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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 数々の想いと戦いを重ね、時は現在に至る。 あの時、あの場所で、あの人達だから。そうやって人々の歴史は紡がれていく。 そして人生には必ず区切りがある。事件には終わりがある。それが、悠久の時を経てなお不変の真理――― 陰陽師と呼ばれる存在により創りだされたアヤカシ兵器の数々。それらを打ち倒し続け、開拓者たちはついに本人へと辿り着く。 しかし謎の陰陽師……十七夜 木乃華と名乗る老婆は巧妙に人に紛れ、一切の証拠を残しておらず、罪に問うのは難しかった。 ついにその状況を打破し、数々の悪行を重ねてきた存在であると社会的に認知させた開拓者たち。研究所に残されていた血痕が十七夜 木乃華のものであり、いよいよ最終決戦へと事態は動く。 突如、開拓者たちに自分を生かすか殺すかという選択を迫った木乃華。開拓者たちは『殺すつもりで挑むがなんとかして生かしたまま捕縛する』という方針を固めていた。 が、表面上『殺す』という言葉を使っただけにもかかわらず、木乃華はまた何かしらの怪しげな術を発動、強制的に開拓者たちに自分を殺害させたのだった。 「なるほど。予想のように木乃華が死ぬことでミイラが復活してしまったから、亜理紗さんが緊急的に時間を止める術を使用、皆さんに体勢を整えてもらおうと逃したわけですか」 「うん……あの子ったら、また無茶して……」 年始の開拓者ギルド。 お正月ムードの神楽の都にあって、ここも例外ではない。 まぁ、流石に職員が一人危険な状態にあるということで新年会などは延期になっているが。 一年三百六十五日、アヤカシが沸かない日はない。よって開拓者ギルドにも厳密な休みなどはないのだ。 そこで話をしているのは、カミーユ・ギンサという開拓者と職員の西沢 一葉である。 「ふーん。喋るミイラ、ですか。突拍子もなさすぎてにわかには信じがたいですわね」 「亜理紗が帰ってこないのが証拠よ。知り合いの石鏡の役人さんに頼んで、状況は監視してもらってるけど……やっぱり一週間かそこらで解けるっていうのはみんなを逃がすための方便だったのかしら」 「それもあるでしょうけれど、むしろ皆さんが行くまで解けないほうが良いですわ。でないと亜理紗さん、ミイラに殺されますわよ」 「分かってる。それにしても何者なのかしら、そのミイラ。どれほどの力を持ってるのかしら……」 「恐らく一筋縄では行かないでしょうね。木乃華さんが使っていた術だけでなく、別体系の術も多数使えるでしょうし……恐らく体術も鍛えてあるはず。アンデッドというところから、生気の吸収なども警戒したほうがよろしいですわ。掴まれるのは御法度かと推測します」 「……随分具体的な推測ね?」 「銀砂屋お抱えの情報屋さんたちは優秀ですもの♪」 何やら答えになっていないが、今の一葉にそれにツッコむ余裕はなかった。 「あと、人妖の召喚はやってこないと思います」 「どうして?」 「話を聞いていると、人妖たちは『木乃華さんだから、木乃華さんは可哀想だから』という理由で力を貸していたようです。十七夜というミイラには敵対こそすれ助太刀はしないでしょう。ならば呼ぶだけ自分を不利にしますから」 「若木乃華みたいに、自我を消して喚んできたら……?」 「それもないでしょう。若木乃華さんは術を完璧に扱えなかったから、下手だったからです。できるなら木乃華さんもやっていますわよ。その方が維持が楽ですもの。術が完璧だからこその弊害ですわね」 後々になって、一葉はこの時のカミーユがいつもと雰囲気が違うことに気付いたという。 当日は心に余裕がなかったので疑問を持たなかったが、カミーユはこんなにひねた笑い方をしない。 「くすくす……それにしても随分と執念深いこと。喚び出される前はどんな最後を迎えたのかしら」 「さぁ……知った顔が多いとかわけのわからないこと言ってたみたいだしね」 「とりあえず今度こそきっちり倒して、因縁を断ってしまいたいところですわね。