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■オープニング本文 天儀の中心都市たる神楽の都。 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら――― 「結婚式をします」 「はい? 誰のですか?」 「あなたのに決まってるでしょ」 「はいぃぃぃぃ!?」 ある日の開拓者ギルド。 職員の西沢 一葉は、後輩職員である十七夜 亜理紗に突拍子もない事を言い放った。 いや、実は突拍子もなくはない。亜理紗には結婚話があり、その日取りが詳しく決まっていないだけだったのだ。 だからと言って突然先輩から、しかも職場である開拓者ギルドの業務中に言われるとは思っていなかった。 「ちなみにその結婚式は羅字音としてお客さんをたくさん呼んで盛大にやるから」 「え、だってそんな、結婚式って近親者だけで厳かにやるものですよね!?」 「業務命令です。いいじゃないの、結婚式の代金って馬鹿にならないのよ。それをギルドが持ってくれるっていうんだから。きちんと食事やウェディングケーキも用意してくれるって」 「グ、グムー」 ちなみに羅字音とは、正式名称『神楽の皆さーん、開拓者羅字音ですよ〜!』という開拓者ギルドのPRイベントである。 過去三回行われ、人気が無げふんげふん亜理紗の結婚という美味しいイベントがあるということで、それに便乗し久しぶりに開催されることになったらしい。 知らない諸兄のために説明すると、神楽の都某所に人を集め、拡声採用のある宝珠を用い亜理紗と一葉の二人が参加者からもらったお便りを読みつつトークを繰り広げるというもの。 依頼の形式上、開拓者自身の出番はほぼ100%無い。好き嫌いは多分に分かれることだろう。 今回は結婚式ということで、来場者である一般人にもささやかながら食事が振舞われる。流石に引き出物は出ないようだが。 「それにほら、企画持ち込んだのあなたの旦那様でしょ」 「そ、そうでしたぁぁぁ! ……うぅ、分かりましたよ。やりますよぅ。憧れの結婚式で晒し者になるなんて……」 「それじゃコーナーの説明をするわね」 「ゲェーッ! コーナーがあるんですか!? 結婚式なのに!?」 「羅字音だもの、そりゃああるでしょ。まずは『知ったか乙』」 「えっと、私と一葉さんがいただいたお便りの内容について、実際に知ってても知らなくても知ってる体で話を進めるコーナーでしたね。一番恥ずかしい思いするやつじゃないですか!」 「次は『怖い怖い』。『何だかよく分からないけどトラウマになるような気がする言葉』を送ってもらうコーナーね。実際のトラウマじゃなくて、何故かトラウマになっていそうな言葉っていうのが味噌よ」 「詳しくは『かぐらじ!』を参照ですね」 「3つ目は『ちょっと待った!』のコーナー。結婚する亜理紗が思わず心揺らいでしまいそうな甘い言葉を送ってもらうみたいね」 「結婚式にやることじゃないでしょぉぉぉ!?」 「最後に『嫁ぐ貴女へ』。これは今回しか出来ない特別コーナーよ。結婚生活をする亜理紗への激励や駄目出しの言葉を送ってもらうの。例えば『幸せ太りするなよ!』とか」 「あー、うー、一番結婚式らしいっちゃあらしいですけど……」 「ちなみに長すぎるとカットされちゃう可能性があるので気をつけてね。参加してくれてる時点でお祝いしてくれてるのは分かってるから、おめでとうございますとかは省くと節約にもなるかも」 「ちなみに旦那様の扱いは?」 「勿論、亜理紗の隣にはいてもらうけど必要な時以外は極力黙っててもらいます。結婚式でもあるけど羅字音だし」 「ですよねー。まぁ本人もその辺りは分かってくれると思いますけど」 「それじゃ、準備よろしく。まずは上司に了承報告お願いね」 「ひーん……」 微妙な顔をしてとぼとぼと奥へ入っていく亜理紗。 その背中が完全に見えなくなったのを確認した一葉は、ギルドの喧騒の中でポツリと呟いた。 「……ばぁか。あんたたち二人とも天涯孤独の身でしょうが。そんなこと思い出す暇もないくらい祝福してもらいなさい」 微笑む一葉の表情は、母親のような姉のような……とても暖かいものだったという――― |
