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■オープニング本文 ●どこぞの若手貴族の屋敷で 勅使河原義之(てしがわら・よしゆき)という貴族がいる。 先ごろ、ちょっと時勢を見誤って立場が危うくなったりもしたが、健在。何をしようとしたかは秘密で、すでに闇に葬られているが。 というわけで今現在、貴族仲間の中での居場所というか立場を取り戻すのに躍起になっている。このあたり、直接実働部隊として表立って動いてないので得である。 「なに、時代遅れの老いぼれ貴族どもには任せておけないことをして存在感を高めておけばいいのだ」 勅使河原、回廊から鹿脅しの音を聞きつつ顎をさする。眉目秀麗な男だが、残念なことに男色家であったりもする。 「かしこまりました」 この言葉を聞いて控えていた年配のお目付け役がかしこまる。 「……が、積極的に他儀間交流に勤しむくらいはどの貴族もなさっておりまするが」 「警備と賑わい作りの両方をかってでる。楽師と警備を分けて依頼すれば人員も費用も削減できて、先方も喜ぼう」 ふふ、と勅使河原。 「しかし、どっちつかずの人員を配しても……」 「任せておけ。適任は目星がついている」 しかも、以前の憂いを払拭できる画期的なものだと自信ありげにいうのだった。 ●珈琲茶屋・南那亭で 「そういうことなら、お引き受けいたします」 神楽の都の一角、珈琲茶屋・南那亭の店内でクジュト・ラブア(iz0230)がうやうやしく頭を下げていた。 「では、お願いします。詳細は我が主人の屋敷で打ち合わせしますのでご案内を……。あっ、クジュト様は何度か宴席を盛り上げるために訪れてご存知ですな」 「まあそうです。では、後日に」 勅使河原の使いと話していたようだ。無事に話はまとまったらしい。 「……クジュトさん、楽しそうですね」 ふうっ、と席に落ち着いたところで、店員の深夜真世(iz0135)がカップを下げに来た。 「ええ。神楽の都に常駐しているジルベリア人の納涼ワイン会に招かれたんです」 「へええっ、凄いんですね〜。ミラーシ座にジルベリアの人からお呼びが掛かるなんて」 わがことのように喜ぶ真世。 「浪志組としても招かれてるんですけどね」 「は?」 首を捻る真世に、つまりね、と説明するクジュト。 どうやら、神楽の都の川辺でする立食パーティーに、警備兼楽師として招かれたということで。 「浪志組として警備しつつ、ミラーシ座としてパーティーにふさわしいムーディーな曲をやったり舞台の上で演じろ、ということです。確かに人員削減になって費用は抑えられますよね」 「……その、お安く見られちゃったってこと?」 真世、心配そうにクジュトの顔色を伺う。 「吟遊詩人が路上演奏しても、なかなかまとまった金にはなりません。座敷演劇で宴席に行けばまとまった金にはなりますが回数が限られます。それに、ミラーシ座がいるところは自分たち自身が安全を守るので安心だというアピールにもなりますので、それはそれでいいんですよ」 「そう? だったらいいんですけど」 「優しいですね。……それじゃ、気分もいいので珈琲をもう一杯。この仕事はさらに、今後若手貴族も各種情報収集が期待できるということですから、とてもいい仕事なんですよ」 そうなんです? と気分良くくるりん☆とメイド服の裾を翻し厨房に向かう真世。クジュトはそれを見送ってから、こっそり溜息を吐いた。 「……私だけは、『女形として一曲踊って、勅使河原を護衛すること』という条件を飲む必要がありますが」 クジュト、男色家の勅使河原に目を付けられていたりする。 「とにかく、ミラーシ座の仲間と歌えるか踊れる浪志組隊士に声を掛けないと」 こうして、在神楽ジルベリア人の納涼ワイン会を盛り上げたり護衛したりする人員が募られるのだった。 |
