【造瘴志】烈火の如く
マスター名:西川一純
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/01/22 22:20



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


 天儀の中心都市たる神楽の都。
 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。
 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら―――

『謎の陰陽師』が残した邪悪な研究。その一つから作り出された式は、人と変わらぬ容姿と思考を持ったものであった。
 かつては武人だったと自らの境遇を嘆くその人物は、アヤカシや開拓者という単語すら聞き覚えがなく、時代を感じさせる。
 その武人は言う。『自分を倒して欲しい。ただし、こちらも全力で行く』。
 傍から見れば『お前は何を言っているんだ』という言葉だが、それは彼……いや、彼ら術から生み出された式に課せられた制約の一つなのだ。
 どんな人格者が式として出てきても、従わざるをえない強制力の強い制約。故に、純粋に彼を倒せるだけの実力者がどうしても必要になってしまう。
 さらに武人は続ける。『拙者は武人としての力と、式としての能力を併せ持っている。言うなればこの史跡そのものが拙者といっても過言ではない』。
 例えるなら、それは人形劇。ふっと下に消えた人形が、突然違う場所から現れることができるように……史跡の中では、彼は自由自在に移動ができるし敵の気配を察知できる。
 要は史跡全体が術そのものであり、式はその端末であり一登場人物でしかないということなのだろう。救いは、登場人物が一人ずつしか現れないということか。
「ところで、その武人さんは信用できるの? 制約で嘘しか言えないなんてことないわよね?」
「多分大丈夫です。一番最初の調査で私が感じた、遺跡全体に張り巡らされた瘴気の流れと条件が合致します。それに、戦う者同士だからこそ分かるものってあるんですよ。……多分」
「あなた後衛職だものねー。殴り合いで分かり合うっていうのとはちょっと遠いわね」
 開拓者ギルドの職員、十七夜 亜理紗と西沢 一葉。一連の案件を請け負っており、サポーターも兼ねる。
 この術式の失敗理由が『頭が良すぎた』『言うことを聞かない式が多すぎた』というものである点もポイント。普通、いきなり『はい、あなた今日から私の式ね。言うことを聞くように』等と言われてはいそうですかと従える人間は少ない。
 いくつもの制約も、それを守らせても他の部分で拒否ができるというのでは意味が無い。
 謎の陰陽師関連の件で、最初からタネが割れているのは非常に珍しいケースである。
「兎に角、今出てきている武人さんを含め、五人の式を倒さないといけないわけです。新年早々気の悪い話ではありますが、術式を破壊するためには彼らの排除は必須です。無理に術を破壊しようとして、周辺を巻き込んでどっかーんは困りますから」
「やれやれ……共通してるのは、戦う相手も基本的に被害者っていうところだけね。質の悪いこと」
 時を越え、出会うはずのない勇者たちが出会ってしまった。そしてその先には、戦うという選択肢しかない。
 薙刀のような武器を持つ巨体の武人。その実力や如何に―――


■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213
22歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
守紗 刄久郎(ia9521
25歳・男・サ
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
レネネト(ib0260
14歳・女・吟
鹿角 結(ib3119
24歳・女・弓
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
神座早紀(ib6735
15歳・女・巫


