とある誕生の物語
マスター名:東雲八雲
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 15人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/03/08 19:30



■オープニング本文

「なんだ?空の黒い点は?」
 街の男が空を見上げて呟いた。
 そこには確かに黒い点がちらほらとあった。その点は小さく動きもしているようだったが、殆ど動きを止めていた。
「さあ?なんだろうな」
「飛行船とかグライダーとかじゃないの?」
「いや、それにしては殆ど動いていないぞ。ほぼ止まっている感じだな」
 街の民が少しずつ空の黒い点に注目をし始めた。
「おい‥‥あの黒い点少しずつだが増えてないか?」
 また別の空を眺めていた男がそう言った。
「それはないだろ?」
「そうかしら?確かに1つ増えたような気がするわよ」
 街の民の間には口々に広がり、空の黒い点についての話で持ちきりになってきた。
 やはり不安も隠しきれないようでもあった。
「アヤカシだったら危険だから開拓者に見てもらうのがいいんじゃないかしら?」
「それもそうだな」
 女は提案し開拓者ギルドに掛け合った。

 数日後、開拓者ギルドからの報告は最悪の予想通りアヤカシの群れだった。駆除するにも確認に向かった人数ではどうしようもなかったという話だった。
「アヤカシの群れってまずいんじゃないか?」
 街の民は空の黒い点を見て身の危険を感じた。
「それにやっぱり少し数が増えてない?」
 明らかに増えているアヤカシの黒い点を見て恐怖を感じてきている。
「襲われる前に開拓者に掛け合う方がいいよさそうだな‥‥」
「そうね。今のうちに何とかしてもらわないとここが危ないわ」
 そうして再度開拓者ギルドに掛け合うことになった。


■参加者一覧
当摩 彰人(ia0214
19歳・男・サ
佐久間 一(ia0503
22歳・男・志
八重・桜(ia0656
21歳・女・巫
雲母坂 芽依華(ia0879
19歳・女・志
焔 龍牙(ia0904
25歳・男・サ
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
神鷹 弦一郎(ia5349
24歳・男・弓
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
橋澄 朱鷺子(ia6844
23歳・女・弓
久我・御言(ia8629
24歳・男・砂
贋龍(ia9407
18歳・男・志
夏 麗華(ia9430
27歳・女・泰
奈良柴 ミレイ(ia9601
17歳・女・サ
八神 静馬(ia9904
18歳・男・サ


■リプレイ本文

●飛翔
 開拓者は甲班、乙班、丙班の3班に別れて出発した。囮の担当はアヤカシの群れに向かい、攻撃の担当は郊外上空に向かっていった。
 アヤカシは向かってくる開拓者に気づくが、自ら襲う様子はなかった。まるで今はまだ力を蓄えてるため増殖しているようだった。
 
 ―――甲班

 まずはアヤカシを街の郊外へ誘き出すめたの2人、夏 麗華(ia9430)と八神 静馬(ia9904)が先陣を切った。静馬は咆哮を放ちアヤカシの注意を真下の街から離し、自らに引き付けた。そして、予め決めておいた場所を目指して、駿龍の紫苑を全力移動で加速し追いつかれないよう注意しながら移動した。その咆哮の通じなかったガーゴイルに対しては、駿龍の飛嵐に跨る麗華は重機械弓「重突」で射ることで注意を引き付けた。
 だが当然アヤカシも攻撃に転じた。ガーゴイルの突進とドラゴンゾンビの体当たりだった。静馬に当たるが、紫苑が直撃は回避した。そして麗華がその2体を射抜いたが、ドラゴンゾンビは怯みもしなかった。それでも注意は一瞬逸れた。その瞬間、紫苑は全力移動で加速しアヤカシと距離を取った。そして、静馬はアヤカシに頭上を取られないよう注意しながら引き付けていった。麗華は上を取ろうとするアヤカシを射抜くことでアヤカシの動きを制限していった。

