【木乃華】魂
マスター名:西川一純
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/10/06 11:15



■オープニング本文

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 天儀の中心都市たる神楽の都。
 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。
 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら―――

 十七夜 亜理紗。開拓者ギルド職員であり、陰陽師でもある少女である。
 その人生は決して平坦なものではなく、記憶喪失で放浪しているところを開拓者ギルドに保護され現在に至り、現在の人格も他人に意図的に『書き換えられた』代物であることが判明した。
 だが、亜理紗は亜理紗である。今の亜理紗のことを案じ、慕い、友と呼んでくれる人々がいる。それを心の支えに、彼女は今日も生きていた。
 そこに現れたのは、同じように人格を書き換えられたという陰陽師の少女。強大な力を持ち、亜理紗を実験材料として手に入れるため天儀のあちこちで騒動を起こすと宣言したのだった。
 透明化する術を行使する木乃華に対し、亜理紗はそれを解除する術を作成した。
 イタチごっこといえるかもしれないが、それはしっかり功を奏した。もしそれを要請されていなければ、木乃華の術はもっと完成度が高く、大規模だったかもしれない。
「それはよかったけど……最後に現れた人たちは何なの? 木乃華の不調の原因は?」
「うーん……よく分かりません。ただ、不思議と懐かしい人達だったような気がします。術が完成し切る前に見切り発車で行使したから不調になったのか、術は完成していたけど扱いきれなかったのか……それも定かではありません」
 人妖と思われる存在を瞬時に四人も出現させた木乃華であったが、直後に体調を大きく崩した。
 しかも人妖を消さないと自前の術も使えなくなるようで、メリットよりデメリットのほうが酷そうであったという。
 人妖のモデルが何処の誰なのかは不明。造瘴志のように、居もしない捏造人物なのだろうか?
 それにしては亜理紗が『懐かしい感じがした』と言っているようだが。
「敵に回すと恐ろしい実力なのは厄介よね。オプションとかはどうなのかしら?」
「オプション?」
「武器とか、朋友とか?」
「いやいやいや。無理ですよ、四人出現させただけでもベテラン陰陽師が卒倒ものですよ」
「じゃあ本人だけ気にすればいいと。丁度お呼び出しもかかってるし、ね」
 そう言って、西沢 一葉は一通の文をひらひらさせる。
 なんでも朝方に一葉の家に投げ込まれたものらしい。安全のためということで、亜理紗は現在一葉の家に厄介になっている。
 それを承知の上で一葉の家に文を投げ込んだのだろうから、亜理紗の所在はバレバレということだろう。
 文の内容は単純明快。
『某月某日、某所まで来られたし』
 何を企んでいるのか全くわからないのが怖いが、例によって行くしかない。
「もしまた例の人妖たちを使役してくるとしたら、それはチャンスでもあるわよね。木乃華自身は無防備になるんだから」
「人妖たちを上手く突破できればそうでしょうね。ただ、なんというか……変ですよね」
「というと?」
「私も上手く言えないんですが……なんとなく、焦っているような気が」
「ふーん……? 私にはよく分からないけど」
「私も確証があるわけじゃないですけどね。気になるんです。『私も十七夜なのに、十七夜の力を引き出すのに……』とかいう台詞が」
 焦っているかもしれないと亜理紗は評したが、実際のところは分からない。
 例の術を完成させ、より強力な人妖を以て亜理紗を手に入れようとしているという可能性も否めない。
 十七夜の力。それが何を意味するのか、亜理紗たちは知る由もなかった―――


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
ヘラルディア(ia0397
18歳・女・巫
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
レネネト(ib0260
14歳・女・吟
无(ib1198
18歳・男・陰
鹿角 結(ib3119
24歳・女・弓
神座亜紀(ib6736
12歳・女・魔


■リプレイ本文

●木乃華ということ
「……見えました?」
「はい。なんともまぁ、予想しておくべきだったと言いますか」
 開拓者たちは遠目から指定場所を観察していたのだが、望遠鏡を所持している二人……雪切・透夜(ib0135)と无(ib1198)は、げんなりとした顔を合わせる。
 そこにはすでに若木乃華が来ており、目立つ真紅の服であるため望遠鏡がなくとも存在は見て取れる。問題は、木乃華の周辺にいる連中だ。
 総数八人の男女。それは以前木乃華が呼び出してみせた人妖であり、雪切が撃ち殺したはずの切れ目の男もいる。
 木乃華を護るように配置されており、やはり表情には精気がない。
