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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 特別な出自を持つと思われる盾座を言葉巧みに誘導し、奇妙な協力関係を取り付けた開拓者たち。 星見の間を突破し敵の本拠地導星の社へ到着した一行は、楔を打ち込み橋頭堡を確保。 地下深くに眠るその場所には、ジルベリアで見られるような巨大な神殿がそびえ立っていたのだった。 盾座の言によると、その神殿を抜けた所に神社もあるらしい。まるで神殿という存在に塗り潰されるかのように……。 「結局、平坂 空羅は戻らず……ね。やられちゃったのか、それとも……」 「どちらにせよ、星の一欠片の力を使って石鏡の国を手中に入れようなんてこと考えてる危険人物、戻ってきても捕まるだけですしね……」 ある日の開拓者ギルド。 職員の西沢 一葉と鷲尾 亜理紗の二人は、行方をくらました平坂 空羅のことについて話していた。 とある武家の長男ではあるが、武芸にも学問にも才を見出せず悶々と暮らしていたという青年。それが星の一欠片と出会い、星の力をまとめる才覚があることに気づき道を踏み外してしまったのだろう。 ついにはギルドを騙す格好で星座アヤカシの本拠に乗り込み、姿を消した……。 「とりあえず、内部の構造は少しわかりましたね。一階部分に4つの扉、二階の踊り場に大きな鏡のようなもの、4つの部屋は中にいる星座を倒さないと出られない仕様……二階部分はまるで手付かず、と」 「天秤座ライブラたちは神社の方にいるのかしら……」 「どうでしょう……4つの部屋の1つを守っていたのが魚座の代わりの南の魚座ですからね。下手をすると黄道十二星座が守ってる可能性もありますし」 敵の本拠地だけにまだ見ぬ黄道十二星座との遭遇も充分ある。前回遭遇したアヤカシたちも、一癖あったり正統派な強敵だったりと油断はできなかった。 一応、今回は平坂 空羅のことを気にしなくて済むといえば済むが……? 「今回はまず、二階踊り場の鏡を調べてもらって、どうにもならないようなら4つの扉を調べてもらいます。前回南の魚座がいた右手前の扉も一応調べてみてね」 「二階部分には通路らしきものは無いようなので、一階を調べるしか無いということですね」 引き続き盾座も同行するので、無差別ガードには注意されたし。 今回は黄道十二星座との連戦となる可能性も高い―――? カウント・ザ・メダルズ! 現在、開拓者が使えるメダルは! 馭者座、山猫座、テーブル山座、三角座、南の三角座、海豚座、アンドロメダ座、ポンプ座 望遠鏡座、魚座、鳳凰座、矢座、時計座、彫刻具座、彫刻室座、蛇座 水蛇座、海蛇座、画架座、牡牛座、エリダヌス座、小犬座、小狐座、小獅子座 小馬座、蠍座、蝿座、六分儀座、八分儀座、大熊座、小熊座、孔雀座 竜座、顕微鏡座、カメレオン座、水瓶座、カシオペア座、ヘラクレス座、狼座、乙女座 巨嘴鳥座、コップ座、鶴座、飛魚座、炉座、祭壇座、麒麟座、一角獣座 鷲座、風鳥座、烏座、白鳥座、双子座×2、冠座、南の冠座、インディアン座 旗魚座、蜥蜴座、帆座、ペルセウス座、定規座、ケンタウルス座、コンパス座 、髪の毛座 オリオン座、猟犬座、レチクル座、牡羊座、南の魚座、鳩座、南十字座 洞窟の中に隠された神殿。そして神社。その拝殿の中に、天秤座ライブラと平坂 空羅が鎮座している。 上座にいるのは空羅の方。天秤座は空羅に愛想笑いなどしてみせたが、その歓迎を空羅は快く思っていない。 「……何者だ貴様。何故ギルド職員の……西沢なんとかというやつと同じ顔をしている。しかも、この俺に力を与えるだと……? 胡散臭すぎて欠伸も出ん」 「我の外見などどうでも良いだろう。お前が所持していない星の一欠片……黄道十二星座は無理だが、それ以外ならなんでもくれてやる。ただし、こちらの望みを聞いてもらえれば……だが」 「断る。