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■オープニング本文 深夜――、空に浮かぶ月は消えそうに細く、その光はとても頼りない。 星が瞬くなか、誰もが休んでいる筈の村の中で、ひっそりと動く影があった。 ずるずるずるずる。 手毬の大きさくらいのそれは、自身を覆う毛を引き摺りながら、村を徘徊している。そして自分が求めているものを探し出すと、ニタリと笑った。 影の目の前には、大きな壁があった。 しゅるりと蔓のような二本の腕を伸ばす。その筆のような先は、紅くしっとりと濡れていた。 紅い先が、壁をゆったりと撫ぜる。満足した影はケタケタと笑い声を上げた。 その声に、他の影も近づいてきた。同じ姿をした三体の影は、壁を見上げて楽しそうな声を上げる。 それで影は満足したのか、夜が明ける前に村を後にした。 朝、目覚めてそれを見た村人は絶句した。 壁に描かれていたのは、丸と線だけで表現する、人と思われる姿だった。子供が描いた落書きのような絵は、禍々しさを連想する赤黒い色が使われている。 最初は性質の悪い悪戯だと思われた。しかし度々その絵は描かれる。 最初は一ヶ月ほど間を空けてから。最近では三日おきになっている。間隔はどんどん狭まり、そして絵の内容も変わっていった。 丸と線である事は変わらない。しかし一番新しい絵は、胴体で体が二つに分かれていた。 最初はそれほど飢えてはいなかったのだろう。主に人を驚かし、恐れさせる行動を、アヤカシはとっているように見える。 しかし変化してきたアヤカシの行動は、どう見ても人間を欲していた。アヤカシの姿を見かける者、不気味な笑い声を聞く者は、日に日に増えていった。 「恐ろしくて、夜に眠れん者も出てきてなぁ。すると恐ろしい声を聞き、ますます心を擦り減らしてしまうんじゃ」 目の前に座る長い髭を蓄えた老人は、悲しそうな声で続けた。 「わしのような老いぼれなら諦めもつくんじゃが。小さな子供が恐ろしさに声を上げて泣くのは哀れでのぅ」 老人は髭に手を添える。その手で伸ばした髭を梳いた。 「どうかアヤカシを退治して下され。時が巡ればこの村を支える事になる、子供達の為にも」 それが老人――この村の村長からの依頼だった。 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
那木 照日(ia0623)
16歳・男・サ
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
橘 絢芽(ia6028)
18歳・男・志
難波江 紅葉(ia6029)
22歳・女・巫
景倉 恭冶(ia6030)
20歳・男・サ
橋澄 朱鷺子(ia6844)
23歳・女・弓 |
■リプレイ本文 「人を襲うだけでなくこんなことまで‥‥」 アヤカシが描いていった壁の絵を見ながら、橋澄 朱鷺子(ia6844)は表情を曇らせた。 「アヤカシとしては変り種でしょうが‥‥、かといって放置も出来ませんね」 壁の絵を見据えたまま、抑揚のない口調で志藤 久遠(ia0597)が応じる。その絵を見つめる眼差しは、久遠が持つ槍のように凛々しく鋭い。 「はい。許せません」 同じように朱鷺子も繊細な顔に決意を秘めて、力強く頷く。 「陰湿な敵ね‥‥こういう姑息な奴は十分に警戒しないとね」 二人に注意を促しながら、霧崎 灯華(ia1054)は密かに口端を上げた。