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■オープニング本文 コクリ・コクル(iz0150)は、中型飛空船「チョコレート・ハウス」で冥越の狗久津山に来ていた。 周りでは人々が行き交い声が飛び交っている。 「魔の森の状況はどうだ?」 「おおい、嵐の門の一部が……」 「お上はいったいいつまで俺たちにこの遺跡を調査させるつもりなんだよ……」 各国連合軍はまだ各種の調査をしている。 特に狗久津山地下に広がる遺跡については、奥に眠る護大の心臓を回収しているのだが、まだ重点的な調査がなされている。コクリが物資補給の依頼を受けて、戦闘もできる「チョコレート・ハウス」でここに来た理由でもあるが。 この時。 「た、大変だぁっ!」 遺跡の地下から帰ってきたばかりの一団が騒いでいる。 「新しい地下への道が発見されたぞ!」 えーっ、という声が巻き起こるが、これは驚きの声ばかりではない。 兵は、大アヤカシとの戦いの後も居残り、まだまだ点在するアヤカシを警戒しつつ調査を続けていて疲弊しているのだ。「またあの古霊兵らと戦わなくちゃならないのか」との嘆き声も上がっている。 「また、泰国にあった遺跡のように魔神が出てくるんじゃないか?」 「勘弁してくれ」 「でも泰国では最深部の重要なものにつながる場所に魔神がいて守ってたんだろ? 今回はもう大切なものは回収した後だぞ?」 「つまり魔神はいない?」 「じゃあ、今回の道は奥に続くわけじゃない?」 「まあ、一番奥にあるべきものが他にあるならまだ奥に続くんじゃないか?」 重要な発見に、人々は口々に噂し合う。 ここに、コクリも首を突っ込んだ。 「奥には重要な秘密があるんじゃないかな?」 目をキラキラさせてコクリが言うと、ぎろ、と一斉に睨まれた。 「その秘密が何だろうなって話なんだが……」 「まあ、まだ子供だし夢を持つことはいい事なんじゃないか?」 嫌味が少し交じっているが、コクリはそんな話には耳を貸さない。 代わりに、空高く指を差した。 「ほら、八咫烏も最初は遺跡と思われてたんでしょ? ここも、実は遺跡じゃなくって制御室があって、空に飛び立つかもしれないよ!」 コクリ、突飛もないことを言った! おかげで周りは言葉を失っている。 「その通り。おそらく制御室がある……空は飛ばないだろうがな」 「わっ!」 突然の背後からの声に、コクリが飛び上がった。振り返るとぎょろりとした目つきの陰湿そうな男がいた。 「朝廷はこの遺跡が眠っていると考えている。おそらく今発見されたもう一つの最深部にある制御室を起動し、眠りから覚ましてくれないだろうか?」 明らかに何かを知っているようだ。 「起こすって言われても……」 「陰殻国のいつらめ神社が龍脈となって狗久津山と通じている筈だが、それが通じてない。理由は分からんが、龍脈を正常にするには……」 戸惑うコクリに、なぜか男はここで口ごもってしまった。 「おそらく、制御室の起動とほぼ同時に大量の精霊力がないと遺跡は本当に死んでしまうだろう。……その、大量の精霊力が、ない」 肩を落とす男。 「開拓者ギルドの者だが」 ここで新たに声が。振り向くと精悍な男性がいた。 「大量の精霊力ならそこにある」 空を示す。そこには八咫烏が浮いている。艦首には大型宝珠砲――実体弾を飛ばす方式ではなく、精霊力そのものを収束させて放出するタイプの宝珠砲がある。 「えええっ! 地下には撃てないよ!」 「山彦だよ」 呆れるコクリにそれだけ説明する男性。 「なるほど。いつらめ神社方面にまとまった精霊力を送り、龍脈の相互流動のきっかけとする、か」 朝廷の男はそれだけで納得している。 「そうなると、後は実際にもう一つの最奥部に行って制御室を起動させる人材を……」 「ボクがやるよ」 コクリ、元気に言い切った。 「補給の護衛に来てる人なら疲れてないし、そういった人に声を掛けて10人くらい集めればいいよね。地下遺跡は何度も冒険したことあるから任せてよっ☆」 こうして、もう一つの最奥部を目指すメンバーが募られた。 と、同時に【水の懐中時計】を一つ渡された。 「この時刻になったら主砲発射するから、遺跡制御室を再起動してくれ。……遅れたり早かったりしたら機能停止や龍脈の暴走がありうるからしっかりな」 「うんっ」 コクリ、懐中時計を受け取り頷く。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
