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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 宝珠が発する淡い光に照らされた空間。そこには玉座に座る一体の龍と、それに傅く五体の龍が在った。 どれくらい沈黙が続いただろうか? 不意に玉座の龍が口を開く。 「……ガルスキーよ。傷の具合はどうだ?」 「はっ。なんとか治癒いたしました。人間とは面妖な術を使うものです」 「瘴気を浄化する力……か。面白い対抗策を練るものだな」 ガルスキー……闘龍は、前回の戦いで腕一本を失った。しかし今の彼は五体満足な状態である。 聖堂騎士剣で吹き飛ばされた腕はなんとか回復したようだ。その巨体とは裏腹の素早い動きで開拓者を翻弄したのは記憶に新しい。 「しかし我らが龍王ゴッド・ラゴン。結局は逃げた開拓者の情報は得られず、逃げ帰ったに等しい状況。申し訳の立たぬことにございます」 「ホンマやで。お前もヒートガンも、『いざ尋常に』なんぞと言うとるから負けるんや」 「……開拓者にも言われた。勝つためにはなんでもするのが当たり前だとな」 「ほぉ、そら感心な奴もおるもんや。えぇか、勝負は勝ってナンボや。特に俺らの場合は命がかかっとる。ベストを尽くしたから、えぇ勝負やったから満足なんっちゅーのはクソな考え方やで」 龍の一人が得意げにそう語る。実際問題、開拓者を打ち損じたヒートガンやガルスキーには反論の余地はない。 彼らの使命は自分たちの矜持を貫くことではない。主であるゴッド・ラゴンに力を捧げ、自らも成長し仕えることだ。 「……よい、バルドリンガよ。それを容認しておるのは余だ」 「しかしですなぁ」 「各々好きなようにすればよいのだ。……無論、お前もな」 「っちゅーことは……!?」 「大言を吐いたからには、お前のやり方で戦ってみせよ。せめて逃げた開拓者の行方くらいは聴きだしてくれるのであろうな?」 「そらもちろんでっせ! ようやっと出番かいな……腕が鳴るでぇ!」 意気揚々と立ち上がり、バルドリンガは玉座の間を出て行こうとする。 しかし入口あたりで立ち止まると、くるりと振り返ってこう言った。 「ヒートガンにガルスキー。お前らも俺の大事な兄弟なんや。格好つけて死んだやなんて残された奴には関係ない。命は大事にしてぇな」 それだけ言うと足取りも軽く出ていってしまう。 その背中を見送った後、ゴッド・ラゴンはくっくと笑った。 「あやつめ。辛辣なようでいて心配だったらしいぞ?」 ゴッド・ラゴンにしてみれば、彼らの性格を細かく設定した覚えはない。にも関わらず、能力的にも性格的にもこうも個体差が出るのかと面白くて仕方がないようだ。 まぁ、お互いいがみ合って足を引っ張り合うより余程良い。このやりとりを見ているだけで、行動を起こした意味はあると思うのだった――― そんなやり取りが世界の何処かであった翌日、開拓者ギルドには緊急報告が入っていた。 とある村に龍が現れ、子供二人を人質に開拓者を呼べと騒ぎ立てているというものだ。 ヒートガンとガルスキーと言えば分かるやろと言っており、居座られている村人たちは人質のこともあり気が休まるわけがない。 しかもその龍はただの龍ではなく、全身白骨の龍……スカルドラゴン。アンデッド状態の龍らしいのだ。 バルドリンガと名乗り、子供たちは彼自身の肋骨の内側に捕らえられている。 強力な龍型中級アヤカシの噂は広まっており、その関係者で龍型となれば彼も中級アヤカシなのだろう。そういう予想もあって迂闊に手を出すことはできず、一も二もなく開拓者ギルドに連絡となったようだ。 ちなみに翼も骨組みだけで皮膜などは無いが、何故か飛ぶのに支障がないらしく自由に飛び回る。そのため、補助の役割として龍を連れて行くのもありとのことである。 龍王ゴッド・ラゴンと、それに従う五体の中級アヤカシ。今回は、今までの二体と毛色が違う――― |
