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■オープニング本文 天儀の中心都市たる神楽の都。 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら――― 今日も今日とて人でごった返し、賑わいを見せる開拓者ギルド。 人生の機微、人の悲喜交交で溢れるこの場所では、思いもよらぬ出会いも珍しくない。 だから……この出会いも、そんな珍しくない出会の、はずだった。 「おぉ……! 亜理紗! やっぱり亜理紗じゃないかね!?」 「は、はい?」 ギルド職員、十七夜 亜理紗。今日も普通に業務をこなしていた彼女に話しかけたのは、腰の曲がった老婆であった。 野菜が詰められた大きな籠を背負っており、農家の人間が都会に野菜を販売しにきたという風に見える。 しかし、亜理紗に詰め寄り手を取るその様は、明らかに知人かそれ以上の関係のようだった。 「探したんじゃよ……何の音沙汰もなく行方不明になってしもうて、どれだけ心配したか。しかし記憶喪失になっておったとも聞いたしの……無理も無いか」 「えっ、ちょっ、あの、どなたで……」 「ワシのことも覚えておらんのじゃな。お前の育ての親、祖母。おばあちゃんじゃよ」 「え……え……!?」 記憶を失い、石鏡を放浪していたところを保護され、ギルドで働くようになっていた亜理紗。過去を探してあちこちを訪ね歩いたが、その手がかりさえ掴めず一年以上の時が過ぎた。 まさかこんな唐突に手がかりが、というより肉親(?)が名乗りでてくるなどとは夢にも思わなかったが……残念ながら彼女にはどうもピンとこない。 まぁ、言われてみれば懐かしいような、会ったことがあるような気がするか……? 「村のみんなも心配しておるよ。帰ってこんか?」 「い、いやその、そんな急に言われましても……」 「もう、どうしたの亜理紗。騒がしいわよ」 いつもと違う戸惑った感じの声を聞きつけ、先輩職員の西沢 一葉が暖簾を掻き分け奥から出てくる。 その姿を認め、亜理紗が安心したような表情をする。そして、亜理紗の祖母と名乗った老婆と一葉の視線が重なった瞬間だった。 「ッ!? 亜理紗、離れてッ!!」 ギルド中に響き渡るような絶叫が辺りを貫く。 喧騒に塗れるギルドがしんと静まり返ってしまうくらいに、一葉の声は切羽詰まっていた。 その静寂を破ったのは、亜理紗である。 「あ、あの……一葉さん、どうかしました?」 「え……あ……その……。み、みなさんすみません、お騒がせしました。私の勘違いだったみたいです」 我に返り、回りに謝罪する一葉。それでギルドはいつもの喧騒の中に還る。 しかし、一葉の心の中は違った。一瞬感じた、身体の奥底から凍りつくような悪寒。あれは決して勘違いなどではないはずだ。 キョンシーを操る道士としての仕事をしだした彼女だからこそ敏感に感じた死の気配。 もう霧散し感じられなくなってしまったが、一葉の道士としての勘がこの老婆には何かあると警鐘を鳴らしていた。 「ふむ……騒々しい先輩じゃのう。まぁよい、ワシも今すぐ帰ってこいなどとは言わんよ。じゃが試しに一度遊びに来るくらいは構うまい? もしかしたら記憶も戻るかも知れんしの」 「あ……は、はい。折角の手がかりですもんね。今度、お邪魔しに行きます」 「えっと……その、亜理紗?」 「はい?」 「…………ううん、なんでもない」 「変な一葉さん」 ほどなくして、亜理紗が帰郷(?)する日取りに合わせ、とある依頼がギルドに並んだ。 亜理紗のボディガードとして彼女を守る……というもの。依頼主は一葉であり、方法は問われていない。 失くした記憶。失った過去。それらを取り戻すことになるのかどうか……亜理紗の運命が、大きく動き出した――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
鹿角 結(ib3119)
24歳・女・弓
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
神座亜紀(ib6736)
12歳・女・魔
キルクル ジンジャー(ib9044)
10歳・男・騎 |