 ―――乙班

 乙班の囮の担当の2人は玲璃(ia1114)から加護結界の付与がされた。
 乙班もアヤカシを街の郊外へ誘き出すため策を講じた。
「頑張ろうな鋼牙。さて薬草と包帯も持ったし行こうか」
 と贋龍(ia9407)は駿龍の鋼牙に声をかけ、アヤカシに白鞘と脇差を使った我流の二刀流で攻撃を仕掛ける。しかし、狙いは注意を引き付けることだ。ここで仕留めるという考えはない。だから、反撃を受ける前に離脱を試みるのがアヤカシもすでに気づいていたこともあり即座に反撃をしてきた。攻撃は突進だった。危険視していた怪音波は使ってこなかった。それを好機と高速回避で凌ぐが、ドラゴンゾンビの攻撃が続いた。回避しきれないと判断し受け流しで受ける傷を最小限に抑え込むことができた。
「…さぁ、行くか八尋。天に向って射るのも悪くない」
 神鷹 弦一郎(ia5349)も駿龍の八尋に跨り、騎射を使用する。そして援護射撃。射は的確で確実にアヤカシの動きを制限していた。そのお陰で贋龍はアヤカシから離脱し距離を取ることに成功した。

 ―――丙班

 甲龍の甲彦に乗った奈良柴 ミレイ(ia9601)が咆哮でアヤカシの注意を引き付けた。もちろんアヤカシは攻撃態勢を取った。
「せいぜい美味い餌に見えるよう演技していきましょう、先生」
 と駿龍の隠逸に声をかけ菊池 志郎(ia5584)はわざと速度を落として危なくなると全力移動を使用したりと、蛇行し撹乱しながら囮役を務めた。
 ミレイにアヤカシが接近すると志郎は風魔閃光手裏剣を放ち、アヤカシの視界を奪っていった。
 そして街の郊外へと誘き出して行った。

 攻撃の担当はというと、甲乙丙班それぞれの持ち場に到着し待機していた。
「天駆ける巫女である私の役目です!さあ!染井吉野!一緒に頑張るです!」
 駿龍の染井吉野に乗っている丙班の八重・桜(ia0656)は囮の担当の2人とアヤカシを確認した。

●戦闘開始
 ―――甲班

 郊外に待機していたのは鈴木 透子(ia5664)、橋澄 朱鷺子(ia6844)、久我・御言(ia8629)の3人だ。
「秋葉よ。力を蓄えておきたまえ」
 御言は炎龍の秋葉に言い囮として真っ先にアヤカシのもとへ向かった麗華と静馬の2人を信頼して待っていた。
 すると正面から囮の担当の2人とアヤカシの群れやってくるのが確認できた。
 3人は透子の提案で太陽を背にしていた。雲のない空で唯一姿を眩ませることのできる方法だ。
 そして、奇襲をかけた。
 透子は巫女の代わりに甲班の回復の担当をしているが、最初の駿龍の蝉丸の速さを生かし、一撃はガーゴイルに斬撃符を放ち即座に、離脱した。そして、囮を担当し傷ついた静馬を治癒符で癒した。
「本職じゃないですから少し我慢してください」
 と、一言。そうして開拓者たちの後ろへ下がり援護の体勢を取った。
 その頃御言は、
「行くぞ、秋葉!我等今こそ駆け抜ける時!!」
 と叫び、秋葉と突撃しようと向かった。御言は物見槍に炎魂縛武で炎を灯し、秋葉にファングの指示をした。そして衝突。その瞬時にフェイントを使用し奇襲がガーゴイルに炸裂した。そのガーゴイルは落下していった。ガーゴイルの背には2本の矢が刺さっていた。もちろん朱鷺子が放った矢だ。
 やや離れた位置に炎龍の熾思ノ鶯に乗り、鷲の目を使用し1本の矢を構えていた。五人張の弦を最大限引き力を注ぎ込み強射「朔月」を構えた。その矢の狙いは次のガーゴイルだ。
 射。
 矢は五人張から放れ大砲の弾のように空を切り閃光となった。矢はまるで結果に吸い寄せられるようにガーゴイルを貫いた。
 静馬がガーゴイルに矢が刺さると同時にガーゴイルの死角から刀で斬撃を入れた。
 麗華は重機械弓「重突」に矢を装填。続いて炎魂縛武で矢に火が灯った。
 飛嵐が一瞬にして間を詰めた。そして、フェイントから重い一撃を放った。最早その一撃は貫くと言うより粉砕すると言うべき破壊力だった。ガーゴイルの頭は跡形もなくなり落下していった。そして即座に離脱し、再度装填をしていた。そこへドラゴンゾンビが襲ったが、しかし透子が斬撃符でドラゴンゾンビに先手を打った。続いて朱鷺子が放った螺旋状を描くように飛ぶ連環弓がドラゴンゾンビに直撃した。そこで麗華の重機械弓「重突」は装填完了し即座に放った。ドラゴンゾンビの片翼は粉々に吹き飛んでいった。浮力を失ったドラゴンゾンビは落下を始めた。そこへ御言と静馬の2人の斬撃で仕留めた。

