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■オープニング本文 武天の芳野という街で、花火大会が行われようとしていた。 海と山に挟まれた平野部の街、芳野。今年は山側と海側、両方から花火が上がることが見所だとか。 そんな祭りを前に、街の領主代行、つまり街の最高責任者である伊住穂澄は忙殺されていた。 街路の使用許可、花火の安全確認、警備計画、商業計画、当日の治安計画に火災対策。 だが、それも慣れたもの。有能な部下たちを縦横無尽に使ってどうにかこうにか準備完了。 「……はぁ、妹たちがもっと手伝ってくれれば、楽なんですけどね」 一息ついて、お茶を啜りつつぽろりと愚痴をこぼす伊住穂澄。だが、そんな彼女のもとに急使が。 「穂澄様、少々気になることが……」 「? ……んぐんぐ……なんでしょうか?」 かじりかけのお煎餅を飲み込んで、向き直る穂澄。 そして知らせを聞いた彼女は、すぐさまギルドへと使いを出したのだった。 芳野はそれなりに大きな街であり、悲しいかな犯罪もそれなりに発生する。 しかし伊住穂澄の叔父は武天の老中にして、国内の治安維持を司る東郷実将だ。 芳野の本来の領主が、この東郷実将であるため芳野の治安は武天でも指折りに整っている。 多くの犯罪者は芳野を避け、芳野で指名手配されようものなら遠くへ姿をくらますのが普通だ。 だが、今回芳野にて指名手配された犯罪者たちが舞い戻ってきているという報告があったである。 その数8名。しかし、なぜこの警備の厳しい祭期間中に舞い戻ってきたのだろう? …………しばらく前。芳野から離れた街にて。 指名手配を受けた凶盗、山刀の蛮二は寂れた宿場に身を隠していた。 腕に自信があり、志体持ちこの凶悪犯。商家を襲い、仲間と共に荒稼ぎすること十と三件。 調子に乗った彼は、芳野で一働きしようと考えたのだがそれが失敗だった。 凶悪な手下を20人以上集めたのにも関わらず全滅。辛くも包囲を逃れた蛮二は逃亡。 何度となく追っ手がかかり、精も根も尽き果て、彼はこの寂れた宿場に来ていた。 盗みで手に入れた金も残りわずか。そんな彼の元に客がやってきた。 「……てめぇ、何者だ」 得物の山刀を引き抜いて構える蛮二に、にやりとその黒い顔の青年は口を歪ませて。 「少々、祭に華を添えていただこうかと思いまして」 そして、その赤い瞳が輝いて……その日を境に蛮二は宿場から姿を消した。 同じような出来事が天儀の各所で発生。そのすべてには黒面の青年の姿があった。 そして8名の犯罪者は、皆芳野へと向かった。 「……あの街は、開拓者と仲が良いと聞きますからね。せいぜい、大騒ぎになって欲しいものです」 黒い肌の青年は、そう言ってそれっきり興味を失ったかのように、武天から理穴へと去って行った。 「……祭りを止めることは出来ません。すでに街に入り込まれてしまった以上は、対処するしか無いのです」 苦々しげに告げる伊住穂澄。彼女は決断を迫られていた。 「8人の犯罪者の詳細な情報はすべてお伝えします。どうにか彼らを止めて頂きたい」 多くの人出が予想される花火の夜、おそらく8人の賊は動くだろう。 それを止めるのが、今回の開拓者たちの役目だ。 さて、どうする? |
■参加者一覧
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
バロン(ia6062)
45歳・男・弓
千代田清顕(ia9802)
28歳・男・シ
レヴェリー・ルナクロス(ia9985)
20歳・女・騎
叢雲 怜(ib5488)
10歳・男・砲
闇野 ハヤテ(ib6970)
20歳・男・砲
