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■オープニング本文 ※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。 オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。 「じゃ、また寄らせてもらうぜ?」 「うんっ。下駄路さん、ありがとうございました〜」 ここは神楽の都。珈琲茶屋・南那亭。 今日も今日とて南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)が働いています。 「真世さん、こんにちは〜。のんびりしに来たよ☆」 「あら。いらっしゃいませ、コクリちゃん。ゆっくりしてね」 どうやら盛況のようですね。お客様は出たり入ったりしているようです。 「お〜い。真世、こっちの珈琲、まだ?」 「あれっ。こっちの砂糖壷に砂糖が入ってないんだけど?」 「はぁい。ただいまおうかがいします〜っ」 真世もぱたぱた行ったり来たり。忙しい忙しい。 と、この時です。 「にゃ〜ん!」 あれ? どこからともかく猫の鳴き声がしましたよ。 いや、それどころではありません。 「あれっ!」 周りを見回した真世が驚いたことに、お客さんが全員猫になっているではないですか。 「にゃんにゃん♪」 「に゛あ゛〜っ゛!」 落ち着きなく椅子からぴょんと飛び降りて床に丸くなる猫。 テーブルに飛び乗って、珈琲に舌を付けたら猫舌で火傷した猫。 猫猫猫猫、猫だらけ。 「ちょっと真世さん、これはどういうことにゃ!」 「え? もしかして、コクリちゃん?」 呼ばれて声のするほうを見ると、一匹の猫が二足立ちしてわたわたと両手を振っています。声で先ほど入店したコクリだと分かるのですが。 「何で喋る猫になってるの?」 「ボクに分かるわけないじゃにゃい。真世さん、何か変な魔法を使ったんじゃないにゃ?」 「そんなわけないけど‥‥」 ここで、新たなお客様がやってきました。 「こんにちは。ゆっくりさせてくださいな」 「あ。涼子さんにゃ!」 新たなお客様は、チョコレート・ハウスのオーナー、対馬涼子でした。早速良子に泣きつくコクリ。‥‥ちなみに、新たに入店した良子は猫にはならないようで。 「あらあら、可愛い猫ちゃん。どうしたの? 突然抱きついてきて」 「ボク、コクリですにゃ。何か突然こんな姿になったんだにゃ〜」 「その声は確かにコクリちゃん。きゃ〜っ。ますます可愛くなっちゃって〜」 ああ、涼子は喜んでコクリ猫を抱き締めて幸せいっぱいです。 「とにかく、原因を探って元に戻る方法を見つけてにゃ〜っ!」 「あ、いらっしゃいませ〜」 悲鳴を上げるコクリですが、肝心の真世は接客に忙しかったり。 「何かお客さんに評判なの。ゆっくり探すから、しばらくはお客さんにサービスして上げてね、コクリちゃん♪」 商魂たくましく真世はそう言ってウインクするのでした。 ああ、南那亭は一体どうなってしまうのでしょうか? |
■参加者一覧 / 静雪 蒼(ia0219) / 紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454) / ダイフク・チャン(ia0634) / 柚乃(ia0638) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 礼野 真夢紀(ia1144) / からす(ia6525) / 和奏(ia8807) / リエット・ネーヴ(ia8814) / フラウ・ノート(ib0009) / 御陰 桜(ib0271) / 十野間 月与(ib0343) / 不破 颯(ib0495) / 朽葉・生(ib2229) / 唯霧 望(ib2245) / 禾室(ib3232) / 龍水仙 凪沙(ib5119) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / 山羊座(ib6903) / アリス ド リヨン(ib7423) / エルレーン(ib7455) / にとろ(ib7839) / 甲真優(ib7843) / 霧咲 ネム(ib7870) |