■参加者一覧
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
鞍馬 雪斗(ia5470)
21歳・男・巫
からす(ia6525)
13歳・女・弓
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
ニーナ・サヴィン(ib0168)
19歳・女・吟
アルマ・ムリフェイン(ib3629)
17歳・男・吟
サラファ・トゥール(ib6650)
17歳・女・ジ
霧雁(ib6739)
30歳・男・シ
滝夜叉(ib8093)
18歳・女・ジ |
■リプレイ本文 ● ――トテ・ツン、トテトテ・ツン……。 三味線などの音楽に乗ってクジュト・ラブア(iz0230)が舞っていた。いかにも天儀風の佇まいに多くの人が心和ませている。 ここは、神楽の都のとある河原で催されているジルベリア出身者のワイン納涼会。 「おお、金髪の女性も弾いてるね」 「しかも故郷の楽器ではないか」 舞台で伴奏するニーナ・サヴィン(ib0168)に気付いた観客は、自国出身者が奏でていることに驚いていた。特に、クーナハーブで天儀曲に合わせていることに。 「天儀の曲を知っていると、普段より変わった響きがあってより楽しめます。逆に、ジルベリアの楽器の素晴らしさに感心します」 すい、と驚いている一団に勅使河原義之が近付いて説明した。ニーナの狙う効果がきっちり伝わっている。 「ほほぅ。勅使河原殿、ハープの良さが分かりますか」 話が弾む。 ここで、舞台では曲調が分かった。新たに白い水干に夏着物「涼紗」、そして烏帽子を被った舞妓が出てきてクジュトに合わせた。白拍子の舞だ。 滝夜叉(ib8093)である。 (くす。滝夜叉さん、わざと緩やかに着て男装してる) 演奏しながらニーナが微笑する。実は豊満な滝夜叉、これに気付いて「普段どおりだから違和感ねぇだろ」といわんばかりにこっそりウインク。そのままクジュトと対になるように踊る。 一方、勅使河原。 「勅使河原さま、初めまして」 ふと声を掛けられ横を見た。 すると柚乃(ia0638)がいた。 「ああ、初めまして」 「これは可愛らしい。まあ、ワインをどうぞ」 挨拶を返す勅使河原。周りのジルベリア人は目尻を下げ構いまくり。 「柚乃さんは踊らないので?」 「また後で。……ありがとうございます。飲み過ぎは身体に良くないけど、でも美味しいですよね。お酒」 淑やかな様子で、ちょびりとワインを飲む柚乃。 そんな姿を、遠くから見ている目があった。 (貴族、か……) 浪志組隊士、アルマ・ムリフェイン(ib3629)だった。どこか遠くを見るような目をしている。 (複雑、だな) そっと瞳を伏せて気持ちを切り替える。 「アルマさん、浮かないようですな?」 「え?」 ぎくっ、としてアルマが声の主を探すと、スーツ「黒王子」に身を包んだジルベリア風男性がいた。 「拙者ですよ」 霧雁(ib6739)だった。 「そんなことはないですよ、霧雁さん。今は不審者はいないようですし、どこでお酒を貰うか狙ってるんですよ」 悪戯っぽくアルマが返した。 「よし、なら付き合おう」 ぬっ、と劫光(ia9510)もやって来た。 「って、劫光さんもう飲んでるじゃないですか」 「いいでござるなぁ」 「ワインってのも悪くないな」 くいっ、とグラスの赤ワインを飲む劫光にアルマと霧雁が突っ込む。途端に賑やかに。 「……何やってるんだか」 鞍馬 雪斗(ia5470)もやって来たぞ。溜息混じりだが。 「黒系ドレスに赤の上着か……」 「いや、前回男装だったが今回はいいらしいし……しかし、もう飲んでるし。一体何しにきたのやら」 ぼそり、と呟く劫光に言い訳する雪斗。そればかりかやり返したぞ。 「タダ酒を飲みに来た」 あっさりと劫光。 「まあまあ。