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■オープニング本文 桜の頃、花見客が郊外の桜並木に訪れるようになれば、お茶屋の一家は毎日揃って郊外まで足を運び、そちらの出店で一日を過ごすようになる。それはずっと昔から変わらない習慣だ。 だから今年もお茶屋の一家は、揃って桜並木の中程に店を出し、お茶とお団子を花見客に振る舞っている。ご主人の藤吾(とうご)と奥さんの瀬都(せつ)が忙しく働いて、お茶屋の小さなお嬢さんの瀬奈(せな)と去年生まれたばかりの弟の藤也(とうや)の世話はお手伝いの亜季(あき)が見る。 咲き始めの頃はそうして過ごしていたのだけれど、花も盛りに近づいてくると、だんだんお客様も増えてきて、夫婦2人では手が回らなくなってきた。忙しそうに働く両親を見ていた瀬奈は、ねぇ、と一緒に遊ぶ亜季の袖を引っ張って。 「あきもパパとママをてつだわなくていいの? せな、とうやといっしょにちゃぁんと良い子でまってるわ」 「へぇ‥‥そうですねぇ、もう少し忙しくなったら、あっしもお手伝いしますさ」 瀬奈がおしゃまな口調で言ったのに、亜季は少し困った調子で頷いた。だが、瀬奈が幾ら数えで6歳になったばかりにしてはしっかりした子供で、この頃では弟の藤也のおしめや離乳食の世話も出来るようになってきたとは言え、幼い子供2人だけで置いておくわけにもいかない。 困った様子の亜季を見上げて、瀬奈も困った様子で小さな手をほっぺたに当て、いつも一緒のぶち猫みゃぁやを見下ろした。んなぁ、と鳴いたみゃぁやがゴツンと頭を瀬奈の膝にぶつけて慰める。 しばらくそうしていたものの、小さな瀬奈には良い考えが浮かばなかったらしく、年の初め頃に作ってもらった遊び道具の貝合わせの貝を、掴んではぽいと放り投げて遊ぶ藤也の相手に戻っていった。そんな小さなお嬢さんの後ろ姿に、亜季は小さなため息を吐く。 そうして旦那さんと奥さんに、お店のお手伝いの人か瀬奈お嬢さんと藤也坊ちゃんの遊び相手の人を、花見の間だけでも頼んでもらえないか相談してみようと思ったのだった。 |
■参加者一覧
久万 玄斎(ia0759)
70歳・男・泰
玖堂 柚李葉(ia0859)
20歳・女・巫
玖堂 羽郁(ia0862)
22歳・男・サ
リエット・ネーヴ(ia8814)
14歳・女・シ
ライオーネ・ハイアット(ib0245)
21歳・女・魔
ハッド(ib0295)
17歳・男・騎 |
■リプレイ本文 見渡す限りの桜並木は、今を盛りと花を咲かせていた。中程には簡素な作りのお茶屋さん。並べた椅子にかけた緋毛氈が、春の光にも鮮やかで。 まだ客が居ない店の表で亜季や藤也と遊んでいた瀬奈は、人の気配にぴくりと顔を上げた。お客様が来たら裏の方に行っててねと、両親に言われている。 けれども、藤也をよいしょと抱き上げた瀬奈に、良いのよ、と微笑んだのはライオーネ・ハイアット(ib0245)だ。 「私たちはお手伝いに来たの‥‥花も色褪せてしまうような可愛らしいお嬢さんの為にも、ね」 「私、リエットゆーの。よろしくだじぇ〜♪」 元気良く手を振り上げて挨拶したリエット・ネーヴ(ia8814)の声も聞こえたのか、藤吾と瀬都も店の中から出て来た。開拓者達を見てぺこりと頭を下げる。 うむ、とハッド(ib0295)が鷹揚に頷いた。 