赤黒い色の絵に興味が沸く。 久しぶりに戦闘が出来そうな予感に、灯華の心は弾んでいた。思わず小さな声で呟く。 「何が出てくるかわからないけど、楽しく死舞できそうね」 「霧崎さん?」 よく聞こえなかった朱鷺子が尋ねる。灯華は挑発的な笑顔を浮かべた。 「思いっきり暴れてやるわ。このアヤカシを倒す為にね」 「ええ」 久遠も絵を見据えたまま同意して、きつく手の平を握り締める。 「退治しましょう、絶対に」 「はい!」 力強い久遠の言葉に、朱鷺子も頷く。そして、ついと奥にある壁を指差した。 「あそこの壁にも、同じ絵がありますね」 「でも、少し違うみたいよ。何か、意味がありそうな感じね」 ここにある絵は人がひとり。向こう側の絵は人がふたり。何でもないと言われれば気にならない相違でも、灯華に微かな違和感を覚えさせる。 「他の絵を見れば、何か分かるかもしれませんね」 「じゃあ、もっと探してみましょうか」 思案する久遠を横目で見て、朱鷺子が提案を持ちかけた。 「いいんじゃない?」 笑って応える灯華に、久遠も首肯する。二人の同意を確認し、朱鷺子達はまず、人がふたり描かれた絵の方に移動する事にした。 「ああ、ちょっとすまない」 ぐすぐすと泣く娘を、父親は抱き上げてあやす。少しは落ち着いたのか泣くのをやめた娘の、小さな手は父親をしっかりと掴んでいた。 「こちらでアヤカシの姿を見た人がいるって聞いてきたんですけど‥‥」 水鏡 絵梨乃(ia0191)が尋ねると、父親は少し困りながら頷いた。 「実はアヤカシを見たのは娘の方でね。余程怖かったのか、最近はこんな調子なんだ」 アヤカシ、と聞いて小さな少女の身体が強張った。震えて父親にしがみつく姿を見て、着物の袖で口元を隠した那木 照日(ia0623)は、絵梨乃の肩にそっと触れた。 「絵梨乃‥‥、ここでその話をするのは‥‥」 「うん。他の人に当たろうか」 「いえ、娘から聞いた話でよければ」 二人の声は小さなものだったが、耳に入った父親は慌てて娘を降ろそうとする。しかし娘は、奥で母親といるようにと宥めても、父親の傍から離れなかった。 「‥‥あの、無理しなくても」 娘の必死さに、照日はおろおろとうろたえた。出来る限りの情報は集めたいが、それはアヤカシを退治するためであって、人を困らせたい訳ではない。 うろたえている照日を、父親にしがみついたままの娘が見上げる。 「‥‥おにいちゃんと、おねえちゃんが、アヤカシをやっつけてくれるの?」 「ああ、俺がちゃんと倒してやるよ」 不安に揺れる眼差しを見て、景倉 恭冶(ia6030)は大きな身体を屈めた。武骨な身体に刻まれた無数の傷跡に娘は驚いたようだが、恭冶が笑いかけると、その小さな肩から力が抜ける。 「あのね、これくらいのアヤカシなの」 娘が手振りで表したのは、手毬くらいの大きさだった。 「もさもさしてて、ながぁい手があるの」 「うん」 必死に身振り手振りで説明する様子を見て、絵梨乃が合いの手を入れていく。 「やっつけて、くれるよね? みんなをまもってくれるよね?」 最後に娘は懇願した。自分も恐怖を感じている筈なのに、周りを思いやる姿に胸を打たれる。 「子供の泣き声は耳に残るからな。全く、いくらアヤカシでも流石に趣味が悪い」 少し大げさに恭冶が肩をすくめると、娘は目を丸くした。不安になったのか、恭冶の顔色を窺い見ている。そんな娘に、恭冶はもう一度笑いかけた。 「怖がらせて楽しんでるなんて粋じゃない。