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■オープニング本文 今は軽くなった背負子を担ぎ直して、男は満足そうに笑みを浮かべる。 「今回はよく売れましたか、巧さん」 「ああ、君のおかげだな。ありがとう」 声をかけてきた彼方 翔(iz0098)に、行商人である巧は礼を述べる。翔は道中の護衛に雇った開拓者だった。 「いや、俺は特に何もして無いし」 護衛といっても何も起こらなければ、単なる付添いでしかない。 「いや、行きに荷物を持ってくれただろう。それで何時もより多くの荷物を運べたから、今回の売り上げが多いんだ。感謝するよ」 「お安い御用、ってヤツです」 頬を赤く染めながら、翔は照れくさそうに応える。 実際、志体持ちの身体では苦になる重さでは無かった。どうせなら、ついでに。それくらいの気持ちだったのだが、感謝されて悪い気はしない。 「よかったら、また依頼して下さいよ。お安くしとくんで」 にはっと笑う翔の顔を見て、巧も微苦笑を浮かべる。 「ちゃっかりしてるなぁ」 「まあ、それはそれなんで。ご家族も護衛をつけてた方が安心でしょ」 「‥‥そうだな」 巧は首にかけている小さな袋を見つめた。不揃いな縫い目や少し不恰好な形から、手作りのものだと見て取れる。 それを作ったのは彼の小さな娘だった。行商に出るまえに、旅の安全を祈って手渡されたお守り。 見つめる巧の目は、心底愛おしむものだった。 「早く帰って、ご家族に無事な姿を見せてあげないと」 「ああ」 周りに満ちる穏やかな空気。しかしそれは一瞬で崩れ去った。突然、翔が立ち止まる。 子供のような顔で笑う翔の顔が、一転して厳しいものに変わっていた。 「翔く‥‥」 彼は身振りで、黙っているように伝える。次いで、遠くを見はるかす。 「‥‥逃げろ」 「え?」 呟くような声に、直ぐには反応出来なかった。その間にも翔は武器を構える。 「早く逃げろっ。アヤカシが来る!」 そらす事の無い翔の視線の先。遠くに蠢く黒い影が三つある。小さく見える大百足だが、その距離を考えれば相当な大きさが伺えた。 「‥‥っ、分かった」 巧は里に向かって駆け出そうとする。その時、首からかけていた紐がぷつりと切れた。 思わず脚を止める。振り返ると、お守りは坂道を転がり落ちている所だった。 戻って取りに行く余裕はない。しかし、だからと言ってこのままにするには後ろ髪が引かれた。 「俺が行く」 「翔くんっ」 巧が止める間もなく、翔は駆けてきた道を戻っていく。 「巧さんは先に行って!」 「しかし‥‥」 渋る巧に、立ち止まった翔は不敵に笑って見せた。 「俺は巧さんと荷物を守るのが仕事だから」 確かにそうなのだが、巧にはいくら開拓者といえども、一人置いて行く真似は出来なかった。 巧の言いたい事を察したのか、翔は厳しい口調で言った。 「残ってもらっても、足でまといにしかならないんだ。それよりもうすぐ里だ」 その言葉に、男ははっとした。里では、家族が待っている。このままでは里にアヤカシを近づける事になる。 「逃げるだけだったら、俺だけの力でも何とかなる。でも‥‥どっちも大切なものだろ?」 そう言って翔は、手にした武器を掲げて見せた。 「…絶対に近づけさせないから。だから、応援を呼んできてくれ」 「分かった。少しでも早く里へ行ける様に、荷物は置いていくよ。‥‥でも無理はしないで」 巧の言葉に目を丸くした翔は、肩の力を少し抜いて苦笑した。 「するよ。