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■オープニング本文 ●下準備 「これだけ仕入れれば大丈夫アルね」 とある泰拳士の少女―超―が、大量の珍しい物品や怪しげな物品を運んでいた。 「それにしてもここでなら十分売れるアルよね?」 到着した、そこは開拓者ギルドの近くの小さな小屋だった。そこで先ほど運んできた物品を売りさばき一儲けするのが狙いのようだった。 「しかし困ったアル‥‥私今までこういった経験ないアル‥‥」 荷物を小屋の中に並べながら唸りだした。 並んでいくのは土偶ゴーレムを作るのにちょうどよさそう大きさの土偶が多いようだ。他にもどこから仕入れたのかは謎だが、宝石、銘刀、鎧などが置かれていた。挙句の果てには酒などまであった。完全に超は儲けることだけを考えて品揃えは考えてない様子だ。 「やっぱり開拓者に相談するのがいいアルなぁ‥‥」 結局結論は開拓者頼みだった。 ●依頼 「依頼受付の係りアルな?ちょっと来るアル!」 開拓者ギルドの受付係りの女性をひょいと抱えると少し走る。彼女は開拓者ではないが志体持ちで泰拳士として修行を積んできているのでこのくらいはお手の物だった。 「な、なんでしょうか?」 連れ出された開拓者ギルドの女性は異様な雰囲気に圧倒されながら訊いた。 「ここで商売するつもりアルが、人手不足アル。報酬は手当が少しと、売れ残り商品なるアルが引き受けてくれる開拓者募って欲しいアル。品はここにある限りアル」 「は、はぁ‥‥わかりました。それでは戻って募集してきます」 開拓者ギルドの受付係りの女性は少し引いた状況で依頼を引き受けると、一目散に開拓者ギルドへ戻り開拓者の募集を開始した。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
鳳・月夜(ia0919)
16歳・女・志
嵩山 薫(ia1747)
33歳・女・泰
千王寺 焔(ia1839)
17歳・男・志
九法 慧介(ia2194)
20歳・男・シ
星風 珠光(ia2391)
17歳・女・陰
橋澄 朱鷺子(ia6844)
23歳・女・弓
鞘(ia9215)
19歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●整理整頓 時は早朝、開店予定時刻からするとかなり早いようだった。 「‥‥今日は1日よろしくおねがいします」 朝比奈 空(ia0086)は依頼主であり、店主である超に挨拶をした。それに続いて、 「私、鳳・月夜。志士‥‥よろしく」 と鳳・月夜(ia0919)がそして、次々に挨拶はするもの、開拓者の殆どはどこか戸惑っていた。そう、それほど店内の雰囲気が常軌を逸していたのだ。 「どんな商品あるの?楽しみ‥‥」 「うわぁ‥‥本当に珍しい品物ばっかりだな。」 月夜と九法 慧介(ia2194)のように興味を示す人もおれば、 「ただ品揃えが良いというだけでは駄目だわ。訪れるお客さんためを思った店造りこそ、商売繁盛への第一歩よ?」 と、嵩山 薫(ia1747)のように並べ方を早速指摘している人もいる状態だ。 現在の並び方は見るに耐えない状態だった。目立つ箇所に限り怪しげな物や、怖がられる物がならんでいて、本来目立たせるようなものが殆ど隠れてしまっていた。 「商品をより見栄え良く見せる事も重要なのよ」 薫は超に助言した。 「そうアルなぁ。どうすればいいアルか?」 超は薫に問い返した。 「目玉品なんかがあればそうと分かりやすいように配置する方がいいんじゃないでしょうか?今のままだと本当にただ怪しいだけなので」 鞘(ia9215)が品の並びを確認しながら意見した。 「まずはこの怪しい雰囲気をできるだけ健全なものにするのがいいわね」 薫が中心になり店内の配置を順に換えていった。 橋澄 朱鷺子(ia6844)も手馴れた様子で商品を纏めては、得物などの目立たせるべきものを目に付きやすい場所へ陳列させ、逆に怪しげな雰囲気の強い大きな土偶は慧介や千王寺 焔(ia1839)に頼み目立たない場所へ移動していった。 