■参加者一覧
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
狐火(ib0233)
22歳・男・シ
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
トカキ=ウィンメルト(ib0323)
20歳・男・シ
フィン・ファルスト(ib0979)
19歳・女・騎
華表(ib3045)
10歳・男・巫
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
刃香冶 竜胆(ib8245)
20歳・女・サ |
■リプレイ本文 ●交渉、そして 石鏡の国に存在するとある村。 特に目立った場所もなく、特産品もない。いわゆる何処にでもある村である。 しかしそこに、突然骨だけの龍が現れ子供を人質にとった。それが噂の中級アヤカシとなれば村人たちにどうこうできるわけがなく、開拓者の出番となったわけだ。 交渉は村の中央広場で行われることとなり、村人たちもその様子を固唾を飲んで見守っている。 「ふふん、来よったな。お前らが噂の開拓者どもか。聞いた人相まんまやで」 のどかな村に全く似つかわしくない、全身白骨のドラゴン。それでも全長5メートルはある巨体は脆さやひ弱さを全く感じさせない。 「……人相で見分けることができるのですか」 「犬や猫かて色んなツラのがおるやろ。なんや、俺らがそないなもんも区別できんアホや思っとったんかい」 思ってたとは敢えて口に出さない開拓者たちであったが、これは厄介な情報だ。 奴らが追っている逃げた開拓者はすでに死亡している。代理を立てる場合はよほど似た人物を用意せねばなるまい。 骨の龍の肋骨内部には、左右とも子供が囚われている。これは前情報通りだが、いささかおかしな点がある。 「単刀直入に聞きます。逃げた開拓者の居場所が望みですか」 「せやな。まずはそれが第一や。あとはお前らに落とし前つけてもらわんとなぁ」 「戦いに生きる開拓者1人の命と戦わぬ子供2人の命、どちらを取るかは決まっています……」 「ほぉ、そら殊勝なこっちゃ。俺も鬼やない、素直に吐くなら子供は無事に返したる」 「……言っとくけど、人質って取ってる間だけ有効だからね。無意味になった途端に酷い目に遭うくらい怒りを買うって覚えときなさい」 「ンなもん百も承知や。せやけど勝つためにはなんでもするんが当たり前やろ。なぁ?」 最前線で交渉に出ていた志藤 久遠(ia0597)とフィン・ファルスト(ib0979)。 開拓者側がこういう行動・言動に出ることは予想していたらしく、骨の龍は後ろで聞いていた長谷部 円秀(ib4529)へと声をかけた。 「……ヒールになりきれていないので滑稽ですよ?」 長谷部がため息混じりにそう言ったのも無理もない。囚われているはずの子供からこんな声が上がっているからだ。 「えー、バルドリンガのおじちゃん良い人だよー」 「もっとあそぼー!」 「こ、こらっ、黙っとれゆーたやろ! 雰囲気台なしやん!」 そう、子供たちは非常に楽しそうにキャッキャと騒いでいる。怖がっている節がまるで無い。およそ人質に取られているというような雰囲気はゼロだった。 「あー、ごほん」 「喉無いでしょう?」 「じゃかーしぃわボケぇ! どっちみちお前らが話さんと俺もこの子ら放さんからな!」 どうにも緊張感に欠けるが、状況が好転したわけではない。