救護所を設けた。そこに酔い止め用の特製薬草茶や水を置いておくから活用するといいよ」 新たにからす(ia6525)もやって来た。ブラック・プリンセスで可愛らしくしている様子に、普段の彼女を知る者は目を疑った。 「そろそろクジュトたちの舞が終わります。人が動き出すでしょうね」 何だかんだで楽しく盛り上がっているところにサラファ・トゥール(ib6650)がやって来た。いま、舞台が終わり拍手がわいた。 「確かに、人が回遊し始めましたね」 アルマが言い、全員が頷き散った。 ● 「お、吟遊詩人さんかい? リクエストがあるんだが」 「お安い御用でござる」 回遊中に呼び止められた霧雁は、パッションリュートを構えて早速演じる。だんだん早くなる指使い、桃色にウェイブする髪を振り乱し情熱的なリズムを刻む。 「よー、霧雁」 終わったところで、滝夜叉が来た。 「今度はサラファとニーナがはじめるぜ? 行かねぇのか?」 「おっと、ではここは任せるでござる」 というわけで、霧雁と滝夜叉が交代。 「おお、先に踊っていた……。素晴らしいですな。ワインをどうぞ」 滝夜叉、喝采のワイン攻めに遭う。 が、当然とばかりに空けては酌をし、笑顔。 「こういう席ならどんどん呼んで欲しいモンだな」 晴れ晴れとした表情で満足そうに言い周りを見回す。役目は忘れていない。 と、その目にアルマが映った。 「いいかい、♪ん〜ん・んん〜で始まる……そう、それそれ!」 「やっぱりそう? それじゃ、本格的に」 アルマは、客のうろ覚えの曲に伴奏してみて当ててみせると、改めてバイオリン「サンクトペトロ」で緩やかな音を紡ぎ始めた。 (懐かしいな) そんな思いで奏で続ける。アルマ、今でこそ神楽の都にいるが育ちはほとんどジルベリアである。 その横で。 「君も警備をする楽団の人かい? さあ、飲んで飲んで。ここには気の良い人しかいないから楽しんでいいよ」 「いや、この娘さんはまだ若いから……」 そんな言葉が交わされている中心に、からすがいた。 「故郷を離れ天儀に来て大変だね」 「私がジルベリア出身とは限らないよ」 ドレス姿のからすは同国出身者だと勘違いされている。え? と止まる男性からワイングラスを奪って、飲む。 「あ、それはお酒だからお嬢さんにはまだ早い」 「これは葡萄ジュースさ」 ははは、とそ知らぬ風なからす。まったく酔う素振りすらない。 「からすさん、湯が沸きましたよ?」 ここで、ポット片手に柚乃がやって来た。 柚乃、実はからすの設置した救護所でいろいろ準備していたのだ。 「これで騒ぎを起こした人達の隔離にいつでも使える……何が起きても不思議じゃないが……」 雪斗も柚乃に様子を聞きに戻ってきていた。すでに設置されたことでほっとする。 「葡萄酒に飽きたのなら……」 頼れる仲間に微笑して、からすは客に向き直っていた。ローズティーの香りが周りに漂う。 「如何かな?」 「これはこれは。ワインもいいが、これも故郷を感じるねぇ」 来場者は鼻をくすぐる薔薇の香りに目尻を下げる。 「よう、また何か舞台で始まるようだぜ?」 この声で周りの人物が舞台にまた注目した。 ――ぽろぉん……。 ニーナがハープを緩やかに艶かしく爪弾いていた。 隣ではサラファが、左足を軸にすうっ、と膝を曲げつつ右足を上げていた。黒い肌に艶やかな漆黒の布で作られたバラージドレス「サワード」が艶かしい。深いスリットがめくれ、上半身では細身ながら豊かな胸が弓反りすることで天を向く。 アル=カマル風の踊りだ。 サラファの美しく緩やかな一挙手一投足が会場の目を釘付けにした。 ――カツッ! 続いて、ハイヒールの響き。 霧雁がドレス「黒薔薇」など黒い衣装で登場し、スカートをひらめかせながら小刻みなステップで踵を響かせている。いや、手にした四つ竹のカチカチ音も混じっている。