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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 天儀の中心都市たる神楽の都。 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら――― セブンアームズ(以下SA)。主に石鏡の国で活動する七体の人型アヤカシである。 それぞれ得意とする武器を用い、人と変わらぬ容姿と知恵を合わせ持った強敵。そしてどこかやりにくい相手。 その数はまたしても一体減り、残るは四体。リーダー格を失い、更に仲間を減らしていく彼らはどのような行動を取るのだろうか? 前回、先手を取るために過去のSA暴走を引き合いに出し狩りではなく決闘として戦った開拓者たち。 しかし、ルールのない戦いとなれば向こうは逃げの一手を打つことも出来るわけで、結果としてはSA側が拠点としていだ洞窟を掘り抜いて逃げるという離れ業をやってのけ終了した。 頭を銃弾で盛大にブチ抜かれても、大ダメージでこそあれ即死はしなかったSA。やはり白梅香や魂喰などの瘴気浄化・無効化系の技が欲しいところか。 これでチャラという台詞を残して去っていった以上、狩りをすることを止め無差別に人を襲うということはなさそうではあるが‥‥? 「一葉さん、SA側に動きがありました。といっても、狩り宣言を出したわけではないんですけれども」 「どういうこと?」 「例の町を離れたSAたちは、今度は石鏡北部のとある村に現れました。その近辺には結構大きな神社があるんですが、そこにも姿を現したんです。マント無しで」 SAは魔法を防ぐフード付きマントがトレードマークであり、大きな利点の一つである。 それを放棄してまで神社に現れた目的とはなんだろう。まさか無病息災のお参りでもあるまい。 銀髪に赤い瞳が四人も揃って現れれば、SAが主に活動している石鏡の人間なら不審に思うものは多い。 「狩り宣言も無し、マントもなし。場所が神社。何をしてるのかしら‥‥」 「これから何かするつもりなのかも知れませんよ? とりあえず上からは、『マークに向かい、何かしでかしそうなら阻止しろ』という話しか来ていません。先手を取れる理由がなくなり、これ以上こちらから突っつくと薮蛇になると考えたんでしょうね」 「‥‥嫌な予感がするわね。また面倒なことにならないといいけど‥‥」 新たな動きを見せ始めたSA。戦いは次なるステップに移行するのかも知れない。 これはきっと、終わりと始まりを繋ぐ物語――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
小伝良 虎太郎(ia0375)
18歳・男・泰
煌夜(ia9065)
24歳・女・志
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
アッシュ・クライン(ib0456)
26歳・男・騎
无(ib1198)
18歳・男・陰
朱月(ib3328)
15歳・男・砂
叢雲 怜(ib5488)
10歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ●場違いさん 言うまでもなく、神社というのは神聖な場所である。 人々の様々な願いや想いが集う場所という意味においては、悪く言うなら欲望が集中している場所と言えなくもないが。 参加者の一人、煌夜(ia9065)は、何故か微妙な顔をしながら仲間を引き連れ、一直線に社殿に向かった。 そして一人の老人に声をかけると、振り返ったその老人はドヤ顔でこう言った。 「そんな装備で大丈夫かの?」 「今回は大丈夫です! っていうか、ここだったのね‥‥」 「お知り合いなんですか? お参りに来たことがあるとか‥‥」 「前に、義賊関連の依頼でちょっとね‥‥」 きょとんとする朱月(ib3328)に対し、頭痛をこらえるように額を抑える煌夜。 なんでも数日、巫女としてここで働いたことがあるらしい。敷地内のことに詳しいメンバーがいたというのは地味に心強い。 早速物品の供養について聞いてみようと思った面々だが、そこに若い男の神主が息を切らせて走ってくる。 「れ、連中がまた現れました! ど、どう致しましょうか?」 「安心せい、開拓者殿たちが到着されたところじゃ。では、早速お願いしますぞ」 参拝客や巫女、神主などが行き交うこの神社において、銀髪に真紅の瞳のセブンアームズ(以下SA)たちはかなり目立つ。 客もすぐに気づき、半信半疑ながら彼に報告してきたというところか? 「ちっ、次前策を打つ隙がないな」 「先に立ち入り禁止区域や伝承などを調べておきたかったんですけどねぇ」 「バラバラに行動するのだけは止めましょう。