■参加者一覧 / 鷲尾天斗(ia0371) / 小伝良 虎太郎(ia0375) / ヘラルディア(ia0397) / 真亡・雫(ia0432) / 紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454) / 九竜・鋼介(ia2192) / からす(ia6525) / 守紗 刄久郎(ia9521) / 雪切・透夜(ib0135) / レネネト(ib0260) / 不破 颯(ib0495) / 无(ib1198) / 各務 英流(ib6372) / アムルタート(ib6632) / 神座亜紀(ib6736) |
■リプレイ本文 ●結婚式ですよねぇ!? 一葉「せーの」 二人「開拓者ギルドプレゼンツ! 『神楽の皆さーん、開拓者羅字音ですよ〜!』」 亜理紗「皆さんかぐらじは、開拓者ギルド職員、十七夜 亜理紗です」 一葉「同じくかぐらじはー、ギルド職員、西沢 一葉です♪」 亜理紗「えっと……ご覧のとおり、私はウェディングドレスを着ております。着ていますがなんでこの状態でパーソナリティなんですかー!?」 一葉「羅字音終わってから着替えるの面倒じゃないの。お隣の旦那様もよろしーく」 天斗「あー、とりあえず1つだけ聞いていいか? 後は黙ってっから」 一葉「どうぞ」 天斗「なーんか視線が痛ェんだけどなァ。もしかして俺、恨まれてる?」 一葉「当たり前でしょ。これでも亜理紗は職員・お客様問わず人気あったんだから」 亜理紗「これでもってなんですか!?」 一葉「はいそれでは、結婚式兼開拓者ギルドPRイベント、神楽のみなさーん、開拓者羅字音ですよ〜! 略してかぐらじ! 始まります」 亜理紗「うぅ……問答無用だぁ。このイベントは。開拓者ギルド。眼鏡の分鏡堂。お食事処さざなみ。お休み処(?)夜零館、の提供でお送りします」 一葉「改めましてかぐらじは。西沢 一葉です」 亜理紗「かぐらじはー、十七夜 亜理紗です。オープニングではあぁ言いましたが、私たちの結婚式にこんなにたくさんの方々が集まってくださってすごく嬉しいです。後ろの方の席のかたー、聞こえてますかー?」 一葉「あ、手振ってる。食事しながら最後までお付き合い下さいねー」 亜理紗「はーい、ではコーナーに参りましょう。今回はふつおたが無いので……」 一葉「知ったか乙のコーナーからね」 亜理紗「このコーナーでは皆さんから質問をいただき、私たちがその内容を知っていようが知っていまいが知っている体でトークするコーナーです。つらいでーす」 一葉「ペンネーム雨の滴さん。『昔、めがろどんという丼ぶりがあったみたいです。食べたことありますか?』あー……あれね。うん、美味しかったわよ。ちょっと量があって私は食べきれなかったけど。亜理紗なら余裕だったでしょ?」 亜理紗「え? えぇ、まぁ、勿論。ただねー、ちょっとねー、お肉が硬かったんですよ。食べたお店が悪かったのかはわかりませんが、もうちょっと素材にもこだわって欲しかったですねー」 一葉「……旦那さん、笑ってるわよ」 亜理紗「客席からも失笑が出てます!? あれぇー、ボリューミィな丼じゃないんですかぁ?」 一葉「私もそんな感じだと思ったんだけど……つ、次行きましょ。ペンネーム駄洒落侍さん。『いやぁ生成姫は強敵でしたね。