扇情的に激しくスカートの裾をなびかせ、黒いニーハイソックスをちらちらさせたりも。 「おお、異国文化の豊かな配慮だな。さすが神楽の都」 周りの受けはすこぶるいい。 ● この頃、クジュトは。 「貴女のいる浪志組もミラーシ座も、大変価値のあるものと思っています。……さあ、もう一杯どうぞ」 「ありがとうございます」 勅使河原にしこたま飲まされていた。一瞬、よろり・くらっ、としたところ勅使河原が腰に手を回した。 「もちろん、あなたはもっと価値のある……」 「おっと、失礼」 どん、と黒いドレス女性二人連れがクジュトに当たってしまった。くたり、と腰からへたり込んでしまうクジュト。力なく垂れたうなじが色っぽい。 「おや、これは……。こちらで酔いを醒ましてはいかがか?」 「やれやれ……」 に、と勅使河原に挨拶するからすに、早速クジュトに肩を貸す雪斗。このままクジュトを連れ去った。 「からすさん、雪斗さん、すいません……」 「クジュトさんはそんなに酒に弱かったか?」 「……飛び切り強い酒だったね、いまの」 ぐったりするクジュトに雪斗が問い、先のワインを調べたからすが答えた。 その向こうに、泰の舞姫風衣装の柚乃がいる。 何やら猫耳カチューシャをしているが……。 「先日の泰でのお祭でも耳をつけていたんです」 柚乃、猫耳を撫でつつはにかむような仕草。 やがて、いつもの精霊鈴輪でしゃんと清らかな音を出す。身体も動き始めた。得意の舞に移る。 (ここに来る前、南那亭でああ言いましたけど) 珈琲茶屋・南那亭で店員やクジュトと話した場面が蘇る。 「え! 柚乃さん、巫女さんやめて吟遊詩人さんにちゃうの?」 「いえ、巫女を辞めるつもりはなくて。やっぱり……柚乃は巫女だから」 それでも、はふ、と吐息が漏れてしまったり。 「じゃあ、気晴らしにどうです?」 そう、クジュトに誘われてここに来たのだ。 (演奏も、いいですね) 馴染みの鈴の音を聞きつつ、リズムの導くまま舞う。 「……私は泰出身でも猫族でもありません。ただ……私にとっては馴染みのある国」 「おお、これで四つの儀の舞を見たな」 思わず呟いた言葉に、観客がやんやの拍手をしていた。 「おっと」 別の場所で、滝夜叉の声。 「酒を飲む場だ。場をわきまえな」 続いて劫光の声。天儀風荒くれ者の首根っこ押さえつけて大人しくさせている。 実は匕首を手に暴れかけた男の脇を滝夜叉がすり抜け鎧通し「松家隆茂」のカッティングで武器を弾き落とし、次に反対側から近寄った劫光がわしりと力任せに捕縛したのだったり。 「酒は飲んでも飲まれるな……だねぇ」 「まったくだ」 ははは、と笑いつつ何事もなかった風を装う滝夜叉と劫光だった。 (さすがだね) 狐耳をぴく、と動かしたアルマが別の場所でほっとしていた。超越感覚で滝夜叉と劫光の動きを察知していたのだ。 「それより……ねぇ、こっち向いて。……うふふ。毛並みのいい耳だこと」 アルマは、ついと強引に視線を変えられてしまった。 変えた主は、可愛いもの大好きご夫人客。神威人が珍しくて可愛いようで、すっかりアルマにべたべたしている。 「次はこっち」 ああ、またもほっぺを手の平に包まれ別の方向に。やはり可愛い物好きなご婦人がいる。 その間にも、狐耳や髪を撫で撫でされている。 「毎年この催しをしてるの?」 「ええ。昨年は暴漢が出たんですよ。背の低い可愛い娘さんたちが取り押さえたけど」 可愛らしく聞いて盛り上げるアルマに、きゃい♪とご婦人は笑顔で情報を流したり。 「そうだ。アナタ可愛いから特別に教えてあげるけど……」 どうやら、勅使河原を良く思っていない連中も招かれているらしい。 「ジルベリア人同志なら、同郷会で何とかするんだけど」 (大丈夫かな?) 密かに勅使河原を見るアルマであった。 それはともかく、救護所で。 「やっぱりろくな噂流れてねぇ……」 「あら。