トィミトイ(ib7096)
18歳・男・砂
熾弦(ib7860)
17歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ● 「承りました。標的8名にそれぞれ符丁を付けて、部下たちにも相互連絡をとれるようにしておきます」 「ええ、誰がどこで標的に逢うかわからないもの。打てるべき手は、打っておかないとね」 穂澄に言葉に、頷くレヴェリー・ルナクロス(ia9985)。 ここは、芳野の中心部にある小さな料亭の奥座敷。そこは今、作戦指揮室になっていた。 壁に貼られているのは標的たちの情報と街の地図、部下の配置や情報交換場所についてだ。 「現在、大多数の部下は標的を探しに街に散っていますが……やはり手が足りません」 「うん、だったらまずは推理しないとなのだ。闇雲に動いても、見つけられないのです」 叢雲 怜(ib5488)はそういって、あらためて資料を手に考え始める。 すでに、開拓者たちはここ数日、連日のように情報収集と絞り込みを繰り返していたのだ。 開拓者がそれぞれの相手に専門的に対応。それは今回、正解だったといえるだろう。 さらに相互に連携・連絡を取れるように穂澄に要請したレヴェリーの献策も的確だった。 狙いを絞った上で、さらに情報網を使って絞り込んでいくというわけで、 「……よし、それじゃ俺はそろそろ出るよ。大体絞り込めた。あとは現地で追い込んでいくよ」 立ち上がる青年は闇野 ハヤテ(ib6970)だ。彼はへらりと笑顔を浮べて、 「このデカイ喧嘩をさっさと終わらせて、俺も祭を楽しみたいしね」 こうして開拓者たちは動き出すのだった。 ● 「さて、被害が出る前に早めに見つけないとですねー」 てくてくと、歩く子供が一人。可愛らしい外見だ。なんせ彼は着ぐるみの虎を着ているのだ。 彼は相川・勝一(ia0675)。 「相手は居合の達人、だったら刀を振れる広さが必要というわけですねー。この路地は駄目っと……」 相川の相手は、剃刀の裏貴だ。そのため、相川は居合を使える場所に狙いを絞っているようであった。 さらに、相川が注目した点は武器だ。 「それと、もしかしたら仕込み杖を使ってるかも知れませんしねー。要注意です」 それは裏貴の武器、相川は彼が仕込み杖をもっている可能性も考慮したのである。 この二つの視点は、両方とも核心を突いていた。 見事な推理で居場所を絞り込んだ相川。そして彼は一人の男を見かける。 「ん、あれは……目標と似ていますね」 小柄で、仕込み杖を持って居る男である。 「それなら、此処からは真面目モードだな」 相川は仮面を付けながら裏貴の後を追いかけるのだった。 「狂人が8人も野放しか。裏で何者かが糸を引いてそうだね……ま、そいつも狂人だろうけどね」 人混みの中をするするとすり抜けるように進むのは千代田清顕(ia9802)だ。 「黒紐の、か……だったらなおさら目立つ場所で事を起こしたりはしないだろう」 千代田は、同じシノビとして黒紐の山戸丸の行動を予測していた。 「……賑やかな祭の中でも、必ず闇はある……そこで対象に忍び寄って対象を絞殺……」 千代田の思考は、山戸丸の思考を正確になぞっていた。 同じシノビとしての経験が千代田の思考を正解へと導いていく。そして、彼はたどり着いた。 「祭の賑わいから近いのに、ぽっかりと人が少ない意識の空白地点、ここだな。俺が山戸丸ならそうする」 そういって、ゆらりと闇に溶け込むように隠れる千代田。 するとそこに黒尽くめの巨漢がやってくる……予想通り、山戸丸であった。 「困ったわ。せっかくとても奮発してくださったのに、これじゃ待ち合わせに遅れてしまう……」 華やかな衣装に身を包んだ妙齢の女性。