八十神 蔵人(ia1422)
24歳・男・サ
メグレズ・ファウンテン(ia9696)
25歳・女・サ
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
龍水仙 凪沙(ib5119)
19歳・女・陰
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
サエ サフラワーユ(ib9923)
15歳・女・陰
白鋼 玉葉(ic1211)
24歳・男・武 |
■リプレイ本文 ● 「いつらめ神社と龍脈、か」 白鋼 玉葉(ic1211)が立ち止まって呟いた。 コクリ・コクル(iz0150)と朝廷やギルドの関係者らがそんな話をしている。 (この遺跡は始祖帝の姉、慕容が目指した場所のひとつか?) もしや、という思いが玉葉の脳裏を過った。 「地下遺跡は何度も冒険したことあるから任せてよっ☆」 「自分も行こう」 立ち上がったコクリに近寄り、玉葉はそう声を掛けた。 「コクリちゃ〜ん」 同時に誰かがやって来た。わしっとコクリに抱きつく。 「千佳さん、ちょうど良かった!」 「依頼かにゃ? にゅふ、冒険はまだまだ続く、って感じにゃね♪」 抱き付いたまま見上げた顔は猫宮・千佳(ib0045)。 そこに大きな影が伸びる。 「コクリさん? 何か困りごとですか?」 盾を持ちそそり立つ姿は、メグレズ・ファウンテン(ia9696)。 「わ、メグレズさん。オリーブ園以来だねっ☆ でもどうして?」 「これだけ騒ぎになっていれば」 伸び上がってめぐれずに微笑むコクリの横から、今度はウサギ耳の人物。 「なにが出るかな。楽しみだねえ」 見ると、わくわくしている龍水仙 凪沙(ib5119)の姿が。 「起動しただけでアヤカシがこの世から消え去る機能だと楽ができてよいのじゃがの」 ふ、と長い金髪を後ろに払いのけながらリンスガルト・ギーベリ(ib5184)(以下、リンス)もやって来た。 「コクリ殿、妾の『オネット』にも時間合わせをさせるのじゃ」 「あ、うん。そうだね」 リンス、懐中時計を取り出してコクリの懐中時計と時間合わせ。これで予備ができた。 その時、遠くから息を弾ませ走ってくる姿が。 「ただいまっ。……コクリ、この遺跡、絶対起動させようね」 「ふしぎさん、もうこの話をかぎつけたんだ」 目をキラキラさせる天河 ふしぎ(ia1037)を頼もしく思うコクリ。 その横で、ぺこりとお辞儀する姿が。 「十二迷宮振りです。ここの遺跡の再起動、何が起きるのでしょうか……」 柊沢 霞澄(ia0067)だ。いつの間にか寄ってきていた。 「護大よりも奥深くに封印されしもの、何だろうな。……世界に関する真実の一欠片でも残されていると嬉しいんだが」 ぬっ、とその後ろから羅喉丸(ia0347)。 「はい……。心臓が眠ってた遺跡ですし、今後の趨勢にも関わる何かがと」 霞澄、こくと頷く。 「それじゃ楽しい遺跡荒らしといこか。酒と食料と水は持ったかー?」 いつの間にか反対側からは八十神 蔵人(ia1422)。背負っていた荷物を下ろすと重箱弁当が包みの隙間から覗き、芋幹縄や岩清水などが転がり出る。酒「も王」や葡萄酒も。 「中で酒盛ができますね?」 「場合によっちゃ数日救助待ち。泣ける」 メグレズがくすりと微笑。蔵人、別に酒盛したいわけではないようで。 