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■オープニング本文 七つ集めるとどんな病気や怪我も治してくれるという伝説の宝玉、ヘッチャラボール。その力は、不老不死さえも与えてくれると言われている。 自らの欲望のため。また、大切な人を助けるため。それぞれの理由を胸に、戦士たちはヘッチャラボールを求め激闘を繰り広げていた。 しかしそこに、強大な力を持った悪魔のような男が襲来。圧倒的な戦闘力でヘッチャラボールを六つまで集めてしまったのである。 このままやつがボールを集めきり、不老不死となってしまったら天儀は地獄と化す。やつは純粋に破壊と殺戮を好み、無抵抗の女子どもでも容赦なく殺しているのだから。 そんな状況にあって、まだ見ぬ強豪たちが立ち上がる。 ある者はこの世界を守るために。ある者は自分より強い存在を許さないために。今までヘッチャラボールに関心のなかった戦士たちをも動かすほど事態は切迫していたのである。 かくして、凶悪武神セロリーザとの熱きバトルが勃発する‥‥! 「オッス、オラ亜理紗。みんなにバトルの説明をすっぞ。みんなはもう知ってると思うけんど、この世界の武闘家は『近接戦闘系』『高速戦闘系』『光弾戦闘系』の3タイプに分類されるんだ。その優劣はこんな感じだな」 オレンジ色の道着を着たポニーテールの少女が掛け軸のようなものを広げて見せる。 そこには近接→高速→光弾→近接という三角形をした流れが書いてあり、矢印の順で有利ということになっているらしい。 「近接戦闘系はパワーで押すタイプ。防御が高くて一撃が重いから、高速戦闘系のラッシュを耐えてドでかい反撃ができっぞ。でも光弾系みたいに遠距離からの攻撃が強烈なのはどうも苦手だ。逆に高速戦闘系はスピードで撹乱して光弾を避け、一気に接近戦に持ってけるから光弾系に強い。ま、三すくみってやつだな」 しかし、セロリーザはその常識を超えどのタイプにも属していない。いや、全てのタイプのイイトコどりのタイプと言ってもいい。 その実力は、今回集まったメンバー全員で戦ってやっと互角というところだろうか。 「とにかく頼むぜみんな。天儀の未来はおめぇたちにかかってんだ。この最後のヘッチャラボール、守り通してくれよ!」 そう言って、亜理紗は拳大の宝玉を投げてよこす。 想像よりずっしりと重いその宝玉には、天儀の人々の未来がかかっているようであったという――― ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません |
■参加者一覧
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
小伝良 虎太郎(ia0375)
18歳・男・泰
雷華 愛弓(ia1901)
20歳・女・巫
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
阿野次 のもじ(ib3243)
15歳・女・泰
九条 炮(ib5409)
12歳・女・砲
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●天儀ギリギリ! ぶっちぎりの凄い奴! ヘッチャラボールを我が物とし、永遠の闘争を望む男‥‥セロリーザ。 凶悪武神と恐れられる屈強な戦士であるその男は、身長3メートル前後で筋骨隆々という、人類としては規格外と言っても過言ではない。 6つまで集められてしまったヘッチャラボール。残りの一つを何としても死守するため、隠れた強豪たちがついに立ち上がった。 巨大な気を目指し、各地から戦士たちが飛翔する。セロリーザがねぐらとしている岩山に向かって。 大自然が創りだした巨大な岩山。ここが決戦の舞台となるようだった。 「ふっふっふ‥‥来ぅると思っていたぞ。巨大な気がぁ、いくつも近づいてきていたからな‥‥」 セロリーザは上空に停止している6人の戦士を見てほくそ笑む。 その面構え、雰囲気、挙動。どれをとっても今まで自分が倒してきた戦士たちの比ではない。楽しい戦いになる‥‥元よりそれが彼の目的だ。 戦士たちは地上に降り、セロリーザと対峙する。 