「……なんでしょう、この胸がざわつくような感じは。強敵なのは分かりますが……」
「なんかちっこい少年忍者くんもいるね。木乃華は全然平気そうだけど、術、完成しちゃったのかな?」
 鹿角 結(ib3119)にしろ神座亜紀(ib6736)にしろ、感覚の何処かで人妖たちに感じ入るものがあるらしい。それはこの場に居る全員が同じなのだが、理由は不明。
「いいえ、違います。木乃華様の後ろの方を御覧くださいませ」
 雪切から望遠鏡を借りたヘラルディア(ia0397)は、ある物の存在を発見する。
 それは、檻。クマを捕獲するときに使うような鉄製の檻で、中には……
「もふらだァ? あんにゃろう、俺のアイディアパクるたァいい度胸だぜ」
 鷲尾天斗(ia0371)は无から望遠鏡を借りている。
 木乃華は人妖たちを召喚・使役するための練力をもふらに肩代わりさせているようだった。檻の中に詰め込まれ、窮屈そうにしているもふらたち。どこから連れてこられたのやら。
「……ちなみに、むこうもこちらのことに気付いているようですよ。『居るのはわかってるからさっさといらっしゃいな。聞いてるんでしょ』とのことです」
「懐かしい、か。僕も……全くの他人とは感じられなかった、かも。十七夜……木乃華の夢にでてきたという木乃伊……何者なのだろう」
 レネネト(ib0260)が超越聴覚で探りを入れていることは木乃華も先刻ご承知だ。
 何かしらの探知系の術か式を使ったのかもしれない。バレているなら堂々向かうしかあるまい。
 真亡・雫(ia0432)は、ふと老木乃華が言っていたことを思い出したようだ。
 夢のなかに出てきたという木乃伊。木乃華はそれに術を教わったとも。
 そうこうしているうちに両者の距離は徐々に近づき……やがて、声が届く範囲まで狭まった。
「ようこそ。パーティー会場へ。ごちそうがないのは申し訳ないけどね」
 余裕の表情を見せる木乃華。人妖召喚の術による不調は感じられない。
「質問タイム復活でいいですか?」
「どーぞ」
「前回の目的は十七夜の力の使い方のコツを得るためだったんですか?」
「ん……まぁそんなとこ」
「あなたが力を使いこなせない要因はなんだと思います?」
「そりゃ、私が本当は十七夜じゃないからでしょ。人格だけ十七夜木乃華だっていう中途半端な存在だから、本来は使えるべき力が思うように使えなかった。それだけの話しよ」
「結局、十七夜の力の完成が最終地点なので?」
「ちょっと違うわ。詳しくはヒミツ」
「最後に一つ。……歯がゆさはありますか? 十七夜となる前の意識は全くありませんか?」
「二つになってるじゃないのよ。どっちもないわ。十七夜木乃華の施術はそんなに甘くない」
 无の怒涛のような質問攻めにもさらっと答える若木乃華。
 木乃華も亜理紗も言っていた。『元の人格など残りはしない』と。
 忘れてしまったことさえ忘れてしまうのが人格の改竄。思い出す元が無いのだから思い出すわけがない。
 无の質問がもうないことを察すると、木乃華は手を上げて人妖たちに指示を出そうとする。
 しかしそれを神座が遮った。
「ねぇ、キミは何がしたいの!? こんな凄い術を使えてもまだ満足できないの!? ボクにはわからないよ……木乃華という人物が作ってきたものが、目指そうとしたものがわからない!」
「そりゃそうでしょうね。私自身がわからないもの」
「へ……?」
「どこまで行けば終わりなのか。どこまで到達すれば終われるのか。木乃華自信にもわからない。ただ言えることは、アヤカシに対抗できる手段を一つでも多く創りだすこと。それが私、木乃華の目指すところであり存在意義。そうすることで、やがて十七夜が姿を現すわ」
「十七夜が……現れる……?」
「……まさか!? 夢で見たという木乃伊のことでは……!?」
「いいのいいの、忘れて。こっちの私じゃやっぱりダメみたいだから……亜理紗、あなたをいただくわ」
「お断りします。私は私であり続けます。心配してくれる先輩と……大好きな人と……素敵な、友人のためにも!」
「…………」
「……え……?」
 最後の台詞は小さくて、レネネト以外には聞き取れなかった。しかし、聞こえたはずのレネネトでさえ我が耳を疑ってしまうような台詞だったのだ。
 木乃華は振り上げた手を振り下ろし、人妖たちを操る。
 八人の開拓者のような人妖たちが、容赦なく襲い掛かってくる……!
「アイヴィーバインド! レネネトさん、木乃華は何て!?」
「……『羨ましい』と」
「まぁ。でしたらご自分もそのように生きればよろしいのに」
「今更ッ!」
 叫ぶ木乃華に呼応し、人妖たちはもふらの練力を糧に戦闘を続ける。
 浅葱色にダンダラ模様の羽織の男。
 両目の色が違う儚げな少年。
 どこか雪切に似た雰囲気の切れ目の男。
 髪、目、鎧などが全て紅い女戦士。
 活発そうな少年忍者。
 今にも泣き出しそうな表情の女志士。
 銀色の髪の、女の子と見まごうような少年。
 紫色の髪をした妙齢の女性。
 どういう理屈や謂れで呼び出しているのかわからないが、その実力はどれも折り紙つきだ。
 その全てが格闘戦を得意としているらしく、木乃華の直衛に二人を残し突撃してくる!