アレがこの世界を闊歩するかと思うと夜も安心して眠れませんわ。まずは時間停止が解けると同時に亜理紗さんを救出して戦闘開始かしら」 「え、止まってる間にミイラを倒しちゃうっていうんじゃ駄目なの?」 「そんな便利なことできるわけないじゃありませんか。時間が停止しているということは、その状態から何も改変ができないということなんですの。いくら叩こうが斬ろうが傷一つ付きませんわよ」 「そっか……だから亜理紗だけを動かすとかもできないのね」 「そういうことですわ。……にしても、亜理紗さんは面白いですわね。いくら陣の補助があるにしても、『十七夜に連なる者の時間』だけを止める術を急遽編み出したんですから大したものです」 「多分、本人はミイラの時間だけを止めるつもりだったんだと思うけど……能力の限界ね」 「あら、ある意味それより高等技術ですわよ。くすくす……♪」 「……まぁいいわ。とりあえずこれが最後の依頼になることを祈るわよ。無事に亜理紗が帰ってきてくれることを祈るわよ……」 分かったようなことばかり言うカミーユに少しイラッとした一葉は、会話を切り上げて依頼書の作成に戻った。 折角の新年、長きにわたる因縁に決着を付け、一年の弾みとしたいところである――― |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
ヘラルディア(ia0397)
18歳・女・巫
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
无(ib1198)
18歳・男・陰
鹿角 結(ib3119)
24歳・女・弓
神座亜紀(ib6736)
12歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ●永遠の果て 廃坑に到着した一行は、取るものもとりあえず最奥を目指す。 亜理紗が陣の補助を得て発動した時間停止の術はいつ解けるか分からないため、その前になんとしても準備を整えたい。 邪魔をするものは何もなかったが、一行が亜理紗の下に駆けつけた時にはすでに異変は最終段階であった。 亜理紗とミイラの周辺の空間に無数のヒビが入っており、今にも砕けそうな印象だ。 背筋を駆け上がる悪寒。八人全員が悠長に準備をしている余裕はないと瞬時に判断し、最低限の事前策のため大急ぎで移動する。 それが完了するかしないか絶妙なタイミングで空間が砕けた……! 「一斉砲撃なのです」 レネネト(ib0260)の号令の下、開拓者たちはミイラに向かってありったけの火力を集中する。 遠距離攻撃ができない者も地を蹴りミイラを斬り捨てんと突撃するが、攻撃が直撃する直前、ミイラの姿がふっと掻き消えた! 魔槍砲の砲撃、エルファイヤー、短銃、火種、矢、黄泉より這い出る者。それらすべてが対象を失い、あらぬ場所に突き刺さり炸裂する。 「……やはり時間を止められることは認識していたようですね」 「当たり前だ。そして貴様らの行動などお見通しよ」 鹿角 結(ib3119)だけは持ち前の目の良さでミイラが移動した場所を追えていた。 どうやったのかは分からないが、取り囲まれ一斉攻撃をされた状態から全く別の場所に移動した。これも陣の力を利用しているのだろう。 「よう、亜理紗。正月は終わったけどなァ、旧暦の正月が残ってるぜ」 鷲尾天斗(ia0371)は肩越しに亜理紗へと言葉をかける。 「鷲尾さん……! 皆さん……!」 亜理紗にとっては一瞬であっても、実際はかなり日日が過ぎている。それは亜理紗も想定内だが、やはり助けに来てもらえたのは嬉しいものだ。 「わたくしたちも貴方様が一斉攻撃で素直に倒れてくださるとは思っておりませんでした」 「ですね。むしろ本当にそうなっていたら拍子抜けもいいところですから」 ヘラルディア(ia0397)と无(ib1198)の言うことは強がりではない。十分想定内の出来事だ。 それはミイラも承知しているのか、くっくと笑う。 「だろうな。私もお前たちと散々戦ってきた身だ……侮りなどない。