メダルが欲しければ力で奪い取るまで……望みなど聞く必要などない」 「それがお前の野望の大きな助けになると言ってもか?」 「くどい!」 「惜しいな……通常に使うだけでは決して辿りつけぬ境地だというのに」 痺れを切らして天秤座に斬りかかった空羅。しかしその言葉を聞き、寸前でピタリと刃を止めた。 「……その迷いなき眼……戯言ではなさそうだな」 「我らとお前の利害は一致する。そしてお前の力を我らは欲していた。我らもお前に力を授ける……両者ともに得しかせん。英雄とは機を見るに敏であり、好機を逃さぬものぞ」 「どいつもこいつも……俺は英雄など目指していない。俺が! 天儀最強だ! 暴君として石鏡に覇を轟かせることのみが望みよ!」 「ふ……歴史を知らぬと見える。暴君であるが故に英雄とされることも多いというのに」 「む……」 学のことを言われると空羅も押し切れない。そうでなくとも天秤座からは異様な気配を感じるのだ。 迂闊に戦えばただでは済まない。そう告げる本能に従い、空羅は一旦刀を収めた。 「お前は好きに覇を唱えれば良い。我らはたった一つ、あの星座さえ蘇らせて貰えればそれで―――」 「あの星座とは、いったい―――」 天秤座と平坂 空羅……凶悪な者同士が今、手を結ぼうとしていた――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
アムルタート(ib6632)
16歳・女・ジ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●鏡よ鏡 「……特に何も聞こえないのです。少なくとも待ち伏せなどはなさそうなのです」 鷲尾 亜理紗の転移術により、導星の社に到着した開拓者たち。一丸となって注意深く洞窟を進むが、今回は特に妨害もなく神殿部分に到着した。 神殿の中は心眼などのアヤカシ探知の技が意味を成さないのは前回証明済み。よってレネネト(ib0260)の騰越聴覚だけが予め内部を探る方法となる。 お墨付きを得たのでそっと扉を開ける開拓者たち。その内部は、やはりジルベリアで見られるような神殿の造りである。内装も構造も変化したりはしていない。 「これは……なんとも荘厳な。時間が許すならしっかりと描き留めたいくらいですね」 「神様を信じてるわけでもないアヤカシが神殿を……か。きっと何か意味があるんだろうね」 ざっくりとではあるが、周囲をスケッチしながら雪切・透夜(ib0135)は呟く。それ程に神殿の造りは見事であったのだ。 その意見には真亡・雫(ia0432)も同意見だったが、人間ならともかくアヤカシが神殿を造る理由がわからない。 と。 「『神社の前に無理に神殿を建設』ねェ。もしそうなら、神殿は神社を封印してんじゃね?」 一階部分の4つの扉を無視し、二股に別れた階段をひょいひょいと登っていくのは鷲尾天斗(ia0371)。敵の気配もないので、まずは一葉に言われたとおり二階の鏡を調べるようだ。 彼の言ったことは仮説でしかないが、有り得る話だとレネネトは思う。神殿は元々はここにはなく、神社だけがあったのだとすれば話は通る。 「しかし随分大きな鏡だね。んー……美しいボクが実に輝く。これで横に幼女が居てくれたら最高だと思わないかい、同士よ」 「……いや、死ぬほど同意だが俺ァもう結婚してんだよ。家庭にヒビ入れるような同意を求めんなァ」 「なーにー、兄ロリまだその癖治ってないのー? 女の子が生まれたらどうする気さー?」 「緊張感ねェなお前ら!?」 フランヴェル・ギーベリ(ib5897)とアムルタート(ib6632)に弄られる鷲尾。 苦笑いをしつつ術を維持する亜理紗も二階に上がってきて鏡の前に立つ。護衛の各務 英流(ib6372)と何 静花(ib9584)も同様で、巨大な鏡をコンコン叩いてみたりする。 「お約束だと、鏡を割ると隠し通路があったりするもんなんだがな」 「それじゃ星座アヤカシが通れないじゃありませんか。