一方、星風 珠光(ia2391)は西洋風の鎧兜のみの土偶ゴーレムを操作する特異なアヤカシと言う神和 天護と一緒に、事前に焔と一緒に作った宣伝用チラシを開拓者ギルドで配っていた。1日限りということもあり、やや興味を示す開拓者もいたが、万商店への信用が強いためか、配れたのはそう多くなかった。 「お疲れ」 焔は帰ってきた珠光に声をかけた。 「やっぱりあまり好評っていうところまではいかないねぇ」 少し残念そうな表情で結果を報告した。 「まだまだこれからだから、頑張ろう!」 慧介も声をかけた。 「そうですわね。みんなで頑張りましょう」 天護も返答。 「それにしてもこの土偶重たいな‥‥」 焔が小声を漏らした。 「うるさいわね。土偶は重いものなのよ。放っておきなさい」 珠光と空と朱鷺子と一緒に小物の整頓をしていた天護が何故か反応した。 「そ、そうか‥‥」 焔は天護の反応の意味も掴めないまま流した。 「このあたりか?」 焔が大きな土偶を店の隅に置いた。 「そのあたりで大丈夫です」 鞘が答えた。 「それにしてもすごいアルね。配置を変えるだけでここまで雰囲気が変わるとは思ってなかったアル」 開拓者が次々と雰囲気を改善している姿に超は関心していた。 「良い服ある?‥‥宣伝用に使えるの」 月夜が超に訪ねると、 「こういうのならあるアルよ」 超は次々と派手な服や外套を持ち出してきた。 そして月夜は色々な服を選び、嬉々と試着していった。 「最初と比べて大分よくなってきましたね」 朱鷺子が全体の様子を見て小さく頷いた。 「そろそろ開店予定時刻が近いですね」 空が時刻を確認して言った。 「そうアルな。これからが本番アルね!みんな頑張るアルよ!」 超が気合を入れて開拓者に声をかけた。 ●開店 「万商店に無い商品があります。万商店も最近は中々新しい品物が入荷しませんし、しても殆どが特別アイテムなので入手は運次第ですから、この期に立ち寄ってみてはどうでしょうか?」 空は開拓者ギルドの方で穏やかな口調で1人1人と丁寧に声をかけていた。対象は新米もそうでない人も関係なく幅広くあった。 「良い商品ある‥‥見て行って。」 月夜は店の近くで試着した派手な服や外套を着て呼び込みをしていた。時折、刀の試し斬りの実演もしていた。 「いらっしゃいませ」 「見て行くだけの冷やかしでも構いませんので、どうぞ店内にお入りください」 鞘は実家で鍛えた0文の営業スマイルを振る舞いまずは客を強引に店に引き込んでいた。そして、客を飽きさせないように商品を勧めたりと接客をしていた。 商品に満足した客には口コミを頼むことで宣伝も担っていた。そして最後には、 「ありがとうございました」 と営業スマイルで送り出していた。 「‥‥場所があまりないので十分には効果がでないですが‥‥」 建物の隙間を利用し弓の実演をしている朱鷺子の姿もあった。 そう遠くない距離だがやや離れた場所に頑強な的を用意し、鉄で補強された天儀弓を構えた。 「こう‥‥ですね」 矢を放した。その次の瞬間、的が粉砕された。 「ここで本気を出すと建物を壊しかねないので手加減していますが、戦場ではもっと力を発揮するはずです」 と、実演するたびに次々に弓も売れていった。 「いらっしゃいませ。ようこそ‥‥あら? そういえばこのお店の名前って‥‥?」 薫が超に訊ねた。 「1日限りだから店の名前は特にないアルよ!」 と超は接客をしてる合間を縫って返答した。 「‥‥ともかく、ごゆるりと御覧下さいましね」 客に商品を勧める姿や会計をする姿はまるでお手本かのような様だった。 「私もすっかり商売人の助っ人が板に付いてきたわねえ‥‥いえ、こちらの話よ」 と薫は一息ついた。 「いらっしゃい。普通はお目にかかれない珍しい品ばかりだよ。どうぞ見ていってくれ」 と元気よく店に残る唯一の男の慧介の姿もあった。男性客の殆どは女性陣に取られているものの女性客の殆どを総取りして個人の売り上げもずいぶん高いようだった。 やはり来る客全員に良い時間をすごしてもらおうと頑張る姿の成せる業だろう。 一方、焔と珠光と珠光に同伴する天護はというと、宣伝の要となる実演をしていた。 