志藤は当初の予定通り、逃げた開拓者は人里離れた場所に落ち延びたと伝えた。 「ほぉ。そらどこやねん。嘘かホンマか見極めんと人質は返せんわなぁ」 「細かい場所は子供を1人でも離さねば教えられません。貴方ならそれくらいは分かるはずです」 「……チッ、お互いだんまりじゃ話にならんしな。えぇやろ、一人は開放したる」 「……その子があんたの命綱よ、余計な事したら生き地獄を見せてやる……!」 「ンなことせんわい。ここで俺がそんなんしたら交渉の信用度がゼロになるやろ」 「……あのバルドリンガというやつ、以前の二体と違って相当頭がいいですね。人質を傷つけるやり方は怒りを買ってその後の交渉をやり辛くすると知ってます」 「幼子を傷つけないという心意気は立派でありんすが……まったく、アヤカシ風情が感情論とは世も末でありんす」 怒れるフィンに対し、後方に控えるトカキ=ウィンメルト(ib0323)や刃香冶 竜胆(ib8245)は冷静にやりとりを観察している。 その間にも交渉は続き……バルドリンガの左の肋骨が器用に開き、子供が開放される。 バルドリンガの手に乗せられ、無事に大地へと降り立った子供。振り返って笑顔を向けた。 「またあそぼーね!」 「おう。機会があったらな」 黒い空間に真紅の光が灯るバルドリンガの目。それが嬉しそうに細まっていたことを開拓者たちは見逃さない。 無事に一人目を保護した開拓者たちは、長谷部に子供を連れて一旦下がって貰った。 「……ちょっと頭に血が登ってた。あんた、子供に乱暴する気はなかったんだ?」 「交渉の道具にしとるんは間違いないわい。ガキや一般人の負の感情なんざタカが知れとるさかいな」 フィンは感情の昂りを少し収めた。勿論、人質という卑劣な行為がそれで正当化されるわけではないが、やはりこいつもそれなりのルールを以て行動しているらしい。 狙うはあくまで開拓者。しかし人質交渉を行わなければ、彼は子供を捉えたまま開拓者たちをなぶり殺しにしただろう。そしてその状況は現在も続行中だ。 「さ、約束通り一人は開放したで。今度はそっちが―――」 その時である。突如空間に煌く一筋の光が走り、バルドリンガの右の肋骨を二本砕いた。 「あ……?」 バルドリンガが何事かと自分の胸部を見た時にはすでに子供の姿はそこになく、そばにいた志藤が子供を抱きかかえている……! 「なんやて!? こんなっ、クソ……! 何したんや!」 それは村人に変装し紛れていた狐火(ib0233)という開拓者。 秘術影舞で姿を消し、影という技で肋骨を砕き、夜という技で時間を停止、その間に子供を救出し志藤に預けまた姿を消したのである。 まさに救出劇のためにあるような技の連携で、見事に相手を出しぬいたのだ。 「皆様に護りを……!」 華表(ib3045)は相手の混乱が収まらないうちに神楽舞「護」をフィンと志藤に付与する。 子供を預け戻ってきた長谷部も合流し、開拓者は一気に攻撃に移る! 「は、謀りよったな!? 約束守らんとはどっちが悪モンやねん!」 「ぐ……ちょっと耳が痛いかも……」 「私も少し心が痛みますが……しかし!」 人質などという手を最初に使ったのはバルドリンガであり、非難される覚えはない。 勝つためにはなんでもするというのが彼のポリシーらしいが、約束を念頭に置いたり交渉をしようと思ったのがそもそもの間違いであると気づくべきだった。 「いっくぞぉ!」 「はぁぁぁっ!」 フィンと志藤、二人の槍が閃きバルドリンガの左足と腰骨に直撃する。 ヒートガンほど硬くなく、ガルスキーより遅い。しかし彼には彼なりに秀でているところがある。 「やっかましいわこんダボがッ!」 まるで堪えていない様子でフィンを殴り飛ばすバルドリンガ。