この十七夜、容赦せん!」 拳を握り力説するミイラを視界に捉えつつ、真亡・雫(ia0432)は空洞にぶち撒けられた大量の血潮と肉片を見やった。 かつては人だった物。ミイラ復活のために自らを開拓者たちに無理矢理殺させた愚者。 しかし――― 「十七夜がこの研究の……全ての元凶なんだね。十七夜の復活がどうアヤカシを倒す術に繋がるかはわからない。このままではまた多くの血が流れる……」 「ふ……私にとって瘴気は水や空気に等しい。生きるために必須であり栄養分のようなものだ。アヤカシを吸収し、その発生源たる魔の森とやらをも吸収し、更なる高みへと昇るのだよ」 「それではアヤカシの脅威は拭えても、貴様という新たな災厄が出来上がるだけだろう!」 剣と盾を構え、雪切・透夜(ib0135)が吠える。 真亡の呟きに対するミイラの答えは、単純であり明快だった。だがそれ故に看過できない。 「それが何か? 少なくとも私は無差別なアヤカシよりはマシだと思うがね。何、ちょっと実験に付き合ってもらうだけさ……木乃華がしていたようにな」 かつて木乃華は自分の研究を『アヤカシを排除するため』と言っていた。確かに十七夜が瘴気を無尽蔵に吸収し魔の森や大アヤカシをも取り込むことができるのなら世界はアヤカシの脅威から救われるのかもしれない。 しかしそれでは十七夜を止められる者がいなくなる。寿命で死なない圧倒的な強者による独裁と恐怖が取って代わるだけなのだ。 「……一つだけ、確かなことがある……」 ゆっくりと……真亡が真っ白な仮面を被る。それは何かの決意であり、自らの表情を隠すものに他ならない……! 「……おまえは、僕を怒らせたよ」 「……そうだね。正義の為という綺麗事でもなければ、誰かの為という傲慢でもない。 僕自身の為に、一振りの殺意で終わらせるだけさ……!」 怒り。純粋にして御し難い感情の一つ。 真亡も雪切も心の底から怒っていた。爆ぜるような瞬間的なものではなく、自らの心をジリジリと焼くかのような湧き上がる怒りだ。 「ふはははは! 心地良い! 実に心地良いッ! そうだ、我らの戦いには怒りと憎しみだけあればいい! 私があの時味わった苦痛! 屈辱! 貴様らで晴らさせてもらうぞッ!」 十七夜が叫ぶと同時に何かの印を組んだ。 足元の陣は反応していないので時間系の何かではないと推測できるが、事はもっと単純だった。 十七夜が何かを挟みこむようにかざした両手の間に炎の玉が発生する。そうなれば次はもう……! 「そうら、ファイヤーボムだ!」 空洞内で炸裂し燃え広がる火球。自分もろとも空間内全てを巻き込んで焦がしていく……! 「く……治療を……!」 ダメージを回復するためヘラルディアが閃癒を発動する。 彼女はメンバー全員を射程内に収められる場所に位置しており、回復は容易だった。 しかし……! 「貴様が回復役か。ならば貴様から潰すのみ!」 足元の陣が一瞬発光したかと思うと、ヘラルディアの眼前に十七夜が現れた。 先ほどの一撃はダメージ狙いではなく、回復役を特定するため……! 「やらせないよっ!」 ヘラルディアに伸びる魔手を食い止めたのは、神座亜紀(ib6736)のアイヴィーバインドだった。 「ちぃっ! 貴様はいつも肝心なところで厄介なことを!」 「絶対許さないよ! お前を倒して、亜理紗さんを救って、今度こそ終らせるんだ!」 「ガキが!」 毒を吐く十七夜だったが、状況確認は忘れない。 アイヴィーバインドで縛られた一瞬の隙を突き、真亡、雪切、鷲尾の三人が切りかかってくる。 それをどこからともなく取り出した刀で応戦する。雪切の薙ぎ払う一撃を受け止めつつ勢いを利用し側転、鷲尾の突きを低い姿勢から打ち上げ無効化し、真亡の袈裟懸けに合わせ自らの刀を打ち下ろして軌道を変えた。 そして飛来する矢を紙一重で躱し、例の瞬間移動のようなもので離れつつ再びファイヤーボム! 流れるような動きで開拓者たちを翻弄し、再びダメージを与える。もっとも、ヘラルディアがすぐに回復してくれたが。 「自分の時間だけを何倍にも加速して速く動いてますね!?」 「羨ましいだろう。人間がやればあっという間に老いるぞ。