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■オープニング本文 四季折々の徒然に針を持ち、気の置けない友と会話を楽しみながら針を動かす。 手仕事は娘達の勤めであると同時に楽しみでもあった。 ●菊露綿 その日、七宝院鞠子(iz0112)は小さな包みを持って、北面首都・仁生にある花椿隊詰所を訪れた。 ふわりと芳香が漂う包みは秋の花を思わせて、包みを持つ鞠子も華やいだ気持ちになる。 「お目付役さま、これからも御身健やかであられますように」 差し出された包みに、お目付役の老爺は「これは忝い」と微笑んだ。 包みの中身は菊の着せ綿だ。 九月九日は重陽。人々は菊の香りに長寿への願いを託し、その日の朝露を綿に含ませて身を拭う。 菊花を包む綿を着物に擬えて、朝露を移した綿を『着せ綿』と呼ぶのだが、鞠子の姉・絢子は毎年この綿を北面の外れにある千代見村から取り寄せる。鞠子は、最近縁が出来た花椿隊の老爺にもと、姉を通して手に入れていたのだった。 それから‥‥と鞠子は抱えていた包みを前へ出す。仄かに菊の香りがするその包みは目付役に差し出したのとはまた別のもので。 「こちらの綿は乾燥させてありますの」 本来の使い方ではないのですけれど‥‥と、鞠子は姉が夜具加工用に求めた綿のお裾分けを前に微笑んだ。 どのように使うのですかと花椿隊の娘達が困惑したのも無理はない。乾燥させた着せ綿など聞いた事がないのだ。 「普通の綿と同じように‥‥ではいけませんでしょうか?」 小首を傾げて、鞠子は「どのように使っても構わないのでは」と返した。姉の絢子は毎年この時期になると夜具を新調し、この綿を中に入れた布団を作らせている。虫が付かぬようきっちり水分を抜いてあるから、普通の綿として使っても問題ないだろうと言う。 「小座布団や縫いぐるみの中に入れたり‥‥裾綿にするのは如何かしら?」 色々と案は出て来るが、袷を仕立てるには何日か掛かるから、実際作るなら人形の着物にしておいた方が良いかもしれない。 畳に広げた端切れを弄びながら、娘達はあれこれと知恵を巡らせ手仕事を楽しんでいる―― |
■参加者一覧
鳳・陽媛(ia0920)
18歳・女・吟
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
玖守 真音(ia7117)
17歳・男・志
ニノン(ia9578)
16歳・女・巫
ラヴィ・ダリエ(ia9738)
15歳・女・巫
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
アルーシュ・リトナ(ib0119)
19歳・女・吟
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
明王院 千覚(ib0351)
17歳・女・巫
モハメド・アルハムディ(ib1210)
18歳・男・吟 |
■リプレイ本文 ●花椿隊・秋のお針子会 抜けるような秋空に、からりと爽やかな秋風が庭を渡る。花椿隊詰所の大部屋は、今日も賑やかなさざめきに満ちていた。 秋霜夜(ia0979)の声に、迎えに出た鞠子は一瞬言葉を詰まらせた。芒の毛、野菊の綿毛、オナモミの実までくっ付けている。 「何か秋が欲しくて、ススキを少し刈ってきましたー♪」 霜夜は戦利品を手にご機嫌だ。芒を手頃な花瓶に活けて満足そうな霜夜に明王院千覚(ib0351)が、野原のお土産を外で取り払って来ましょうと連れ立って再び外へ出て行った。 「丁寧に取らないと‥‥後でチクチク痛い痒い思いをしちゃいますものね」 そんな二人の遣り取りを和やかに見送っていた鳳・陽媛(ia0920)、鞠子の姿を認めると「お久し振りです」と微笑んだ。かつて有志を募りジルベリアへパッチワークキルトを贈った事に触れて、互いに今回もよろしくと言葉を交わしあう。 「今日は、何をお作りになりますの?」 「‥‥巾着にしようかと思います」 応えに少しの間があった理由は、微かに染まった頬が物語っている。二人は、ある共通項が繋ぐ同志だ。 「ふふ、後でゆっくりお伺いいたしましょうね」 余裕の面持ちで言った鞠子だが――このあと窮する事になろうとは。 大部屋では既にお針子達で賑わっている。 ニノン・サジュマン(ia9578)は華やかな端切れを並べてパッチワークの思案中。 「わしは『ぽーち』‥‥携帯用小物入れを作ろうと思っての」 このくらいの、と手指で大きさを形作って並べた生地の上に宛がってみる。なるほど、華やかで可憐な小物入れができそうだ。 色とりどりの端切れを前に、千覚も迷っている様子。こちらは白い柔らかな生地に柄布を合わせて考えている。やがて千覚は菊花柄を手に人形を作り始めた。 天儀の文化も菊の香りも、しっかり楽しみたいところだけれど時は有限、作るものは何にしよう。 とても悩みますねとアルーシュ・リトナ(ib0119)は穏やかに笑んで小首を傾げた。 アルーシュの前には菊花の朝露を集めた綿がある。花の妖精の魔法かおまじないのような素敵な風習が天儀にはあって。 (「ジルベリアに帰ってお話したら喜びそうな方が‥‥」) 天儀贔屓のジルベリア商人を思い出し、にこりと微笑む。共に件の人物へ力を貸した仲間に視線を向けた。 