■リプレイ本文

●時を越えて
 広大な湖を眼下にできる史跡。通常であればこの景色を肴に弁当などを洒落込むこともよくあることであり、旅行者賑わう観光地でもあった。
 しかし今、その史跡は死んだように静まり返っている。近づく者は殆どおらず、時が止まったかのようであった。
 静寂を掻き分け進む開拓者たち。史跡の入り口に辿り着くと、不意に緊張感が増してくる。
 前回聞いた話が真実であるならば、史跡に一歩踏み込んだ瞬間敵の腹の中に飛び込むようなものであり、いきなり後ろからバッサリという可能性もゼロではない。
 今現れている髭の武人はそんなことはしないはずだが、他の式もそうとは限らない。これは肝に命じておく必要があるだろう。
 やがて一行は、遺跡の中心……武舞台に辿り着く。そこには前回同様、髭の武人が静かに立っていた。
「……来たのは分かっていた。手間をかけさせて申し訳ないな」
 この史跡全体に術式が張り巡らされている以上、侵入がバレるのは一瞬だ。
 一行は戦闘準備を行いつつも、武人に近づいた。
 挨拶でもするのか? 否、これから戦うために、どうしても話しておかなければならないことがある。
「おっぱじめる前に一つ提案なんだがよォ。サポートオンリーで直接戦わない奴は潰さないって条件は飲んでもらえないかねェ」
「む……? つまり、援護に徹している人間は狙うなということか?」
「なンだ、横文字は苦手かい? 俺等はガチでヤリ合うのはイイんだが、ロリっ娘さん方はむさっ苦しい武人でもなけりゃ戦闘をするわけでも無ェ。そっちが化物戦闘力や瞬間移動とかトンデモ能力全開で来るんだからこれぐらいのハンデは受け入れて貰いてェモンだ」
 鷲尾天斗(ia0371)は狂気を孕んだ表情でド直球に言葉を紡ぐ。
 交渉をするならもう少し言い方はないものかと溜め息をつくメンバーもいる。
 しかし、武人は鷲尾の態度よりもその言葉自体に不快感を抱いたらしい。歪んだ眉が言葉以上に心情を語っていた。
「……断る。思う存分武を競い合えると思っていたが、拙者の見込み違いであったか」
「武人っていうのは俺みてーな悪人みたく女子供にも手を出すって言うんかい? 大したもんだねェ」
「その通りだ。戦場にあるかぎり、輸送兵であろうが工兵であろうが斬り捨てられても文句は言えぬ。戦いを幇助するのであれば女子供であろうと容赦はせん。それが我らの駆け抜けた戦場であり、味方を一人でも多く救う道となる。……もっとも、見ているだけで一斉の干渉をしないと言うのであれば話は別だが」
 視線を向けられたレネネト(ib0260)と神座早紀(ib6735)は、少し悩んでから首を横に振る。
 戦う。ここまで来て見ているだけなどできるわけがない。
 髭の武人は、悲しいような、安心したような、複雑な表情を見せる。
「では、私が提案したかった逃げの瞬間移動を自重していただきたいというのも無粋でしかないですね。申し訳ない」
「仮に拙者が納得しても、制約上手加減が出来ぬ。いざ戦いとなれば、そういった手心は一切加えられないのだ。だから猛者を頼んだ。この妖怪変化を倒せるだけの……な」
 長谷部 円秀(ib4529)は拳を構えながら呟く。
 望まずとも全力で戦わざるをえない武人。
 名乗りも、加減も、自害もできない。望まず人殺しを強いられる屈辱はどれほどのものだろうか。
「……もういいでしょう。武人を自負する貴方の最後の相手が、僕達であって良かったと……そう思っていただけるような戦いをしましょうか」
 遙かな時を越えた被害者。それを救うには、その武を乗り越えるしか無い。
 鹿角 結(ib3119)の凛とした視線が武人を射抜く時、その男は穏やかに微笑んだ。
 そしてその微笑みを鬼神の表情に切り替え……武器を構える。
「名乗りも上げられぬ我が身なれど……一番槍の誉れのみを誇りとし、この世と再び決別を願わん!」
「くっ……! そんなの、悲しすぎますよ……!」
 井伊 貴政(ia0213)が搾り出すようにうめいた一言は、激闘の波に飲まれて消えた―――