やってみるか?」 寿命のないミイラだからこそできる荒業。原理は理解できても亜理紗には習得できないレベルの術だし、仮にできてもやりたくない。 だが、見せなければならない。人間の力を。意地を! 「この陣はすぐには破壊できない。でも、かき乱すくらいなら私にだって!」 「出来損ないが……加速を封じたところで!」 亜理紗に斬りかかろうとした十七夜を鷲尾の魔槍砲がカットする。 文字通り火花を散らす鋼鉄を挟んで、二人の視線がぶつかった。 「悪党同士なら理解できると思ったんだがなァ……やっぱ無理だったわァ。お前は悪党じゃなくて外道だもんな! 外道なんぞ理解もしたくないってかァ!」 「偽悪者が聞いたような口を! 外道もまた道の一つと知れ!」 「なら俺は俺の道を押し通すためにテメェを殺るだけだァ! さァ、お前の罪を……数えろ!」 「今更数えきれるかッ!」 ギィン、と甲高い音がして二人が離れる。 それと同時に十七夜はバラバラになっている木乃華の遺体めがけ黒い霧のようなものを投げつけた。 すると肉片が蠢きだし、元の人間の形になろうと集まっていく……! 「手駒を増やさせてもらう!」 「そうは問屋が卸しませんね」 无は懐から一枚の護符を取り出し、黒い霧に向かって投げ放つ。 すると護符がそれを根こそぎ吸収してその場にひらひらと舞い落ちた。 「なん……だと……!?」 「西沢一葉さんのキョンシー……アンデッドに対する知識。そして小野坂篤さんの人妖……練力や瘴気吸収のノウハウ。今まで私達が出会った方々の力も借りているんですよ。負けられませんねぇ」 「小癪な真似……をッ!」 飛来する矢を打ち払う十七夜。先程から鹿角が嫌なタイミングや方向から矢を放ってくるのが鬱陶しい。 そしてその後は決まって雪切や真亡が波状攻撃を仕掛けてくる。が、陰陽師にしか見えない格好のミイラがこの二人を相手に剣で遅れを取っていないのは驚異的だ。 「白梅香!」 「聖堂騎士剣!」 真亡と雪切は対アヤカシの技を発動し、白刃を閃かせた。 それに対し十七夜は、真亡の刀を刀で止め雪切の刀を素手で掴んで止める! 『なっ……!?』 「生憎私はアヤカシではないのでな!」 見れば奴の手は薄く発光しており、掌に練力らしきものを纏って刀を止めているらしかった。 真亡の刀を弾き、雪切の身体を刀もろとも引き寄せると同時に身をかがめる。狙いは雪切の足! 「貴様の生気をもらう!」 思いの外腕力があった十七夜。バランスを崩した雪切にその魔の手は躱せない。 ガッシリとミイラの手が雪切の足を掴んだ瞬間……! 「ギッ……!?」 弾かれるように十七夜が飛び退き、手を震わせていた。 その手は火傷でもしたかのように仄かに嫌な匂いを発し煙を立たせている。 「馬鹿な……これは、桃……か!? 何故貴様らがそれを知っている! 有り得ん!」 「カミーユさんが情報屋さんを使って調べてくれたんだよ! みんなが力を貸してくれてるんだもん!」 「カミーユだと!? まさかあの駄馬もこちらに……!? いや、そんなはずはない。アレにそんな技術はない! ということは、お得意の嫌がらせで一時的に精神だけを……チッ、どこまでも鬱陶しいやつよ!」 「何勝手に納得してるのさ! お前が木乃華お婆ちゃんにさせた事で沢山の人が悲しい思いをしたんだ! もう二度と復活出来ないよう、完全に消し去ってやるんだから!」 「若造の言うことかぁぁぁッ!」 神座の叫びが余程気に入らなかったのか……それとも何かに焦ったのか。十七夜は半ば無理矢理に陣を起動、かなり抑え気味だが倍速くらいの速さで神座に肉薄する。 その魔手に対し、神座は盾をかざしガード。しかし盾に触れた瞬間、十七夜は激痛に苛まれた。すぐに手を引き、バックステップしながらグラビティーキャノンという術を使用、盾ごと神座を吹き飛ばした。 「こ、こいつの盾にも桃の一部が……! 恐らく薄皮を盾の表面になめしたな……!」 ギリっと歯を噛み締めるミイラ。開拓者の準備は思った以上に万全だった。それこそ予想以上に。 本来有り得ないはずの知識と対抗策。この分では全員が身体のあちこちに桃関連の何かを仕込んでいることだろう。 