まさかあんな能力があるとは……』だって。霧が濃くなってきたわね……」 亜理紗「晴れてますけど? それはともかく、生成姫ですか。うーん、話に聞いただけですがあまり茶化す気になれませんねぇ……」 一葉「あ、知ってるわね、くそう。えっと、能力ね。そうねー、まさか果物を具現化して投げつけてくるなんてね」 亜理紗「…………生の果物を成らす姫? ……ぶふー!」 一葉「うぐぐっ! 何よ、陰陽師には馴染みが深い言葉なの!? 実際はどんな能力なのよ!」 亜理紗「まぁ私も実際会ったことがないのでなんとも。敢えて言うなら、想い続ける力でしょうか」 一葉「……? なんかよくわからないけどいい話っぽくまとめたわね」 亜理紗「次のお便りいきまーす。ペンネーム空さん。いつもありがとうございまーす。『DHMOて怖いよね、下手すると人が死にますし、どう思う?』だそうですが……そ、そうですよね。もう聞くだけでヤバそうな気配がプンプンしますしね!」 一葉「あー、うん、そうね。もう何人も誤って飲んで死んじゃってるらしいし……すぐ規制してほしいわね!」 亜理紗「なんか会場の皆さんもぽかーんとしてますね。珍しいパターンです」 一葉「うーん……? 後で調べてみましょう。次のお便りね。ペンネーム黒小人さん。『美味しい米が炊けることが姑に認めてもらえる最低条件』……え? いや、うん……正しいとは思うけど、姑さんによって最低条件は違うんじゃないかしら……?」 亜理紗「マジレスカコワルイ」 一葉「うるさいわね! むしろこれあなたが関係あるお便りでしょ!」 亜理紗「まぁまぁ。でも、確かに料理のできない女性っていうのはお姑さんにはいい印象持たれないですよね。その点、私や一葉さんは大丈夫です! では次のお便り……ペンネーム、闇目玉さん。いつもありがとうございます」 一葉「補足しますと、ペンネームのところにやたら上手い闇目玉の絵を書いてくださってる方です。今回は結婚式バージョンということで、デフォルメされてて新郎新婦に紙吹雪撒いてる感じになってまーす」 亜理紗「読みますよー。『リア充なんですぐ爆発してしまうん?』」 一葉「しっとの心は父心だからよ」 亜理紗「即答したっ!? えっと……結ばれるのに運を使いきっちゃったから……かな?」 一葉「あー……あなたたちもヤバイかもね」 亜理紗「そんなことありませんー!」 一葉「即答できるなら安心だわ。次で最後のお便りね。ペンネームはーさんさん。『問:DQ・FF・FA。これらはとある略語である。正式名称を答えよ』」 亜理紗「危険が危ない!?」 一葉「返答に気をつけなきゃいけないネタは勘弁して頂戴……面白いから私は好きだけど。えっと、ドワーフクイーン、ファイレクシアンフォース、フォールンエンジェルの略ね」 亜理紗「……何かしらの意図を感じます」 一葉「気にしない気にしない。ほら、亜理紗も」 亜理紗「えっと……でっかいきゅうり、ふわふわフォンデュ、フルアーマー」 一葉「なんで最後だけボケたのよ」 亜理紗「食べ物系で思いつかなかったんです……」 一葉「ぐだぐだな感じで終わっちゃったわね……と思ったらなにやらもう一通あったみたい。ペンネーム……も本名も書いてないけど」 亜理紗「あ、なんか嫌な予感」 一葉「『いつからお姉様が男性と結婚すると錯覚していた……?』」 亜理紗「産まれた瞬間からですっ! 終わっとけ!」 二人「えんいー」 一葉「怖い怖い」 亜理紗「このコーナーでは、意味は分からないのにトラウマになりそうな言葉を募集しています。聞くとなんとなーく不安定になる言葉などなど、私達は勿論会場の皆さんにもダメージが行きそうなコーナーです」 一葉「誰得のコーナーなのになぜか続いちゃったみたいね……まったくもう」 亜理紗「じゃあ一通目。