■リプレイ本文 ●旅は道連れ 人に歴史ありなのか。人が過ごした時間が歴史なのか。どちらにせよ、人生とは往々にして意外なところで意外なものが繋がっていることがある。 今回の件もそうだ。もし一葉が道士となる依頼が流れるなり失敗していた場合、一葉は老婆に違和を感じずスタート地点が異なった可能性が高い。(フラグ管理D−4 一葉が道士になっている) 故郷への道を気楽に歩いていた亜理紗には思いも及ぶまい。そしてそれに追いついたのは、見知った面々。 「亜理紗さんについて行く理由としては……亜理紗さんはおっちょこちょいなところありますから。道に迷ったら大変です」 「一葉さんが、おっちょこちょいの一人旅は気になるからと仰っていたので」 「ありがたいですけど酷いっ!?」 真亡・雫(ia0432)や雪切・透夜(ib0135)に限らず、亜理紗のことを心配して集まってくれた開拓者たちは個人的にも知り合いが多い。 彼らは大きな選択をした。それは『一葉が依頼を出し、亜理紗を護衛してくれと頼んだ』ということをしっかり本人に伝えたことである。(フラグ管理E−1 本人に伝えた) 亜理紗にも、それが一葉の親切心であり開拓者たちがそれに同調してくれた事はわかる。それはとても有難いことであると本人も温かい気持ちになったようだ。 「もし本当の家族なら、お前とお付き合いしている報告もしなきゃなァ」 「……うぇぇ!? わ、私達、お付き合いしてたんですかっ!?」 「オイィィッ!? ハァハァ依頼でこっ恥ずかしいこと言わしといてお前ェ!」 「いやその、嫌とかじゃなくて、その後他の人口説いてたじゃないですか!?」 「照れ隠しだよ照れ隠し!」 鷲尾天斗(ia0371)。おそらく亜理紗とは付き合いが一番古く、濃い人物。 お互い満更でもない感情を持っていたようだが、男女として付き合っているかと言われればNOだったはず。 「本人たちが幸せならいいと思うのですー」 キルクル ジンジャー(ib9044)が亜理紗に抱きつきながら屈託なく笑う。 こんなに想っていてもらえて嬉しい。言葉に出さないながら、亜理紗は感謝の気持を忘れない。 キルクルの手を引きながら、まだ見ぬ故郷へと仲間とともに向かう――― ●先行 亜理紗に開拓者たちが追いついたその頃、別働隊はすでに村に到着し遠巻きから調査を行なっていた。 それぞれやり方は違うが、思いは同じ。『亜理紗が無事であって欲しい』である。 一通りの調査を終えた先行班四人は、集まって情報交換に入った。 「んっとね、ここは結構前からある村みたい。特に大きな事件が起きたっていう記録もないし、目立った特産品もない。それこそ野菜を売って生活する農家の人が多いみたいだよ」 「付け加えるならば、少々封鎖的なところがあるくらいでしょうか。滅多に他所から婿や嫁は取らないし、他の村とのお付き合いも行商くらいだとの話です」 神座亜紀(ib6736)は石鏡の役所で、レネネト(ib0260)は道中の村や街道での聞き込みで得た情報を話す。 共通するのは、何十年も前から存在する村であり、目立った特色がないという点。 そして田舎の村にはありがちな、余所者が好きではないという雰囲気を持っている点だろうか。 「観察してみましたが、不審な点は特に。畑仕事をする男性女性、遊ぶ子供たち。狩りや採取に出かけた男性女性と、至って普通です」 「少し話しかけてみましたが、こちらも不審な点は見られません。最初はかなり不審がられましたが、亜理紗さんの名前を出したら『話は聞いているよ』と態度が軟化しましたね」 鹿角 結(ib3119)は弓術師であることもあって目が良い。遠目から村の構成について観察してみたり、生活様式におかしな点がないか調べたようだ。 長谷部 円秀(ib4529)は一通り調査した後、村人に直接声をかけてみたようだ。 結果は本人が話したとおり。こちらも目立って不審とは言い難い。 そもそも、老婆が怪しいと言っているのは一葉だけ。用心に越したことはないし依頼であるとはいえ、四人の中に一葉の取り越し苦労ではないかとの思いもよぎり始める。 少なくとも、『探っているこちらを探る』ような視線などは感じない。 と、そうこうしている内に時は過ぎ……視界の先に、亜理紗たちが歩いてくるのが目に入った――― ●帰郷? 結局、一人だけ帰ると言い出したレネネトを除く全員が村に入った。 とは言ってもレネネトは本当に帰るわけではなく、超越聴覚などを用いて村の外での調査を続行しているのだが。 残る七人と亜理紗は村人の案内の下、亜理紗の実家に辿り着く。 そこは至って普通の小さな農民の家。実は庄屋の娘でした、なんてことは無いようだ。 戸をノックし中に声をかけると、件の老婆がゆったりと出てきた。 「おぉ、おかえり亜理紗。よく来てくれたね」 「ど、どうもです。お招きに預かり光栄です」 「ふむ? お友達も一緒かい?」 老婆は亜理紗の後ろに控える面子を見て驚いていたようだが、すぐに表情を崩した。 「いらっしゃい。狭いところだけど上がっていっておくれ」 そう言って笑う老婆に違和感はない。