彼女は出店や通行人にある人の所在を尋ねていた。 「背はこのくらいに大きなお方で……」 尋ね人の詳細を告げるこの女性は山刀の蛮二を追うレヴェリーだ。 着物の上からでも匂い立つ色気。上気した頬とうなじがさらに色気を醸し出していた。 そんなレヴェリーから尋ねられれば、誰しもが親身になろうというものだ。 「……ああ、そういえばさっき、あっちでそんな兄さんとすれ違ったなぁ。髪は黒だったが」 「そういえば、髪は染めると仰っていたわ。ありがとう!」 彼女は蛮二が髪を染めている場合に備えて、その大柄さに注視し情報を集めたのだ。 それが的確だった。さらに遊女の振りをして、ところ構わず話を聞くのも役に立ったようだ。 そして、ついにレヴェリーはたどり着いた。 少し先に見えるのはどうやら標的の蛮二だ。彼女は静かに彼の後を追いかけるのだった。 ある程度場所を絞り込んだあとに、人の力を活用している者がもう1人。 「その人は、突然会いに行って吃驚さようと思ってる人なのです」 叢雲が手伝って貰っているのは子供たちだ。 「だから、姿を見かけたらコッソリ俺に教えてください!」 「うん、分かった! 探してくるね!」 ばらばらと散っていく子供たち。それを見送って叢雲は静かに思考を整えた。 今回、彼の相手は狂笑の美土里だ。この相手に関する情報は少ない。 そのため叢雲が選んだのは人海戦術。確かに子供たちならば、素早く動き回って探せるだろう。 少々危険性はあったが、叢雲は相手の美土里が誰彼構わず攻撃する相手ではないだろうと予測していた。 若く、衝動的な殺人鬼であれば、接近しすぎなければ大丈夫。そしてその予想は的中した。 「ねえ! 見つけたよ!!」 子供たちが叢雲にそう告げた。叢雲は子供たちに別れを告げて、1人で標的の元へ向かう。 ちらりと叢雲は空を見上げ、そっと標的へと近づくのだった。 (……ただ目に付いた場所に火を放ったのでは、自分が逃げ遅れ炎にまかれる可能性も高い……) 思考を巡らせるのはトィミトイ(ib7096)。彼の思考は小さな情報から的確に真実を見抜いていた。 (……ならば円摩は事前に計画を立て、逃走経路を確保しているはず……) トィミトイは火傷の円摩の担当だ。彼はまず、その外見から絞り込みをかけた。 特徴的な外見の円摩。だが、その目撃証言は驚くほど少ない。 わずかに手に入った情報、そこでさらにトィミトイはそこで、火に注意するようにと警告した。 結果、絞り込みがさらに狭まっていく。 そして今、祭の賑わいの中、密やかなその路地裏にトィミトイはいた。 全ては彼の思考が導き出したことだ。だが彼には予感があった。円摩は必ず此処に現れる。そして、 (放火魔か……やはり予想の通りか……) トィミトイは、遠くからやってくる女の姿を見つけ、思考をやめた。 これからは行動を起こす番だ。 「さぁて……夏の虫退治に行きますか」 くつくつと喉の奥で笑いながら、闇野は目標の場所へ。 すでに目星は付いている。ならば先手を取らなければならないだろう。そして彼は見事それを成し遂げた。 壁に寄りかかり人の波を眺めている女、梅乱だ。 闇野はその前を通りすぎつつ、にやりと笑みを向けた。挑発するような獰猛な笑みだ。 今回彼の相手の鉄嘴の梅乱は、実はもっとも厄介な相手だった。 無差別に被害を出すとしたらその筆頭が梅乱。それ故に、闇野の作戦は最善手であった。 その最善手とは、挑発すること。 危険人物を連れた鬼ごっこ。闇野は路地の奥へ奥へと梅乱を連れて、進んでいくのだった。 追う相手と思考を重ねること、それこそが相手の行動を予測するために一番必要なことだ。 