前回の二の舞になる可能性があります」 アッシュ・クライン(ib0456)が舌打ちをすると、无(ib1198)もやれやれと肩をすくめる。 レネネト(ib0260)が念を押すまでもなく、一行はメンバー分けをしようとは思っていない。 獣や虫のようなアヤカシならまだしも、人並みの知恵が回るSAたちは数の多寡で何かを企んでいると読み、柔軟に作戦を変更してくるのだから。 「やれやれ‥‥こいつの供養はまた後で、だな」 「‥‥いいの? 持ってなくて」 「いいさ。おセンチな言い方をすりゃあ、『リュミは俺の心のなかに生きてる』ってやつだな」 「おおお、なんか大人なのだぜ」 「未練は断ち切っとかねぇと戦えねぇ。そういう意味合いもあんだけどな。‥‥さ、行くぜ!」 とらのぬいぐるみを手にしていた鷲尾天斗(ia0371)に声をかけた小伝良 虎太郎(ia0375)だったが、鷲尾は軽く笑って返す。 小伝良も叢雲 怜(ib5488)も、鷲尾の本心を汲み取るにはまだ人生経験が足りない。 軽口を叩きつつ歩き出す鷲尾を、片や悲しそうに、片や羨望の眼差しで追いかける。 そこに待つのは、今までない素顔のSA――― ●格好 自らの特徴であり、重要な防御装備である黒マント。それをまとわず、至って普通の服装に身を包んだSAたち四人がそこにいた。 キュリテ一人だけ着崩し気味の着物だが、他の三人はクロークにズボン、ブラウスにスカートといった格好である。 鷲尾が嫌な想像していたダシオンも、丈の長いズボンに襟付きのシャツ、ゆったりした上着と御自慢の筋肉とやらは微塵も感じさせない。 「へー‥‥キュリテ、着物似合うんだねー」 「む、素直に嬉しいぞ。わらわも何故か知らぬがこの格好がしっくりくるのよな」 小伝良の他意のない一言に、穏やかに返答するキュリテ。どうやら仲間内では評判がよろしくないらしい。 確かに名前的に考えてジルベリア風なのに着物にこだわるというのもおかしな話だが。 「よかったですね鷲尾さん。彼、普通ですよ」 「おう、心臓に悪かったぜ。いやぁ、シエルいいなぁ。生足サイコー。キュリテもそのはだけた胸元はご褒美かコノヤロー」 「おぬしはそういう目でしか女子を見れんのか‥‥?」 「ぶっちゃけそういう目でしか見れん!」 「初心貫徹という意味では感心します」 「そんなに褒めるなよう」 『褒めてねぇ!(ない!)』 キュリテとレネネトの嫌味にも動じない鷲尾。とうとう開拓者もSAもひっくるめてツッコミを入れる羽目になってしまった。 とりあえず境内では目立つので、立ち入り禁止区域にて話をしようということになったようだ。 ‥‥と。 「俺らを先に行かせて後ろから、とかではあるまいな。そうでないならまず先に行ってもらおうか」 「前回のこと根に持ってんのか? あれでチャラってことにしたんだからわざわざこっちから仕掛けやしねぇよ。ま、行けっつーんなら構わないけどな」 「‥‥戦かっちゃ、ダメ?」 「フッ‥‥駄目ですよシエル。例の捜し物を手に入れるのが目的なんですから」 スパーン! 歩きながらシエルを諭していたダシオンの頭に、キュリテがスリッパで攻撃する。 どこから取り出したのかは知らないが、いい音がした。 「お・の・れ・はぁぁぁっ! 本当に筋肉バカじゃのう! 何をサラッとバラしとるんじゃ!」 「フッ‥‥最高の褒め言葉ですね」 「褒めとらんわぁぁぁっ!」 「‥‥あなたも大変そうね」 「いや、まったく。クレルの姉御はよく俺達みたいの纏めてたと思うぜ」 なんとなくジークに同情してしまった煌夜。ジークもそれを素直に受けた。 戦う理由がなければこんなにも穏やかに話ができるのに、開拓者たちとSAの間には戦う理由しか存在していない。 雑木林になっている神社の裏手。そこを更に奥に進んだ辺りで、一同は足を止め対峙する。 「前から思ってたけど、ダシオンって普段どんな鍛錬してるの?」 「敵と馴れ合うのは駄目なんだけどなぁ‥‥」 「フッ‥‥いいでしょう、実践してご覧に―――」 「バーロィ、脱ぐんじゃねぇよ! 野郎の肉なんざ見たかねーんだよ!」 「おーい、戦わないとずっとこんな調子になるんじゃないのか俺らって」 「‥‥貴様らも数が少ないという事は、別所で何かしているという事だろう。もしくは不意打ちを狙っているか、な。それとも、前のように逃げ道の確保でもしているのか?」 「無理矢理軌道修正したな‥‥助かるけどよ」 小伝良、朱月、鷲尾とダシオンとの会話にジークが辟易していたところで、アッシュが問答無用で話をつなげた。 先ほどダシオンがネタバレをかましていたが、どうやら何かを探しているのは間違いないようだ。 そしてそれは、おそらく供養で持ってこられる物品ではない。もしそれが目的なら、開拓者が来ていない時にいくらでもチャンスがあったはずなのだ。 