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■オープニング本文 前回のリプレイを見る そこは闇で満たされていた。漆黒の闇が全てを包み、一切の光はそこには無い。 その中で、大いなる龍は思考する。部下たちのこと……そしてこれからのことを。 中級アヤカシと分類される、強大な力を持った龍のアヤカシたち。しかし彼らは尽く苦戦を強いられ、撤退の憂き目に遭っている。 龍王と名乗るゴッド・ラゴンは、それ自体を悪とは思わない。勝負は時の運であり、装龍ヒートガンが押し負けた時点で今を生きる開拓者たちの手強さは認めざるをえない。 そもそも一対多数だ。多勢に無勢という言葉はよくぞ作られたと思う。 自由にさせてやりたいのは山々だが、いっそ再調整も視野に入れねばならない。アヤカシの本分は人間を殺し、恐怖させ、負の感情を我が物とし力を蓄えていくことだ。そのためには非情にならねばなるまい。 ……よく言う。こうやって悩んでいる自分自身も部下たちのことを言えないくらい人間臭いではないか。 大いなる龍は自嘲しつつため息を吐く。すると、不意に部屋に備え付けられていた照明用の宝珠が淡い光を放ち始めた。 「……インサートか。何用だ?」 「我がマジェスティラゴン。お悩みのご様子でしたのでお見舞いに」 「お前は五体の中でも最も知恵が回る。言わずとも分かろう」 「ウィ。私たちの性格についてと、人間たちへの手出しを中止するか否か……といったところでしょうか」 杖を手にした龍は、傅きながら主を見上げた。 法龍と異名を取るその龍は、他の四体と違い知力がずば抜けている。それはゴッド・ラゴンも認めるところだ。 主の悩みをズバリ言い当てたインサートに対し、ゴッド・ラゴンはため息を吐く。 「そのとおりだ。実際にお前たちと開拓者を戦わせてみて、実力は確かだが性格に難有りと思わざるをえない。特にバルドリンガには呆れた。あの外見で一番友好的とは頭が痛いわ」 「別に庇うつもりはありませんが、彼は忠実です。もっとも、マジェスティは人間臭さが私達の命取りになるのを憂いていらっしゃるのでしょうが」 「それよ。あの甘さは危険だ。たまたまそういう人間に出会っていないだけで、それに付け込まれることもあろう」 「そして、そうやって私たちのことを心配してくださる御自分についてもお悩みと。難しいですね。今ならばまた眠るように時を待ち、徐々に力を蓄える方針に戻ることも可能ですし」 ゴッド・ラゴンはインサートの察しの良さを気に入っている。直接的な戦闘能力は他の者に劣るが、それを補って余りある知略と戦略を兼ね備えるのが彼だった。 「……一つ、お伺いしてもよろしいですか?」 「許す。申してみよ」 「何故我らを纏めてお出しにならないのです? 戦力の逐次投入は愚策です」 「はっきり言うてくれる。……それには理由がある。お前たちは『そうできている』のだ」 ゴッド・ラゴンが語るには、インサートを始めとする面々は普通のアヤカシと少し違う。 中級アヤカシという分類においても随分と強いのは、下級からの叩き上げというだけではなく、瘴気を集めやすい体質という点が大きいらしい。 普段会話するためにこの謁見の間に集まるくらいは問題ないが、全力での戦闘となると仲間の瘴気をも吸収し合おうとしお互いに支障を生じさせてしまうのだという。故に、彼らは同じ戦場に並び立てない。 それは勿論他のアヤカシにも及ぶため、低級なアヤカシならば気が付かないうちに吸収してしまっているかも知れない。彼らとの戦闘中に他のアヤカシの邪魔が入らないのはそういう理由からだ。 「オーララ。私達にそんな秘密が」 「他の四龍には言うでないぞ。余は勿論、それなりの力を持つアヤカシには影響はないが、少なからず動揺するであろう」 「ジュヴォワ。