だってコレが俺の仕事なんだから」 「‥‥うん、頼む」 頷く翔を見て、背を向けた巧達は里に向けて走り出した。それを見送った翔は、坂を下りて行き、落ちているお守りを拾い上げた。 「無くしたり、汚したりしない様にしないとな」 アヤカシは確実にこちらへ向かって来ている。翔は手が汗ばんでいる事を自覚して、しっかりと武器を握り直した。 「ここが力の見せ所、だな」 翔の声に応えるように、すっかり自分の手に馴染んだ武器が鳴った。 里に着いた巧は、転がる様にギルドへと入る。 「里の外にアヤカシが出た! 翔くんが一人で残ったんだ。誰か応援に向かってくれ!」 巧の切迫詰まった声に、その場にいた誰もが振り向いた。 |
■参加者一覧
篠田 紅雪(ia0704)
21歳・女・サ
滋藤 柾鷹(ia9130)
27歳・男・サ
エグム・マキナ(ia9693)
27歳・男・弓
日和(ib0532)
23歳・女・シ
燕 一華(ib0718)
16歳・男・志
央 由樹(ib2477)
25歳・男・シ
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
ウルグ・シュバルツ(ib5700)
29歳・男・砲 |
■リプレイ本文 「一人でなんて、無茶じゃないですかっ」 巧の言葉に、燕 一華(ib0718)が声を張り上げた。屈みながら、肩で息をしていた巧は、そのままの姿勢で一華を見上げる。 「頼む、翔君を‥‥」 巧の必死な姿に、一華は力強く頷いた。 「はい、もちろんですよっ。ですよねっ、日和姉ぇ」 くるりと一華が振り向いた先には、日和(ib0532)が佇んでいる。同意を求められた日和は、微かに目を伏せた。 「‥‥簡単に安請け合いするものじゃないよ、一華」 「しかし、傍観するつもりじゃないんだろう? 日和殿」 一言声をかけてきた篠田 紅雪(ia0704)の姿を見て、日和は目を瞬いた。つい無関心な態度をとってしまうものの、大切なものを守ろうとする姿は、日和にも覚えがあるものだった。 それを見たら見過ごすことが出来ないことを、すっかり見抜かれているらしい。それを日和は、別の言葉でやり過ごした。 「篠田。こんな処で会うとは思わなかったな」 「私もだ。彼方殿の事も含め、これも何かの縁なのだろう。私も協力しよう」 「私も、力を貸します」 申し出る紅雪に重なる、もう一つの声がある。声の主、長谷部 円秀 (ib4529)は、巧の前へ進み出た。 「大百足は駆け出しの頃に相手をした事があるので‥‥成長を見る意味でも良い相手ですね」 熱のこもる円秀の声に、抑揚のない声が応じる。 「‥‥経験がある人間がいるのは助かる。相手は堅そうな奴だしな」 無愛想な態度で会話に入ってきたのはウルグ・シュバルツ(ib5700)だった。しかしその態度に反して、話している内容は。 「それなら早く方を付けられるからな。‥‥誰も、犠牲にさせない」 命を守る。その姿勢にエグム・マキナ(ia9693)も同意を示す。 「ええ。実際、あまり時間をかける事は出来ないでしょうし」 そう言ってエグムは面々を見渡すと、頭の中で対策を書き出していった。 「前衛がそれぞれと相対して足止め、後は後衛と遊撃に分かれて射撃を集めながら戦う。その辺りが最前でしょうか」 エグムの策に、その場にいた央 由樹(ib2477)が相槌を打つ。 「せやな。そんなら俺は‥‥」 「央君は身動きが軽いので、遊撃が合うでしょう」 エグムの判断は的を得ていて、由樹は無言で首肯する。周りを見れば知り合いも多い。 相手の動向が分かっていれば、お互いに動きやすい。