 ―――乙班

「お前達の集まっていい場所は、何処にもない。この場で消えてもらおうか」
 駿龍の蒼隼に跨る焔 龍牙(ia0904)は『焔龍』の名に恥じぬようにと心に決め戦いの場に舞い上がった。
「往生際が悪いぞ!観念して瘴気に戻れ!『焔龍』の名の元に」
 龍牙は変幻自在に舞い、槍「疾風」による攻撃を入れていった。
 当摩 彰人(ia0214)も駿龍の朱鷹に跨り駆け巡り太刀「兼朱」でガーゴイルもドラゴンゾンビも斬り裂いていった。
 玲璃は駿龍の夏香に乗り、全力移動で加速し、乙班の開拓者を神楽舞「速」で応援して回った。そして傷ついた開拓者には神風恩寵をして回った。
 その間、夏香はソニックブームでの援護を命じられたように実行した。
 贋龍は囮をした時に受けた傷を玲璃に治癒してもらい、攻撃を開始した。基本的にガーゴイルやドラゴンゾンビに一撃を浴びせ、即離脱を繰り返した。主に狙いは首や頭のようだった。右手に持った白鞘と左手に持った脇差で攻撃を行なった。
 彰人が攻撃しているガーゴイルの首を贋龍の炎魂縛武で火を灯した白鞘で斬り落とした。そしてガーゴイルは生命力を失い落下していった。
 囮の担当の役目を終えた弦一郎は騎射、鷲の目、即射を使用し、援護射撃に徹した。
 射。
 射。
 射。
 繰り返し五人張から解き放たれる矢は的確に1体ずつ次々ガーゴイルやドラゴンゾンビを串刺しにしていった。
「蒼隼!、お前の実力を示す時がきた様だ、思いっきり暴れるぞ!」
 龍牙は手綱を確り握って、意思を確りと伝えた。蒼隼は全力移動で一瞬で間合いを詰め、クロウをガーゴイルに叩き込んでいった。加えて龍牙の珠刀「阿見」が、ガーゴイルに斬撃を与えた。珠刀「阿見」による斬撃は蒼隼の速度により、普段以上の斬れ味を見せたようだった。ガーゴイルは息絶えて落下していった。