何としてでも解決しよう」 「うん‥‥、やく、そ‥‥く、ね」 恭冶の力強い目に安心したのか、娘の目がとろんと重たくなっていく。そのまま父親にもたれて寝息を立て始めた。 「‥‥アヤカシを見てから、夜に眠れなくなってしまっていて」 腕の中に納まる小さな身体を、父親はそっと抱きしめる。そうして、深く頭を下げた。 束の間の安らぎであっても、父親にとってそれはかけがえのない時間だった。 「絶対に、アヤカシを退治しましょう」 決意を新たに、照日は袖先で覆い隠した唇を引き結んだ。 「ちょっとそこのあんた。この村に出現しているアヤカシについて知ってることがあれば教えてくれない?」 村のなかをふらりと歩いていた難波江 紅葉(ia6029)は、壁にかかれた絵を消している村人に声をかけた。作業の手を止めて、その村人が振り返る。 「ここの絵は消しているのか?」 ふと沸いた疑問を、橘 絢芽(ia6028)は口にした。二人はここに至るまでに、いくつかの絵を見ている。全ての絵が消されている訳ではないらしい。 「ああ、俺なんかは薄気味悪いからこうして消してるんだが‥‥。アヤカシの反応が怖くて消せない奴もいる。実際、消した方が絵が酷くなってるしな」 紅葉と絢芽は半分消えかけた絵を見た。人と思われる絵の胴体が切れている。その近くにアヤカシらしき絵が群がっていた。 人を食べる。予告めいたアヤカシの絵に、絢芽は顔をしかめた。 「酷くなってるって、少しずつかい?」 「ああ、ここの絵が一番酷いよ」 男の応えに、紅葉は少し考え込む。 「アヤカシは村の入り口から順番に、満足するまで絵を描いてるようなんだ。まあ、眺めるだけで満足してるときもあるが。だから、ここではいつも怒ってるよ。おっかないんだが、どうしても目が覚めてしまってね」 「それ、使えそう」 紅葉の呟きに、絢芽は目を瞬かせる。 「どうするんだ?」 「周りの絵を消して、書き換えた絵を並べていけば、アヤカシを誘導できるんじゃないか?」 紅葉は頭の中で状況を描いてみた。確かに書き換えられた絵が並んでいれば、そちらの方に気を取られて、消した絵の方に激怒することはないように思える。 「あんた、ここの絵を消すの、待ってくれないか? アヤカシを退治したら消すよ」 「‥‥まあ、アヤカシを退治してくれるなら、な」 男が二人を見ると、紅葉と絢芽は同時に頷いた。 「任せてくれ‥‥アヤカシは滅ぼす。絶対にね」 その言葉を聞いた男は、今使っていた道具を籠にまとめて差し出しす。 「いるなら持って行け」 男のぶっきらぼうな態度に、絢芽は苦笑しながら道具を受け取った。これがあれば作業はきっとはかどる。有難い申し出だった。 「ありがとう」 「いや、礼を言うのはこっちだ。アヤカシの事を頼む」 「大丈夫、私達が退治してやるからさ」 今度は紅葉が応える。二人は手を上げて去る男の背中を見送った。 「さて」 紅葉は絢芽に向き直ると、挑発的に笑いかける。 「皆と合流しようか。夜が来る前に準備しないと」 それぞれの情報を持って、開拓者達は一度合流した。 「つまりアヤカシを挑発するように、手直しする絵を並べていくのですね」 紅葉と絢芽の説明を聞いて、照日は自分なりに整理をつける。 「誘導するなら、待ち構える人も必要ですね」 「誘導が失敗した場合の対策も案じておきたいです」 久遠と朱鷺子の意見に、恭冶も頷いた。 「半々くらいが妥当じゃないか。照日、久遠、紅葉と俺が待ち伏せで、絵梨乃、朱鷺子、絢芽、灯華が‥‥」 「ちょっと待って」 恭冶の班分けに、待てをかけたのは灯華だった。 