これは強みだと由樹は感じる。 「お守りと荷物、彼方殿を必ず連れて帰ろう。安心してくれ、巧殿」 「‥‥はい。宜しくお願いします」 滋藤 柾鷹(ia9130)の言葉に、巧は深く頭を下げた。これ以上自分に出来る事はない。巧に残された事は、開拓者を信じ、その無事を祈ることだけだった。 その姿に、柾鷹は里を守り抜く決意を強くする。 「ほんなら、俺は早駆で先行くで。‥‥翔がどないなっとるか分からんでな」 「分かった。こちらも直ぐに向かう」 柾鷹の声を受けて、由樹は背中を向けて駆け出そうとする。その背中に、日和の声が届いた。 「央。‥‥気をつけて」 「わかっとる。下手なヘマはせえへん」 そう言うと、由樹は一気に里の外へと駆けていく。 「さて‥‥、皆で俵藤太となりましょうか!」 皆の注目を集めながら、円秀は空に向かって声を張り上げた。 手にした武器が堅い殻を弾き返して、甲高い音を出す。何度目かの攻防に、翔は弾む息で頬を流れる汗を乱暴に拭った。 荷物と里を守る為には、アヤカシの気を残らず引きつけておかなければならない。しかし一人で巨体の大百足三体も相手に出来るはずもなく、翔は大百足の攻撃を全力で避けながら耐えていた。 しかし悔しいことに、疲労で足が震え始めている。攻撃は止む気配を見せず、うまく受け流して翔は受け身をとった。 その足が、踏ん張りに耐えられずに崩れる。一瞬の隙を百足が見過ごす筈がなく、翔の頭上に大百足の陰が落ちた。少しでも攻撃の衝撃に耐えるために、翔は身を固くする。 翔の身体が横に飛ぶ。ずん、と大百足の足が地面に刺さった。 「なにしとんねん。もう少しでお陀仏やで」 「え、あ、あ‥‥あ?」 状況が把握できていない翔は、間が抜けた声を出す。 「お前が翔っちゅう奴か?」 「あ、ああ」 翔の返事を聞くと、由樹はすぐにアヤカシに向かって構えた。そこでようやく、翔は自分が助けられたのを理解する。 大百足の攻撃が当たる直前で、早駆でやってきた由樹が、そのまま翔の身体を引っ付かんでいた。 由樹の背中を見て、慌てて翔もその隣に並ぶ。 「いけるか? すぐ増援が来る。もうちょい持ち堪えや」 「ま、だ、余裕‥‥だって!」 明らかに分かる痩せ我慢を、由樹は見てみない振りをする。大百足は新しい乱入者に警戒しているのか、由樹をじっと窺っていた。 「‥‥でかいな。‥‥一体、何食うとんねん」 「さあ?」 軽く肩をすくめる翔を、由樹は横目で見る。軽口を叩ける元気はあるらしい。 「さっさと済ますか‥‥そないに長く視界に納めたないんでな」 由樹の目の前では、大百足の複数の足が、うぞうぞと蠢いている。由樹が深く腰を落とした時、大百足の一体が、二人の横を駆け抜けた。 直ぐに追おうとした由樹の足が止まる。直後に柾鷹の咆哮が響きわたった。 アヤカシの注意が柾鷹に向かう。その間に、日和が翔の傍に駆け寄った。満身創痍、ではあるが酷い怪我はない事を確認する。 「よく頑張ったね。ここから先に、大百足は行かせないよ。絶対に」 そう言う日和の隣に、紅雪が並んだ。その目は大百足を捉えて離れない。 「ふむ。こいつらにも脳味噌はあるのかねぇ‥‥?」 「あってもなくても‥‥一気に方を付けさせて貰いますよ!」 叫びながら、円秀は大百足の前に踏み込む。その手に握られた刀が、紅い燐光を纏い、紅葉のような煌めきを散らせていく。 光はまるで、アヤカシの頭部に吸い込まれるように叩きつけられた。同時に紅雪も、一気に大百足との距離を詰め、擦れ違い様に胴を切りつける。 