■リプレイ本文 ● 誰も知らない、誰にも分からない。 どうしてこうなってしまったのか。 南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)としては、忙しく働いている最中に客に呼ばれて振り向いたらこうなっていたのだ。 「というわけで、私はなんにも悪くないんだからねっ」 「そうだって、コクリちゃん」 「そんなことボクに言われてもにゃあ‥‥。実際、猫になっちゃってるんにゃから‥‥。っていうか、この抱き上げ方はやめてにゃ」 主張する真世と新たに客として来店した対馬涼子が話している。そしてぷら〜んと涼子に掲げられた三毛猫姿のコクリ・コクル(iz0150)は白い腹をさらしたままじたばたと暴れてたり。「はいはい」と膝上に戻す涼子。 そして涼子は改めて周りを見渡す。 店内は猫猫猫猫、猫だらけだ。 「私が入った時にはこうなってたわけだから、一瞬でこうなっちゃったのね」 「いっとき騒がしかったけど、今はすっかり静かになっちゃってる〜」 首を傾げる涼子に、「そういえば」と思いなおす真世。猫だけにパニックになっても、結局のんびりごろごろし始めたというところだろう。 それはともかく、ほわほわと騒がしかった当時を思い返す真世だった。 「真世さん、クッキー焼けたよ?」 南那亭の厨房から、同じく南那亭めいど☆の十野間 月与(ib0343)の声がした。 「月与さん、ありがとっ。‥‥今日はお客さんが多いけど、もうすぐ二人来てくれるから頑張ろうね」 真世は当時、月与に声を掛けられて振り向いていた。そして、厨房から顔を出した状態でビックリした月与の様子の見て、真世も異変に気付いた。びくっ、と振り向くとこの有様だったのだ。 もちろん、猫になった客の方もこれには当然驚いた。 以下、客の立場で見てみよう。 ● その時、甲真優(ib7843)は別の席に砂糖壷を取りに行っていた。甘い物好きの口に珈琲は合わず、座った席の砂糖壷に砂糖が少なかったので仕方なく立ち歩いていたのだ。 「店員さん、追加で注文いいかな?」 「俺は女じゃねぇ! ‥‥いや、店員じゃねぇ!」 ヘッドドレスにジルベリア風のお嬢さまドレス姿の真優、その格好から店員と間違われて声を掛けられ声を荒げていた。‥‥普段、女性に間違われてしまいがちなのでちょっと勘違いしてしまったが。 「まったく‥‥、あれ?」 ここで突然の異変に気付いた。 視線が、座ったテーブルの下になったのだ。 「(!? ‥‥ニャ‥‥これ‥‥どうニャってやがる!?)」 とにかくいつもの視線に、と伸び上がる。微妙に変わってしまった自分の心の中の口調に嫌な予感を抱きつつも。 そして砂糖を入れようとしたコーヒーを覗き込んで愕然とした。 何と、黒い水面に一匹の三毛猫が映っているではないか。 しかも、頭にはフリフリなヘッドドレス! ぺ、と自分の頭に手をやると、珈琲に映る姿も同じ動きをした。 「(‥‥俺、かニャ)」 真優、落ち着いている。周りを確認すると他の客も彼のように完全に猫になっていたり、二足歩行をする猫になってたりしていた。店員の真世はそのままだったが。 「ま、いっか。これはこれで楽しいし♪」 「(こんな状況で店員気にしてニャいし!)」 真優、真世がそのままスルーしたことは、もしかしたら自分が猫になった事実より驚いたかもしれない。 「(とりあえずどうニャってるのか確かめねぇと‥‥)」 すとっ、とテーブルから降りる真優。冒険開始である。 ● 「こ、これはいったいどういうことですかにゃ‥‥」 コクリと同じテーブルでのんびりしていた朽葉・生(ib2229)のその時は、比較的静かだった。というか、しばし呆然としていた。 「生さんが猫になってるにゃ‥‥。って、にゃ? ボクまで猫になってるにゃ!」 猫になったコクリが慌てているのとは対照的に、騒ぐことなく思考を巡らせている。コクリに言われて改めて自分の姿を確認すると、銀色の毛、青い目の細身の猫の姿になっている。 「と、ともかく元に戻る方法を探すにゃ‥‥にゃ?」 自分で言っておいて内心真っ赤になっているのは、つい語尾に「にゃ」が付いてしまうから。断固避けたつもりでもついてしまうのだから照れもする。 この隙にコクリは真世のところへ行ったり涼子に泣きついたりしている。 「コクリさん、一緒に事件を解決しましょうにゃ」 生は床から涼子の膝の上に納まったコクリに言う。なでられ大人しく丸くなっていたコクリは、「にゃっ!」と顔を上げるとすとんと床に。 「生さん、そうにゃね」 しかし、状況がそれを許さない。 「さあ行きま‥‥にゃあっ!」 「まー。生さんも可愛くなって」 今度は涼子、あまりの可愛さに生を膝の上に抱えて撫で撫でするのだった。 ● 静雪 蒼(ia0219)はその時、お八つを食べていた。 珈琲に、ちょっと硬いおかき。 白猫に変わる前はぽり‥‥と上品に食べていたが、変身するとテーブルの上でガジガジと猫牙で砕きながら食べにくそうにしている。 「えろぉ〜うるさぁ〜おすにゃぁ〜‥‥?」 ここでようやく周りの変化に気付き、自分の変化にも気付いた。真世の「だったら猫喫茶で集客アップ〜」とかいうお気楽な声も耳に入った。 「‥‥仕方ないおすにゃ」 ひょい、と二足で立ち上がると顧客サービスへと出向く。 とてとて歩く蒼が通り過ぎたテーブルには驚きの声を上げている人物が。 「にゃんと! 猫さんになっちゃったにゃか〜?」 紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)は、虎縞柄のにゃんこ姿になっていた。 「もふ! ご主人様が猫になったもふ〜」 隣で沙耶香の相棒、もふ龍がびっくりしている。 「にゃ〜? 取り敢えず、何が原因かを探さないとにゃ‥‥」 首を捻るがこのままでは包丁も持てない。断固、元に戻る方法を模索しなければと思うのだが、寄ってきた金色のもふ龍のもふもふした姿に目が行ってしまう。 「いつも寒い夜は抱っこして寝てるにゃけど」 そっともふ龍の横に丸まり気持ち良さそうにうたた寝し始めるのだった。いや、すぐに背中にもふっと飛び乗ったぞ。 「もふ龍ちゃんの背中、もふっとして気持ちいいにゃ〜」 「にゃんこのご主人様かわいいもふ☆」 小型のもふ龍は、いつも可愛がってくれる沙耶香を背中に乗せることができて大満足のようだ。 ● 「みゃ!?」 その隣のテーブルでは、ダイフク・チャン(ia0634)が尻尾を立てていた。 「みゃ〜? 一体何があったみゃ〜?」 向こうのテーブルでは、もふ龍の背中でもっふりと佇む沙耶香猫が「ダイフクさん、口調はいつものままにゃ」とか眺めているが、姿はそうではない。 きっちり、白仔にゃんこに変化している。 そしてダイフクも朋友を連れて来ているのだが‥‥。 「みゃ? 綾香様みゃ〜」 どうやら猫又はそのままみゃ、と黒い猫又の綾香様を見てほっとする。 が、しかし。 「ニャハハハハハ☆ だいふく〜。こっちみるニャ〜☆」 綾香様は主人の変化にまったく動揺せず、どこからともなくエノコログサことネコジャラシを取り出す。 「みゃっ!」 「ニャハハハハハ☆ だいふく〜こっちニャ〜☆」 「みゃみゃみゃ〜!」 ダイフク、びくっ、と反応したかと思うと左右に振られるネコジャラシにちょいちょい猫パンチ。でも全て空を切る。そのうち綾香様はひょいひょいと動きを大きくし、ダイフクを操りまくり。とても楽しそうだ。 他の場所でも。 「うにゃああ。また猫になっちゃったにゃ〜」 ががん、と頭を抱えるのは龍水仙 凪沙(ib5119)。いつもならウサギの獣人らしく、リボンで飾ったウサギ耳が頭にあるのだが今は赤毛のチビ猫姿。あるのは猫耳だけだ。っていうか凪沙さん、猫にはなり慣れてるようで。 「あ〜ん、真世さん〜」 ぴょんぴょんにゃん、とテーブルの上から近寄ってきた真世の胸にダイブする。がっちり抱き止める真世。 「あらら、凪沙さんも‥‥。って、きゃ〜っ! かわゆいかわゆい」 真世は大歓喜とばかりに抱き締めて頬ずりをしてくる。「これで集客アップ間違いなしだわっ!」とか拳も固める。 「真世さん、この状況を利用しようとしているにゃ?」 たっぷりもふもふして堪能した真世は、厨房から呼ばれて「じゃ、ね」と下がる。凪沙は仲良しの真世のためならと、ある決心をする。 「にゃっ!」 とととと、と店頭まで行くと、しゃきんと右前肢を持ち上げくねっと手首を曲げて招き猫ポーズ。 「だったら協力しようじゃにゃいか」 ここが友情の見せ所とばかりにどどんと胸を張る。ウサギ獣人の心意気を見よ! ‥‥今は猫だけど。 ● さらにこの時。 「にゃにゃにゃ、あたし猫になってしまってるにゃ!」 びくっ、とテーブルの上で一歩引いていたのは、リィムナ・ピサレット(ib5201)。世界が世界なら「ロシアンブルーの毛色」と称されるであろう猫の姿になっている。 「ん、コクリちゃん?」 きょろ、と周囲を確認するとコクリが猫になって真世と話しているのを見た。そして、コクリと生が涼子にサービスしているのを見て、続いて凪沙と真世の話を聞いて‥‥。 「真世さんもああ言ってるにゃ! 可愛さアピールでお客さんをめろめろにしちゃうにゃ!」 誤解した。 「コクリちゃん生さん、小手毬にゃんこ隊結成にゃ!」 ぴょん、と床に降り立ち元気に主張した。 「もちろんうちも、お手伝いしまひょかにゃ〜」 同じ小手毬隊☆の蒼もやって来て盛り上がる。 その傍らで。 「にゃ? にゃにゃにゃー!」 柚乃(ia0638)が意味不明な声を上げていた。本人は「あれ? 猫になってるー!」と驚いているようだが‥‥。 「うなー‥‥」 ま、いっかと前肢をぺろぺろし始めた。 青い毛色のにゃんこ姿で、四肢や耳の先に行くにしたがって色の濃くなる美しい毛並みだったことが満更でもない気分らしい。 「ん?」 しかし、店内の新たな騒ぎには敏感に反応。何かをひらめいたようで、にゃっ、と床に飛び降りて表に向かう。 「集客アップにゃら‥‥」 そんなことをつぶやき、看板に字を上書きする。ってちょっと柚乃さん、何すんですか。 「これで完成にゃっ★」 そして、ひと仕事終えて猫笑みの満足顔。 何と、店の看板が「南那亭」から「南にゃ亭」になっているではないか。「那」の字が×印で消されているのがトホホな感じだ。 「でも、どっちかというと『なんじゃ?!