのか!」 シュヴァリエが流し斬りを敢行しようと背後から上昇しようとした時、獣骨髑髏は先んじて上昇しその脅威から逃れていく。 流石に『生存本能が第一』というだけあり危機察知能力や引き際のよさがダンチである。 「くっそう、さっきからさんざん撃ってるのに効いてないのだよ‥‥」 「いえ、効いていないのではありません。再生し続けているのです」 朽葉が指さした辺りを見てみると、叢雲が放った弾丸でできた穴がじわじわ塞がっていくのが見て取れる。 流石に術による吹雪のダメージはそうもいかないとは思うが、時間があれば回復はするだろう。やはり志藤が読んだように長期戦は不利である。 獣骨髑髏は獲物を見定めるように一同を見下ろしていたが、不意に何かに気づき一気に下降した。 いや、下降したというよりは突撃か。目標は‥‥龍馬のロートシルト!? 「違う、島だ! させませんよ!」 真正面から獣骨髑髏を受け止める龍馬。アーマーの腕がギシギシと嫌な音を立てて軋む。 至近距離に獣骨髑髏の顔があるだけでも恐怖なのに、それが大きく口を開ける‥‥! 「ロートシルトの装甲はぁっ!」 アーマーは生物ではない。故に、血がない。 外装に噛み付かれても本人まで届きはしていないし、吸血攻撃は意味を成さないのだ。 口に手を突っ込み、無理やりこじ開けていく龍馬とロートシルト。そこに‥‥ 「ガイロン、島からヤツを引き離すよ!」 ズドンと重苦しい音を響かせ真亡とガイロンが体当りし、そのまま空へ獣骨髑髏を押し上げる。 苛立った獣骨髑髏が口を開け噛み付こうとするが、ガイロンが手で下顎を、真亡が刀で上顎を押さえ噛み付くことを許さない。 一度吸血攻撃で酷い目にあったことがあるのだが、彼らはかつてより確実に強い! 危ないと思ったらすぐに引くのが獣骨髑髏の特徴の一つだが、たまには攻勢にも出るらしい。 ガイロンに尻尾を巻きつけ、そのまま湖面へと放り投げる! 「うわぁぁぁっ!? くっ、この―――」 ギリギリ水面近くで止まれたのに、真亡たちは上から追撃してきた獣骨髑髏を避けきれず湖の中へ押し込まれてしまう。 冬の三位湖の水は冷たい。そしてそれ以上に、水中戦は圧倒的に不利! しかし獣骨髑髏はそれ以上真亡たちに攻撃は加えず水中から小島へ向かう。 ここならあまり攻撃が来ないと踏んだのだろう。それは正しかったが、それ故に油断も生じていた。 ドボンという音と共に何かが自分にぶつかってきたと知るまで、少し時間がかかった。 それは水中であっても酷く重く、広い‥‥? 湖底でなんとか体をよじり脱出すると、それは大きな鉄の壁であった。 どうやら朽葉がアイアンウォールを生成し、龍で運搬して落としたりアーマーで投擲したりしているようだ。 銃弾もそうだが、どうも意思のない物体の接近には鈍いらしい。それでもアイアンウォールを掻い潜り、小島に取り付く獣骨髑髏。 何かを求めるように、ガリガリと壁を引っ掻いていると‥‥ 「―――!」 斜め下から衝撃があり、壁をこすらされながら水面へ‥‥! 「ぷぁっ! 何度も、好きには、させない!」 真亡とガイロンが水中で体当りし引き上げたらしい。 一瞬そちらを睨んだ獣骨髑髏だったが、すぐに標的をロートシルトに変更。 再び突撃するも、今度は例のアイアンウォールで防がれてしまう。 「重いですが、盾より広範囲をカバーできますからね!」 すると獣骨髑髏は右腕を切り離し、背中からロートシルトを強打。 これには流石の龍馬も体制を崩すしかない! まずい! と誰もが思ったが、獣骨髑髏は小島の地面をガリガリ引っ掻くだけ。とりあえずパーツが復活する気配はない‥‥? 「なるほど、直接触れないまでもある程度目標物へ近づかないと復活ができないということですね」 「じゃあ、パーツなりそれを封じた何かなりは結構深く埋まってるということですか。ラッキーですねぇ!」 最優先されている生存本能の中で、獣骨髑髏は一瞬で思考を巡らす。 どうやらパーツを掘り出すには少し時間がかかりそうだ。かといってこいつらが邪魔してくる以上ゆっくり作業をしている暇はない。 こいつらは強い。放置はできない。なら‥‥殺してからゆっくり掘り出そう‥‥! 「くっ!? こ、こいつっ‥‥!」 ロートシルトに体当りし、そのまま湖にたたき落とそうとする獣骨髑髏。 そうはさせまいと志藤と篝が横から突っ込むが、獣骨髑髏は強制分離してこれを回避。 通りすぎようとする篝の尻尾を分離したままの右腕で掴み、そのまま小島に引きずり倒す! 「器用な奴め!」 「やっぱ遠距離攻撃が無難なのだぜ!」 シュヴェリエと叢雲がそれぞれ頭と腰を狙う。 快くは思わなかったらしく、獣骨髑髏は分離したままシュヴァリエとドミニオンに向かっていく! 「纏めておきましょう」 「バラバラのままでは苦労しますからね」 朽葉とメイユがブリザーストームを放ち、パーツを纏めて吹雪に巻き込む。 数十メートル吹き飛ばされた後、獣骨髑髏は空中で再び合体した。 