「あたしは単独行動をしたいわ。大勢で敵を警戒させたくないし。アヤカシと遭遇したときは式で知らせるし」 「じゃあ、絵梨乃、朱鷺子、絢芽がアヤカシの探索か」 「特に異議はないよ」 一通りの班分けに、絵梨乃が同意する。 「ちゃんと連携が取れるようにしとかないと。‥‥呼子笛、他にもある?」 「あたしが持ってるけど」 灯華の手の平に転がる呼子笛を、絵梨乃は確認する。できるなら、待ち伏せ班と探索班でひとつずつ持つようにしたい。 「じゃあ、ボクと照日で持つことにしよう。他に必要なものは‥‥」 「松明もあった方が良いんじゃないでしょうか。最低限に抑えれば、アヤカシが油断するかもしれません」 朱鷺子の意見を聞いて、絵梨乃は自分の荷物に手を伸ばした。 「一本なら持ってるんだけど」 「じゃあ、私が用意しようか。他に何かあれば、一緒に買ってくるよ」 紅葉の申し出に、灯華が続く。 「私も符の用意をしたいから、こっちの準備から外せる? その分の働きはちゃんとするわ」 「大丈夫だと思います」 おどおどした態度でも、照日の口調はしっかりしていた。 「ちゃんと手分けすれば‥‥十分に人手は足りていると思います」 他に意見が出ない事を確認して、恭冶は頷く。他の開拓者達も次々と頷いて、アヤカシを迎え撃つ準備が始まった。 夜が更ける。空にかかる月は細く、闇を照らす明かりには心細い。 松明を掲げながら、絢芽は神経を張り巡らせて、アヤカシの気配を探る。 「早く出てきなよ‥‥すぐ殺してやるから‥‥サ」 何かの気配が絢芽の琴線に触れる。それと同時に、朱鷺子の悲鳴が上がった。 「おねーちゃん、いい尻してんねー」 「水鏡さん!」 絢芽が視線を向けた先に、涙ぐむ朱鷺子をからかう絵梨乃の姿があった。その手には酒が握られている。悪ふざけが過ぎる以前の問題に、血が上った絢芽は、松明を朱鷺子に預けて刀を抜いた。 「この、酔っ払い‥‥!」 しかし絢芽が振った刀は、酔っ払いの奇妙な動きにかわされてしまう。絵梨乃は薄く笑みを浮かべた。 「しょーがないなー。じゃあ、絢芽でガマンだ」 「は?」 「ボクは女の子が好きなんだけどねー」 あっという間に絵梨乃は絢芽に抱きつき、身体をぺたぺたと触り始めた。展開についていけなかった絢芽が我に返ったとき、三人が同時に反応した。 夜の村に笛の音が響く。今度こそアヤカシとの遭遇の知らせだった。 「あわ‥‥狙い通りでした‥‥!」 アヤカシの誘導は思いの外上手くいった。照日は手にした呼子笛を吹き鳴らす。同時に紅葉がまだ火の付いていない松明を掲げる。 「火精よ、この松明に火をつけておくれ‥‥」 紅葉の呼びかけに、松明が瞬く間に燃え上がり、アヤカシの姿を照らした。 手毬ほどの毛玉が二体。怒っているのか歯を鳴らしている。 「確か最後の絵は‥‥アヤカシを倒すもの、でしたね」 アヤカシの怒りを分析しながら、久遠は長槍を構えた。村のなかという限られた空間では不利な獲物に、速攻勝負を決め込む。 紅い燐光を纏う長槍が、薙ぎ払うような素早い斬撃を繰り出す。続いて照日も前に出た。 「いきます‥‥肆連撃・爻‥‥」 アヤカシの懐に入り込み、二刀による攻撃を放つ。すばやく刀を握りなおし、一部の隙も与えず弐連撃を叩き込んだ。 毛を逆立てたアヤカシは、長い腕を鞭のように振って恭冶に叩き付ける。攻撃を受け流した恭冶の腕に巻きつき、動きを拘束した。 にらみ合う恭冶を優しい風が包み込む。