いちいち割らないと奥の神社と行き来できないのでは意味がありませんわ」 「星座アヤカシに限って鏡の中をぬるっと通れるとか」 「鏡の中なんてありませんわよ。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」 「気や魔法が当たり前の世界でおまえは何を言っているんだ」 鏡を調べても埒が明かなそうだったので、一行は一階に戻り4つの扉を調べてみることにする。 鏡を前にぼーっとしていた盾座の星座アヤカシ、クリムの肩を叩きつつ鷲尾は聞いてみた。 「この神殿がフツーじゃ無ェってどういう事だ?」 「……ここはアヤカシの集合体みたいなものだから。あなたたちが魔の森と呼ぶ場所と似て非なるもの……それがこの神殿。……大丈夫、ボクが守るから」 それはこの神殿の中がアヤカシの腹の中であると言われているのとさして変わりがない。しかも魔の森と似て非なるということは、大アヤカシのようなものが存在するとでも言うのか? それが天秤座のことではなく、天秤座さえも復活を望む星座のことだとしたら……? 一行に緊張感が走り、階段を降りる足も少し重く感じられるのであった――― ●開けゴマ 開拓者たちは事前に、右手前→右奥→左奥→左手前という順で扉を調べることにしていた。 レネネトの時の蜃気楼で調べてみたが、ホールで再生された目ぼしい映像は前回の南十字座と鳩座が出て行くところと平坂 空羅が左奥の扉に入っていくところのみ。つまり、平坂 空羅は扉に入ったっきり出てきていないのだ。 意を決して前回入った右手前の扉に入ってみた一行であったが、そこは前回の戦いの爪痕があちこちに残り、裂傷だらけでボロボロのままだった。 「あ、そうだ。これを……」 真亡はふと思い出し南の魚座のメダルを取り出し使用する。 真亡の南の魚座=オーラでできた魚が出現し、空中を泳ぐ。捜し物の前で止まる 光る小魚のようなものが出現し、部屋の中をスイスイと移動する。真亡としてはこの部屋に何か突破口になるようなものがあればと思ったのだが、小魚は何故か部屋を抜け出し、二階の鏡の前まで泳ぎ止まった。 「きっと意味があるんだよ。雫くん、そのメダルを鏡の前で使ってみたらどうかな」 雪切の助言に従い、真亡は鏡の前に立つ。 「鏡にメダルを映しても意味は無い……じゃあ、触れたら……?」 恐る恐る南の魚座のメダルを鏡に当ててみる。その瞬間、ビキビキビキッ! と大音量を伴い鏡の右下部分にのみ大量の亀裂が入る。 思わず飛び退いた真亡であったが、どうやら割れるまでは行かない模様。 「これまたお約束だな。4つの扉の守護者を倒して、勝利の証を4つ揃えることで鏡が砕け道が拓かれる……か」 「フッ……実にそそるじゃないか。開拓者は切り拓いてこその開拓者だからね」 何、フランヴェルの言葉に頷き、一行は左奥の扉の前に立つ。 要は扉の中の星座アヤカシを倒し、メダルを鏡に触れさせてやればいい。いつもやってきたことと大差はない。 しかし、扉を開ける直前、各務がポツリと呟いた。 「……でも、そうしたら星座アヤカシはどうやって出入りしているんですの―――?」 ●うじゃうじゃ 「レディースエーンドジェントルメーン! ようこそ、蛇遣い座オピュクスのステージへ!」 一行が部屋に入ると、後ろの扉が問答無用で閉じ10人を閉じ込める。 部屋の中央にはシルクハットを被ったマジシャン風味の青年がおり、恭しくお辞儀などしてみせる。 「ここで蛇遣い座かぁ。あの人の予想、外れちゃったねー。でも十二星座相当の重要な役どころっていうのは変わらないのかなー」 アムルタートがそう呟くと、蛇遣い座はニヤリと笑って言葉を続ける。 「その通り! この4つの扉を任されるアヤカシは十二星座クラスでなければなりませんからね! 先にやられた南の魚座なんていうまさしく雑魚と一緒にしてもらっちゃ困りますよ!」 その言葉に真亡は我慢ができなかった。ぐっと拳を握り、南の魚座のメダルを抱くように胸の前に持ってくる。 「……取り消してください。彼女はあなたに愚弄されるようなアヤカシではありませんでした。