ペンネーム黒小人さん。『七色のお米。絵具でできた味噌汁。レシピを無視した無駄なアレンジ。私頑張って作ったのに!』 一葉「何そのデスコンボこわい」 亜理紗「そういうコーナーですから。食事中のみなさーん、想像しないでくださいねー」 一葉「結婚式に用意した料理が仇になったわね……。さっきの話じゃないけど、女性陣はきちんと料理できるようになっておきましょう。一人暮らしの時にも役に立つわよ……」 亜理紗「なんとなく哀愁が漂っている……。次行きますね。ペンネームはーさんさん」 一葉「さっき自分で言った時も気になったけど、さんを二回並べるのおかしくない……?」 亜理紗「でもはーさんで切っちゃうと呼び捨てのような気がしますしねぇ……。内容行きますよ。『舵天☆キュア!』」 天斗「よっし把握した。後でお仕置きだぞコラァ!」 亜理紗「鷲尾さん! 喋っちゃ駄目ですよぅ!」 一葉「えー、さくっと次行きますね。『今日怖い夢を見たの……お姉様が男と結婚するって……うふふふ、そんな訳無いのにね』」 亜理紗「ところがどっこい……夢じゃありません……! 現実です……! これが現実……! っていうかこれ各務さんでしょう!? 空鍋回してもダメですってば!」 一葉「つ、次行きましょ。ペンネーム雨の滴さん。『黒歴史』」 亜理紗「ユニヴァーーーサルッ!」 一葉「オ・ノーレぇぇぇ! 微妙に変えてきたわね!」 亜理紗「いや、多分雨の滴さんは違う意味で送ってきてくださったと思うんですが、とりあえずやっておかないといけないかなと」 一葉「テンション上げるのは基本っと。次で最後よ。ペンネーム駄洒落侍さん。『リアルバニシングトルーパー……嫌な事件だったね』」 亜理紗「私のブルーミラージュを返してぇぇぇ!」 一葉「……え、そういう名前にしてたんだ」 亜理紗「いや、最初はカラーリング変更できたじゃないですか? で、あの武器がなんか蜃気楼っぽいかなって……」 一葉「コウニーが絶叫を上げて死にそうね」 亜理紗「い、いいじゃないですか! 自分のって感じがして大好きだったんですよぅ! なんですかあのメガネ! あんなのかけないと生き残らせてもらえないとか酷すぎません!? デザイン変更しただけで許されたデュラ―――」 一葉「ストップストップ! そこまで! 危険な上に脱線してるから!」 亜理紗「取り乱しました。少なくとも結婚式で新婦が語ることじゃなかったです……」 一葉「客席でむせび泣いてる人たちが結構いるのが気になるんだけど……あえて強制終了します」 亜理紗「ちなみに一葉さんはなんてつけてました?」 一葉「クリムゾンブラスター」 亜理紗「五十歩百歩じゃないですかー!?」 一葉「ちょっと待った!」 亜理紗「このコーナーでは、結婚式の最中である私を略奪愛できそうなくらい甘い言葉を送ってもらうコーナーらしいんですが……なんだかなぁ」 一葉「ぼやかないでよ。さくっと終わらせちゃいましょ。まずはペンネーム黒小人さん。『下世話だが夫の性癖は調べておいた方がいい。性の不一致で別れる若者は割りといるからね』」 亜理紗「ふぇっ!? こ、ここここれはどっちかというと次のコーナー向けなのでは……」 一葉「まぁねー。とりあえず甘い言葉じゃないわね。でも重要よ。旦那様のご意見は?」 天斗「野郎どもの視線が恐ェからノーコメントで」 亜理紗「賢明だと思います。次、ペンネーム空さん。『このままだと一葉さんが行き遅れになっちゃいます、誰かを紹介してから行ってください』」 一葉「是非紹介してちょうだい」 亜理紗「余計なお世話よとか言われると思ったのに!?」 一葉「だってねー。私ももう21になろうとしてるし? 後輩のこんな綺麗な姿見せられたら結婚したいなーとも思うわよ。