焔が刀や剣を中心に技を披露し、珠光は大鎌や薙刀を披露し、2人は声をあげての呼び込みもしていた。天護は2人の実演を見る客に店のチラシを配っていった。チラシの減り方は早朝と比べるととても早かったようだ。 やはり人気のあるものは得物を振るうと幻影が見える得物だった。 「こういう珍しい物は超のお店で購入できるので欲しい方は行ってみてくださいねぇ」 珠光が声を張り上げて宣伝し、 「お急ぎのところすまない。良質な武具が手に入ったのだが、興味はないか?」 焔も宣伝していた。なぜか真剣な眼差しで。 「こういうときは笑顔で接するのがいいよ」 珠光が苦笑しながら注意をした。 「あ、ああ」 焔は気恥ずかしそうにしながら懇切丁寧に宣伝を続けた。 お昼は順番に持参しているお弁当を2人ずつ取っていった。 空はおせちだったり、焔は珠光の作った弁当を一緒に食べたり、珠光はお弁当のない人にお握りを振舞ったり、朱鷺子は握り飯や辛い鳥の揚げ物を振る舞いながら食べたりと様々だった。 昼を過ぎてからは客が途切れることなく店に流れ込むことになっていった。 「んー。そっか。んじゃこれならどうかな?」 慧介は客が多くなっても調子を乱さずきっちりと接客を続けた。 「思ってたよりすごいアル。この勢いだと売切れそうアル」 超は客数にに驚きつつも接客を続けていた。 「ここまでくるとすごく大変ね」 薫は大変と言うもののきっちりと対応していた。 「万商店にないものがあるので、あちらの店に寄ってみませんか?」 と、空は呼び込みをするが、もう呼び込みが必要なのかと言うような客の流れができていた。 (「もはや呼び込みは要らないかもしれませんね」) そう思い小さく微笑んでいた。 「もう呼び込みは止めた方がいいですよ。商品がもう殆ど残ってないみたいです」 珠光と焔が呼び込みをしているところへ空がやって来てそう告げた。 珠光は頷くと、 「これは商品じゃないから売れないけど、もし欲しい人は早く行かないとなくなるみたいだよ」 と、宣伝していた。するとそれを聞いた客たちの購入を考えている人は一目散に店に向かっていった。 「あ‥‥ごめんねぇ」 珠光は苦笑しながら謝った。 しばらくして、商品も大きな土偶2つを残して売り切れた。呼び込みに出ていた開拓者も店に戻ってきていた。 「ほぼ売り切れたけどこれは‥‥」 始めと服装が変わって露出の多い服を纏う月夜が、大きな土偶を見て苦笑いをこぼした。 そこに1人の陰陽師が、 「本当に土偶ゴーレムにするのにちょうどいい土偶ですね」 そういうとしげしげと残る大きな土偶2つを眺めた。 「2つとも買う?」 月夜が陰陽師に声をかけた。 「そうですね。2つともだと今の予算では少し足りないので1つにしておきます。両方欲しいのは山々ですけどね」 陰陽師は苦笑し返答した。 「2つとも買うアルなら、お安くするアルよ」 超が値引きした数値を陰陽師に提示した。 「こんなにいいでしょうか?」 「いいアル。いいアル」 それ以外全ての商品が売れ切れていることもあり超は上機嫌で大値引きしたようだった。その数値は開拓者からは確認できないようだった。 「ありがとうございます」 陰陽師は笑みを浮かべて、大きな土偶を荷台に乗せるともふら様に引かせていった。 「ありがとうございました」 開拓者は最後の客に一礼し見送った。 ●閉店 「それにしてもみんなすごいアル。まさかたった1日で売り尽くすとは思ってなかったアルよ」 超が満面の笑みでそう伝えた。 「珍しいものや、良いものを見させ、触らせてもらったこと感謝する」 焔は感謝を意を伝えた。 「今日は1日お疲れさまでした」 空は超に挨拶をした。そして開拓者は全員空に続いて挨拶をした。 「いえいえアル。報酬にするつもりのものまでなくなったアルから代わりに、特別手当を出すアルよ」 超は通常手当に加えて特別手当を開拓者に渡した。 「さてと、片付けしてまた買出しアルね」 超は上機嫌なまま店を閉じていった。 「それじゃまたいつかアル!今日は本当にありがとうアル!」 開拓者に手を振って超はもふら様の引く荷台に試着品を乗せて、夕日の方角へ進んでいった。 こうして1つの商売が幕を閉じたのであった。 了 |