「しっかしよォ、ムカツク面に戦い方だなァ、このサムライはよォ!」
「強い! でも僕達だって負けるわけには行かないんだ!」
「殺しても黄泉帰る……か。元を断たないと駄目みたいだね」
 前衛を貼る鷲尾、真亡、雪切たちは人妖たちに苦戦中。
 人妖たちは特別な武具を所持していないが、その腕前は三人とほぼ互角であり戦術も様々。
 しかも後衛を攻撃しようとするでもなく、前衛三人を先に潰すべく連携してくるのだ。
「どうしましょうね。もふら様たちを殺してしまえば人妖たちも消えるのでしょうけれど」
「そんなのダメー! もふら様たちには何の罪もないんだから!」
「同感です。僕達にできるのは、少しでも前衛の援護をすることでしょう」
「回復は私に任せていただければと思いますが……埒を明けたいですわね」
 木乃華を直接狙おうにも、護衛が二人いる上に他の六人を突破しなければならない。
 鹿角がダイレクトに木乃華を狙ったり、神座がアイシスケイラルを放ってみたりもしたが、銀色の髪の少年と忍者少年が防御に回ってしまった。
 戦術を切り替えた鹿角の正確無比な射撃だけが人妖たちを削っていく。どれだけ腕があろうが、互角の戦いをしている最中に正確な射撃を避けきれるものではないからだ。
 まぁ、直撃を避けているだけでも大したものなのだが。
 激戦の中、无は戦場を冷静に分析していた。
 魂喰を使うことで、一体ずつ確実に排除ができる。しかしまだあえて撃っていない。
 彼がヤバい術を使えるとわかれば人妖たちは必ず无を狙ってくる。できればもう少し状況を見たかった。
 その時、无に電流走る。
「……もふらに練力の代替は押し付けられても、コントロールをしている以上木乃華にもダメージがあるはず。そして、あの術はそれだけで済むとは思えません。鹿角さん!」
 无は戦場に散らばる黒い小石の存在を察知し、鹿角に狙撃を要請。
 それに応える鹿角と、絶対命中の術、アイシスケイラルで手伝う神座。
「止まっている的なら……」
 短銃を取り出し、レネネトもそれに参加。
 しまった、という顔をする木乃華。時すでに遅く、幾つかの黒い小石が破壊された。
 すると。木乃華が自分の胸を抑えて苦しみだす……!
「ぐぅっ! は、速く……そいつらを、殺りなさい……!」
 しかし、突如人妖たちの動きが鈍る。それは達人同士での死合いでは致命傷だ。
「魂入ってない人形で倒せると思ったかァ!? 阿呆ゥがァ!」
 近距離からの魔槍砲による砲撃で、羽織の男が吹き飛ぶ。
「太刀筋の速さなら、僕だって簡単にはッ!」
 白梅香を纏った秋水で、オッドアイの少年が袈裟懸けに倒れる。
「下らない……。僕と似た存在もあったが、在るべき筈の心が無い。だからこそ、あの通り。生憎と、殺された程度で足を止める心算などないんだよ」
 聖堂騎士剣による一撃で、切れ目の男は二度目の撃破となる。
 続けて无の魂喰で妙齢の女性が消滅し、神座のアイシスケイラルが泣きそうな女志士に直撃する。
「……泣かないでというのもおかしな話なのですが……どうか、安らかに」
 間髪入れずに放たれた鹿角の月涙に心臓を貫かれ、女志士が消滅する。
 残りは三体。やはり心を持たない存在では今一時の押しが足りないのだろう。
 苦しんだままの木乃華。ダメージを閃癒で治してしまうヘラルディアを睨みつけた。
「く……アンタさえいなければ……!」
「しかし私はここに居ます。結局、木乃華様は人妖を制御するので手一杯で他の術を使う余裕がなかった……そういうことなのでしょう?」
「なんだかよく知りませんが、あの黒い石を媒介に術式を安定させていたんでしょうね。それを无さんに看破され、破壊されたので元の木阿弥……と」
 木乃華の術が完璧で、リスクが無かったとしたらいかに開拓者たちでも勝算はなかった。何度も復活する互角の腕前の戦士たちなどどうにもなるわけがない。
 木乃華の性格上、事前に何かを仕掛けているのではという推測は当初からあった。それが罠のような派手なものでないにしろ、予め頭にあったからこそ発見できたと言える。
 木乃華は何を思った人妖を全て消し、ぺたんとその場に座り込む。
 その隙を逃さず、鷲尾が素早く近づき、銃を頭に突き付ける。
「無駄な事は止めろ」