亭』にゃっ★」 前肢を口に当ててにゃふふふふ、と一人受ける柚乃だったり。 「‥‥なんだ、こりゃ」 通り掛かる者は一体何事、と看板を見たり凪沙の招き猫を見たりして入店する。 「おや、猫カフェになったのかね」 からす(ia6525)も通り掛かったようで、入店。 「待ち合わせに遅れてしまったな。申し訳ないことをした」 珍しく約束の時間に遅れてしまった山羊座(ib6903)も入店。 「ちょっと休憩して行こうかしらねぇ」 御陰 桜(ib0271)もふらっと入っていったぞ。 「望、きっと真世はいつものようにてんてこ舞いしておろう。急ぐのじゃ!」 「禾室さん待ってください。様子がおかしいですよ?」 店員の禾室(ib3232)と唯霧 望(ib2245)もここで到着。 以上、後から来た五人は猫になることはなかったが、さらに賑やかになるのは間違いなかった。 ● 「何と、猫喫茶と化しておではないか!」 「あ。禾室ちゃん、望さん、助かったです〜。お願い早く手伝って〜」 たぬき尻尾をひぴんと上げて店内の様子に驚く禾室に真世が遠くから声を掛ける。 「とりあえず急ぎですね。私はこのまま給仕しましょう」 望はそれだけ言うと、腕に掛けていた上着を羽織りぽっけからネクタイを出してしゅるりと巻いた。スタイリッシュに執事服「忠誠」の装着完了である。 一方、からすの方はそのまま着席。 「おお、ありがとう」 そこへぴょんにゃんと凪沙猫がメニューを咥えてテーブルに飛び乗った。にゃっふん、と胸を張っているのは招き猫をして招いた自分の客だと思っているから。からすも何となく悟って、「うむ、賢いな」と目尻を下げる。 「あらまあ、にゃんこがこんなにいっぱい。これは遊ばないとダメよねぇ♪」 うふふふ、と色っぽい笑みを浮かべているのは、桜。 「近所のノラ相手に鍛えたねこじゃらしてくにっくでにゃんこの本能を刺激シてあ・げ・る♪」 しゃきーん、とネコジャラシを取り出し「おいでおいで〜♪」とふりふりする。 「桜さん、いらっしゃいませにゃ」 「コクリちゃん? ほ〜ら」 「ボ、ボクは別に‥‥にゃっ!」 注文を取りに来たコクリはツンするものの本能的に反応してしまう。 「コクリさん、ここは私が‥‥にゃんとか」 「あら、生ちゃんなのね。はい、抱っこシてあげるわね〜」 かばうように前に出た生を、今度は抱き上げてなでこなでこする桜。コクリは桜のてくにっくで力なくへろへろに。 「どう、気持ちイイ?」 「にゃ! ‥‥はふぅ」 「コクリちゃん。毛づくろいしてあげるにゃ!」 いろいろ可愛がられてぐったりする生。桜の足元では、ふらふら立ち上がったコクリにリィムナが抱き付きアタックをしていた。そのままコクリを押し倒すと、ぺろぺろと手や顔や首筋、耳の後ろや背中を丹念に舐め舐め‥‥。 「にゃ! にぃやん、リィムナさん」 「猫は一匹でいる時も可愛いけど、二匹でじゃれ合ってるとこはもっと可愛いにゃ!」 ああんと体をくねらせるコクリに、めっ、とリィムナ。ううう、と納得するコクリは恥かしがりながらもじゃれ付き始め、耳を舐め返したり。リィムナも満足そうに改めてコクリに抱き付きなおす。 「取り敢えず、お手伝いしまひょかにゃ〜」 その横では、蒼が得意の舞を披露し始める。 背筋が伸びたり猫背で屈んだりと、二足歩行の猫ならではのしなやかさがある。 ‥‥ととと、何かよろっとふらついたぞ。 「にゃんや勝手が違いすぎますにゃ〜」 「そういうのも可愛いわね〜。あ、真世ちゃ〜ん、みるくちょうだい♪あと、お皿貸して貰えるかしら♪」 桜は猫の小手毬隊☆に囲まれてとても幸せそうだ。 ● さて、そのころ厨房では。 「お店の方が妙に騒がしいな〜と思ったら、にゃんこカフェ状態なんですね」 礼野 真夢紀(ia1144)があまり驚くこともなく言う。彼女にとって客は客だ。 「猫さんじゃ、熱いコーヒーよりも人肌ミルクの方が良いかな? 猫舌さんだもんね」 今日は主に給仕仕事をするつもりの月与はメイド服姿。クッキーを焼いた後だが、また厨房を手伝う。 「本日の市で新鮮で安い鯵と秋刀魚があったから今日の賄にしようと思って、アジフライとかば焼き出来るよう下拵えして来たんですけど‥‥お客様に出した方が宜しいでしょうか?」 「そうしよう、真夢紀さん。猫ちゃんたち、何だかんだで手伝ってくれてるもん」 真世も戻ってきてそんな話を。 「まゆちゃん、猫さん用のお茶菓子ってどうしたら良いかな?」 「クッキーならミルクに浸したら?」 そだね、と月与。早速、真夢紀と月与は作業に取り掛かる。 「よし。それじゃ、わしも出るのじゃ」 メイド服に着替えた禾室が店に出る。 「あ。でも、猫と一緒に飲んだり食べたりは嫌がる人って、いるかも」 「今時分なら戸外で飲めるようなスペース作って、そこならペット同伴可能にすれば、それ目当てのお客様とか呼び込めませんかね?」 真世の突然のつぶやきに、真夢紀が手を動かしながら答える。 