御命令とあらば」 開拓者を狙って五龍が動くようになり、負の力は加速度的に得られるようになった。しかし、五龍が撃破されてしまうリスクも大幅に増してしまった。 彼らはそう簡単に創りだしたり発生したりできるものではない。一体でも失えば大きな損失になる。 往くか戻るか。どちらの方針を取るべきか……それは大いなる龍にも判断しかねるものである。 「我がマジェスティラゴン。とりあえずと言っては難ですが、私にも出撃をお許し願えないでしょうか。未だ出撃していないのは私だけ……私の働きを見て判断していただければと。シルブプレ」 「ふむ……確かに不公平ではあるか。お前のことだ、心配はしていないが……敵を侮るなよ」 「ウィ。劣る力は知恵と勇気で補います。それでは、ボンボヤージュ」 そうして、法龍は杖を突きつつゆったりとした足取りで謁見の間を出ていった。 宝珠の光が消え、再び闇に飲まれたそこで、ゴッド・ラゴンは独りごちた。 「……知恵と勇気で……な。人間に情をかけるタイプではないが、あやつにも難ありか―――」 数日後、開拓者ギルドに奇妙な手紙が届いた。そこには御丁寧に『法龍インサート』と名まで記してある。 体長5メートルを越える龍がこんな細かい字を書けるとは到底思えないので、人間を脅して代筆させたものと考えるのが妥当だろう。 その内容はこうである。 『サバ、開拓者の皆さん。我らがマジェスティ、龍王ゴッド・ラゴンの配下……と言えばお分かりになるでしょうか。 この度、皆さんとゲームをしたく思います。ルールは簡単、指定した場所に来ていただき、私と戦うだけ。簡単でしょう? この手紙を読んでお分かりかと思いますが、こちらには人間の人質が居ます。それを盾にする気はありませんが、呼び出しに応じなければ命の保証はしかねますので悪しからず。 ちなみに、私は魔法戦に特化した龍です。作戦は綿密に。オルヴォワール』 これを受けて、開拓者ギルドはすぐに依頼を用意する。アヤカシ研究家からは、相手が相当知恵の回る個体であり、罠の可能性が大であるという意見が多く出た。 だからといってスルーするわけにも行かない。頭がいいということは、稚拙なハッタリだけでこんな挑戦状は送ってこないだろう。 往くか戻るか。ゴッド・ラゴンの今後の方針を決めるであろう一戦。 龍は再び闇に紛れるか……それとも――― |
■参加者一覧
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
不破 颯(ib0495)
25歳・男・弓
フィン・ファルスト(ib0979)
19歳・女・騎
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
刃香冶 竜胆(ib8245)
20歳・女・サ |
■リプレイ本文 ●頭脳戦 「サバ、開拓者の皆さん。お招きを受けていただき光栄です」 指定された場所に開拓者がやってくると、そこには紫色の鱗を持ち、大きな杖を手にした龍が立っていた。 しかも御丁寧にローブのようなものを羽織っており、その姿は正に魔法使いか法術士といった体。木々のまばらなこの森では、遠くからでもよく目立つ。 「来てやったわよ。さぁ、人質を解放しなさい! どこにいるの!?」 フィン・ファルスト(ib0979)は朋友の龍を少し離れたところに待機させながらも真正面からインサートと対峙した。 彼女と同じく真正面から向かったのは合計で3人。そもそもの参加人数が少ない上、班分けしているのでかなり心許ないが、それも作戦の内である。 「おや? 私はあなた方が来れば人質を解放すると書かせた覚えはありませんが」 「む……しかし、盾にする気はないと書いてあったのはどう説明しますか」 「ええ、盾になどしませんよ。ですから連れてきていないのではありませんか。