「状況次第では通路塞いで敵の追撃防ぐから別に出口無いと起動できても遭難やな」 「新たな入り口までの地図は手に入れたんだが」 嘆く蔵人に、あらかじめ借りておいたこれまでの遺跡調査の地図を差し出す羅喉丸。もちろん、これから踏破する場所は記されてない。 「あうあうあう…! なんか私、場違いなところに来たみたいな雰囲気が…?」 ここで、サエ サフラワーユ(ib9923)の声。 自然に集まった皆が積極的に話し、しっかりした考えがあることに慌てている。 「あは。仲間を探す手間が省けちゃった」 「では、制御室発見と再起動に行きましょう」 おどおどしていたサエが、コクリとメグレズの言葉を聞いてぱああっと表情を明るくした。 「じゃ、可能な限り一気に遺跡の制御室を目指す、でいいかしらね?」 「ああ。時間に遅れるとまずい」 皆に確認する凪沙。力強く頷く羅喉丸。 「制御室での拠点防衛戦ですね」 「目的地まで全力で行くにゃ!」 メグレズが背中越しに頷き、千佳が元気よく拳を上げる。 「よし。約束の時間、頼んだぞ!」 朝廷とギルド関係者の二人は八咫烏の方に向かっていった。 約束の時間に、呼吸を合わせるために。 ● 遺跡内部の新たな道への階段は、これまで通りの様相だった。 「相変わらず綺麗な通路ですね……明かりも必要ないですし……」 「そうだね。敵も相変わらずなのかな?」 縦長の陣形で進む開拓者。中ほどの霞澄が遅れないようにしながらも周囲を気にして言うと、並んで走るコクリも頷いた。 「……言ってるそばから出たな」 「うむ。鎧の塊じゃの」 先頭を並走する羅喉丸とリンスがニヤリ。 目の前、かなり手前に古霊兵数体が待ち構えていた。 瞬間、二人の隙間からダイブして前に出る影。 「うに、おじゃま虫は纏めて倒しちゃうのにゃ! マジカル♪ サンダーにゃー♪」 前転して構えたのは、千佳。 掲げる北斗七星の杖から閃光と共に雷が弾けながら一瞬で敵を撃つ。 ――ぴしゃ〜ん! 無論、一体がびくりと仰け反ろうが古霊兵たちは怯まない。敢然と迎撃に向かってくるが……。 「羅喉丸殿が剣を使うか。後学の為、参考にさせて頂こう」 前に出るリンスが横をちらと見てニヤリ。羅喉丸は魔剣「レーヴァテイン」を手にしていた。 「鍛えるといいものになった」 羅喉丸がそう返しながら微笑。リンスの持つ殲刀「秋水清光」の鍛え具合も見事だったからだ。 おっと、敵はもう迫っている。 リンス、脚絆「瞬風」で加速するっ! 「八極轟拳の幹部共に勝利してきた妾が!」 右に薙ぐ。 「こんな木偶共に後れを取ると思うか!」 そして足を払う。どう、と倒れる敵。 「増援は勘弁して欲しいからな」 羅喉丸もロー攻撃。攻撃も食らうが足を切ってから巨体を利して体当たり。ふっ飛ばす。 「僕達の邪魔はさせないんだからなっ!」 左右に開いた味方の隙間からは、中衛のふしぎが宝珠銃「レリックバスター」で狙い撃ち。 さらにその射撃から遅れてッ! 「罷り通る!」 ぐうん、と如意金箍棒が伸びてきて真ん中の敵を突くと、それが戻りきる前に巨体が迫る。 意志の強く籠もった緑の瞳は、玉葉っ! ――げしっ! そのまま吹っ飛ばして道を開ける。 「後は任せて」 さらに後ろからメグレズがアイギスシールドを掲げ敵を左右に割った隙間を確保。神槍「グングニル」でリンスの転がした敵に止めを差す。 「あんまり似合わないけどねー」 続く凪沙が身軽に前に。通り抜けがてら手にした四神剣を横に払って敵に追撃。 「ええと、私も戦わなくちゃ……」 サエはおどおどしつつも呪縛符。 「ええ支援してくれよんな!」 それを長身の蔵人が低身長のサエ越しに片鎌槍「北狄」でぐっさり。 「霞澄さん、今のうちに」 「ええ……」 最後尾となったコクリと霞澄が手を取り合ってここを通過。 それを見送って、うんと頷き合う蔵人とメグレズ。 再び殿を固め先を急ぐ。 とはいえ、ただ急ぐだけではない。 また遭遇戦があり、千佳の先制、羅喉丸とリンスのこじ開け、玉葉のど真ん中こじ開けで突破した面々は分かれ道で止まっていた。