風の精霊から癒しの力を借りていた紅葉は、そのまま流れるように士気を高める舞を始める。 「景倉さん!」 そこに朱鷺子の声が響いた。探索班となっていた者達が合流する。 朱鷺子はすばやく弓を番えると、恭冶を捕らえているアヤカシの腕に狙いをつけた。視界が悪いなかで、朱鷺子の矢は正確に放たれた。 自由を得た恭冶は、紅葉の力がみなぎる身体で渾身の一撃を振るう。アヤカシの身体が弾ける様に、瘴気となって霧散した。 もう一体のアヤカシが、じり、と後ずさる。逃げ道を確保する為に、戦う力に乏しい紅葉に狙いを定める。しかし紅葉は攻撃に何とか耐え抜いた。 「逃がさないよぉ」 絵梨乃の声に振り向くと同時に、アヤカシに向かった回し蹴りが決まる。転がったアヤカシは、怒りに震えながら絵梨乃を攻撃した。絵梨乃は酔いが回った足でかわし続けながら、アヤカシの傍らに立つ。アヤカシに繰り出される後ろ回し蹴りを避ける術はなかった。 ボロボロになりながらも逃げようとするアヤカシに向かって、絢芽は刀をやや倒し気味に構える。 「これで最後だ」 振り払われた刀は、アヤカシの身体を一刀両断にした。 笛の音が聞こえる。しかしすぐ近くにある気配に、灯華は足を止めた。ゆっくりと気配に近づくと、小さな影を目撃した。その影は壁に向かって長い腕を伸ばしている。 描かれているのは、アヤカシに食べられている人の絵だった。すぅっと笑みを浮かべた灯華は小さな式を召還する。式が操る紅い雷は、アヤカシへと降り注いだ。 突然の攻撃にアヤカシは身を竦ませる。灯華はゆっくりとアヤカシとの距離を縮めた。 「さあ、あたしと遊びましょ」 本能的に何かを感じたのか、アヤカシは震えだす。近づく灯華を追い払うために腕を打ち払うが、尽く灯華はそれを受け流していく。 笑みを浮かべたまま、灯華は構えた符から赤い蛇を呼び出した。蛇はアヤカシの身体に纏いつき、身体を締め上げる。 「ふふふ、あの絵みたいに真っ赤にしてあげるわ」 灯華は新たな式を呼び出した。式は真空の刃を生み出し、アヤカシを切り刻んでいく。あっという間に、アヤカシの姿は粉砕された。 「‥‥もっと楽しませてくれるかと思ったのに」 つまらなそうに呟く灯華の声は、再び静寂を取り戻した夜の空に消えていった。 翌日、開拓者達は残された絵を消すのに奮闘していた。 「無事に終わって良かったです」 「ええ、本当に」 昨夜の戦闘の後をも眺めながら、照日と朱鷺子は戻ってきた平穏を噛み締めていた。 「でも敵の狩り残しが居るかもしれないし、数日は滞在して殲滅を確認した方がいいかもね」 そんな相談をしていると、恭冶の元に小さな娘が駆け寄ってきた。夜に眠れなくなったと言っていたこの娘は、昨夜のアヤカシとの戦いを聞いていたのかもしれない。 「怖かったか?」 恭冶が尋ねると、娘は頭を思い切り横に振った。 「おにいちゃんたちがいたから、へいき! あやかし、やっつけてくれたんだよね」 「ああ」 興奮気味に頬を赤らめる娘の頭を、恭冶はくしゃくしゃと撫ぜ回す。少し乱暴にされながらも、娘はその顔に満面の笑みを浮かべていた。その顔を見て、恭冶はほっとした。泣き声より、笑い声の方がずっと良い。 娘の後ろを歩いていた父親が、頭を下げた。 「本当に、ありがとうございました‥‥!」 「この笑い声がこれからも続いていく手伝いができたなら、こちらも嬉しい限りやね」 恭冶の言葉に、ずっと気を張り詰めていた父親にも、笑顔が戻る。 いま村は、笑顔と取り戻された平穏に温かく包まれていた。 |