なんとか防御したが、地面を転がり華表の近くまで転がされた。 耐久力が尋常でない。怒りと丈夫さに任せて、回復役である華表に向かい突撃する! 「破ぁッ!」 立ちふさがった長谷部の白梅香による一撃。それを左手を突き出し防御、そのままの速度で突っ込む。 「なにっ……!」 大質量が慣性をつけて突っ込んでくるのまでは防げない長谷部。そのまま引きずられるように地面をこすり、バルドリンガは華表を右手で掴み拘束する! 「あ……! ごほっ……!」 「ハッ、こいつが回復役やろ? ガルスキーから聞いとるっちゅーねん。まずこいつ殺らんと命がいくつあっても足らへんからなぁ!」 その握力で華表の骨を砕きにかかるバルドリンガ。続けて右手を振り上げ、華表の首を地面に叩きつけへし折るつもりだ! 「ダイレクトなお方ですね。ですが、すでに対策は打ちました」 「あん……? って、あれぇ!?」 トカキが意味深な発言をすると、バルドリンガの右手首から先が無くなっており、華表は長谷部に救出されたところだった。 奔刃術で移動と同時に攻撃、暗華装で得物を隠し、影縫で気付かれないように攻撃する。トカキもまた救出や奇襲に特化した技の構成であったのが幸いした。 「なんやこいつら、瘴気の浄化だけやのうて他にもけったいな術を使いよるで!?」 「これがあんたたちアヤカシに対抗するための力だぁっ!」 「これで、終わらせます!」 長谷部に左手、トカキに右手を破壊されたバルドリンガにフィンと志藤の攻撃を防ぐ手立てはない。 フィンの突き上げるような一撃が頭蓋骨を穿ち、志藤の真っ直ぐな一撃が腰骨を砕く! 手応えあり。その証拠に目に灯っていた真紅の光が消えている……そう思った時だ。 「なっ……」 「えっ……」 二人はバルドリンガの『両手』によって拘束され、お互いの頭部をぶつけられる。 血が吹き出し、二人の女性の顔が文字通り血塗れになってしまう……! 「無駄無駄無駄無駄ァ! 俺の名は骸龍バルドリンガ! この程度のダメージなんぞどうっちゅーことはないんや!」 「ご丁寧にどう……もッ!」 「随分と健康な骨でありんす」 刃香冶がいつの間にか背後に回り、霊剣で背骨を叩きつけ隙を作る。間髪入れずに長谷部の絶破昇竜脚が唸りを上げ、ボキリという大音響とともにバルドリンガの肘を破壊、志藤を救い出した。 時をほぼ同じくしてどこからともなく灰色の光球が飛来しバルドリンガの右手に直撃、消滅させてフィンを救う。 「この先、同じようなことが繰り返されても困りますから。ここで散らせて彼のやり方に対する報いを龍たちに教えてさしあげましょう」 事の情勢を見定めていたジークリンデ(ib0258)が姿を表し、正式に参戦する。灰色の光球は彼女の仕業だ。 彼女は凄まじい魔力の大魔術師だが、その分子供を巻き込みかねない。 勿論そうしない手段はいくつもあるが、まずは交渉を見守るというスタンスであった。 「……二人目のガキを取り返したんはお前や無いな。もう一人くらい隠れとるやろ」 「さぁ? 一人と言わず二人三人と隠れているやも知れませんね」 バルドリンガが人質をとった理由の一つにジークリンデの存在がある。 尋常でない耐久力を誇るバルドリンガであっても彼女の魔術は憂慮すべき問題だった。彼女がいなかったとしても、大火力・広範囲の魔術というのはどうにか避けたい。 「ふん、俺は痛みを感じんアンデッドドラゴンや。しかも再生能力もあるんやで」 バルドリンガがそう言うと、砕かれ消滅したはずの両手の骨がみるみる元通りに復元していく。 瘴気を浄化したにも関わらず再生できるということは、よほど瘴気の貯蔵量が多いのか……あるいはどこからか常に供給しているのか。 ジークリンデとバルドリンガのやりとりの最中、志藤とフィンは長谷部とトカキに連れられ華表に治療してもらう。 