「くくっ、随分派手に暴れてるらしいじゃないか。確かに良いツラだぜ」 「それだけの実力があるってことだろ。へへっ、俺ワクワクしてきたぞ!」 「これが伝説のスーパー開拓者‥‥なるほど、あの人がヘタレるわけですね!」 言葉を交わす必要は無い。朧楼月 天忌(ia0291)とルオウ(ia2445)は軽く感想を述べた後、すぐに構えを取った。 九条 炮(ib5409)もまた然りだったが、どうやら知り合いに戦いに来るのを止められたらしい。かと言って逃げてばかりでもいられまい。 「亜理紗お姉様と私の間を邪魔する者は、例え天でも打ち砕く!」 「早速目的が違うんだけど!? ほら、真面目にやらないとヤバい相手だよ!」 「いやー、彼女の場合大真面目なんじゃないかなー」 各務 英流(ib6372)は開口一番おかしなことを口走り、小伝良 虎太郎(ia0375)にツッコミをもらった。 阿野次 のもじ(ib3243)も半ば以上諦めているが、要はセロリーザを倒せればいいのだ。重要なのは理由付けよりも結果である。 「いぃいだろう。まぁ、マックスパワーの半分も出せば塵にすることができるだろう」 そう言うと、セロリーザは構えを取り急速に気を高めていく。 ドゥギューンという音と共に体が紫色のオーラに包まれ、大気をも震わせる‥‥! 「ぬかせ! いくぞお前ら!」 天忌の叫びと共に、開拓者たちもそれぞれ白いオーラに包まれる。 全力対全力。しかし、前情報通りセロリーザの戦闘力は6人の合計値よりも高い。 だからと言って逃げ出すくらいなら最初からここには来ていない。そういう面々だった。 「天儀最強はぁ! このぉ、セロリーザ様だぁぁぁ! ぶるぁぁぁぁぁっ!」 そして、七人は同時に大地を蹴り‥‥大空へと駆け上がっていった――― ●激突! 百万パワーの戦士たち! 「くっ! デカいわりに速いっ!」 「でも、素早さと愛なら負けてなくてよ!」 「どうした? これで全力ではあるまい!」 小伝良と各務。高速戦闘系に属するスピードタイプの二人は、左右から同時に攻め行って次々に拳や蹴りを繰り出していく。 風を切り空を裂かんばかりの攻撃を、セロリーザは的確にガードし捌いていく。 怒涛のラッシュを受けながら、あろうことか反撃に出るセロリーザ。しかし小伝良たちも大したもので、ビシュンと一旦消えすぐに違う角度から攻撃を再開した。 「敵は6人だってこと、忘れんなよな!」 「どうだオラぁぁぁっ!」 各務たちがまたビシュンと姿を消すのと同時に、ルオウと朧楼月が一撃を加える。 彼らは近接戦闘系に属するため、スピードは劣るが破壊力に秀でる。 腹と背中を強打されるも、その溢れんばかりの筋肉は飾りではないらしい。大して効いていないような雰囲気で、ルオウをハンマーナックルでたたき落とした! 岩山に着地したが、着地地点が大きく凹んだ。破壊力は一目瞭然だ。 「ルオウ! 野郎ッ!」 「お手伝いだよー!」 阿野次が不意に現れ、援護に加わる。攻撃をビシュンと躱し、死角へ高速移動する。 朧楼月には同じような動きはできないが、異なるリズムの二つの流れが襲いかかってくるのは意外と厄介らしい。セロリーザは標的を朧楼月に絞り、二人はガッチリと手を掴み合い力比べの様相となる。 「やぁるではないか‥‥。まぁだこんな強いやつらがいたとはな‥‥! 貴様‥‥名は?」 「俺か? 俺は‥‥スーパー天忌だ‥‥!」 そう言うと、朧楼月のオーラが白から金色に変化する。同時に髪の色も金となり、逆立つ! 「なに‥‥まだぁ、戦闘力が上がるのか‥‥!」 押し返すには至らないが、朧楼月はフルパワーで力を込める。 そして、金色となった戦士は彼だけではなかった。 「セロリーザーーー!」 同じく金色のオーラと髪になったルオウが下から突撃を仕掛ける。両手を朧楼月と組んでしまっているセロリーザは防御ができない。 ならばと朧楼月を投げ捨てようとするが‥‥! 「むぅ!?」 バシューンという一瞬の音と共に、光弾がセロリーザの背中に炸裂する。 光弾戦闘系の九条が放った気功波だ。それに気を取られているうちにルオウの一撃が顔面にヒットし、セロリーザは上空へ! 飛ばされた先に小伝良がビシュンと出現し、かかと落としで地上へ叩き落す! 