「平時も動物と一緒の飲食スペースを作って、のんびりくつろぎたい人、動物が苦手な人と別れて楽しめる様にすれば、より多くの人が楽しめるお店になりそうだね」 「真夢紀さん、月与さん、それいいんじゃないかな? 早速やってくるね」 ぱたぱた駆け出す真世だった。 ● 時は若干遡る。 「みぎゃ 猫ににゃってるす!」 尻尾を立てているのは、アリス ド リヨン(ib7423)。世界が世界なら「ワイマラナーに良く似たロシアンブルー」と表現されそうな猫になっている。 そして、改めて愕然としたのは先のセリフが「にゃっ!」の一言になっているから。 (これは一体どうしたことにゃのか) そう思ったところでまたはっとする。 (心のつぶやきに「にゃ」って付いてるっす! 誇りある犬の獣人としてにゃんという‥‥) ううう、と両前肢で額を可愛く抱えて悩むが、語尾についてないあたりは見上げた根性である。 と、ここで山羊座が入店した。 「なんだこの店は? 人語を解する二足歩行の猫が接客する店?」 きょろ、と見渡し猫だらけの店内にぎょっとするが、さすがは融通の利かない男。「他人の趣味はとやかくはいえんが、アリス殿を捕まえて早く出よう」などと我が目的に忠実である。 「にゃっ!」 そんな一種独特の雰囲気を纏う存在の入店に、ぴぴん、と髭を立ててアリスが反応した。そして早速、山羊座の足元に猫まっしぐら。 「にゃーん、にゃーん‥‥」 アリスとしては、「山羊座さみゃあー。オレはここっすー。山羊座さみゃあー、助けて下さいっすー」と言ってるつもりだが、犬の獣人のプライドが影響したか二足歩行の猫にはならず通常の猫になってしまったアリスに言葉はない。 と、ここで奇跡が起きた。 「なんだ 猫が纏わり付いて煩い。‥‥って貴殿アリス殿か!? なんでそんな姿に」 なんと山羊座、アリスを判別した。もしかしたら、アリスの押しかけ従者敢行っぷりがもう山羊座に馴染んでしまったのか。アリスの日ごろの行いの苦労が実っているというか山羊座の押しかけられっぷりが偲ばれるというか。 ともかく、無事に約束は果たされたのだがさらに試練が待つことをまだ二人は知らない。 ● もう一回、時は遡る。 「へぇ、これが猫の視点にゃ。折角だから猫ライフを満喫しようかにゃあ」 とん、と椅子から降り猫ライフを実践する姿がある。 「あれっ? もしかして不破さん?」 「にゃ〜」 通り掛かった真世は、足元の猫を不破 颯(ib0495)だと一発で見破った。 「まったくもう。猫になっても『へらり』って笑ってるんだから〜」 真世は大受けして不破を抱きかかえる。 そして真世が通り掛かったテーブルでは。 「おかしいにゃ、南那亭でこーひーを飲んでいたら、いつの間にか手がもふもふになっていたのにゃ」 ああ、いつもの剣を肩に乗せた凛々しい姿はどこへやら。エルレーン(ib7455)がかぎ尻尾の猫になって、ちょいちょいと珈琲カップの取っ手を弄っている。 「ええと、猫の接客とはどうすれば‥‥というか珈琲は飲めるのでしょうか?」 ここで望がやって来た。 とりあえず、エルレーンの珈琲を底の浅い皿にうつしてやる。ついでにクッキーもどうぞ、と。とりあえずクッキーをがつがつやるエルレーン。 「さくさくだにゃ!」 顔を上げて、ぺろりと口の端に付いたクッキーの粉を舐め取ってご満悦。 が、喉が渇く。 ぺろ、と舌を出してびくうっ、と猫背とかぎ尻尾を上げた。 「熱いにゃっ! さっきまではよかったにょに‥‥」 どうやら舌も猫仕様になっているらしい。 「猫も珈琲飲むんじゃのぅ」 この時、禾室も来た。 「あ、猫舌じゃからそのままじゃと辛いんじゃな。少々待っとれ」 そして氷霊結で氷を作って冷ましてやる。これで万事解決。 その刹那だった。 「えーさ餌ぁッ! 餌あぁッ!!」 くるっすた〜んと、金と黒の虎縞子猫が登場。この元気流出事故っぷりはまさか‥‥。 「深夜姉ぇ、餌ぁッ!」 リエット・ネーヴ(ia8814)の天真爛漫さと何ら変わらない。つまりそういうことで。「はいはい」と真世がクッキーを出すとあぐあぐ食べる。そして、後ろ足立ちで棒を両手に持って回し、また「え〜さ餌ぁッ!」と歓喜のダンスを始めるのだった。 「ん。ということは?」 ふとひらめいてぐるりとリエットの登場した方を見る真世。 「にゃっ!」 暗い茶色毛の猫が一匹、テーブルにいた。真世の視線に気付くとにぱっと猫笑みをして、しなやかな体を伸ばしてジャンプ。からすの座っている窓際の席に近い日当たりのいい場所に飛び乗った。――白い丸帽子を咥えたまま。 フラウ・ノート(ib0009)である。白い帽子にすぽっと隠れると、頭だけ出して気持ち良さそうに日向ぼっこを始めた。 「なんか、猫になりなれてるというか。‥‥でも、フラウさんは普通の猫になっちゃったのね〜」 ここで、あ、と真世。 「にゃにゃにゃ〜っとねぇ。これで猫又に…なれるのか?」 