こうなれば手段は選ばない。そう決意した十七夜の身体がふわりと少しだけ浮き上がる。 「何をするおつもりですかねぇ」 「その隙、逃しません!」 无の放った魂喰と紅焔桜がけの矢を、十七夜は避けも防ぎもしなかった。 ダメージを負ってなお、相手を殲滅することを優先する! 「クエイク!」 十七夜が叫ぶと同時に地面が激しく鳴動する。 立っているのもやっとな程の激震は、落盤が多いというこの廃坑では非常にヤバい! 「……亜理紗さん、私の術の補助はできますか?」 「え……?」 「折角リクエストにお答えして戻ってきてやったんだ、精々楽しめ! もっとも……貴様らに殺されるためではなく、貴様らを殺すためにだがなぁぁぁッ!」 まるで火の鳥のような炎を纏った十七夜が八人に次々と体当たりをしていく。 防御もままならず吹き飛ばされる開拓者たち。炎を纏っているせいか桃による反射ダメージも殆ど無い! 「そらそらそらそらぁぁぁッ!」 「ぐ……こ、これでは……!」 続けて空中からファイヤーボムの連打連打連打! ヘラルディアがその都度閃癒を使用するが、練力も永久ではない上に道具を使用する隙がない。 やがて地震と爆炎が収まった空洞には、地面に膝をつき肩で息をする開拓者たちとファイヤーボムの余波で自らも相当のダメージを負った十七夜の姿があった。 「ダメージが思ったより少ないだと……!?」 「て、天使の影絵踏み……本邦初公開の奥の手なのです……」 術者の抵抗力を味方全体にコピーする術。しかし、それは状態異常にしか効果がないはず。 「ごほっ、ごほっ……! う、上手くいきましたね……!」 そう、亜理紗がいつものトンデモ術で効果を少しだけ書き換え、術攻撃にも有効にした。このおかげで全員が高い抵抗力を得てダメージを抑えたのだ。 「だが、回復役の魔力は尽きた! 貴様らのダメージも軽くはない! それに対し私は自己再生が可能なのだ……勝負は見えたな!」 「そういう台詞は、僕達を倒してから……言うことです!」 痛む身体で矢を番える鹿角。しかしそれを予想していた十七夜は再び倍速機動で鹿角に斬りかかる! しかしッ! 「お前の野望は僕達が砕く! 今回も……そしてこれが最後になる!」 雪切が鹿角の前に滑りこみ盾でガード! それに対し、十七夜は忌々しげに吠え立てる。 「雪切刀也ぁぁぁッ!」 「気安く人の名前を……しかも間違えて呼ぶなぁぁぁッ!」 「がぁっ!?」 その時、十七夜は信じられないという表情で自らの胸板を見る。そこには深々と突き刺さった鹿角の矢! 「月涙は目標以外の物体を通り抜けるのです。勿論、眼前に居る味方の体も……です」 「おの……れぇ! マグナ、ブロー!」 地面を叩き炎を吹き上がらせて雪切と鹿角を吹き飛ばした十七夜。しかしその足取りはふらつき始めている! 「エルファイヤー!」 「魂喰!」 「重力の爆音!」 「ぐぉおぁぁぁッ!? 貴様ら……貴様らぁぁぁッ!」 そんな中、火傷や裂傷で血みどろになりながら、鷲尾と亜理紗が攻撃に移る。 「亜理紗……そろそろこの因果に決着をつけるぞ」 「はい……鷲尾さん」 「亜理紗、側に居てくれ。お前と一緒ならなんだって出来る!」 「はい! 私の最大の一撃……陰陽終光波ぁぁぁッ!」 「十七夜……人に仇なす忌まわしい怪物! 俺の全てを奪った運命! だが、テメェを打ち砕く者がここにいるぞ! 渇かず、飢えず、無に還れェ!」 亜理紗が放った黒と白の光線。アルデバランで連携する形の鷲尾のヒートバレット。 その直撃を受け、十七夜は吹き飛び今度こそ地面に倒れ伏す! 「お……のれ……! ま……だ……!」 自己再生能力をフル稼働させ立ち上がろうとする十七夜。しかしその眼前には、白い仮面……! 「これで……本当に―――」 「ぐ……冷凍様―――」 「終わりだッ!」 「申し訳ありません! うぉあぁぁぁぁぁぁッ!!!」 真亡が振り下ろした天をも裂かんばかりの一撃……天辰。 十七夜の絶叫が響き……そして、全てが終わった。 永い永い因縁の果て、ボロボロになりながらも……開拓者たちは、一連の物語に終止符を打ったのであった――― |