人質は言わばゲームの景品。私に勝ったら居場所を教えますので取りに行けば良いでしょう」 汚い。汚いが上手い。志藤 久遠(ia0597)は緊張を隠しながらもそう思わずには居られなかった。 人質は有効な手段だが、人質を確保し続ける手間がかかるものである。インサートはこう言うことでこの場に人質を出さないことを正当化した。 そもそも、人質が本当にいるのかという疑問も払拭しきれない。その上インサートを問答無用で殺すという手段も取れなくなった。いるのであれば人質の居場所を吐かせなければならないからだ。 この二言三言のやりとりだけで、相手が相当のやり手であることを3人とも理解する。 「……遊戯と言いすものは勝利条件と敗北条件が明記されてこそ成り立つものと思いんすが」 特に会話をする気のない刃香冶 竜胆(ib8245)は、ぼそりと独りごちるだけ。 確かにあまりに一方的でゲームとしては公平さに欠ける。親と子というレベルではなく、基盤の部分で明らかにインサート側に有利すぎる。 逆に言えば、そこまでお膳立てしたことは評価してもいいかも知れない。 「ふむ……聞いていた通りお美しいマドモアゼルが3人も。しかし人数が随分と少ないようですが……そんな人数で大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ、問題ない! 懐にさえ飛び込めたら、あたし達の勝ちよ!」 「飛び込めれば、ね。今頃お仲間さんたちは酷い目に遭っていると思いますが」 『っ!?』 ニヤリと笑うインサート。気勢を高めていたフィンは勿論、志藤にも動揺が走る。いつもクールな刃香冶は眉を少し動かしただけだったが。 まだ作戦の内だ。相手がこちらの人数の少なさを不審に思い、陽動班の二人が本命と勘違いして注意を向けたら、本当の本命である正面組が強行突破する。何も問題はない。 ……問題ない、はず。 「危ない!」 「へっ?」 「くぅっ……!」 その頃、法龍の背後に回るべく囮として動いていたジークリンデ(ib0258)と不破 颯(ib0495)は、思わぬ事態に見舞われていた。 何かに気付いたジークリンデが不破を突き飛ばしたかと思うと、彼女の足元から吹雪が発生しその身を襲う。 強大な魔力を誇り、魔術に対する抵抗力も高い彼女であってもかなりのダメージになった。幸い、自力で治療もできるようだが。 「魔術のトラップだぁ……!? こんな場所にかよ!?」 「……私たちの行動は読まれていたということでしょうね。情報収集をして地形を把握し、背後から近づきやすいルートを通ることも。やってくれますわね」 確かに敵は囮であるジークリンデと不破に注意を払った。が、罠で足止めや遅延を狙われると困る。 合流が遅れれば正面組がヤバい。かと言って罠を無視して突き進めば囮組がヤバい。 術視を習得した人間がいれば大分違ったと思われるが、言っても詮無いことである。 「……ふむ、誰か引っかかったようですね。援軍が来るまで時間がかかると思いますよ」 「くっ! 賢しい……!」 「賢くていけませんか?」 歯噛みする志藤に対し、身長差のため上から最高のドヤ顔を決めるインサート。 短期決戦を挑むつもりか、そのまま杖を振り上げた。 「デトリア!」 使用されたのはララド=メ・デリタ。灰色の光球が生じ、志藤へと直進する! 「自動命中術! こ、こんな……!」 咄嗟に槍を掲げ、防御体勢を取る志藤。しかしインサートの魔力は高く、光球が触れた瞬間大爆発を起こした。 抵抗力のある者なら一瞬で灰になるとまではいかないが、それでもきつい上級魔術。これでは、志藤は……! 「所詮こんなものですか。次はどちらに御退場―――」 インサートは最後まで台詞を紡げなかった。爆煙を斬り裂き地を走る烈風。 彼が地面に仕掛けたトラップを二つばかり破壊し、彼の数十センチ横を通り過ぎる……! 