颯がすたっと降りてリエットと一緒に踊り始める。颯。手拭い頭に被って、猫又が踊るらしいという踊りをするあたり、相変わらず人付き合いが良いようで。 ● その頃、ネム(ib7870)はいつも通りだった。 あ、いや。 姿は、二足歩行もする額に小さな角のある赤虎猫と激変したのだが。 いつも通りなのは、ごろごろしてる様子。このあたり、まったく変わらない。そしてちょうど月与が給仕で近寄ったぞ。 「お腹空いたにゃ〜」 「はいはい。何か飲む?」 「あ、ちょっと待って」 ここで真世が割り込んだ。 「そうか、席を分けるんだったよね」 ひょい、とネムを抱き上げてからすのテーブルにうつす月与。 「ネムは〜、修羅なんだにゃ〜」 ネムがからすに挨拶する間に、真世がエルレーンと颯とリエットを連れて来た。 「真世殿。どうしてここに集める?」 「いや、からすさんならたくさんいても慣れてるかな、と」 「そりゃ、たくさんなのは慣れてるからね」 ずずず、と珈琲を飲む。 「我輩は猫である。名前はエルレーンにゃ」 「そういう本もあったな‥‥。おや、貸本を置きだしたのかい?」 「うん。下駄路さんが『置かしてくれ』って」 真世から聞き、窓際の書棚に並んだ貸本に興味を示すからすだった。下駄路 某吾(iz0163)が持ってきたらしい。 「あ、おなか出して寝ると風邪引くわよ。いつもの縞柄のちゃんちゃんこは?」 真世の方は白猫になっているにとろ(ib7839)を発見。何と、白いお腹を上にしてキレイに大の字になって熟睡しているではないか。おかげで反応がない。 「あの、にとろさん? ‥‥んもう、この隙に悪戯しちゃうんだから」 ついつい丸出しのお腹をつつく真世。 その瞬間であったッ! 「にゃっ! びびびびび‥‥」 「いやぁ〜ん」 何とにとろ、上半身を上げて物凄い勢いの往復ビンタ‥‥ではなく猫パンチを真世の腕に集中させる。そして手が引っ込むとまた熟睡を始めるのだった。 「んもう。アヤカシが出たぞ〜」 「にゃっ?」 さらに意地悪して嘘を言う真世。ひぴんと髭を立てて起き上がるにとろだが、嘘とわかるとまた熟睡。これは動きそうもないと諦める真世だった。 ● さらに真世は店を回る。 すると、高いところから飛び降り、また高いところに上って飛び降りるという、何かを試してみるような猫を発見した。 和奏(ia8807)である。 「何やってるの? 和奏さん」 真世、この様子でこの黒猫が誰なのかを一発で見抜いた。 「‥‥」 和奏、びくっ、と縮めるもそのまま知らん振り。今度は棚の後ろへと首を突っ込む。 「何やってんですか〜。も〜」 真世、首根っこを掴んで和奏を引きずり出したり。 「‥‥」 和奏の方は特に怒るでもなく、満足そう。薄暗闇で人の目より格段に見えることに目を見開いて驚いているからだ。 「にゃ‥‥」 それだけ言って下ろしてもらうと、今度は真世の置いた底の浅い皿に珈琲ではなくこっちの水を入れてくれ、と前肢で可愛らしくゼスチャー。「う? うん」と真世が言われたとおりにすると、ちょいちょいと前肢を水につけて、そのままうにうにと顔を洗う。 「うな‥‥」 そして満足そうに、何かを待つかのように窓から空を眺めるのだった。 「ま、まさか!」 そう。ぴんと来た真世の睨んだとおり、「顔を洗ったら雨が降るかどうか」を検証しているのだ。 「ともかく、からすさんのところに行ってね」 幸い、からすのテーブルでも空は見えるので素直に抱かれる和奏だった。 ● からすの席はもう、猫猫猫猫、猫だらけ。 それでもからすは動じる風もなく読書に浸っていた。 「空賊の正装がこんな服に変わるなんて、許せにゃいんだぞっ!」 テーブルでは、世界が世界なら「学ラン」と呼ばれる服を着た猫が仁王立ちしていた。真世、セリフのツン具合からこれが天河 ふしぎ(ia1037)だと理解する。 「ふしぎ〜、好きな人って〜、誰にゃ〜?」 あああ、ネムがふしぎのそんな自己主張を完全無視して恋愛話を振ったぞ? 「そ、そんなこといえるわけがないんにゃからなっ!」 「ふ〜ん、ふしぎの好きな人、知りたいにゃ〜。ほら〜、恥かしがらずににゃ〜」 言葉はのんびりしているが、頭の一角で突撃し文字通りの体当たりな質問をするネム。きりりと日の丸鉢巻をしていたふしぎもこれにはたじたじだ。 「あっはは〜、ネムは意外と元気だにゃ〜。ふしぎが困ってるにゃ〜」 「べっ、別に恥ずかしがっても困っても、いないんニャ‥‥。舐められたら無効なんニャからなっ」 動揺して顔を手で拭くような仕草するふしぎだったり。 もちろん静かな様子の猫もいる。 「ミルクたっぷりのカフェオレの温めです。どうぞ」 忙しい中、真夢紀もメイドとして出てきた。 「にゃっ☆」 気持ちのいい日差しの中ごろりとまどろんでいた柚乃が、ぴくりと上体を起す。そのままいい匂いにつられるように身を起してととととと、と近付き、ぺろっ。猫髭を立てて何とも幸せそうな顔をする。 