「私のストロングバレットは百八式まで有るぞ〜〜!」 ズギャーンと凄まじい音を立て、岩山に激突したセロリーザ。もうもうと土煙が上がる中、九条は気功波を連打し墜落地点を爆撃する。 普通、ここまでやれば生きては居ない。しかし開拓者たちは警戒を解かない。 これで倒せるのであれば苦労はない。凶悪武神と呼ばれるからには、ヤツは‥‥ 「そ、そんな‥‥あれだけ撃ったのに気がほとんど減ってない!」 「あれー? まいったなぁ、そこそこ効くと思ったのに‥‥」 九条と阿野次は、晴れていく土煙を目にしながら驚愕を禁じ得ない。 がらりと瓦礫を押しのけ、セロリーザは大したダメージでもないように立ち上がり首をコキコキと鳴らす。 「なぁるほど‥‥どうやら半分程度では失礼だったようだ。サービスタイムは終わりにしよう」 「さ、流石にハッタリを効かせすぎだよ。オイラたちだって‥‥」 「楽しいぞ。ここまで楽しめたのは久しぶりだ‥‥」 そう呟いたセロリーザのオーラが更に増大する。そして、髪がルオウや朧楼月のように金色に変化する‥‥! 「や、やっぱり伝説のスーパー開拓者‥‥!?」 ビシュン! という音と共に、慄く九条の背後にセロリーザが現れる。 「速い!? う、動きが見えなかったよ‥‥!」 「う、うわぁぁぁ!?」 至近距離で気功波を連打する九条。しかし爆風の中からぬぅっとセロリーザが現れ、逆に九条の眼前で気功波を炸裂させた。 九条は威力を落として連射性能を高めていたとはいえ、数十発の気功波をものともしていない。逆に九条は一撃で大ダメージを受け、墜落した。 「いけない、助けないと!」 小伝良が向かおうとするが、その前にセロリーザが立ちふさがる。 「どけぇっ!」 ビシュンと消え、セロリーザの背後に現れる小伝良。そのまま首に蹴りを入れようとしたが、今度はセロリーザがビシュンと消え右側面から殴りつけられてしまった。 岸壁をぶち抜いて岩山に消える小伝良。まさに圧倒的な戦闘力‥‥! 「おいおい、この程度でぇダメージを受けるんじゃないぞ。お楽しみはぁ、これからなんだからなぁぁぁっ!」 今度は両手から気功波を放ち、ルオウと朧楼月を撃ち落とす。 どの系統の強みも持ち合わせているというセロリーザ。遠近共に隙がない‥‥! 「見せてやるぜ‥‥私のとっておきをな!」 「これが私の全力全壊ぃぃぃ!」 各務が正面から、阿野次は上空から高必殺技を仕掛ける。 ほぼ同時にぶつかる。そう思われたが、セロリーザは両手にエネルギーを集中しゼロ距離で二人に炸裂させる。 「ふっふっふ‥‥隠れた実力者といえどぉ、私の敵ではない。ではヘッチャラボールをいただこうか」 そう言って、ゆっくりと地上に降りていくセロリーザ。 誰かが所持しているのを奪ってみせろという話だった。とりあえず一人一人の死体を調べればよかろう。そう、思っていたのだが‥‥ 「!?」 ズガァァァン、と爆発がセロリーザを襲う。気功波の類だったが、どこから‥‥? 「何‥‥あいつは死にかけていたはずなのに!」 気を探って見つけた先には、気で作り上げた弾を指の動きでコントロールし、自在に操っている九条の姿があった。 そして、驚いている隙にルオウと朧楼月までもが復活し立ちはだかる! 「いよう。どこ見てんだよ」 「まだまだ! 気合と根性でカバーだ!」 「こ、こいつらも!? ‥‥あれか!」 視界の端に、小伝良に手をかざし治療のような真似をしている開拓者が見て取れた。 それは雷華 愛弓(ia1901)。今までは気を消して隠れていたらしい。 「こざかしい!」 気を一気に噴出させ、雷華に突撃するセロリーザ。流石に回復などを何度もさせるわけにはいかないようだ。一気に肉薄し、雷華を気功波で攻撃する! 「うぅっ‥‥! つ、強い‥‥!」 「戦闘力はさほどでもないようだがぁ、奇妙な術を使うな。放っておくわけにはいかぬない」 「く‥‥こうなったら! 覚えているかセロリーザ! 私はお前が皆殺しにした村の生き残りだ!」 「ふっふっふ‥‥滅ぼした村のことなど、いちいち覚えているものか。お前も後を追うがいいやぁ!」 「危ないっ!」 ゴァァァン、と大爆発が起き大気を震わせる。