●激刃
 強いとは思っていた。強いと聞いてはいた。しかし、実際に死合ってみるとそんな評価は生温い。
 巨体に似合わぬスピードで肉薄し、そのスピードに似合わぬパワーで武器を振るう。
 井伊が全開で放った示現や柳生無明剣を同じくらいの腕力を以て武器で払いのけ、石突を使って襲い来る守紗 刄久郎(ia9521)を突き飛ばす。
 援護として放たれた鷲尾の魔槍砲の一撃を刃を返して迎撃。懐に入ろうと迫る長谷部を体ごと回転し柄で殴りかかる。回避こそしたものの、長谷部はその鋭さに戦慄を覚え進撃を止めた。
 技も、力も、速さも、どれをとってもこの場の開拓者も真っ青の領域。
 救いは、開拓者のような技を使わないこと。
 彼が生きた時代にはなかったのだろう。体一つの我を張って、地力のみを突き詰めたのがこの武人の強さ。
「どうした! こんなものではなかろう!」
「援護、始めますよ」
「は、はい! 皆様を、信じて……!」
 レネネトが奴隷戦士の葛藤を、神座が神楽舞「防」の詠唱に入る。
 術を見るのは初めてのようだが、それが戦闘行動であることは武人にも伝わった。攻撃されると分かっていてなお戦いに加わったその心意気に武を感じる。
 触れれば一刀両断にされそうな武人の薙刀に、長谷部が必死に食い下がる。
「懐に入り難くとも、ここまで接近すれば振るえないでしょう!」
「速い……! この動き、拳法か!」
 薙刀の内に入ることは難しい。しかし、それを振るい難いところまで接近することは可能である。
 次々と繰り出される拳や肘を、柄を使い器用に弾いていく武人。
 一対一ならそれでもいいかも知れないが、生憎これは一対八である。
「お相手願いましょうかッ!!」
「強い人とは死合ってみたいですから!」
「む……!」
 守紗と井伊が背後から迫る。長谷部も背を向けられるような相手ではない以上、普通ならこれは致命傷である。
 しかし……武人には式としての能力がある。人形劇の人形のように、史跡という舞台の中であれば自由自在に移動できる術があるのだ。
 武人の姿がまるで水に溶けるように掻き消えたかと思うと、次の瞬間には守紗と井伊の背後に出現していた。
「これが!?」
「冗談だろ!?」
 だが二人もさる者で、体を捻り致命傷だけは避ける。
 舞い散る血飛沫を気にもとめず、回復役である神座の元へと転がり込む。
「奴隷戦士の葛藤……重ねがけをさせて頂きます」
「またか……面妖な。これが当たり前の世の中か……」
 レネネトの歌で自らの動きが鈍くなることを自覚した武人。直接的な攻撃ではないが、達人同士の戦いでは僅差が命取りになる。それを嫌というほど知っている武人は、彼女を放置しなかった。
 溶けるように姿を消し、一瞬でレネネトの側面に回る……!
「させません!」
 直後、背筋に冷たいものを覚え再び瞬間移動する武人。先ほどまで自分がいたところを数本の矢が通過したところだった。
 見れば、鹿角が矢を放った体勢のままこちらを睨んでいる。
「一度にあれだけの矢を正確に……ぬっ!?」
「そこです!」
 ギィン、と甲高い金属音。レネネトの直衛に付いていた雪切・透夜(ib0135)の剣と武人の薙刀がぶつかり合う。
 その瞳には、確かな闘志と哀しみが潜んでいた。
「拙者を憐れむか。ならばその武を以て示してみせよ!」
「言われるまでもなく。加減して勝てる相手でもないでしょうし……ね!」
 大きく剣で薙ぎ払う雪切。相手の瞬間移動を考慮した攻撃である。
 防御は盾で対応できる。そういう意味合いで、雪切の戦闘スタイルは武人と相性は悪くない。
「こっちだッ! 相手を願うぜ!」
「おぉぉぉぉっ!」
「これは……!?」
 守紗や井伊の咆哮に、武人は戸惑いを覚える。
 挑発だとわかってはいるのだが、身体が勝手にそちらに向かわなければならないと主張する。
 武人であり式であり、アヤカシでもあるこの男は、人間の時は無視できたはずの咆哮という技に釣られることを無視できなくなっていたのだ。
 もちろん、抵抗は出来る。しかし、戦場でその一瞬の迷いは自分を殺す。
「ぬぅんっ!」
「くっ!?」
 眼前の雪切に一撃を加えた後、一瞬で守紗の背後に移動する武人。
「何度も同じ手を喰いますかって!」
 それを読んでいた守紗は、すぐさま背後に攻撃を仕掛ける。
 が、それは虚しく空を切った。
「へ……!?」
 守紗が呆然として呟くと、直後に神座の悲鳴が上がった。
 深々と刻まれた刃傷。脇腹から大量に出血している……!
「て……てンめェ!」
「言ったはずだ。戦場にあるかぎり容赦はせぬ」
 鷲尾の魔槍砲が届く瞬間に、またしても武人の姿が掻き消える。そして今度は井伊の真正面に!
「僕を真正面から倒せると!?」
「いいや。呼ばれたから来てやったまでのこと」
 一合も打ち合うこと無く、武人は再び移動。今度は鹿角の背後へ。
 しかしそれを読んでいた鹿角は、背後に向かって射撃。武人は肩口にそれを受けながらも鹿角への攻撃を断行する。
「ぐ……ぁ……!」
「次だ!」
 咆哮で呼ばれたら一度そちらに向かい、形だけ繕って次の目標へ。
 深追いをせずに一撃を入れ、すぐさま離脱してまた次の目標を攻撃する。
 雑兵なら一撃で倒せる攻撃であっても開拓者はそうはいかない。そして一人に固執すれば自分が不利になると、多勢に無勢をくぐり抜けてきた武人は本能で理解していた。
 そして、自らの式としての能力に慣れてきた。その効率の良い使い方も……!
「あ、あまり近づかないでください!」
「ンな場合かよ!」
「これが、古の武人の力……!」
「武力だけじゃない……状況判断が上手いんだ……!」
 なんとか回復した神座には鷲尾が、レネネトには雪切が付いているが、それでもダメージを防ぎ切れない。
 神出鬼没の動きを見せる武人に対し、開拓者たちは生傷を増やし防戦へと傾倒していく。
 今は神座の回復術でなんとか戦線が維持できるが、それも無尽蔵ではない。
 一方、武人の方も斬っても斬っても回復する開拓者たちを攻めきれないでいた。
「むぅ……面妖な。戦場にて一瞬で治癒ができるなど……」
「どっちが面妖ですか!」
 唯一、長谷部だけが武人と対等にやりあえる。個人技としての回避と命中が群を抜いているのだ。
 不意に繰り出される柄や石突の攻撃も注意しており、確実に回避する。
「ぬぅ……! 一人に構っている場合ではないというのに……!」
「ならこっちに来いやぁぁぁッ!」
 守紗の咆哮が上がり、仕方なしに移動する武人。するとその眼前に、鷲尾が構えた発射寸前の魔槍砲が……!
「ぅおぉぉらァァァッ!」
 轟音と共に砲撃がヒットする。咄嗟に左手で顔を庇ったが、ダメージは大きい。
 釣られたら一応移動してくるというルーチンの穴を突かれた。すぐにまた移動するつもりだったが、その前に攻撃をもらうのでは意味が無い。
 集団から距離を取ったら取ったで、鹿角の矢が飛び長谷部が接近してくる。
 同じ轍を踏む訳にはいかない。武人は咆哮を使われる前に再び瞬間移動し、二、三人薙ぎ払うつもりで武器を振るう。
「こんなのいかがですか!?」
 しかし、それは井伊によって弾かれる。よりにもよって、攻撃を打ち払うために示現を使用している!
 体勢を崩したところに雪切が走りこむ。その剣が繰り出されると確信した武人は武器を回し石突での迎撃を図る。
 が、雪切は剣でそれを受け止めなお足を止めない。薙刀の柄に剣を走らせ、突っ込んでくる。
 そこで武人は戸惑う。雪切は盾を構えてはいるが、それでどうしようというのか。
 盾で押してこちらの体勢を崩しにかかるか? しかし、瞬間移動してしまえばそれは無駄な努力だ。
 無理な体勢から剣で攻撃に転じても致命傷は狙えまい。
 一瞬で考えをめぐらし、頭では断じる。『脅威足り得ない』と。
 その反面、彼の身体は警鐘を鳴らし続けていた。『これは危機的状況である』と。
 故に、身体の反応に任せ身を捻った。左腕に盾が触れると、焼けるような痛みと共にあっさりと腕が吹き飛ぶ。
 それは地面に落ちることすら許されず、ざぁっと瘴気となって消えてしまう。
 盾にかけられた聖堂騎士剣の効果。盾なのに剣とはこれいかに。
「まともだけじゃ意味もない。変則的な物こそ面白いでしょう」
「ふ……まったく、面白い世の中になっているようだ。我らの武とは違う新しき武。しかし、その根底には同じ強い意志の力が根付いている。この身、長らえたくなる気持ちが湧いてきてしまうではないか!」 
 左腕を失いつつも、武人の闘志は衰えない。それどころか、ますます昂ぶっていく。
 人間の身体ではまともに動けなくなる傷でも、式にはまだまだやれる程度……!
「マッタク、厄介すぎる髭だなオイ!」
「武を示すのであれば……やはり、真正面からですよねぇ!」
 命をかけた真っ向勝負。手加減なしの一撃をお互いに放ち、一気にケリをつけるつもりだ。
 井伊の刀と武人の薙刀が交差する時……ついに、決着の時が訪れた―――