「では、次は生さんをブラッシングしましょう」 「にゃっ! 私ですにゃ?」 突然望に言われてびくっとするも、生は基本的にされるまま。 「にゃっ!」 屈んで生をキレイにしている望の背に、突然リィムナが飛び乗った。そして髪の毛をいじいじ‥‥。 「あ、あの、お客さま、後ろ髪にじゃれつくのはおやめ下さい」 「でも、みんなこうしてるにゃ!」 リィムナの主張に、改めて周りを確認する望。 そして言葉を失うのだった。 ● 「もふっ。みんな背中に乗っていいもふよ☆」 沙耶香を乗せていたもふ龍。たっぷりともふもふ感を堪能した沙耶香が降りると、羨ましそうに見ていた猫たちに声を掛けた。 「もっふーっ!」 リエットが真っ先にダイブ。もっふりともふ龍の背中に乗る。 「リエットはんおひさしゅうに〜。ってあきまへんにゃ〜〜」 蒼も飛び乗るが、その瞬間リエットに「蒼姉〜」と抱きつかれたり。それはそれとして、リエットの語尾が「にゃ」にならないのは‥‥普段から猫的だからだろうかはたまた元気すぎるからなのだろうか。謎。 そんなもふ龍の傍を禾室が忙しそうに歩きぬける。ふりふりと揺れる尻尾が天然の猫じゃらし状態で、凪沙が「にゃん☆」としがみつこうと奮戦中。 一方、テーブルの上。 「ふしぎが〜、『好きな人がいるんだぞ〜』って自慢してネムを苛めるのにゃ〜」 「そ、そんな自慢も苛めもしてにゃいんだからにゃっ!」 ネムとふしぎの恋の話が続いている。ここでコクリがにゃんと飛び乗ってくる。 「ふしぎさん、こんにちにゃ〜」 「あ、コクリ。元気してたにゃ?」 渡りに船とばかりにコクリの相手をして逃げるふしぎ。ぺろぺろとコクリの顔を舐めて毛づくろい。 「コクリねこさん‥‥猫になる前に変なこと起きなかったにゃか〜?」 さらに上がってきた沙耶香がそんなことを聞いたり。たっぷり猫状態を堪能したのでそろそろ元に、と考えているようだ。 ここで禾室が戻ってきた。 「真世ー、望ー、にゃんこを取って欲しいのじゃー」 禾室が可愛く突き出したお尻というかたぬきしっぽには凪沙と真優がぷら〜んとぶら下がっていた。 「真世さん、楽しかったよ〜」 「にゃっ!」 真世に引き剥がされた凪沙が今度は真世に抱き付き、望に引き剥がされた真優は「こんなことしてる場合じゃないにゃ」とか我に返ったり。 「そうにゃっ。この事件の裏には、大きな陰謀が隠されてるに違いないニャン。僕がズバット解決するんにゃからにゃ!」 ここでふしぎがはっとして本懐に立ち戻る。 「『それいけ探検隊』にゃ?」 柚乃もここで反応して起き上がる。 「そうにゃね。よし、みんなで調べに行くにゃ!」 コクリもその気になってびょんと飛び降り探検にゴー。ふしぎ、柚乃、沙耶香、真優、生の六匹が店の奥に立ち入り捜索に出掛ける。 「お。いってらにゃ〜」 「はやては〜、好きな人いるにゃ〜?」 見送る颯にネムが突っ込む。 「あら、撫でられるの苦手? だったら、これはどうかシら?」 「うちはそんなに安ぅにゃいですにゃ〜」 桜は、蒼を撫でていたが逃げられそうになって真夢紀からもらったアジのかば焼きを差し出す。言葉とは裏腹にふらふら戻ってガジガジお八つタイム。桜はこの隙に撫で撫で撫で撫で‥‥。 ● さて、家宅捜索はどうなった。 「にゃ‥‥」 真優は一階の最奥に到達。そこはお風呂だった。 「もー。真優さん、レディのお風呂覗いちゃだめじゃない」 即座に真世登場。ぷんぷんと真優を抱いて店内に戻そうとするのだが、ここでふと余計な一言を。 「あ。そういえば真優さんて女性だったから別にいいのか」 「にゃにゃにゃ‥‥」 「あん。いや〜ん」 間違えられた真優は猫パンチしまくりだが、真世は逆に喜んでたり。 でもって、二階。 「へえっ。ここが真世の部屋にゃんだ」 「ふしぎねこさん、どきどきしないで下さいにゃ〜」 ふしぎに沙耶香が突っ込む。 「ふーん。真世さんて光物すきにゃのね」 「八畳間にゃ〜」 化粧台でお洒落グッズをチェックする柚乃に、全体を見回すコクリ。 「コクリさん、これは‥‥にゃんですかにゃ?」 生は、壁に貼られた絵を見上げていた。 「恋人さんに描いて貰った自画像で宝物らしいにゃ」 コクリが答えたところで、どたどた階段を上がる音が響きすぱーんと襖が開いた。 「ちょっとあんたたち何やってんのよ〜っ!」 真世、真っ赤になって仁王立ち。 「まずいっ、逃げるにゃっ!」 ふしぎの掛け声で、真世の足元を左右からするする抜けて逃げる五匹だった。 そのころ、一階では。 「ほら〜。にとろも〜、もふ龍の上に乗るにゃ〜」 ネムがにとろを抱えてもふ龍の上に飛び乗っていた。そしてうつぶせのネムと仰向けのにとろで仲良くお昼寝。 「ネム、動いても結局寝るんにゃね〜」 颯が笑ってごろりんとテーブルの上でくつろぐ。 それまでもふ龍の上にいたリエットは? 