「……そうだね……もう駄目だよ。やっぱり八人同時は無理があったなぁ……はは、身体がガタガタ……」
「……鷲尾さん……」
 自嘲気味に笑う木乃華。お得意の姿を消す術も、すでに亜理紗が対抗策を編み出している。
 真亡や无は第三の存在が介入してこないよう周辺を警戒中だ。龍を呼んでも撃ち落されて終了。
 完全に詰み状態になった木乃華と、それに銃を突きつけた鷲尾を亜理紗は複雑な表情で見る。
 再調整前の木乃華が鷲尾の故郷を滅ぼしたという。鷲尾にはその恨みを晴らすだけの理由も権利もある。
「亜理紗……お前、聞いたよなァ。『若木乃華を倒せるという状況になった時、どうします?』って。問の答えは、もちろん倒す。『十七夜 若木乃華』をな」
「鷲尾さん……?」
「こいつは『十七夜』じゃない。『十七夜』じゃなかったら『木乃華』でも無くなる。コイツはただ記憶を植え付けられた美少女。亜理紗、お前と同じにな」
「考えましたね。確かに、十七夜でないから人妖の術も不完全なわけですから筋が通ります」
「よせやい。そんな理屈っぽいもんじゃねェよ」
 ぽん、と手を打つレネネトに、鷲尾は呆れたように言い放ち……銃を下ろした。
「駄目です、鷲尾さん! 殺してあげてください! でないと……!」
「殺さなくちゃ止められないなんて、そんなのはリュミやシエル……セブンアームズで十分だ。亜理紗の様にお前も何時か笑わせてやる。だからもう名を殺してこんな事は止めるんだ」
 真摯で真っ直ぐな鷲尾の目。
 若木乃華はそれを真っ向から受け、殺せる状況なのにあえて殺さないと言った復讐者を見つめる。
 全面的に亜理紗が正しいと少女は思う。
 殺されなければ回復しまた暗躍するまで。木乃華はそう目で訴えた。
「……きみが生きてきた証は、それで良いんですか」
 悲しそうな瞳で真亡が問う。いや、実際悲しかったのだろう。
 散々苦労させられた相手とはいえ、こうなってしまってはただの少女に等しい。それが生きることを放棄し、生かされれば人を殺していくという思考を彼は理解できない。いや、したくもなかった。
「良いも悪いも。アタシは木乃華だもの。木乃華以外の生き方なんてできないわけ。そんな木乃華がこういう状況でどうするか……亜理紗、アンタにはわかるわよね?」
「ッ! やめてあげてください……鷲尾さんの精一杯の思い、受け止めてあげてください! あなたは人でなしですけど、子供を育てた母にもなったんですよ……!?」
「知らないわよ。少なくともアタシは恋もしてない」
「妙な真似は止めた方がいいよ。逃げられやしない」
「アハハ! やっぱ駄目ね! 逃げられない? そんなの承知の上よ! あたしを助ける? 生きろですって? ……ヴァーカ。『相手の思い通りにさせない』のが木乃華なのよ!」
 雪切の言葉を、温情をかけようとする開拓者たちをあざ笑う木乃華。そして奥歯で何かを噛み砕き……口から大量の血を吐いた。
「毒ぅ!? ヘラルディアさん、解毒は……!?」
「申し訳ありません。解術ならば活性化させたのですが……」
「そんなー!?」
「ざっ……けんな! 勝ち逃げ狙おうってか!? また俺に、無力感を味わわせるってかよ……!」
「ごふっ……! だ、から……亜理紗が言ったのに……お人好しめ。苦しめ……自分の甘さで、不本意な終わりに、なることを……!」
 自分は死んでもかまわない。人格を改竄された少女はそう語り、その言葉が嘘でないことを証明した。
 『木乃華』だから。人の思いも、自らの思いもかなぐり捨てて死を選んだのだった。
 真紅の陰陽師服は地面に倒れ伏し、二度と動き出すことはない。
「……鷲尾、さん……」
「……何も言うな。言わないでくれ……」
 それを言うのがやっとなのだと判断し、亜理紗は黙って鷲尾に寄り添っていた。
 気まずい空気の中、その場を後にする時……木乃華だったものを見下ろし、真亡はもう一度尋ねる。
「……きみが生きてきた証は、それで良いんですか……?」
「……良かったんじゃないかな。最後の最後まで、彼女は木乃華だったよ」
「でもさ、透夜くん……彼女は本当は、木乃華ですらないんだよ……?」
 因縁の決着としてはあまりに苦い勝利。もふらたちを無事に解放できたことだけが慰めか。
 元凶たる老木乃華との決着は……また別の話である―――