確かな実力があった!」 「その言葉、証明したくば僕を倒すことですねー!」 「フッ……聞けば南の魚座は可憐な少女だったというじゃないか。例え故人と言えど、アヤカシと言えど、少女を愚弄するような輩はボクが許しておかないよ」 「ホッホーゥ、皆さん殺る気のようで何より! では僕も皆さんに心の底から楽しんでいただきましょう……恐怖のショーを! レッドスネークカモン!」 フランヴェルの気迫にも全く怯むことなく戯けてみせる蛇遣い座。彼がパチンと指を鳴らすと、シルクハットから大量の赤い蛇が出現する! 「ほらほらもっと増えますよ! ブルースネークカモン! イエロースネークカモン! グリーンスネークカモォォォン!」 次々とシルクハットから蛇を繰り出す蛇遣い座。名の通りのシンプルな能力だが、すでに蛇の数は余裕で100を越えている。狭い室内でこれだけ大量の蛇をばらまかれては、盾座のオートガードも間に合わない! 「くっ、髪の毛座!」 「レチクル座ー!」 アムルタートのレチクル座=オーラの糸を飛ばし、目標物に貼り付けることができる。伸縮はしないが丈夫 真亡の髪の毛座は髪を伸ばし自在に動かせるようになるので、蛇達を複数拘束し動けなくすることができる。 アムルタートも糸を飛ばし、ぐるぐる巻にふん縛ることで接近を防いでくれている……のだが如何せん手が足りない。 「これは困ったのです。私の定規座は1対象にしか効果が無いのです」 レネネトを筆頭に、何、各務といった亜理紗護衛組も悪戦苦闘中。蛇の数が多い上に亜理紗は術の維持で戦闘ができず、もし噛まれたら即術が解けて帰還になってしまう。 「亜理紗ァ! 野郎、なら本体のテメェを殺りゃァいいんだろォが!」 アンドロメダ座のメダルを使い、オーラのチェーンで魔槍砲を分割、ありえない角度からの空中砲撃を敢行する鷲尾。しかし蛇遣い座は余裕の表情でシルクハットを構え、砲撃はそれに吸い込まれるかのように消滅してしまった。 「言ったでしょ……僕は十二星座クラスなんですよ。その程度の攻撃でやられるわけないじゃないですか。ほらほら、パープルスネークカモン! グレースネークカモン!」 次々と増えていく蛇。一匹一匹はく大した脅威ではないのだが、数が多すぎる上に毒が恐い。遅効性ならまだしも即効性の毒の場合、蛇遣い座を倒す前に全員力尽きてしまうかもしれない。 「ありゃー、こりゃまずいかなー」 そうこうしているうちに開拓者たちは扉のすぐ側まで追い込まれる。アムルタートはナディエを使い、家具類をひょいひょい渡り歩き蛇を避けつつ鑽針釘を投擲していたが、蛇遣い座は蛇を盾にしてそれらを全て防いでしまう。 盾座は盾座で蛇の攻撃をオートガードするので手一杯。自分はさんざん噛まれているが、アヤカシなので特に毒なども問題ないのだろう。 背中には壁、周りには数百数千の蛇。ジリジリと範囲を狭められている……! 「ふ……仕方ない、ここはやはり私達の出番だな」 「数々のメダルを使いこなし、ピンチを潜り抜けてきた私たちにお任せですわ!」 そんな時、何と各務がメダルを手に前に出る。 「いや、成功と同じくらい失敗する場面もあったような―――」 「だまらっしゃい。そんなツッコミしてる暇があるならお前もメダルを使え」 「これはしたり」 雪切も加わり、三人がメダルを発動。しかし一番前に居た何に、数十匹の蛇が跳びかかり噛み付く……! 「何さん!?」 「安心しろ旦那の嫁」 何のヘラクレス座=発動後5分間、あらゆる刺突攻撃を無効化する。斬撃、銃撃、打撃は無効にならない 雪切のケンタウルス座=両足がオーラに包まれ、腰にオーラでできた馬の後ろ足が出現、馬の持久力と脚力を得る 「いいじゃないか。噛めない蛇はただのナメクジだ」 「このオーラ……脚部防御にもなってるのか。行けるか!?」 「私もいっくよー♪」 大量の蛇の中を平然と駆け出す何と雪切。蛇が飛びかかるも牙が通らないので無意味。 ナディエで水平移動しつつ蹴りを放つアムルタートと共に蛇遣い座に肉薄し、拳、足、太刀が唸りを上げる! 