そこへコクリたちが追いつく。 「コクリ殿、懐中時計は無事か?」 「うんっ。みんなのおかげでボクはほとんど戦ってないから。それよりどうしたの?」 玉葉に聞かれ答えたコクリが周りを見る。 「うに、地図を書いてるにゃ」 「遺跡の構造に規則性なく、様々な罠がしかけてあったという話だからな」 振り返る千佳と、地図を広げ書き込んでいる羅喉丸。 「そうじゃの。蔵人殿に借りた白墨が役に立つ。……それより他の者は?」 リンスが分かれ道にちょいちょい、と記号を書いていた。 「霞澄さん、大丈夫?」 「怪我明けで……ごめんなさい……」 凪沙が霞澄に付き添ってただいま到着。 「蔵人とメグレズは突破した後の敵をやっつけてるんだぞ」 「えと、ええと…メグレズさんは追いすがる敵に槍を投げて戻ってきた槍をキャッチして、その隙に蔵人さんが止めをさして、凄いんですよっ!」 さらに後ろを気にしつつやってきたふしぎが答える。サエも一緒で仲間の奮戦を興奮気味に伝える。 「道は前と後ろに分かれておるが、どうする?」 「誘われてるようで気に食わないが、迷うよりましだ。分かりやすく前に行こう」 前ではリンスの問いに羅喉丸が顎に手をやり手堅い判断。 「行かないほうは黒壁で閉じて、こっちは先行偵察をしときましょうかねぇ」 「回復が必要な方、いらっしゃいませんか…」 凪沙は、なぜか後方に伸びる分かれ道を結界呪符「黒」を並べて封鎖。進むほうに人魂を飛ばす。この隙に霞澄は回復役に専念するつもりだ。 「……それにしても後ろ側に枝分かれするとは」 ううむ、と考え込む玉葉。 「敵がいれば、行かせまいとするほうが奥に通じるんだと思うけど」 「足並みが乱れてバラバラにならねばそれでよい」 ピンと来て身を乗り出すふしぎ。リンスは殿の二人を気にしている。 ここで再び後方。 「あ、来た!」 「お待たせしました」 「敵は接近戦のみ、話は早いが……まあ、数が数や」 コクリの歓声。メグレズが追ってきた。蔵人もいる。 そろったところで先を急ぐ。 ● で、その後。 「…や、やっと制御室に着きました…」 はぁ〜、とサエがぺったり座り込んだ部屋は、何やら制御板らしきものが中央にある部屋だった。 「やっとって、えらく早く到着したで?」 蔵人、サエに言って皆のいる中央に。サエも追う。 そこでは。 「精霊力来ても、動かし方分からなかったら駄目……だもんね」 少し残念そうに不思議が呟いている。 「遺跡の機能……ほかになさそうですよね……」 霞澄も物足りなさそうな口調。 それもそのはず。 部屋の制御板にはレバーが一つしかないのだから。 「しっかし、もう一つ入り口があるってのは……奥があるんか?」 蔵人、入ってきた入り口とは反対にある出入り口を見た。 「あれはおそらく、こちらと同じみたいだ」 ここで羅喉丸が借りた地図に先を記入したものを見せ名が説明する。 つまり、これまでの枝道を行けば反対側に通じる可能性が高いようで。 「うにゅ。後は時間までここを防衛すればいいかにゃ? 罠を設置しておくにゃー」 千佳は早速、反対の出入り口から出て右手に行き、フロストマイン設置。 「えとえと、ちゃんと分担したほうがいいですー」 「そうだな。入ってきたほうからA、B、C、Dとしよう」 はわわ、と千佳の行った方に手を伸ばすサエ。玉葉は彼女の代わりに白墨でそれぞれの通路側の壁に記号を振った。これを地図に書き記す羅喉丸。 「時間、すっごく余ってるね」 コクリ、時計を確認して苦笑する。 「守ればよかろう」 「そうだな」 リンス、白墨ではなく番天印を弄びながらCへ。羅喉丸が続く。 「四つの通路に分散して防衛戦ね。なんにせよ、起動時間まで粘るわよ、みんなー!」 「うむ」 凪沙、Aに。玉葉も追う。 「コクリ、行って来るね」 「支援します」 ふしぎはBに。メグレズも立つ。 「瓦礫でも積み上げようか思うたがあらへんし。……しゃあない、罠を盾にしよか」 蔵人は千佳のいるDに。 