「遊ぼ遊ぼ、遊ぼぉーうぅ♪」 三角跳で高いところでまったりするフラウの場所まであっという間に到達していた。そして、フラウの潜り込む白い丸帽子にうにうにと潜り込む。 「ふぁ‥‥」 フラウの方は、それまでどおりあくびをしてうたた寝をしたり確保しておいたお菓子をあぐあぐ食べたり、時折聞こえる下の喧騒に耳をぴくっと動かしたりしていた。 「もっふっふ〜っ!」 リエットはフラウが静かなのをいいことに、うにうににゃがにゃがと帽子の中でフラウに絡みまくり。 と、ここでフラウの顔が真っ赤になった。一体何やった。 でも、我慢。 が、さらに帽子がうにうにと動いてるぞ。今度は猫の額にしわを寄せるフラウ。 「にぎゃがぁあぃ!!」 ついに我慢の限界を迎えたッ! フラウ、いい加減にしなさいとばかりに猫キック一閃。キックの鬼だ! 「お〜ちる〜!」 笑顔のまま落ちるリエット。その背景で和奏が雨待ち顔で空を見上げている。髭がピン。 「もふ〜っ!」 落ちた先は、もふ龍の上。 「にゃ〜?」 「にゃがっ!」 つまりネムとにとろの上で。三匹がもふふんと弾んで飛び散る。 「あら、ミルクも欲しいの♪」 「はっっ。にゃにゃんでもにゃ〜おすぇ〜〜〜」 「どう、気持ちイイ?」 その隣では、喉を鳴らしてしまった蒼が相変わらず桜に可愛がられまくり。 と、ここへコクリが戻ってきた。 「コクリちゃんにゃ!」 「にゃっ! リィムナさん」 「そこ、おさわりはえぇですぇど、痴態はだめですにゃ!」 リィムナが早速じゃれ付くが、ツンデレ猫からお節介ツンデレに進化した蒼がイエローカード。 「今度はこっちみゃ!」 「もふ〜」 空いてしまったもふ龍の上にはダイフクがよじよじ登っている。 「気持ちいいみゃ〜☆」 ふかふかもふ毛の居心地は天国のようで。それを見た綾香様も、ダイフクの隣に毛布をくわえてやってきて一緒に眠り始めるのだった。綾香様、なんだかんだでダイフク思いである。 ● さて、事件の解決は無理かな、な感じがここで破られることになる。 「おいでおいで〜」 「にゃ〜」 涼子の振るネコジャラシに飛びついたアリスが、すっと山羊座に抱き上げられた。 「これから食事にでもと思えば猫になってるし、さらに条件反射でふらふらとどこにでも行くし」 「みゃ〜」 まったく、と溜息をつく山羊座。アリスのほうは「オレはにゃにをやっているにゃか‥‥」という感じにしょんぼり。 「原因は何だ? 猫になる前に何か食ったり飲んだりしなかったか?」 「にゃ〜」 そのままだと長靴履かすぞ、と顔を寄せる山羊座にアリスは珈琲の方を向く。 「これか?」 ここで、禾室がやって来た。山羊座の話を聞き、早速検証。 「ふむ、残った珈琲を飲んでもわしは猫にならんし、解毒も解術の法でも変化はないのぅ」 禾室はいろいろシノビらしく調査するが、原因は特定されず。 「はっ。まさか‥‥にゃ」 ここで、凪沙が再び真世に泣き付くように抱きついてブルブル‥‥。自分は「こうなればいい」と思っていたので犯人かもという自覚が無きにしも非ずだったり。 「いや、そうじゃないにゃ。謎は解けたニャ、これは行方不明になった3丁目のタマの呪いに違いないんニャからにゃ!」 「ふしぎさん、突然何にゃ〜っ!」 ふしぎは閃いたとばかりにコクリを連れ出そうとする。再び賑やかになる店内。 「さて」 ここで、猫だらけの席でくつろいでいたからすが佇まいを変えた。 「そろそろ何とかしようかね」 そう言うと一冊の貸し本をテーブルの上に置いた。タイトルは「全てが猫になる」。 「禾室殿、この本に解術の法を‥‥」 「分かったのじゃ」 禾室が寄ってくる。 この時、テーブルでまどろんでいたエルレーンはむにゃむにゃと寝言を言っていた。 「猫は大好きにゃけど、さて自分が猫になってみると、何だか奇妙な気持ちだにゃ。周りにいた客も猫、みんな猫、猫、猫。ただ楽だにゃ。我輩は猫になったのにゃ。猫になってこの太平を得たにゃ‥‥」 エルレーン、その後のことは良く覚えてないという。 ただ、「おお」と驚く禾室の声と、からすの「時々こんなものが見つかるから、面白い」という声を聞いただけだった。 ● 「はっ!」 エルレーンが正気に戻ると、見慣れた自分の部屋だった。 朝である。 「面白い夢‥‥みましたね‥‥」 くしゃっと短めでちょっと癖のある茶色の髪の毛をかきながら起き上がり、いつもの装備に身を固める。 「‥‥ちょっと、お出掛け‥‥」 そして、珈琲茶屋・南那亭に行ってみる。 すると‥‥。 「ちょっと、今日は一体何なの?」 「いや、何か面白いことが起きそうな気がしたんで」 いつもよりたくさんの開拓者が客として来店していて、ビックリした真世が「もう、みんな気まぐれなんだから」とかいいつつ忙しく働いている。 「楽しいこと、あればいいにゃ‥‥あれ?」 この様子ににこりとエルレーンはつぶやくのだが、意図しない語尾の言葉にそこはかとなく不安を覚えるのだった。 そして、今日が始まる――。 |