「子供とにゃんこは世界の宝であるから、王たる我輩が恩寵をなそうぞ」 「ありがとうございます」 どこかのお金持ちの坊ちゃんなんだろう、と思いながら藤吾は頭を下げる。またこっくり頷くハッド、実は早くみゃぁやや子供達と遊びたくてうずうずしていたり。 そんなハッドに苦笑しながら、玖堂 羽郁(ia0862)はバタバタ暴れる藤也をしっかり抱えた瀬奈の前に膝を折った。そっと頭を撫でる。 「今回は兄ちゃん達が瀬奈ちゃんと藤也君の面倒見たり、パパとママのお店を手伝うからな♪」 「‥‥?」 「瀬奈ちゃんだけが頑張るんじゃなく、皆で一緒に頑張ろうな?」 羽郁の言葉に不思議そうに大人達を見回して、それから足下のみゃぁやを見下ろした瀬奈の腕から、ぐずり始めた藤也を瀬都が抱き上げた。途端、泣き止む子供を佐伯 柚李葉(ia0859)がじっと見る。 藤也が握っているのは、彼女も作った合わせの貝。本来は貝の内側に描いた絵柄を合わせる玩具だが、まだ解らない藤也はその貝を投げたりかじったり振り回したり。 見てる間にもぽいと貝を放り投げ、ご機嫌な笑顔になった弟の手に、拾った貝を握らせてやった瀬奈の頭を、ふふ、と笑って撫でた。 「ちゃんと遊んでくれているんだ‥‥嬉しい。藤也君、首が据わったんですね、抱いて良いですか?」 「ええ、勿論」 「良かったわねぇ」と笑った瀬都から、受け取った藤也をそっと抱く。意外に重くて、大人よりも体温が高くて、何よりふにゃりと柔らかくて。 嬉しそうに微笑んだ柚李葉の側に立ち、久万 玄斎(ia0759)も「どれどれ」と藤也の顔を覗き込んだ。孫の如き年の子供に、とっておきの好々爺の笑みを浮かべる、のだがしかし。 「ふ‥‥ええぇぇ‥‥ッ!」 「にゃッ!? フーッ!」 「おお、坊ちゃんに泣かれてしまった!? みゃぁやとやらもなんか殺気だっとるし‥‥爺ショック!!」 何故か火がついた様に泣き出した藤也にびくりと飛び跳ねて、みゃぁやも背中の毛を逆立てる。瀬都が慌ててあやし、瀬奈がみゃぁやに「メッ!」と言い聞かせるうち、騒ぎは収まったのだけれど。 1人の好々爺の胸に刻まれた傷は、がっくりうなだれた背中を見る限りは、深いようだった。 ◆ 花見の客はふらりと、或いは連れ立ってやってくる。今もまた1人、どさりと荷物を置いて緋毛氈に腰をかけた男に、ライオーネが滑るように近づいて声をかけた。 「お客様、どちらからおいででいらっしゃいまして?」 「隣町から‥‥」 「まぁ、それは遠くから良くいらっしゃいました。早速、お茶をご用意いたしますね」 にっこり笑ってそう言うと、ありがたい、と男が安堵の息を吐く。そうして荷物を足下に引き寄せて、のんびり辺りの景色を眺め始める。 出店の手伝いと、瀬奈達の遊び相手は交代でする事にして、今店に居るのはライオーネと玄斎、羽郁。主に羽郁は奥で団子作りを手伝うとかで、実際に出ているのは2人だけだ。 疲れているなら飲みやすい方が良かろうと、少しぬるめのお茶を出して団子とお茶のお代わりの注文を預かってきたライオーネに、玄斎が言う。 「上手いもんじゃのぅ」 「ジルベリア式接客術ですから」 「ほぅー」 今の流れのどの辺りがジルベリア式、とは聞かず玄斎はあっさり頷いた。頷いて「しかし、わしにもうぇいたーとやらが務まるじゃろうか」と笑いながらいそいそと、ライオーネと同じく胸の辺りに盆を抱えてみたりする。 