で、ホントに良い人いない?」 亜理紗「結婚式の最中に婚活とか止めてもらえません……? えっと……无さんならキョンシーとかにも理解を示してくれるんじゃないかなー、なんて」 一葉「无さんね。覚えておきます。じゃあ次のお便り。『お姉様への愛は、結婚程度では揺るぎませんわ! 私は愛人でも一向に構いません! むしろどんと来い!』」 亜理紗「各務さん……もはや涙ぐましくすらありますが……」 一葉「いつ、どこで、どんな理由で亜理紗のこと好きになったのかしらね……?」 亜理紗「うーん……よくわかりません。でも、私はやっぱり鷲尾さんのことが好きなので……ごめんなさい」 一葉「空気を変えるために次行くわよ。ラストね。ペンネーム闇目玉さん。ぷふっ!『チョコレート、ケーキ、大福、みたらし団子に金平糖!』」 亜理紗「優勝」 一葉「いや、その……ぷくく……! 面白いし可愛いけど、甘い言葉ってそういうことじゃなくて……あはは……!」 亜理紗「あ、一葉さんがツボった」 一葉「ご、ごめんらさい、ちょ、進めてて……! くっくっく……!」 亜理紗「そんな、呂律が回らなくなるほど笑わなくても……。と、とりあえずコーナー終了でっす! ちょっと待ったコールをした人が成功してるのを見たことがない亜理紗でした」 一葉「嫁ぐ貴女へ」 亜理紗「このコーナーでは、お嫁に行く私への励ましや駄目出し、祝辞などを送っていただくコーナーです」 一葉「今回のメインコーナーかしらね。いつもでいうならふつおたのコーナーよ」 亜理紗「笑いは収まりました?」 一葉「なんとか。こういうのがあるからかぐらじは止められないわ」 亜理紗「まったくもう……。ではペンネーム……じゃない、本名ですね。ヘラルディアさん。いつもお世話になってます♪『未熟なのを承知して開き直って進めば良いと思われますよ』とのことです。ありがとうございます!」 一葉「ちなみに亜理紗が今着てるウェディングドレス、ヘラルディアさんが仕立て直してくれたやつだから」 亜理紗「マジですか!? い、いつもながら縁の下的な立ち位置、痛み入ります」 一葉「次行くわよ。神座亜紀さん。『亜理紗さん色々あったけどとうとうこの日が来たね。絶対幸せになってね! ボクもいつか好きな人が出来たら亜理紗さんみたいに自分からプロポーズするよ〜!』だって。ふふ、可愛いわね」 亜理紗「ありがとうございます! 幸せにしますし幸せにしてもらいます♪」 一葉「そういえば自分でプロポーズしたんだもんね。ポニーテールを解いて今みたいな黒髪ロングにしてプロポーズでしょ……くぁー、そりゃ男は落ちるわ。私ももうちょっと髪伸ばそうかしら」 亜理紗「か、髪の長さは関係ないんじゃ……」 一葉「いいえ、男は大体黒髪ロング好きよ。間違いない。そんなに好きじゃない人はいても『俺、黒髪ロング大っ嫌い』って男はいないわよ」 亜理紗「そんなもんですかぁ……?」 一葉「そんなもんです。話がそれちゃったけど次行くわね。これは……ペンネームとかはないけど箱が2つ届いてるわね」 亜理紗「こっちは新郎宛、こっちは新婦宛ですね。それじゃ、鷲尾さんはこっち」 一葉「せーので開けてみて頂戴。いくわよー。せーの」 亜理紗「えっと……『浮気撲滅! ロリコンバスター!』て書いてある焙烙玉とですね、『浮気対策にどうぞ、末永く爆発して下さい』っていうメッセージが……」 一葉「差出人は?」 亜理紗「新郎の弟子だそうです」 天斗「てめェか刄久郎! 小粋な真似してくれんなァ!?」 亜理紗「あはは……じつはそのお弟子さんも、私が記憶喪失で放浪してたのを保護してくださった方のお一人だったんですよね。その後あまりお会いしなかったので恋愛にまでは発展しませんでしたけど……」 一葉「あ、そうだったんだ。意外。