●二番手は
『良い戦いであった……。そなたたちに出会えたことを、感謝しよう……!』
 そう言い残して、武人は消えた。たった一人でありながら、開拓者たちに多大な傷を残して。
 一方、開拓者たちは余韻に浸る暇もない。こんな消耗しきった状態で、次に出てくる相手が話しの通じない相手だった場合命に関わる。
 いつでも逃げ出せる準備をしつつ、周囲の様子を伺う。
「……もし、私の推測が正しければ……」
 レネネトは不安にかられる。彼女が思い描く五人はいずれも髭の武人に匹敵する猛者だからだ。
 やがて、史跡の影からひょっこりと顔を出す人物が……!
「……おや? もしかして貴方がたが戦うべき相手なのでしょうか?」
 そう呟いたのは、メガネをかけた妙にひ弱そうな青年。少なくとも髭の武人と並び称されるような戦士には見えない。
 というか、服装が全く違う。彼が纏うのはジルベリア風の服であり、髪も茶色い。
「……す、少なくとも戦う方には見えませんが……」
 神座の呟きを肯定するように、男はメガネをくいっと上げるとキッパリ言い放つ。
「申し訳ないのですが、僕は作曲だけして静かに暮らしたいと思います。ここに立ち入らなければ誰にも危害は加えません。折角病気にならない体を手に入れたのですから、二度目の人生を謳歌したいものですね。……といっても、無理なのでしょうけど」
 とりあえず問答無用というような性格ではないらしい。
 開拓者たちは注意を払いつつも、髭の武人との戦いで傷を負った身体に鞭打って、その場を引き上げたのであった―――