久万玄斎、いつまでも若者の心を持つご老人。今も辺りをきょろきょろ見ながら、混ざれそうな若者の客を物色している玄斎の気持ちを端的に言うならば、 (若いもんと仲良くなるチャンスじゃ〜! 青春再びじゃ〜!!) 実に前向きだがきっと、いざ接客となれば年の功を発揮してくれるはず。そのはず。 賑やかなお茶屋の店先とは反対側の、お茶屋の裏の子供達の遊び場では、柚李葉の吹く可愛いオカリナに合わせて歌を歌いながら、瀬奈がハッドと一緒にお手玉で遊んでいた。 以前に開拓者から貰ったお手玉で上手に遊ぶ瀬奈の前で、お手玉を受け止めようとしてはあらぬ方へ飛ばしてしまうハッドは、手まですっぽり隠れるまるごととらさんを着て紙でこしらえた冠をつけた『猫の王様』状態。それでお手玉を受け止めようとあわあわするものだから、瀬奈がついに手を止め笑い出す。 少し離れた場所ではリエットがみゃぁやと一緒に、布を敷いた行李の中で眠る藤也のお守りをしている。時々藤也が身じろぎすると、みゃぁやが鳴いて瀬奈を呼んで、そうしたら瀬奈はすぐさま飛んでいって、良い子良い子と頭を撫でておしめを確かめる。 幾度かそんな事があって、すっかり目が覚めて動き回り始めた藤也に悪戦苦闘しながらおしめを換える瀬奈を手伝った柚李葉が、ご機嫌にハッドの着ぐるみによじ登りひげを引っ張り始めた藤也を見る瀬奈の頭を撫でた。 「瀬奈ちゃんは将来素敵なお母さんになるね」 でも疲れたらお休みして良いんだよと、言われた言葉に首を傾げる瀬奈に微笑む。そうして藤也の方を見れば、嬉しそうにひげを引っ張られているハッドと、それを笑顔で見守るリエットが居て。 見ている瀬奈に気付いてハッドが手招きした。ぱたぱた駆け寄ってきた瀬奈の手に、持ってきた金平糖をコロンと落とす。 「一緒に食べるぞよ」 「うん‥‥!」 瀬奈は大きく頷いて、もふもふのお膝とその上の藤也をじっと見た。反対側の膝をぽふぽふ叩くと、嬉しそうによじ登る。 ころんと口の中でとろける金平糖は甘かった。 ◆ お昼時を過ぎると、朝から元気に遊び回っていた瀬奈はこしこし目をこすり始めた。逆に藤也の方は午前中を寝て過ごしたおかげで、亜季が作った離乳食を全部食べてもまだまだ眠りそうにない。 「瀬奈ちゃん、ちょっとお昼寝するか」 「うん‥‥でも、とうや‥‥」 「藤也ちゃんは私達が見てるから大丈夫よ。一緒に子守歌を歌ってあげるからいらっしゃい」 羽郁の言葉に弟を振り返った瀬奈だったが、ライオーネもそう言うとこっくり頷いた。その拍子にチリンと揺れるのは、羽郁があげたブレスレット・ベル。動く度に音が鳴るのが面白いのか、ベルをつけた手をぶんぶん振り回したり、ぴょんぴょん飛び跳ねたりしていた。 そうして羽郁の膝にちょこんと座って、藤也を抱くライオーネが紡ぎ出したジルベリアの子守歌を聞くうちに、瀬奈はくぅと寝入ってしまった。それに微笑みながら、ライオーネはじっと不思議そうに自分の顔を見上げてくる藤也を見下ろす。 (兄の言うがままに政略結婚していたら、私にもこんな赤ちゃんが‥‥) ふと、過去を想う。後悔していないけれど、無垢な瞳を見ていると何となく、感慨に耽ったりもして。 どこから声が出てるか確かめようと、小さな手でライオーネの顔を触る藤也にそっと頬ずりすると、きゃぁ、と嬉しそうな声が上がる。