で、鷲尾さんの方は?」 天斗「あー、まァなんだ。差出人は大体わかった」 亜理紗「……五寸釘が打ち込まれた藁人形……」 一葉「でもこの赤い文字、きちんと『祝ってやる』になってるわよ。呪ってやるじゃなくて」 亜理紗「……誤字? それとも本当に祝ってくれてるんでしょうか……」 天斗「いや、祝ってたら藁人形はねェだろ……」 一葉「ちなみに差出人と思われる各務さんからはきちんとコーナー宛にお便り来てるわよ。『お姉様……どうかお幸せに……』ってシンプルに」 亜理紗「うぅっ、これ泣きながら書いたんですかねぇ。あちこち滲んでるんですけど……」 一葉「ほらそうやってすぐ揺れる。次行くわよ、ペンネーム駄洒落侍さん。『隣にいる婿さんはガチロリだし、何かと『首置いてけ』言ってと突っ込んだりと無茶するだろうが、見守ってやってくれ。『そんな向こう見ずな婿を見ず(むこおみず)』……なんて事が無いようにな』」 亜理紗「うわ……ば、場の空気が凍った……」 天斗「悪ぃ、ちょっとトイレ」 一葉「駄目に決まってるでしょ! パーソナリティじゃないけど新郎はきちんと座ってなさい!」 天斗「ちぇっ、じゃあとりあえず……鋼介、てめェだな!? 望みどおり首置いてけやァ!」 亜理紗「結婚式で刃傷沙汰は止めてくださいぃぃぃ! 駄洒落侍さん、逃げるんだよォーーー!」 一葉「えー、流れを戻します。ペンネーム白鞘さん。『今日の幸せを忘れず、これからも笑顔でいてください』だって。連名でレネネトさんの名前もあるわね」 亜理紗「またお世話になった方ですね。連名っていうのは?」 一葉「はいこれ。多分、あなたのお母さんの絵じゃない? レネネトさんが術で昔の出来事を再現して、白鞘さんがそれを絵にしたって感じかしらね」 亜理紗「絵に? 白鞘さんって、もしかして……っと、詮索は御法度でしたね。……これが、お母さん。十七夜 彩々楽……。ぐすっ……えへへ、嬉しいです。私、記憶喪失だからお母さんの顔覚えてなくて。お母さんも式に参列してくれたみたいで、本当に嬉しいです。ありがとうございます……!」 一葉「素敵な贈り物、ありがとうございます。じゃあ次のお便りは亜理紗が読んで」 亜理紗「はい。ペンネーム黒小人さん。『後 悔 は な い な ?』って恐っ! 観客の皆さん見えます!? 赤で縁取られた黒い文字がでかでかと!」 一葉「きっつ! 感動から一気にホラーになったわね……」 亜理紗「え、えっと……ありません。鷲尾さんと生きていくって決めました。自分が何者かもわからない私を愛してくれる旦那様との生活ですもん。後悔なんて、あるわけない」 一葉「良い返事だとは思うんだけど、そんな台詞で大丈夫?」 亜理紗「大丈夫です、問題ありません! って、あれ? 二枚目?」 一葉「何々……『二人の行く末に幸多からん事を』だって。ふふ、あなたがそう言うのを見透かされちゃってたわけね。これは……母親に抱かれてる赤ちゃんの絵ね」 亜理紗「びっくりしましたよ。脅迫されてるのかと思いました」 一葉「頑張って早く子供作れってことかしらねー?」 亜理紗「ぶっ!? もう、エロスは禁止ー!」 一葉「はいはい、次行きましょ。ペンネームはーさんさん。『まずはおめでとうございます。くれぐれも危険フラグ、死亡フラグを立てない平和な、へ・い・わ・な・結婚生活を送れるよう願っているよぉ。個人的にはトラブル除去お祓い的なのを必ず済ませておくことをお勧めする(笑)』大切なことなので二度言った感じね」 亜理紗「是非私も平和な結婚生活でありたいと思ってますー。っていうか、お祓いなんてものが必要なんですか……?」 一葉「普通はやらないと思うけど……」 天斗「何ッスか。俺ッスか」 一葉「ぶぇーつにぃー。ちなみに、馬鹿のジャーキーを贈ってくれたみたいよ。