「ハッハァ! 蛇を突破したくらいで僕を殺れるとで……もっ!?」 次の瞬間、蛇遣い座は向かいの壁に叩きつけられていた。 その横には何と雪切、アムルタート。三人もまた壁に叩きつけられている。 というか、部屋の様子が一変していた。ソファや机やらがあった部屋は、一瞬にしてクリーム色の何かに埋もれてしまっていたのである。 それは……各務のせいだった。 各務の牡羊座=発動後しばらくしてから、周辺に羊毛を大量に生成する。 部屋まるごと埋まってしまい、開拓者たちは急いで羊毛の上に這い上がる。 足元の蛇は健在なので、こうしないと足に噛み付かれる可能性があったからだ。 乗ってみればかなり分厚いふかふかの羊毛が敷かれており、蛇も顔を出せはしないだろう。 「じょ、冗談じゃないよ! 何なんだい君は、僕のショーを……蛇達を台無しにしてくれさ!」 「お……オーッホッホッホ! 計算通り! お姉様を守りたいという気持ちに星座が応えてくれたのですわーッ!」 「嘘つけぇ! あぁもう、これからクライマックスだったんだよ!? 蛇を突破した二人の戦士が強敵とぶつかり合う最高の魅せ場だったのに! どうするんだよもう……段取りが滅茶苦茶じゃないか。いいかい、王道は王道が故に王道なんだ。シリアスなところから急にコメディとかさ、どこかのバイオリン弾きじゃあるまいし止めてもらえないか……な……?」 散々捲し立てた挙句、自分の首筋に冷たいものが当てられた事で蛇遣い座の言葉は尻すぼみになる。 見れば頭を抱えた雪切と真亡に白刃を充てがわれている。正直二人もこんな展開は予想していなかったことだろう。 「……まぁ、王道は王道で素晴らしいと思いますけど……」 「たまには変化球もいいさ」 白刃ニ閃、蛇遣い座の首が宙を舞い、羊毛の上にぼふんと落ちた。 「こ、こんな……この、僕が……十二星座クラスのこの僕が……こんな、コメディ路線でで……!」 『そこだけはお察しします』 盾座以外の9人が同時に手を合わせたので、蛇遣い座はもう何も言えない。 首と胴体が同時に瘴気に還り、蛇遣い座のメダルが羊毛の上に落ちたのだった――― ●凶気と闇と 羊毛の下の蛇も消滅したのを確認し、各務が牡羊座のメダルを解除。同時に閉ざされていた扉が開き、一行はホールへと戻ったのである。 二階の鏡の前に立ち、蛇遣い座のメダルを鏡に振れさせることで右上側の部分にヒビが入る。これで鏡の右側は破壊できたことになり、一同はそのまま左奥の扉へ。 その中には…… 「空羅……!」 「まさかあの蛇遣い座をあんな手で倒すとはな。まともにやりあえば俺でも苦戦するだろうに……運の良い連中だ」 平坂 空羅。部屋にはアヤカシはおらず、彼だけが立っている。 部屋には猛烈な戦闘の痕。空羅がこの部屋で黄道十二星座と戦ったのか……? 「単刀直入に言う。俺は天秤座と手を組むことにした。よってお前たちの黄道十二星座のメダルを寄越せ」 「―――!」 鷲尾の南十字座=十字型のオーラのブーメランを召喚。一回の発動でニ個まで飛ばせる 雪切の猟犬座=オーラでできた牙で射撃攻撃。一度に発射できるのは4本まで フランヴェルの炉座=手を振るうことで溶けた高温の鉄を水芸のように浴びせかける 何の鳩座=鳩のような形のオーラを飛ばし、フンのようなもので爆撃。当たると本当に爆発する 敵対行動を取ると宣言した時点で容赦無し。四人がメダルを使い攻撃を仕掛けるが、空羅はニヤリと笑い手にした刀を振るう。 それはあまりに常軌を逸した速度。開拓者の、いや人間の限界を遥かに越えた速度での斬り払いであった。 「踏み込みが足りん。メダルなら俺のほうが上手く使えることを忘れたのか?」 じゃら、と袋に入った大量のメダルを見せつける空羅。 メダルは一人一枚どころではない。奴は数十枚のメダルを同時に使えるとでも……!? 「皆さん、ここは一旦退きましょう」 亜理紗の判断で、一行は帰還することに。 平坂 空羅はため息を吐き、呟いたのだった 「……次はあの撤退を先に押さえておくか―――」 |