「下がるで、日和」 「分かった」 二人は息を合わせて、翔を連れて後方に下がる。それを見ていた柾鷹は、引きつけていた大百足に向かって、前へと競り出た。 巧の荷物は、ここより坂を少し上がった上にある。後衛がいるとはいえ、柾鷹にはこれ以上大百足に進入を許すつもりはなかった。 「待て、俺はまだ戦え‥‥」 由樹と日和に下がらされた翔は、前衛に戻ろうと飛び出そうとする。しかし身体は急な動きに悲鳴を上げ、翔は顔をしかめた。 「はい、これ」 日和は止血剤を取り出すと、大百足の足が掠めたのであろう傷に薬を塗っていく。しかし今にも前に戻ろうとする翔の姿を見て、エグムが声をかける。 「時間稼ぎが必要とはいえーー無謀な事を」 「これは俺が受けた依頼だ。だから」 尚も食い下がる翔に、エグムは一言付け加えた。 「荷物を守ることも、貴方の仕事でしょう。下がって下さい」 それに反論する事ができず、翔は言葉に詰まる。そんな翔に背中を向けて、エグムは巧の姿を思い出していた。 彼は応援を頼みたいと言っていたが、翔の安否をとても気にしていた。つまり自分たちに託されたのは、荷物だけでなく、彼自身でもあるとエグムは判断している。 一気呵成にアヤカシを倒すことも出来るが、それでは本当の意味で依頼を全うしたことにはならないのだろう。 気持ちを切り替えて、エグムは大百足の位置を、一目で把握する。 「さてーー普段はやりませんがーー力を尽くしますか」 一言呟いて、エグムは瞳に精霊の力を集め始める。そうして視力を一時的に上げると、素早く矢をつがえる。 柾鷹に注目している大百足は、エグムの動きに気が付かない。エグムの目が怪しく輝いた瞬間、矢は大百足の関節の間に突き刺さった。 痛みに大百足の身体が仰け反る。その懐に柾鷹が入り込むと、その手の刀は炎を纏い、大百足の腹部を大きく切り裂いた。 アヤカシの身体は動かなくなったかと思うと、一瞬で瘴気に転じて消えていった。 円秀の一刀を食らった大百足は、よろめきながらも鎌首をもたげる。後方に下がって避けるには、円秀は懐に入りすぎていた。 「長谷部、ふせろ」 ウルグの声を聞いて、円秀はアヤカシとは反対方向に飛び伏せた。息を止め、ウルグは大百足に狙いを定めた。 銃口が吼える。撃ち出された弾は、真っ直ぐに大百足の頭部に向かっていく。 元々仰け反っていた大百足は、銃弾が当たったことで、体勢を崩す。その隙に円秀はアヤカシから距離をとった。 大百足は視界が回っているのか、よろめきながらあらぬ方へ向かっていく。 このまま逃げられたら、また里を襲うかもしれない。日和は普段は閉じられている、左の白眼を開いた。そして足に気の流れを集中させ、瞬く間に大百足に近づいていく。 アヤカシが日和の存在に、気が付いた時には既に遅かった。日和が手にしていた業物は、大百足の急所に深々と突き刺さっていた。 大百足が倒れて、地面が揺れる。そのままアヤカシは瘴気となって、風に散っていった。 紅雪に切りつけられた大百足は、怒り心頭になったのか狂ったように暴れている。しかし暴れ進む方向には、翔達と巧の荷物があった。 「こっちだ‥‥虫め!」 すぐさま紅雪は、咆哮で敵の注意を引きつけようと試みる。しかし大百足は暴れているためか、紅雪の地面を響かせる様な雄叫びに反応を示さなかった。 「由樹兄ぃ!」 一華の声と同時に、由樹が大百足に詰め寄る。そして指に挟んだ手裏剣とクナイを大百足に向かって投げつけた。 頭部触覚、足の関節に手裏剣とクナイが突き刺さる。感覚が麻痺した上に、関節が動かなくなったアヤカシは、上手く動かせなくなった身体を悶えさせた。 