後で食べてくれって」 亜理紗「わ、懐かしいですね! ちなみに馬鹿(うまか)っていうのは、すっごく美味しい食材のケモノです。感じで書くとバカとうまかで判断つかないんで注意です!」 一葉「臆病で素早いから捕まえるの大変なのよね。うん、美味しー♪」 亜理紗「イベント中に食べないでくださいよ! はい、次はペンネーム闇目玉さん。『二人ともお幸せに!』シンプル・イズ・ベストですね♪」 一葉「短くてもそっけなく感じないものねー。お便りの常連さんっていうのもあるけど」 亜理紗「ちなみに隅っこの方に『ところで、一葉さんが結婚する時も羅字音やるの?』って書いてありますけど」 一葉「やれたらやりたいでーす。でも相手がいないでーす。闇目玉さんが相手になってくれる?」 亜理紗「またそんな投げやりな。闇目玉さんが女性だったり、ずっと年上だったりしたらどうするんですか。タイプじゃないかもしれませんよ?」 一葉「冗談よ。流石に恋愛結婚を諦めるほど老けこんでません」 亜理紗「一葉さんだったらきっと良い人見つかりますって! 次行きますよー。ペンネーム雨の滴さん。『結婚生活のご感想を今後の参考にしたいです』だそうですよ」 一葉「きゃっ、雨の滴さんのエッチ! 結婚生活の感想だなんて!」 亜理紗「何でそんな方向に持ってくんですか! 今日の一葉さんおかしいですよ!?」 一葉「んー、普段真面目にお硬く生きてるから、こういう時くらいはっちゃけたくて」 亜理紗「雨の滴さんは真剣に聞きたいかもしれないのに茶化さないでください」 一葉「はーい。というか、雨の滴さんも女の子なのかしら。私もそうだけど、そういうの聞きたがるの女性っぽくない?」 亜理紗「ですねぇ。私の知り合いの方でしょうか……。詮索はここまでにして、次のお便りです」 一葉「次は私ね。ペンネーム空さん。『大丈夫とは思いますが、貴方は貴方です。喧嘩をしてもいい、できるだけ思いは隠さずに伝えて下さい。貴方だから彼は愛するのです、それを忘れずに。幸有らんことを』」 亜理紗「ふふ……文面で誰か大体わかっちゃいました。ありがとうございます……肝に銘じておきます。記憶が無いのが私であると、もう確立しちゃいましたしね♪」 一葉「お、知り合いなわけね。いいこと、喧嘩したらすぐ実家に戻って来なさいねっ」 亜理紗「一葉さんの家は私の実家じゃないです。お言葉としては嬉しいですけど」 一葉「てへぺろ。それじゃ、コーナー最後にして本日のかぐらじ最後のお便り。アムルタートさんから。『姉ロリ&兄ロリコングラッチュレイションー!!』」 アムルタート「ようやっとこの時が来たね! 待ちわびたよ♪」 亜理紗「わわ、びっくりした! クラッカーですか!? 結構近くの席にいらしてたんですね!?」 アムルタート「サムシングげふんとか、指wげふんとか、気に入った? もー兄ロリに用意させるの大変だったの。気に入っていたら嬉しいな♪」 亜理紗「はい、すごく気に入ってますよ。今もきちんと身につけてます。そっか、アムルタートさんがせっ突いてくれたんですね。ありがとうございます」 アムルタート「兄ロリ、姉ロリ泣かしちゃだめだよ? 浮気したらひどいからね? 色々やっちゃうんだよ!」 一葉「こらこら二人とも、イベント中よ。舞台と客席で普通に会話しないの」 亜理紗「あは……ごめんなさい」 アムルタート「ごめーん。でも折角だから最後まで言わせて? 姉ロリ、兄ロリに容赦しちゃだめだよ? 家の舵も料理も夜の営みも、女が超☆攻めるのが夫婦円満と子づくりの秘訣だってお母さんが言ってた!」 亜理紗「子づっ……!?」 天斗「子供に何吹き込んでんだおめェの母上サマはよォ」 アムルタート「頑張れ姉ロリファイトだよ♪ 以上〜♪」 一葉「はい、というわけで義妹になる方からの暖かいお言葉でしたー。