そうなると‥‥ 「やはり、宝物庫にあるであろう何か‥‥ですか」 「ドロボーはいけないのだぜ。持って行こうって言うんなら相手するしかないかな」 「相変わらず威勢がいいなチビッ子」 「ちみっこ違うもん! お前まで話の腰折り始めたら収集がつかなくなるだろー!」 「わりぃ。つーか、盗もうって気はないんだ。あと一回、読ませてもらえればそれで大体わかるからな」 无と叢雲の言葉に、ジークは軽やかにそう言った。 つまり、今までに何度か侵入し目的のものを探し当て、読み進めながら暗記なり書き写すなりしていたらしい。 しかしあと少しで完了というところで開拓者が来てしまったのであろう。そしてそのあと少しの部分には、どうしても知りたい事柄が書かれているのかもしれなかった。 「申し訳ありませんが、盗み読みをするような方々にこれ以上の知識はさし上げられません」 「ま、素直に見せてくれと言われても神社の連中は首を縦にゃ振らねぇだろーけどな」 「‥‥力づくで、来てみる? 私たちもそろそろ決着をつけたいの」 レネネト、鷲尾、煌夜。それぞれに共通するのは、絶対にこの場を通さないという意思。 押し通ろうとすれば戦闘になる。そしてそれはSAから攻撃を仕掛けたということになり、また要らぬ借りができてしまうだろう。 シエルの長い髪を梳きながら言った鷲尾にはまるで説得力はなかったが。 「‥‥一応確認しとくぜ? 俺達が無理して戦おうとしなけりゃそっちにも戦う気はないってことでOK?」 言いたいことがないわけではないが、開拓者たちは顔を見合わせ、頷く。 それを見たジークは、大きなため息をついて言葉を続けた。 「‥‥わかった、ここからはもう手を引こう。不完全でもやるしかねぇ」 「良いのか? 確かに後は勘でやれないことはないが、万全を期するには‥‥」 「仕方ねぇよ。ここで意地張ってまた数を減らしたらたまんねぇ」 「お腹すいた」 どうやらSAたちの意見は纏まったらしい。来た時と同じように、物見遊山であるかのようにゆったりと帰っていく。 しかし、途中でジークが立ち止まり振り返る。 「‥‥おまえらさ、もうちょっと気合入れたほうがよかったんじゃねぇの? なりふり構わず接してりゃ、被害者だってもっと少なくて済んだだろーに」 「加害者がそれを言う‥‥?」 「今回だってそうだ。最初からなりふり構わず殺しにかかりゃ一人くらい潰せたかもしれねぇのに。長引かせてるのはお前ら自身なんだよ。格好付けて後で後悔しないようにな」 手をひらひらさせ、後頭部で手を組み去っていく。 そんなことは改めて言われるまでもなく分かっている。しかし、誇りや矜持を無くして戦ってしまったら、守るという目的があってもアヤカシと同レベルになってしまう。 その葛藤を理解出来ないのが、SAのアヤカシとしての限界だろうか――― ●源 一行は頭を切り替え、神主に相談し宝物庫を開けてもらった。 SAたちがどうやって入っていたのかは不明だが、建物には破壊されたような形跡もなく錠前もかかったままであった。 目的のものは割とすぐに見つかった。荒らされていないのが幸いし、最近読まれたであろう生活感を残した本がいくつかあったからだ。 「えー、何々? 『付喪神復活の有無と是非』?」 「こっちは『付喪神を進んで宿らせる法』とあるな」 「‥‥これは‥‥まさか」 朱月とアッシュが読み上げた内容を聞き、煌夜とレネネトの背中に電撃が走る。 煌夜はSAたちが自分たちの瘴気で作った武器やマントを強化するためにここを訪れていたのではないかと考えていたが、実際はその斜め上なのではないか。 材料を必要とせず帰ったSA。勘でも出来る。そして本の内容。 それらを鑑みて、たどり着く答えは少ない。 二人の表情を見て、小伝良と无もすぐに察した。 「ま、まさか‥‥クレルたちを復活させようと考えてるってこと‥‥?」 「付喪神は物が精霊を得、人を誑かすとも守るとも‥‥。まさか起源かねぇ」 そういえばSAたちは『何のアヤカシ』だ? 今更ではあるが、アヤカシには基本的に何かしらのモチーフがある。 虫、動物、魚、鉱物から果ては幽霊まで。そういう意味では人のアヤカシと言ってもいいのかも知れないが、それにしては『装備』に特化してはいないだろうか。 「もしかして、剣や弓のアヤカシがたまたま人の姿をしてただけってことなの?」 「ありえない話とまでは言わねぇが‥‥嫌だい嫌だい、シエルがハンマーの化身なんて嫌だい」 「そういう問題ですか」 叢雲の言葉に鷲尾がボケたので思わずツッコむレネネト。 自分たちの起源を考え、仲間の復活を図っている? もしその考えが正しいなら、断じて阻止しなければならない。 今までの苦労を水泡に帰すわけにはいかない。 復活させたSAたちが、今までのSAと同じ人格とは限らないのだから――― |