それにまた微笑んで、ライオーネは子守歌を紡ぎ続ける。 けれどもその子守唄は、賑わうお茶屋の方へは届かない。 「すいません、こっちにお団子を」 「こっちのお茶はまだー?」 「はいはぁーい。只今いきます♪」 あちらこちらから上がる声にあちら、こちらと駆け回りながら、明るい笑顔のリエットだ。両手に淹れたてのお茶と団子を捧げ持ち、人の間をすり抜けて注文を待つお客様の元へ運ぶ。運んだ先で注文に間違いはないかを確かめて盆を置き、新たなお客様の前で注文を取る。 どうやらこの様子では嬢ちゃんの方へ顔を出すのは難しそうじゃと、午前から引き続き店の手伝いをしている玄斎は混みあう桜の下を眺め回した。あまり顔を出さない方が良いかと子守りは若い2人に任せ、手が空いたら顔くらい出すかと思っていたのだが。 それでもお茶や甘酒だけを飲んでいる客ばかりなら良いが、中には酒を飲んでいる客も居るわけで。さらに、ちょっと気が大きくなって回りにご迷惑をお掛けしてしまう人なんかも居たりして。 「その辺にしたらどうかの?」 「他のお客様もいらっしゃいますので♪」 そういう困った客を見つけるたびに、玄斎やリエットがニッコリ笑って、ただし目はちっとも笑わないまま『丁寧に』お客様にお帰り願うのを、店の奥から頼もしく柚李葉は見る。たまに何か、2人が目にも止まらぬ動きをしたり、小さな悲鳴が上がったりするのを聞きながら、せっせとお茶を汲んだり、団子を皿に乗せたり。 色んな意味で賑やかなお茶屋の店先を、とら‥‥ではなく猫の王様が迷子の子供の手を引き歩いていた。最初は泣きべそを掻いていた子供も、ハッドの姿にきょとんと目を丸くして泣き止んでしまったようだ。 「天儀では桜なるものが美しい季節になったのじゃの」 「兄ちゃんとこの村には桜がないの?」 「我輩は王であるからな」 もこもこの着ぐるみの手で子供と手を繋いで歩くハッドの言葉に、きょとん、と子供が首を傾げた。こっくり頷き返された言葉は良く解らないが、そっかぁ、と何となく納得した風情で頷いている。 あの調子だと親の方が子供を見つけてくれそう、と目立っている着ぐるみを見てリエットは頷いた。そうしてまた、注文を取りに走っていった。 ◆ お手伝い最終日。満開だった桜にも緑の葉が混ざり始め、客足も減り始めて、もうそろそろ夫婦だけでも切り盛りできそうだと言う事になったその日、瀬奈は羽郁にお昼寝をしようと告げられた。朝も寝たのに? と首を傾げると、理由は聞かないでと手を合わせられる。 なんだかよく解らないけれど、おにいちゃんが言うなら、とこっくり頷いた瀬奈は、素直に午後からも藤也と一緒にハッドのもふもふお膝でお昼寝し。その間に開拓者達は、いそいそ準備を整える。 お茶屋の家族はずっと忙しくて、せっかく日がな1日桜の下に居るのに一緒に花を見上げる事はない。だからせめて今日くらいはと、こっそり計画していたのだ。 幸いお店にも随分余裕が出てきて、今はライオーネと玄斎が花見客の相手をしている。その間に目を付けておいた手頃な桜に、羽郁とリエットが小さな提灯を考え考え飾り付けて。 「こっちの枝の方がしっかりしてるから負担が少ないんだじぇー♪」 「よし、じゃあそこと‥‥まだ寂しいか?」 お店の邪魔をするわけにいかないから、見て貰うのはお店が終わった後の夜桜。