姉さんにそれ言っちゃっていいのかしら」 劫光とニーナが盛り上がっていた。二人だけの秘密の話題だ。 「くっ。……それより、さっきより随分印象違うな?」 「大人しく淑やかにしていれば貴族お抱えの吟遊詩人に見えるでしょ?」 「おぅい、こっちで一曲頼む」 劫光がさらに突っかかろうとしたところで呼ばれ、華麗にニーナが人波を泳いだ。 「畏まりました」 早速、曲を始めるニーナ。 耳を済ませると、舞台ではからすがエレメンタル・ピアノでムーディーな曲をやっていた。歓談の邪魔をしない、自然と肩を揺らしてしまうような曲だ。 「ふうん……」 残された劫光は、ふと龍笛「黄龍」を取り出し演奏する。と、客がついた。 「おや? 珍しいですね、劫光さん」 この時、救護所からクジュトが出てくる。 「クジュトの前じゃはじめてだったか? まあ場を壊さない程度には吹けると思ってるがどうだ?」 「いい感じですよ」 クジュトの上げた手を、パンと手の平で叩く劫光だった。 「おお、無事でしたか?」 ここで勅使河原が駆け寄ってきた。さっきの続きとばかりにぐっと腰を抱いてきた。 瞬間、ぶんっ、と二人の間を舞う蜂。おわっ、と不意打ち接吻を阻まれ仰け反る勅使河原。 「武士の情けだ」 にやにやその場を去る劫光。人魂だったらしい。 「ん、霧雁さん?」 「勅使河原様……なんと凛々しいお方……。クジュト様が羨ましいですわ」 勅使河原の側にいた霧雁に気付くクジュトに、勅使河原に腕を絡めてすいっと引き離す霧雁。ウインクしている。どうやらアルマに言われて勅使河原に張り付いていたらしい。 「いや、私にはクジュト殿が……」 未練がましくクジュトに手を伸ばす勅使河原。 この時! 「ねぇ勅使河原さん? 恋には障害があった方燃え上がるものじゃない?」 ニーナがやって来た。クジュトの頬を攫って、んちゅ☆。唇と唇が合わさる。 「ちょ、ニーナ……」 「ななな、なんの私も!」 「あらん、勅使河原さま」 霧雁がニーナの真似して頬を攫おうとした、その瞬間だったッ! 「だあああっ。もう我慢できるかあっ! 野郎ども、やっちめえ」 周りにいた来場者のうち、エセっぽかったジルベリア人たちがスーツを脱ぎ天儀風の着物に戻って襲い掛かってきた。 「おっと、始まりやがったな!」 「ミラーシ一座にお任せを」 乱闘大好き、滝夜叉がやはりカッティングで割って入り、サラファが踊るように獄界の鎖でマノラティを使いがんじがらめに。 「そうそう、エンターティナーだからね」 アルマは戦闘に加わらず、バイオリンの演奏で楽しい雰囲気作り。 「どれ、楽しそうだね」 からすはハリセン「笑神」を手に山猟撃。すぱ〜んと小気味良い音を響かせている。 「全く野暮なもんだ……。少しは状況を考えるって事もしないのかね?」 「あー。雪斗さんスカートめくれてますっ」 瞬脚で割り込んできた雪斗は、いつものように蹴りで足を高く上げる。が、クジュトの指摘で慌ててアイヴィーバインドに切り替え。「今日の下着、何だったかな?」という呟きは幸い喧騒に紛れる。 「少々はいいわよね?」 一方の霧雁はスカートの中対策は完璧とばかりに動きまくり。 「クジュトは戦わないの? って、こんなに飲まされてるじゃない!」 ニーナはクジュトの側で、いまだ回復しきらない身体を支えてやる。 「やれやれ。何で俺が……」 劫光は見かねて勅使河原を支え戦線離脱。怪我があれば治癒符を使うつもりだったが、大丈夫みたいだ。 ともかく、勅使河原をマークしていた形だけに、暴漢が密かに計画していた勅使河原襲撃計画をうまいこと阻止できた。 ●おまけ 「悪酔いして他の方に迷惑をかけてしまったら、哀しいですもの」 「おら、もういいだろ?」 乱闘後に暴漢を収容した救護所では、柚乃と劫光の手当てで天国と地獄の差があったらしい。 「まあ、良い薬ですか」 と、苦笑するクジュト。 |