「コクリさんは私とここに……」 「うん。分かったよ、霞澄さん」 霞澄とコクリは中央。 さて、サエは……。 その時、敵が追って来た! 「ふんっ!」 がすっ、と玉葉の如意金箍棒が敵を仰け反らす。 「儀の滅びに対抗する手掛かり、或いはそれに至るヒントを得るまでは……」 敵が多いが敵を盾に上手く戦う。その横に黒い壁が立った。 「玉葉さん、引いてー。もう片方も閉じるよ〜っ!」 凪沙の声に反応し、下がる。ごん、と黒い壁ができて通路を閉じた。 が、すぐにどんどんと音が。あまりもちそうにない。 二人の背後後方では。 「くそっ、多い」 結界呪符「白」で盾を作り身を隠して射撃していたふしぎ。撃つのが間に合わない。 「ふしぎさん、私が出ます!」 後方から咆哮一喝! メグレズが躍り出て盾を掲げ、奮迅の戦いを見せる。 もちろん、咆哮が利かずに抜ける敵もいるが……。 「これ以上は、近寄らせないんだぞ」 霊剣「御雷」が鞘走った。ふしぎ、構えを取ってから突っ込む。 サエ、これを知り反対側に走る。 「あっちにたくさん来てます〜っ!」 C・D方面に走り伝えた。 「ありがとな」 「しかし、こちらも敵じゃの」 D方面の蔵人、C方面のリンスが振り向き微笑する。 たちまちD方面で巻き上がるフロストマインの吹雪。C方面では羅喉丸が一気に前に出て崩震脚をぶちかましていた。 「うにに、まだ来るのにゃね」 「よっしゃ。抜けそうな敵はわしに任せとけ」 千佳の援護に走る蔵人の背中。 こちら、C。 「よし、敵の動きは泰拳士の比ではない」 「今度は妾が崩震脚じゃ」 一気に離脱してきた羅喉丸に代わり、番天印を投げつけたあと瞬脚して敵に突っ込むリンスの背中。 「しっかりしなきゃ! 私!」 見習いの符と五色の筆を握り締め、呪縛符を使うサエ。 「がんばって……」 その背後では、霞澄が花束を投げるように回復の精霊力を羅喉丸にかけていた。 開拓者は現場を死守するが、その時間が長かった。 倒した敵を障害にしていたが、いつのまかにか数体復活し乱戦となった。やがて制御室になだれ込まれる。 「みんな、張って。時間までもう少しなんだ!」 コクリの悲鳴が響いた。 「制御室が広いのは幸いでした……」 隣の霞澄が白霊弾を撃ちつつ言うように、まだ十分戦える。開拓者たちはコクリのいる制御板を取り囲み必死の防戦を続けている。 「はやく、はやく…ちょ、マジではよしてー!」 蔵人、制御板に行かせまいと必死に体を張る。 「マジカル♪ ホーリーにゃー!」 千佳、ワンドを掲げ全周防御向上を発動。 「長期戦を想定していたので問題はないが……」 「今がここぞという時!」 練力を節約しながら戦っていた羅喉丸、惜しみなく骨法起承拳で敵を斬る。リンスも八極天陣の動きで味方の組む円の外側に回り敵を背中から狙う。 「起動まで護りぬくっ!」 「うむっ」 ひときわ大きく咆哮したメグレズ。山岳陣からの鬼切で敵を吹っ飛ばした。玉葉もふっ飛ばす。 「私も練力はもう惜しまないわよ!」 敵がこれ以上入らないのは、凪沙の結界呪符が両入り口を塞いでいるから。 「コクリさん、時間ですー!」 リンスから預かった時計を必死に見ていたサエの叫び。 「よしっ!」 がこん、とレバーを入れるコクリ。 「みんな注意して、何か来るっ!」 はっと気付いたふしぎの振り返る声。 そして……。 ――どすん! 衝撃が制御室を襲った。 ● 部屋全体が震え、全員が転倒していた。 「え? 敵が……」 尻餅をついたコクリが周りを見ると、古霊兵がたくさん転がっている。 ただ、これまでとは違いぼろぼろに古びていたが。 そして、部屋に地下への階段が出現した。下りると精霊門があった。 早速、報告すべく帰路に就く。古霊兵はすべて機能停止していた。 後に聞いた話だが、レバーを入れた瞬間、外では上大蛇から下大蛇山脈までの山が鳴動して光り輝き、龍が駆け巡ったかのようだったという。 精霊門は、地上につながるらしい。 |