じっと目を見つめても、特に背筋が寒くなったりするようなこともなく、弱々しい印象を受けこそすれ危険は感じない。 開拓者たちは拍子抜けしたように顔を見合わせた後、促されるままに敷居をまたいだ。 内部も外見に漏れず農家のそれで、土間から直に囲炉裏のある居間になっている。 後は便所らしき扉と、襖で仕切られた寝室らしき部屋と、押入れらしきものがあるだけ。農具は土間にまとめられて置いてあり、炊事の時にもさして邪魔になりそうにはない。 一行は囲炉裏で暖を取りながら辺りを警戒して見回してみるが、やはり不審な点はない。 「座布団もなくて悪いねぇ」 「いいえ、お構いなく。この規模の家にこの人数分の座布団が完備してあったら不自然ですよ」 「そう言ってもらえると助かるわい。何せ貧乏農家じゃからのう」 からからと笑う老婆は、相当この暮らしに慣れている。真亡の探り混じりの言葉にも全く動じない。 「しかし、亜理紗も隅に置けんのう。誰が本命なんじゃ?」 「べぶっ!?」 老婆は鷲尾、真亡、雪切、長谷部を見回し、あらやだというような仕草をする。 「申し訳ありませんが、私は仕事仲間程度でしょうか」 「僕は友人ですね。茶飲み友達……かな?」 「雫くんに同じです。たまに人物スケッチを手伝っていただいたりしています」 「お初にお目にかかります。自分は亜理紗さんとお付き合いをしている鷲尾天斗と申します」 「わ、鷲尾さんんんんんっ!」 「ホッホッホ! 照れんでもいいじゃないか。うんうん、ワシも若い頃は恋多き女じゃったよ」 長谷部、真亡、雪切についても亜理紗と関係があると勘ぐったらしい。 実に下世話であるが、実に庶民的でもある。 「あの、それよりちょっと聞きたいことがあるんだ。亜理紗さんのご両親ってどうしたのかな?」 雑談しにきたわけではないが、雑談から得られることもあろう、そう思い、神座は話を確信に向ける。 記憶喪失と過去。亜理紗本人も知りたいところではあるが、中々言い出せなかったのでちょうどいい。 「記憶喪失では覚えておらんのも無理はないか。亜理紗の両親は事故で他界しておるよ。亜理紗がまだ五、六歳の頃じゃったかのう」 「あ……ご、ごめんなさい、亜理紗さん」 「い、いえ……いずれ分かることですし。そうですか……お父さんとお母さんは……」 顔も覚えていない両親。会いたいとは思うが、他界しているのではそれも叶わない。 そういう可能性もあるとは思っていたが、いざ突きつけられるとショックではある。 「おー。おトイレー。押入れー!」 「ホッホッホ、元気な子じゃのう。転ぶでないぞ」 「キルクルさん! 申し訳ありません、騒々しくて。止めますか?」 「いやいや、構わんよ。子供は元気なのが一番じゃ」 子供という立場を利用して、堂々と家の構図や中身、隠し扉などを探るキルクル。それを見咎める様子もなく目を細めるばかりの老婆に鹿角が探りを入れるが、老婆は子供のすることだからとこれをスルー。探られて痛い腹は無いということか? 「では僕もお伺いしたいのですが、『亜理紗さんが記憶喪失になっていたとも聞いた』のは誰からで、何故それを知る人から話を聞いてもすぐに迎えに来なかったのですか?」 「うむ……ここは封鎖的なところがある村でのう。野菜を売るのにも神楽の都まで足を伸ばす者はおらんかったのじゃ。しかし、今年は野菜が豊作で周辺の村に売るだけでは捌ききれなくてなぁ。駄目にするのも勿体無いからと都まで行商に行った村の若い衆から、亜理紗という名の記憶喪失の娘が開拓者ギルドにいるらしいと聞いたんじゃよ」 「……聞いたのが最近で、それを確かめに自ら野菜を売るついでにギルドに行ってみた、と?」 「そうじゃよ。亜理紗はある日、『山菜を取りに行く』と行って出かけてからぷっつりと消息が途絶えてのう。村のみんなにも探してもらったが、結局見つからんかった。崖の上に摘まれた山菜が入った籠が転がっておったから、そこから川に落ちて流されたのではないかということじゃったが……」 「ん……」 鹿角は老婆の話を総合し、押し黙ってしまう。 不審な点がこれまた無い。滑落して川に落ちた衝撃で記憶を失くしたと考えれば妥当だし、知らない土地に流れ着き『目を覚ましたら知らない村にいた』という亜理紗の一番最初の言とも一致する。 老婆の受け答えには淀みが全くない。今まで本人さえ知らなかった事実が次々明らかになる。 「しかし、行方不明になり、捜索しても見つからなかったとはいえ、流されたと分かっているならもう少し探してみても良かったのでは? 遺体が見つからない以上、生きている可能性もあったわけですし」 「ん? その場合は帰れない事情があるんじゃろう。