月の光に浮かぶ桜も美しいけれど、どうせなら灯りを点してより美しく。 こっそり準備を進め、店番と子守を交代しながら夕暮れを待ち、そろそろ店仕舞いをと夫婦が言い出したのを見計らって柚李葉は、隣に立つ羽郁の団子作りの手際に引きつけられていた視線を夫婦へと向けた。 「あの‥‥瀬奈ちゃんもずっと頑張っていたので、折角の桜をご家族で見て欲しいです」 その言葉に夫婦ははたと顔を見合わせ、桜並木を眺めた。もうすでに盛りが過ぎて、あと幾らもすればすっかり花弁も散り青葉に覆われる事だろう。 娘が弟が生まれる前から、色んな事を我慢して頑張っているのは夫婦も良く知っていたから、今年くらいはと彼らは微笑んで開拓者に頭を下げた。それから子供達と亜季を呼んで、お花見をして帰ろう、と告げる。 おはなみ、と瀬奈は父の言葉を繰り返した。それから伺うように開拓者達を見上げて、暖かな頷きが返ってくるのを見てぱっと嬉しそうに笑う。 たった1本提灯の灯りに浮かび上がる夜桜の下には、リエットと羽郁が作ったささやかな料理と飲み物が揃っていた。早くも玄斎が徳利を片手に、みゃぁやの前にお猪口を置いて酌をしている。 「ほほ。夜桜というものも乙なものであるの」 「桜は春の空色が良く似合うけど、夜の桜はほんの少し違う顔をするの‥‥」 はしゃいだ様子のハッドの言葉に、にこ、と柚李葉が微笑む。蒼く澄んだ空に華やかに咲き誇る桜と、月明かりの夜空に寂しげに浮かぶ桜は、同じ桜でありながら全く違うものを見ているようだけれど、今日の夜桜が寂しそうには見えないのは、暖かな眼差しが多いからだろうか。 胡座をかいて座った藤吾の膝に嬉しそうによじ登る瀬奈と、瀬都の膝に抱かれてお気に入りの貝の玩具をかじる藤也を見守り、ライオーネも座る。すかさず玄斎が差し出した猪口を受け取った。 ようやくのんびり過ごせる家族を邪魔しないように、だが共に頑張った仲間と共に、開拓者も天儀酒や甘酒、果実水をちびちび舐めるように飲む。飲みながらこの数日の間にあった出来事を思い返しては、文句を言ったり笑い合ったり。 そのうち酒精で気持ち良くなり始めた玄斎が、物珍しそうにペタペタあちこちを這い回っていた藤也と目が合った。一瞬の沈黙の後、にこぉ、と今度は満面の笑みを浮かべた藤也をひょいと抱き上げて、肩車をしてやると子供は髪を全力で掴みながらきゃっきゃっと歓声を上げる。 ちょっと羨ましそうに果実水を飲みながらそれを見ていた瀬奈は、それから夜桜の下へと視線を向けた。そこにはお兄ちゃんに抱っこされたお姉ちゃんが、ほっぺたを押さえて真っ赤になっていて、「抱っこ良いなぁ」と思う。 けれどもそれは瀬奈と、瀬奈の側で猪口を舐めていたみゃぁやしか気付いてなかったみたいで。きょろきょろ辺りを見回して、変わらず顔をほんのり赤くして喋っている大人達を見回して、向こうの方でコロンと転がったハッドを見つけた。 「おにいちゃん、ねんねなの?」 「‥‥ぞよ‥‥にゃんこが一杯ぞよ‥‥」 ムニャムニャ呟くハッドの言葉に首を傾げると、みゃぁやがふらりとした足取りでやってきてごろんと転がった。側には甘酒の入った茶碗がぽつりとおいてある。 どうやら甘酒でほろ酔い気分になってしまったようなのだが、もちろんそれを知らない瀬奈は、ねんねは風邪引くのよ、とおしゃまな口調でハッドの為に掛け布を取りに桜の下を走り出したのだった。 |