間一髪九条が気功波を放ちながら飛び込んだため、ダメージは甚大であるものの九条も雷華もまだ息がある。 「今度こそ終わりだ。死ね、おん‥‥ぶるぁぁぁっ!?」 ピンチは続いている。そう思っていると、何者かがセロリーザの顔面を蹴りつけ弾き飛ばした。 大地に降り立ったその男は‥‥鷲尾天斗(ia0371)! 「鷲尾さん! 来てくれたんですね!」 「ふ‥‥。貴様‥‥ナニをしている」 九条に微笑で返答した鷲尾には、気が満ち満ちている。今まで飛び込む隙を伺いながら気を充実させていたのだろうか? 「面白い‥‥そんな程度の戦闘力でぇ、俺に挑むのか。やれやれぇ、開拓者というのはつくづく度し難い」 ズン、と一歩踏み出したところでルオウと朧楼月がその足を払う。 バランスを崩したところに、小伝良が後頭部から蹴りをかまし地面をキスさせる。 ようやくフルメンバーとなったのだ。戦闘力上では互角の戦いができるはず‥‥! 「まったく‥‥人をイライラさせるのが上手い奴らだ‥‥」 立ち上がり、顔をひきつらせるセロリーザ。それは純粋に怒りによるもの。 自分は強い。自分は負けない。なのにこいつらは諦めようとしない。明らかに自分より弱いのに! だから、吠える。腹の底から吠える‥‥! 「もうここまでだぁぁぁっ! この山ごと貴様らをぉ、ゴミにしてやるぁぁぁっ!」 オーラを全開させ、右手に特大のエネルギーを集中させる。 まずい! 辺り一帯をまるごと吹き飛ばすくらいの威力があると、開拓者たちは直感する‥‥! 「くそったれ、伊達に今まで機会を伺ってたんじゃねぇぞ! ウーマーウーマー‥‥波ぁぁぁぁぁっ!」 巨大な気功波同士がぶつかり合い、中央で膠着する。しかしそれは一瞬のことで、鷲尾のほうがドンドン押されていく‥‥!」 「うっそだろ、あれで足んねぇのかよ!?」 押し切られる!? そう思ったとき、背後から新たに気功波が放たれぶつかり合いを援護する。 見れば雷華をはじめ他の参加者たちが揃って気功波を放ち、今度こそ互角のところにまで盛り返す。 八人全員の希望と力を込めた気功波のぶつかり合い。流石のセロリーザもまさか本当に互角まで持ってこられるとは思っていなかったのだろう。 「馬鹿め! こちらも大分消耗したが、お前たちを消すくらいのことはできるぞ!」 「そうは行きませんわ。私のお姉様に対する愛でフォローします!」 「ハッピーバースデイッ! 欲望は! 世界を救うんだぜ‥‥!」 鷲尾と各務が中心となり持ちこたえる開拓者たち。しかし向こうのほうが威力もスタミナもある。加えて今までのダメージや撃ち合いの余波を受け、開拓者たちは再び押され始める‥‥! 「こ、こんなもの‥‥こんなものぉ‥‥!」 「ぐ‥‥い、今だ、亜理紗やれぇぇぇっ! ヘッチャラボールを使え!」 「何!?」 なんと、まだ隠れていた人物がいたらしい。案内役だったはずの十七夜 亜理紗。最後のヘッチャラボールを手にセロリーザが所持していた6つのボールのもとへ。 7つのボールが揃い、黄金の光が辺りに満ちる。そして、亜理紗が叫ぶ願いは‥‥! 「この場に居る、セロリーザ以外の人間の体力・気力を元に戻してください!」 健康に関する願いだけを叶えるヘッチャラボール。勿論有効な願いであるし、セロリーザの不老不死を阻む意味でもいい戦略である。 再び黄金の光が満ち溢れ、開拓者たちのダメージが完全回復し気力も充実する! 「セロリーザ! あんたは負けたり死んだりするのが怖い、だから不老不死なんてものに縋ろうとするんだ。そんな弱っちぃ奴に、おいら達は絶対負けない!」 「てめぇはすげぇぜ。たった一人でこんなにも圧倒的だったんだからな。今度はいい奴に生まれ変わって戦おうや。‥‥‥‥またな! はぁぁぁぁぁっ!」 「知ったような口を! こん、な‥‥ものぉぉぉぉぉぉぉ! ぶるぁぁぁぁぁぁっ!?」 中央でくすぶっていたエネルギー全てが押し返され、セロリーザがその奔流に飲み込まれる。一方的な回復でパワーバランスが崩れてしまったようである。 空を貫く気功波がやがて収束し‥‥辺りに静寂が戻る。 凶悪武神の最後。それは、骨一つ残らないほどの消滅であったという。 かくして天儀の平和は保たれた。人々は彼らの働きに敬意を表し、『乙戦士』と呼ぶようになったという――― |