「伊住殿、火の見櫓や高楼への立ち入り許可を頂きたいのだが」 「はい。もちろん今すぐ用意させますが、もう場所が分かったんですか?」 白の絶根彦を追うのはバロン(ia6062)だ。 「ふむ、狙撃手であれば獲物が何者だろうが、狙撃場所の確保を行っているはずだ」 そういってバロンは地図のそこかしこの櫓や高楼を指す。 「人通りが多い場所はこことここ……人通り、高低差、遮蔽物、逃走経路に天候……」 そう言いながら、バロンは地図の候補地を次々に絞り込んでいく。 「それを考えれば、使える場所の数は少ない……あとは裏を取るだけだ」 そしてバロンは場所を絞り込んだ上で、ある高楼の上にいた。候補地全てが見渡せる場所だ。 静かに弓を持ち待ち構えるバロン。すると、最重要と予測した火の見櫓に人影が。 「ここまで予想が当たるとはな。どこかわしと似ている敵かもしれん」 バロンは呟きながら、弓に矢をつがえる。 「……ならば、歪んだ弓の道を正してやるのも、わしの役目か……」 「受けた以上はやるしかないけど、被害が広がらないといいわね」 1人でも失敗すれば大きな被害がでる今回の依頼に思わず熾弦(ib7860)は呟く。 彼女は直接の戦闘力をもたない吟遊詩人、相手は毒の小刀を振るう毒蝶の重佐だ。 だが、吟遊詩人には吟遊詩人なりの戦い方がある。 彼女は、人通りの多い場所に用意された櫓の上に陣取って周囲をうかがっていた。 絞り込みの結果、彼はここに来るはずだと予測しているのだ。 そして待つことしばし。いよいよ花火の時間が。 熾弦はそっと歌い出す。ローレライの髪飾りが輝き彼女の周囲を燐光が舞う。 思わず周囲の祭客たちが彼女の方を見上げ、その歌声に喝采をあげる。 だが、彼女を見ない男が1人。背が高く猫背の男、毒蝶の重佐だ。 とうとう見つけた。熾弦は歌いながら、その男に静かに視線を向けるのだった。 ● そろそろ花火の上がる時間だ。そんなざわめきと共に、客たちは空を見上げた。 同時に、熾弦の歌声がひときわ高く、大きく響き渡る。 精霊の力を帯びた吟遊詩人の歌。それは狙った相手を眠らせる呪歌だった。 ぐらりと力を失って崩れる毒蝶の重佐。 そこに熾弦が櫓から降りて近づいていく。 「体が悪いかもしれないから連れて行くわね」 熾弦が呼べばあらかじめ待機していた兵たちが。 熾弦が巫女だとしって、周囲の人も一安心。さらに熾弦は周囲に視線を配った。 からり、重佐の手から落ちたのは小刀だ、すでに毒が塗られている。 だが、どうやら被害者は居ないようだ。彼女はそっと安心すると、小刀を回収。 兵たちと共に重佐を連れてその場を去るのだった。 そんな彼女の背中を照らしたのは、空を彩る大輪の花火だった。 花火が上がった瞬間、白の絶根彦は眼下の人々に向けて矢を放とうと矢筒に手を伸ばした。 次の瞬間、その肩に矢が突き刺さる。 あらゆる物を貫通して放たれる究極の一矢、バロンの狙撃だ。 「……終わりだ。なに、命まではとらんよ、だが祭の邪魔は辞めて貰おうか」 バロンの第二射、それは今度は足だ。絶根彦はそのまま動けなくなり捕縛されるのだった。 鬼ごっこの末、路地裏に誘い込まれた梅乱。その時どんと花火が上がった。 挑発してきたあの軽そうな男を殺すこと。それしか梅乱は考えていない。 だから、彼女は予想していなかった。 「……短気なアンタには待つなんて器用な事、できねぇんだろうな」 長銃を構える闇野、閃光練弾が炸裂し梅乱の視力を奪う。そこにさらに銃撃。 足と肩を打ち抜かれ倒れる梅乱、闇野はそこに近づくと、手に鉄爪を奪い取って。 「手加減はしませんでしたよ……そんな優しい男じゃないんで……ああ、そろそろ夏も終わりですね」 任務完了。