 ―――丙班

「超音波を出されては厄介ですからね‥‥先に墜ちて貰いますよ!」
 佐久間 一(ia0503)はガーゴイルを狙いを絞り紅蓮紅葉を使用した長槍「羅漢」で一撃を放った。その一撃は炎龍の茜姫のチャージも加わったものだ。ガーゴイルは真っ2つになり、落下していった。
「青紅はん、頑張っとくれやっしゃ」
 雲母坂 芽依華(ia0879)は炎龍の青紅に乗り、珠刀「阿見」を鞘に収めた状態で舞った。孤立していたドラゴンゾンビに青紅のチャージを乗せた一撃が決まった。が、ドラゴンゾンビは怯むことなく反撃をと思ったその刹那、紅葉のような燐光が散り乱れた。そしてドラゴンゾンビは生命を失い落下していった。芽依華は何事もなかったかのように次はガーゴイルを目指した。
 ガーゴイルは芽依華に突進を仕掛けた。そのすれ違いざまに芽依華の珠刀「阿見」が抜かれ、そこからは紅蓮紅葉による紅葉のような燐光が散り乱れた。その太刀筋は雪折だった。自身に迫る攻撃と紙一重のところで、すれ違い様に居合を放って打ち抜ける抜刀術だ。そして銀杏。何事もなかったかのように納刀を済ませていた。
「染井吉野!助けに行くです!!」
 桜は囮を担当し傷ついたミレイの方へ向かって、染井吉野の全力移動で接近した。
「傷を治すは神風恩寵です。」
 と、神風恩寵で傷を癒した。
「あっちの方にアヤカシがいるです!」
 続いて瘴索結界を展開していた桜は、アヤカシの位置を把握し、開拓者に知らせることで常に開拓者は一手先に攻めに転じられているようだった。
「染井吉野!炎です!そこに追い討ち!力の歪みを食らうです!!」
 駿龍の染井吉野の炎がドラゴンゾンビを焼き払った。そこに桜の力の歪みが炸裂した。更にミレイの長槍「羅漢」が槍構から一撃を決めた。続いて火遁を志郎が放った。そしてドラゴンゾンビは再生する間もなく倒されていった。
 志郎の隠逸は駿龍としての特性を活かしクロウと刀身に狼のような波紋が浮かび上がっている薙刀「牙狼」を、次の狙いであるガーゴイルの目と翼を狙い攻撃を入れていった。

●終幕
 甲乙丙班の戦いはしばらく続いた。そうとは言えそう長く続くものではない。終焉の時はくるものだ。開拓者の手によってガーゴイルとドラゴンゾンビは滅びた。あとに残ったものはいくつかの疑問だけだった。
『なぜ1箇所であんなにもたくさんのアヤカシが誕生したのだろうか』
『なぜ街の上空に集まって街を襲わなかったんだろうか』
 と言うものだ。
 透子は陰陽師として興味から地面に落下したまだ瘴気に戻っていないガーゴイルやドラゴンゾンビを観察していた。
(「‥‥発情期?」)
 と思いながら。

 ミレイは街に被害が出ていないかを確認しに戻っていった。そこには外を歩いている人は誰1人おらず、店という店も開いていなかった。事前に信武が知らせて回ったようだった。そのため被害という被害はなかった。しかし、矢だったと思う棒切れが街中に散乱していた。囮を担当した開拓者が放った矢のようだった。
「仕方ない。これは回収した方がいいかな」
 ミレイは街に散らばった矢だった棒切れを回収していった。数が多く気が遠くなるような量だったが、他の開拓者が調査をしているうちに終わらせようと懸命に回収を行なっていった。

 殆どの開拓者は空で散開飛び回っていた。事前に数は増えているようだったと聞いていたためだ。また同じ場所に大量に発生しては意味がないからだ。それに調査し結果を街にも報告する方が安心するだろうということだ。しかし、空にはアヤカシが産まれるような様子は一切なかった。桜の瘴索結界や、龍牙と御言と贋龍の3人の心眼でも特に何も見つけることはできなかった。
 そこへ透子が見つけた結果は、ガーゴイルとドラゴンゾンビはそれぞれ全く同じで、まるで増殖の能力で生まれたようなものだった。どれが最初に生まれたものかまでは検討がつかなかったが、もう街の上空でガーゴイルとドラゴンゾンビが誕生することはないということだった。
 開拓者は戦いの結果と調査の結果を開拓者ギルドへ報告した。結果を聞いた信武は外出許可と結果の報告をするために街へと向かっていった。

●事後談
 その後、数週間経ってもガーゴイルとドラゴンゾンビが新たに生まれてくることなかった。
 ただ、どうして生まれてきたガーゴイルとドラゴンゾンビが即座に街を襲わなかったのかという疑問は今となってはどうすることもできないことだ。
 だが、街では疑問に対していくつかの仮説が上がった。
『群れていなければ何もできない臆病なアヤカシ』
『増殖だけで精一杯で攻め込むと統制が取れない状態だった』
 などというものだった。
 仮説についての話で街はしばらく持ちきりになったが、それでいつもの賑わいを取り戻していった。





     了