……ん? 亜理紗? 亜理紗ー?」 亜理紗「こ、子作りとか、い、いずれはするんですよね……うぁ、でも結婚したんだからいつでもOK!? きゃー!」 一葉「……なんか亜理紗に変なスイッチが入っちゃったみたいなのでコーナー閉めます。以上、嫁ぐ貴女へのコーナーでした。暖かいお便りの数々、本当にありがとうございました♪」 一葉「お送りしてまいりました、神楽の皆さーん、開拓者羅字音ですよ〜! 通称かぐらじ! そろそろお別れの時間となりました。笑いあり感動ありホラーありで、随分バラエティに富んだ結婚式になったわねぇ」 亜理紗「結婚式でこんなにツッコミ入れたり叫んだりする新婦、世界中探しても私くらいのもんですよぅ……」 一葉「でしょうねー。それじゃ、羅字音も無事終わったし、結婚式らしいことしましょうか。はい、二人とも立ってー」 亜理紗「ふぇっ?」 一葉「見よう見まねとか聞きかじりの知識だから、進行が違ってもご容赦ね」 亜理紗「一葉さんが神父様役ですかぁ!?」 一葉「別に困らないでしょ。ほら、並んで。……こほん。汝、鷲尾天斗。あなたはこの亜理紗を妻とし、病める時も健やかなる時もこれを愛し、固く節操を守ることを誓いますか?」 天斗「おうよ。誓うぜ」 一葉「汝、十七夜 亜理紗。あなたはこの天斗を夫とし、病める時も健やかなる時もこれを愛し、固く節操を守ることを誓いますか?」 亜理紗「はい。誓います」 一葉「よろしい。神と、この場にいる全ての者の前で、二人が夫婦となるための儀式を行います。それでは指輪の交換を」 亜理紗「ふふ……これもアムルタートさんの入れ知恵ですか?」 天斗「俺にだってそれくらいの甲斐性はあらァな」 一葉「指輪の交換が恙無く終わりました。続いて、誓いのキスを」 亜理紗「うぅ……こんな公衆の面前で……恥ずかしいですよぅ……!」 天斗「流石に俺だって恥ずいってばよ。でも仕方ねェだろ?」 亜理紗「こらそこっ! キスコールしない! 静かに見守ってくださいよ!」 一葉「いいからさっさとしなさいよ。減るもんでなし」 亜理紗「ファーストキスなんですから減りますっ!」 一葉「……マジ?」 亜理紗「き、記憶がある限りでは」 天斗「わかったわかった。……するぞ」 亜理紗「鷲っ……んっ…………ふ、んんっ……」 一葉「おー……なんかエロい」 亜理紗「ぷはっ、エロいとか言わないでくださいよ! 神聖な儀式なんでしょ!?」 一葉「てへぺろ。これにて二人は夫婦と認められました。みなさん、どうか盛大な拍手を!」 亜理紗「すごい……割れんばかりの拍手です。……鷲尾さん、私達、幸せ者ですね」 天斗「そうだな。けどよォ、その鷲尾さんってのそろそろ止めねェ?」 亜理紗「はい?」 天斗「今日からはお前も『鷲尾』だろ」 亜理紗「……はい。天斗さん……!」 一葉「それではお時間となりました。羅字音、御静聴ありがとうございました! ここからは新郎新婦を囲んで結婚式の二次会としたいと思いまーす!」 亜理紗「えぇっ!?」 一葉「ここでシェフのご紹介! 皆さんが今まで食べてた料理や飲物は、あちらの紗耶香・ソーヴィニオンさんが作ってくださいました! お饅頭が印象的ですね。二次会用のお料理に加え、お酒もありますので、ご希望の方は並んで下さーい!」 天斗「ははっ、こりゃ退屈しねェなァ。これ以上の結婚式はねェよ」 亜理紗「はい……! かぐらじに……参加してくださったすべての皆さんに……ありがとう……!」 時を越え、様々な事件を越え、二人は結ばれた。 運命などではなく、勝ち取って結ばれた二人の絆。そう簡単に離れることはない。 万雷の拍手とともにかぐらじが終わっても……二人の結婚式は、夜遅くまで続いたという――― |