その隙に、一華がアヤカシに詰め寄っていく。アヤカシはその姿に足を伸ばすが、感覚がない身体では狙いを定められない。一華の持つ薙刀の、刃先が揺れている。 「‥‥ええ位置や、一華。‥‥やってまえ」 由樹の声に、一華は力強く頷いた。 「任せて下さいっ。これで決めちゃいますよっ!」 一華の揺れる薙刀の刃先は、流れような動きで、死角から大百足に襲いかかる。 最後にうなり声を上げた大百足は、瘴気に変わると、見る影もなく消えていった。 巨大なアヤカシがいなくなると、空がいつも以上に広く感じる。その広さを心地よく感じながら、円秀は翔に声をかけた。 「翔さん、大丈夫ですか?」 「おう。皆のおかげで、なんとかなぁ」 ぺたりと座り込んだ翔は、ひらひらと手を振って応える。 「まあ、皆。なんとか無事なようで何よりや」 傷なし、という訳にはいかないが、皆がこうして集まれる。その安堵を顔にも口調にも、ほとんど表さずに由樹が呟く。 しかしそんな由樹を見て、翔は汚れた顔でにーっと笑った。 「ほんと、よかったよなー。ありがとな!」 そんな翔の笑顔と由樹の顔を見比べて、日和も顔を緩ませた。日和には、由樹の表情のわずかな変化が分かる。そして、翔の笑顔の理由も分かる。 そしてそれは、一華も紅雪も感じていた。紅雪は満足そうに、煙草を取り出してくゆらせる。 「ウルグ? どうした」 じっと自分を見てくるウルグを、翔は見上げた。 「‥‥こうして大した被害もなく済んだのは、翔。お前のおかげだ、自信を持っていい」 淡々と語る口調に、翔は目を丸くする。そしてその言葉に熱いものを感じると、照れ隠しの様に顔をくしゃくしゃにする。 そして少し俯いた翔は、自分の服で掌の汚れを落すと、懐にしまい込んでいた巧のお守りを取り出した。無くしたり、汚したりしていな事に、心底ほっとする。 「翔兄ぃの依頼も果たせたようで、何よりですねっ」 そう言って、にぱっと笑顔を浮かべる一華も、翔の手の中のお守りをのぞき込んだ。 「もしかしたら、巧兄ぃのお守りの御利益のお陰もあったかもですねっ」 「‥‥そうかもな」 一華の言葉を聞いて、翔はお守りを軽く握りしめる。その姿を見て、柾鷹も表情を和らげる。 「そのお守り。無事で何より。紐を直せば、大事なさそうだな」 「ああ。巧さんも喜ぶ」 「娘さんからの贈り物だものな」 その満足そうな巧の横顔に、柾鷹は言葉を続けた。 「それを体を張って守った彼方殿、立派だと思うぞ。本当に貴殿らしいと思う」 優しいな、と呟くと、途端に翔の顔が真っ赤になった。 「な、な、そんな、んじゃないし!」 慌てふためく翔の顔を見て、柾鷹は小さく吹き出す。 「また何かあれば力を貸そう」 「それは、‥‥ありがと」 そのやりとりを一通り見ていたエグムは、少し遠い目をして呟いた。 「彼方君。貴方の依頼は、本当の意味で終わってはいないのではないですか?」 そう言って、エグムは巧の荷物を持ち上げる。 「あ」 その事に気が付いた翔は、慌てて他の荷物を持った。苦笑しながら、他の皆も無事な荷物を持って運んでいく。 日和は、坂の上の、まだ見えない里を見上げた。きっと巧は心配しながら待っているだろう。 里の人たちも、アヤカシを討伐できた事を知ったら安堵するだろう。そのとき、巧はどんな顔をしてお守りを受け取り、家族と再会するのだろうか。 「家族、か‥‥」 日和には家族の記憶がない。しかし脳裏では何故か、再会を喜びあう嬉しそうな家族の顔を思い浮かべることが出来ていた。 |