「むー、やっぱり戦っている最中ですら傷の治りが早いのが何とも。かと言って大技撃とうと近づけば前回のような目に遭いますしねぇ」 「白梅香を試したいところなのですが‥‥やはり最初に傷をつけた右腕を狙ってみますか」 井伊が思案していたところに、地上から志藤が合流する。 ガードしたと言っても右腕にそれなりのダメージはあるだろう。攻めるなら早いうちに攻めないとその傷でさえ回復してしまうかも知れない。 瘴気を浄化する白梅香。その能力は数々の依頼で実績が証明されており、瘴気の集合体となれば効果は大きな期待が持てる‥‥はず。 「僕もお手伝いします。せめてパーツの一つでも叩いておかないと立つ瀬がありませんから」 「よし、では白梅香持ちの二人を援護するぞ。気を抜くなよ!」 真亡、シュヴァリエが合流したのはほんの少しの間だけ。 開拓者たちはすぐさま散開し獣骨髑髏を迎え撃つ体制に入る。 「行きますよー!」 まずは井伊が突っ込み、刀を振り上げる。 しかしそれは右手で弾かれ、すぐさま反撃の牙が襲いかかる! 「やらせない!」 叢雲の銃弾がまたしても獣骨髑髏の頭を弾く。その隙に井伊は離脱し、今度はシュヴァリエが接近戦を挑む! 「ふん、なかなかタイミングがないものでな‥‥強行させてもらう!」 流し斬りは相手の隙を突く形で使いたかったが、悠長なことも言っていられない。 井伊とは逆に背後から接近したシュヴァリエだったが、獣骨髑髏は振り向きもせずに尻尾を巧みに操り、ドミニオンを拘束する! そして動けなくなったところに首をぐるりと半回転させ、拘束したまま無刃を連続で放つ‥‥! 「ぐ‥‥い、今だ!」 「お任せを!」 「このままではおかない!」 志藤と真亡が挟みこむように左右から接近、攻撃を仕掛ける。シュヴァリエたちの献身を無駄にする訳にはいかないのだ。 勿論、獣骨髑髏はこれに気付いている。そして、これから繰り出される攻撃が自分にとって驚異的なものであろうことを本能で察知する。 避ける? いや、無理だ。 受ける? いや、ヤバい気がする。 五体満足で生きたいとだけ願うアヤカシが取った行動は‥‥! 「なっ‥‥!」 「ぐっ‥‥!」 開拓者たちは龍がなければ飛べない。今までの戦いでそれを学習したのか、攻撃される前にパーツを飛ばして迎撃に出たのである。 篝は頭部に噛み付かれ、ガイロンは右腕で喉輪をされるように首を締められる。 しかもご丁寧に開拓者が手の届かない龍の下側からである。これでは振り払ってやることもできない! 「篝! こ、このままでは‥‥!」 吸血攻撃はまずい。それは今までで充分理解しているが、ここまで接近している上に暴れられると援護もできない。 叢雲も狙ってはいるのだが、篝に当たってしまいそうで思わず首を振る。 そこに井伊が割って入り、頭を攻撃しようとしたところでようやく篝は解放された。 空中をするりと自由自在に飛び回り、獣骨髑髏の頭部は再び胴と合体した。 このままでは埒があかない。そう思った真亡は、ガイロンの背から肩の方へよじ登り‥‥! 「下は水‥‥一か八か‥‥!」 たん、と肩を蹴り空中に身を躍らせる真亡。 まずいと直感したのか、獣骨髑髏は手を戻そうとするもガイロンが掴んで離さない! 「でやぁぁぁぁぁっ!」 白梅香を発動し、肘辺りを斬り裂く。 離れたところで獣骨髑髏が苦しむようなリアクションをし、右腕が‥‥消えた。 「‥‥消えた? 瘴気に戻ったわけじゃない‥‥よね‥‥?」 今まで数々のアヤカシを倒してきた真亡。 違和を感じながら、そのまま湖面に叩きつけられ盛大な水柱を立たせた。 右腕を失い、これで両腕が共に無くなってしまった獣骨髑髏。 シュヴァリエたちを尻尾の力だけで湖に放りこみ、再び小島へ! 何故また、と思っていた一行だったが、尻尾で螺旋を描いた状態にし体全体を回転させ始めたのを見て血の気が引いていく。 そしてその時にはもう遅い。地面に尻尾の先が触れた瞬間、盛大な土煙と泥を撒き散らし獣骨髑髏の体がドンドン沈み込んでいく! 「どれだけ非常識な真似が好きなんですか!」 龍馬がアーマーで掴みかかろうとするも、回転の勢いで弾かれてしまう。 そして獣骨髑髏の体が三分の二ほど地中に埋まったところで‥‥地面から瘴気が吹き出した。 その圧倒的な奔流は、龍馬は勿論獣骨髑髏自身も吹き飛ばし空中へ放り出す。 やがてそれが獣骨髑髏へと収束し‥‥右足を形作った。 「く‥‥折角真亡殿が右腕を打ち砕いてくださったというのに‥‥!」 パーツの復活を確認した獣骨髑髏は、例によって全速力で上昇し空の彼方へ消えた。 追うよりも先に真亡の救出に当たった一行。一応、今回は差し引きゼロとはいえ悔しさは拭えない。 右腕を失った代わりに右足を得た獣骨髑髏。残るは、左足のパーツだけ―――? 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