こちらに華表がいるように、敵にも再生能力がある。できれば我慢比べは避けたいが……。 「ほんなら空中戦で行かせてもらおか。ちょろちょろしとる連中もこれなら手ぇ出しづらいやろ!」 そう言ったバルドリンガの身体がふわりと浮き上がり、空中へと舞い上がる。 確かにこれでは遠距離攻撃を持つメンバー以外は攻撃しづらく、連携が取れない。 「あら、よろしいんですの?」 嫋やかに微笑んだジークリンデが魔術の詠唱をすると、その頭上に火炎弾が発生する。 紅蓮の火球が発射され、バルドリンガに直撃し大爆発を起こし火花が美しく周囲に散らばった。 攻撃されづらいということは空中では孤立しているということでもあるのだ。 黒焦げになりバラバラと地面に落ちる骨、骨、骨。それらはすぐに瘴気となって消えるが、空中にはまだバルドリンガが健在である。その身体がみるみる再生され、焦げが白く戻っていく。 「その魔術……あと何発撃てる? 言うとくけど、後100発は撃たんと俺は倒せんよ」 「……試してみますか?」 「ハッ、大人しそうなツラしてえぇ度胸や、気に入った。あんさん、俺の嫁にならん?」 「謹んでお断り致します。種族の差を越える自信がありませんわ」 「そら残念! ほんなら俺からもプレゼントや!」 ジークリンデに向かって、紫色のブレスが放たれる。どこから生成して吐き出しているのかはしらないが、紫の奔流が彼女を飲み込む。 火炎の類ではない。それが収まった時、ジークリンデは青ざめて地面に膝をつく。 「……麻痺性の、毒霧……!」 「解毒せんとそのうち死ぬで。このブレスをバラ撒かれとうなかったら逃げた開拓者の行方を吐いてもらおか。でないと村人に大量の死人が出ることになるけど……えぇか?」 いいわけがない。いよいよ形振り構わない行動に出た骸龍に対し、開拓者は歯噛みするしかない。 彼は彼で手ぶらで帰れないという事情がある。それは、楽しく遊び慕ってくれた子供たちを巻き添えにしてでも優先される事柄なのだ。 一同は顔を見合わせ、アイコンタクトだけで答えを決める。 「……死んだでありんす。ぬしらのことを世間に伝えてお亡くなりになったでありんすよ。ヒートガンというのに貰った傷が致命傷だったのでありんしょう」 「……ホンマか?」 「嘘を言っても何にもなりんせん。それどころか、嘘が発覚すれば無関係の人間を血祭りにあげるでありんしょう。小生としてもそれは寝覚めが悪くなりんすので」 心なしか憮然とした表情で空を見上げる刃香冶。その顔を見つめる真紅の光。やがてバルドリンガは息を吐き、肩をすくめた。 「OK、信じるわ。その方が俺も楽やさかい。……あーあ、俺もヒートガンたちのこと甘いとか言えんわなぁ」 「言っとくけど、闘龍の腕を落としたのはあたしだから! 狙うならあたしだけにしてよね!」 「……そうかい。俺もそうできるよう願うわ」 悔しそうなフィンと、笑顔で手を振る子供たちの顔を見比べ……バルドリンガはその場から飛び去った。 追撃をかけても藪蛇になるだけと判断した一行は、それを黙って見送る。 「……やれやれ。人質は無事に取り返しましたが、逃げられましたか。残念です」 ややあって、村人に変装し紛れていた狐火が姿を現す。今日一番大事な仕事をした人物である。 「はぁ、嫌ですねぇ……面倒臭い。奴の弱点などは見つかりました?」 「いいえ、致命な骨があるのではと観察していましたが、それらしいものは特に。難しい相手です」 トカキや狐火のおかげで、人質救出という目的は達成した。しかし、バルドリンガに逃げた開拓者の死亡が知られたことで事態はまた変化するのだろう。 龍王ゴッド・ラゴンに仕える五体の龍。まだ見ぬ龍が、まだ二体――― |