「避けられた!? 流石に視界ゼロでは当たりませんか……!」 あちこちから出血しながらも志藤は地奔で攻撃を仕掛けていた。 苦心石灰を使える彼女は抵抗力が高めである。ダメージはかなりあるが、一撃で戦闘不能というわけではない。 「トレビアン。まさかあれを喰らって反撃してくるとは」 「お喋りの暇はありんせん」 続けて刃香冶が地断撃を放ち、同じく地面に設置された罠を幾つか破壊しつつインサートを襲う。 それを杖でガードするも、やはり他の龍と比べると直接戦闘能力は大分劣る。受けきれず左腕に傷を負った。 この機を逃す手はない。正面組3人は三方に分かれてインサートに肉薄する。 それに対し、ブリザーストームを放ち激激を試みるも、角度の問題でフィンだけ巻き込めない! 「悪いけど、討たせてもらうから!」 「ズィット!」 苦々しげに吐き捨てて地を蹴り、空へと舞い上がるインサート。 今までの経緯を聞き、開拓者は足による機動力に優れると分析していた彼は、魔術の罠で翻弄できると踏んでいた。しかし地断撃などでそれがいくつも破壊されるとは思っていなかったらしく、一旦逃げの姿勢を見せる。 その時、不思議な事が起こった! 羽ばたいていたインサートの両翼に大きさは違えど穴が空き、バランスを狂わせたのだ。 「モンデュー!?」 錐揉み回転をしながら木々をなぎ倒し、地面に叩きつけられるインサート。 勿論、龍の翼に自然と穴が空くわけはない。やったのは――― 「いよぅ、遅れてすまん。瑠璃呼ぶのに手間取ってさぁ」 「罠が仕掛けてあるとわかれば地上を進む義理はありませんもの」 駿龍に乗った不破とジークリンデ。それぞれ矢と魔術で、インサートの不意を突いたのだ。 インサートは隠密行動を取る連中が龍を使いはしないと考えていたのだが、罠を気にしつつ進むより一度戻って朋友を呼んだほうが速いとジークリンデが提案し、不破が応じた。 結果、多少合流に時間はかかったがグッドタイミングで現れることができたのだった。 「ぐ……まさかそんな手を打ってくるとは。どうやら見くびっていたようですね……!」 治療術を覚えていないのか、開拓者が追ってくる間もインサートの翼に穴は空いたまま。バルドリンガのように再生などはしない。 「そういやあんた、名前はなんていうんだい? お互い戦う時は名乗るもんだぜ。ああ、俺は不破颯なぁ?」 「貧乏そうな―――」 「そのネタは一度使ったろぉ!?」 「パルドン。手紙にも添えましたが、私は法龍インサートです」 「インサートさんね。さて、俺らが負けたらお前らが強いことの証明だが、逆に勝ってもあまり得がない。だからそっちもなにかくれないかい? あんたらの居場所とか、嬉しいねぇ」 「人質の無事返却では足りませんか?」 「おいおい、泥棒しておいてそれを返したから無罪放免とは行かないさぁ」 「セッサ。御尤もで。しかしそれは私に勝ってからにしていただきましょうか」 「この状況で勝てるつもりとは、知恵者とは思えん発言でありんす」 龍に乗っていた不破とジークリンデが先んじてインサートのところに行き、足止め。続いて刃香冶たち正面組が合流し取り囲む形となる。 翼をやられ、飛べてもスピードがでないであろうインサート。おそらく駿龍は振り切れない。 「確かに貴方も強いよ。でもせめて護衛役ぐらい付けとくべきだったね」 「……そうもいかない事情がありまして」 「その事情はあたしたちには関係ないっ!」 フィンは剣を手に正面から斬りかかっていく。迎撃すべく杖を振るおうとしたが、不破とジークリンデが射撃することでそれも叶わない。 しかし、なんとかフロストマインを設置することはできた。このままフィンが突っ込んでくればその餌食となる。 ……が。 「バックス!」 フィンがそう叫ぶと、後方から一匹の龍が高速移動で突っ込んでくるのが見て取れた。 