人相だけで探すのには限界があるし、記憶喪失になっておったとしたらワシのことも覚えておらんわけだしの」 「……? それはそうですが……」 なんだろう。ここで初めて一行の中に違和が生じる。 たった一人の肉親。たった一人の孫。それを思うにしては少し淡白な答えなような気がする。 死んでいないかもしれないという希望があるならもっと必死に探すものではないだろうか? 性格は人それぞれであるが、諦めが早過ぎはしないだろうか? まぁ、当時どれだけ老婆が嘆いたり悩んだりしたかは誰にもわからないわけだが。 「さて、ではそろそろ飯の支度をしようかのう。折角の帰郷じゃ、記憶が戻るくらい懐かしい味を堪能させてやるぞい。お友達も食べていっておくれ」 そう言いつつ老婆は立ち上がり、土間で夕飯の支度を開始する。予想外の大人数ではあるが、材料は足りているようだ。 怪しい動きがないか観察してみるも、そういう気配はない。というより、衆目に晒されているこの状況で毒などを混ぜる度胸があるなら大したものだ。 手際よく野菜や肉を捌いていく老婆。献立は猪鍋か、鹿鍋か。 やがて調理が終わり、囲炉裏に大きな鍋がかけられた。実に素朴で、いい匂いがする。 神座はその汁をおたまで掬い取り、軽く銀のメダルを浸してみるが特に変化はない。続いてキュアウォーターを使用してみるが、何の抵抗もなく真水に変わっただけだった。 「これこれ、折角作ったのに。食べ物を粗末にするのは感心せんよ」 「ごめんなさーい」 正確には粗末にしたわけではないが、一応謝る神座。 これで毒見も兼ねられた。食べても問題ないだろう。 口にしてみると、味噌の風味が効いていて非常に美味い。 一応おふくろの味ということになるのだろうが、亜理紗はやはり首をひねっている。 「口に合わんかね?」 「いえ、美味しいですよ。でも、なんていうか、食べたことがある気がしなくて……」 「おかしいのう。よく作ったしお前の好物だったはずなんじゃが」 この鍋に限らず、村も、家も、何もかも亜理紗には他人ごとにしか思えない。 記憶喪失とはいえ、実家に帰ってきたのだ。既視感のようなものがもっとあってもいいはずなのだが。 「ゆっくり思い出せばいい。時間はたっぷりとある。ほれ、少食とはいえ食わんと大きくなれんぞい」 「んぁ? 少食って……亜理紗は大の男顔負けの大食漢でしょうやァ」 「おや、そうなのかい? 行方不明になる前はむしろ少食だったはずなんじゃが……成長期かのう?」 そう、これだ。どうも先ほどから話に微妙なすれ違いがある。 『だったはず』『覚えがない』この流れが散見されるのが少し気にかかる。 勿論、二年あれば人は変わる。それこそ成長期というのも考えられなくはない。 老婆の言葉の端々からどこか他人ごとめいた気配がするのは何故なのか。それでも老婆が悪い人間には見えないのがなんとももどかしい。 結局、開拓者たちと亜理紗たちは老婆の家に一泊した。時間割りで見張りを立てたり、寝室と居間で男女に分かれたためそちらを気にしたりと休まったとは言いがたかったが、そのおかげか何事も無く朝を迎えた。 農家の朝は早いと早起きする老婆。そのまま朝ご飯の支度に入る辺り拍子抜けだ。 昼には村を探索したが、亜理紗の記憶に繋がるようなものはなく……やがて神楽の都へと帰ることとなる。 老婆はまたおいでと、無理に引き止めることもなく一行を見送ったのだった。 亜理紗を先に返し、開拓者たちは一人野宿をしたレネネトを迎えに行く。 「……あのお婆さん、やはり警戒したほうがいいかも知れません」 開口一番、レネネトはそう呟く。 「超越聴覚で皆さんの会話は聞いていました。あのお婆さんが外に薪を取りに行った時、こう呟いたんです。『ふむ……上手くいかないものじゃのう』と」 「ふみゅ? それは亜理紗おねーさんの記憶が戻らないからなのですー」 「そうでしょうか? その口調はなんだか呆れたような、憮然としたようなものでした。普通、孫の記憶が戻らないなら哀しみが先に立って当たり前だと思いますが」 「うーん、それはそうなんですけど……良い人だったよね?」 「僕もそう思う。ちょっと淡白なところもありますけど、悪い人じゃないと思いますよ」 キルクルはおろか、雪切や真亡まで老婆のフォローをする。純粋に感じたままのことを言っている三人だが、レネネトに言わせればその時点でおかしい。 「……みなさん、何かしらの影響を受けていませんか? 人の信頼を得やすくなるというか、印象が良くなる術のようなものはこの世に存在します」 完全な蚊帳の外にいたレネネトだけが老婆への不信感を強めている。 悪い人でないからと言って良い人とも限らない。どうやら、まだ先行きは不透明なようである――― |