上がる花火を背に、闇野はぽつりそう呟くのだった。 火を付けるため、術を放とうとしたその刹那、円摩はトィミトイに組み付かれた。 声を出す間もなく縄が円摩の自由を奪う。だが、指先さえ動けば、発火符を使える……と思ったのだが。 トィミトイは有無を言わさず円摩の手を踏み砕いた。 「っぁぁ!」 「さて、これで少しは口を開きやすくなったか? ならば一つ聞く」 ぎりともう片方の腕も踏みしめつつ、トィミトイは円摩に詰め寄った。 「同時期にこうも犯罪者が出戻ってくるのは不自然だ。裏で糸を引いている奴がいるな?」 「っあ、ぁぁあ……な、無有羅様の……お導き……」 「無有羅だと? ……冥越八禍衆のひとつか……」 ギルドで見た賞金首の名を思い出し首を傾げるトィミトイであった。 ふらり、叢雲は視界に収めた狂笑の美土里へと近づいた。すれ違いざま、よろけたように身を寄せる。 花火が丁度上がり、光と音が弾けた。 その刹那、叢雲は銃を抜く。銃口はぴたりと美土里の心臓へ。 生と死の極限の中、銃が火を吹く。しかも二連射で。 そしてあまりにも素早い早撃ちに美土里はその場で事切れた。 叢雲はそのまま兵を呼ぶ。瞬き一つの一撃は、見事と言うしか無い決着であった。 背後から歩み寄り、はっしと蛮二の手を掴むレヴェリー。 花火の下で、そのままレヴェリーは蛮二を路地裏に連れ込んだ。 端から見れば恋人たちの逢瀬だ。だが、花火の閃光の下で、蛮二は山刀を抜き放っていた。 一撃必殺の振り下ろし。レヴェリーは回転しながらそれをブレードファンでいなす。 一歩踏み込んで懐に。回転の勢いをのせてブレードファンが蛮二の心臓に突き刺さる。 そのままレヴェリーはブレードファンを奥へ突き刺し、それっきり蛮二は動かなくなる。 崩れ落ちる蛮二をぐっと支えると、刃をそのままにして血を流さないように。 「……飲み過ぎてたみたい。折角会えたのに……兵を呼んでもらえる?」 そのまま何食わぬ顔でレヴェリーは兵を呼び、蛮二を運び出すのだった。 「会いたかったよ山戸丸」 暗がりで山戸丸の前に立ちはだかったのは千代田。山戸丸は無言で掴みかかった。 だが、千代田は掴まらない。上手に間合いを取り、忍刀を振るう。 「なぜ戻った? 花火見物でも無いだろうに」 しかし山戸丸は応えない。傷が増えて、ついに山戸丸は決死の覚悟で斬られながらも千代田を掴んだ。 「……大男に抱きつかれるのはごめんだね」 だが、千代田の方が一枚上手。彼の籠手からは刃が飛び出し、山戸丸の肩を刺し貫いた。 そのまま、千代田は山戸丸を昏倒させた。あとは兵を呼び連れて行くだけ。 「……これまで何人もの命を奪ってきたのは俺もあんたも同じ」 兵が山戸丸を連れて行くその姿にむけて、 「だがあんたを殺さないことが、俺のせめてものあがきさ」 小さく千代田は告げるのだった。 「先手必勝!」 路地裏に歩み去る裏貴に襲いかかるのは仮面を付けた相川だ。 しかしそれを待ち受ける裏木。 「小僧、開拓者かっ! 死ぬが良いっ!」 迎え撃つ裏貴、仕込み杖で居合の構え。だが、それは相川の予想通りだった。 「居合ならこちらも出来るのでな。いつも自分がやっている方法でやられるがいい!」 瞬間の交錯、ちょうど花火があがったその刹那、2本の仕込み杖がすれ違い……裏貴だけが倒れた。 「……何を言おうと命を助ける気はない。あの世で自分の弱さを恨むがいい」 血の泡を吹く裏貴を見下ろし相川は静かに血振りをして仕込み杖を収めるのだった。 こうして、薄氷の上を歩くような依頼は無事成功した。 裏には無有羅の暗躍があるようだが、ともかく今回のこの素晴らしい成功は真実。 祭の喧噪を危機ながら、開拓者たちは依頼の成功を祝うのだった。 |