そのままフィンを掴み、龍はスピードを緩めない。 空中を往くということは、フロストマインが全くの役立たずに成り下がったということ……! 「なんと……!」 「フィン・ファルストが極奥義……禍断ちぃっ!」 高速で飛ぶ朋友に自らを投げさせるという暴挙。お互いを信頼しているからこそできる荒業だった。 こんな力任せの策はインサートの範疇外。完全に理解の外だった。 故に対処が遅れる。冷静であれば手の打ちようもあったろうが、煌く白刃が紫色の鱗を斬り裂いたのは正に一瞬の出来事であった。 「セ……セボン、セシボン、トレビア〜ン……!」 ぐらりと揺れた巨体は、ズズンと重苦しい音を立て地面に倒れ伏し動かなくなった。 強大な魔力と知略を以って戦った法龍も、やはり単独では勝利から最も遠かったか。 しかし! 「まだですよ!」 「甘い」 倒れたまま不意に魔術を放とうとしたインサートだったが、すでに刃香冶が読んでいた。 死んでいないことは瘴気に返っていないことからも明らか。ならば死ぬまで追撃すべしと、一閃を放ち傷口を更に抉る! 「がっ……ぐっ……!」 「そろそろ、ゴッド・ラゴンとか言うアヤカシの配下を一匹なりとも十万億土の旅路に発たせんして、小生達の力も示さんくてはなりんせん。さぁ、人質の居場所を吐くでありんす」 「お、お見事でした……ゲームはあなた方の勝ちです。残念ながら最初から人質などいませんよ。無駄足でしたね」 「……それを聞ければ用無しでありんす。奪った命に精々詫びながら死ぬがよいでありんしょう」 目から脳に向かって剣を深く突き刺す。それで完全に動かなくなったインサートは、今度こそ瘴気となって消える。自他共に認める初勝利であった。 しかし、開拓者たちの表情は晴れやかとはいかなかった。 「……倒した……のでしょうか。呆気無いような気が致しますが……」 「うん……そうだね。強いは強かったけど、他の四龍に比べると、ね……」 「もし生きているのだとしても、また叩き伏せれば良いだけですわ」 兎にも角にも、初めて白黒ついたのは間違いない。 果たして、ゴッド・ラゴンの決断は――― ●決 玉座の間にて、ゴッド・ラゴンは静かに目を閉じていた。 彼の前には傅く配下の龍が四体。法龍インサートの姿は……無い。 「我らが龍王ゴッド・ラゴン! インサートがやられたというのは本当なのですか!?」 「あンのアホ、インテリぶっとるからやられたりするんや……!」 「……インサート、死んだ? もう会えないのか?」 「くっ……私が護衛についていれば……!」 思い思いの言葉でインサートの死を悼む龍たち。 ゴッド・ラゴンはゆっくりと目を開けると、その意を口にした。 「……やはり早すぎたようだ。お前たちは確かに強くなったが、まだまだ伸びる。それを待てずに事を起こした余の失策よ」 「ゴッド・ラゴン! それではまたお眠りになられるのですか!? インサートの仇も討てずに……!」 「余の決定に異を唱えるのか?」 「ッ……! い、いいえ……」 「……ならば各々寝所に戻り、再び眠りにつけ。良いな」 主の意志が固いと悟った四体は、悔しさを滲ませながら玉座の間を去っていった。 宝珠の光だけが闇を照らすそこで、彼は独りごちた。 「ふ……こうでもせんと退く理由にならん、か。損な役回りよな」 やがて宝珠の光が弱まっていき、闇と光の量が逆転していく。 完全に光が途切れる刹那……ひらりと布のようなものが舞ったような気がした。 「ではワシも眠るとするか。次に目が覚めた時、お前たちは上級アヤカシとなっていることであろう。……アプルス―――」 宝珠は完全に光を失い、玉座の間は闇に塗りつぶされた。 こうして、世間を騒がせた中級アヤカシの龍たちは闇から闇へと姿を消す。 時の彼方へ……人が自ら滅ぼしあう、そんな期待も胸に秘めて――― |