モハメド・アルハムディ(ib1210)が慣れぬ手つきで白い生地に刺繍を施している。 時折指先を針で突きそうになるものの、懸命に一心に色糸で布に描く彼が作っているのは氏族の言葉でヒジャーブと呼ばれるスカーフだ。着物地の柄を参考に天儀固有の花の図をシンプルな線で刺してゆくと、質素でありながら可憐な装飾になった。 しかしながらモハメドが刺繍しているものは明らかに女性向けに見える。ヒジャーブは女性が纏うものだと知らずとも、モハメド自身が使うものには見えない訳で。 「どなたかに贈られるのですか?」 「願いを抱いているアルムルア、方が、ワ、そして叶えたいと思っているアルムルアがいるのです」 そう答えるモハメドは真剣そのものだ。二人の遣り取りを聞いていた鞠子にはモハメドの氏族の言葉は解らなかったけれど、彼の知人に願掛けしている女性がいて、名をアルムルアと言うのだろうかとなどと想像して言った。 「心の籠もった贈り物‥‥きっと喜ばれましょう」 鞠子には自身の境遇に擬えての誤解が少なからずある。実際のところは、モハメドにとって思慕というよりも応援したい気持ちの表れがこのヒジャーブなのだが―― 青い生地にクロッカスの刺繍を施したラヴィ(ia9738)、一寸程の長方形に四角く畳んだ。長めの打紐で上部を綴じて、縁起の良い形に結ぶ。 何故紐を長めに取っているのかを鞠子はこそりと尋ねてみた。 「‥‥う」 ラヴィが真っ赤になった。 色白の肌、白銀の髪に朱が映えて何とも愛らしい。鞠子が微笑ましく返事を待っているもので、ラヴィはこそそと耳打ちした。 「あの‥‥旦那さまに差し上げるのです‥‥」 気さくでお茶目なカフェの店主を思い出し、仲の良い夫婦の様子に鞠子の微笑が深くなった。 大切な人に宛てて作る、心のこもった贈り物。妻が祈るのは健康祈願だろうか、必勝祈願だろうか。 「旅が大好きな方で、いつも風のようにどこかに行ってしまわれるので、せめてお守りを‥‥と‥‥」 だんだん声が小さくなってゆくけれど、同時にラヴィの表情も照れから幸せに彩られてゆき、場が温かな空気に包まれる。 刺繍針を狙い定めて布目に落とし、モハメドは思い出していた。 七夕の頃、笹竹に願いを託した少女がいた。近くに居れば彼女の願い事は誰にだって判るだろう。あんなにはっきりと意思を示し、ひたすらに夢を追う純粋でひたむきな姿を見れば気付かない訳がない。 ――神様の御心のままに。 あの時の会話を思い出し、そう心に呟きながら、モハメドは白いヒジャーブに花を咲かせてゆく。 いずれ父親になる時の事を考えるようになったのだと、少年は言った。 「その子の為に何か、作りたいなって♪」 玖守真音(ia7117)の男前発言に、毎度の事ながら花椿隊の娘さん達から黄色い声が挙がった。氏族の倣いで既に妻帯している真音は、同年代の隊員達から見て随分と大人に見える。 他にも隊員達から熱い視線を受けている開拓者のお姉様達。凛々しい騎士のお姉様、ユリア・ヴァル(ia9996)は、商家のお嬢さんに何やら妙な懐かれ方をしたようだ。 黒い円錐形の胴体に丸い頭部、白銀の長い髪の一部を纏めるように飾り止めた人形を手に取って、指に嵌めてみせたユリアは開拓者の皆だと言った。 「ジークリンデお姉様?」 隣で縫い物をしているジークリンデ(ib0258)に似ている。履物問屋の娘は感心して他の指人形を参加者に照らし合わせ始めた。 ジークリンデは針を休めると、かがり終えた縫いぐるみの胴部を柔らかく手の中に包み込んだ。 「お久し振りになってしまいましたが‥‥曙姫様は如何お過ごしでしたでしょうか?」 ころころころりと手の中で形を整えながら鞠子に問うて、少女が語る近況に微笑んで耳を傾けていたジークリンデは、先日向かった氷室の話をした。 「私はちくわ様にお会いしたのですよ、御山の避暑にお付き合いしたのです」 「まあ、ちくわと‥‥」 実は姉の猫又と間近に接した事がない。特にこの夏はちくわが暑さで疲弊しており、一緒に遊ぶ機会もなかったのだと心底羨ましそうに言う鞠子に次はご一緒にと優しく言って、ジークリンデは手の中の胴部と先に作っていた頭部を合わせてみた。掌におさまるくらいの、黒いうさぎが出来上がりを待っている。 男児でも女児でも喜びそうな玩具をと考えて、真音が作ったのは掌くらいの大きさの人形だった。中に詰めるのは勿論菊綿、普通の綿を混ぜつつ形良く完成させた。 長い髪、優しげな顔立ち――出来上がったのは女の子の人形。 「‥‥人形の元になったのはって?へへっ、実は奥さんだったりする」 照れながらも笑顔で言い切った男前に、再び娘達の歓声が上がった。 ●乙女のさえずり ひとしきりお喋りした頃、霜夜が茶器を運んで来た。 盆の上の湯呑みから茶の香りと花の香りが漂ってくる。くん、と小さく鼻を動かしたニノンが「良い香りじゃの」何の花か気付いて目を細めた。 湯呑みには茶葉のような塊がひとつずつ入っている。緊張の面持ちで霜夜が湯を注ぐと、ほどけるように花の形を現した。 「おお‥‥見事じゃの」 「ジャミール‥‥シャーイ、美しいお茶ですね」 まるで湯の中で菊花が開いたかのようだ。モハメドが緊張の解けた霜夜を褒めると、霜夜はユリアさん提供なのですと白銀の女騎士に水を向けた。 ユリアが自作の紅茶クッキーを出すと、瞬く間に少女達がお姉様の手作りを奪い合う。そんな光景を「口に合ったら嬉しいわ」とゆったり眺めていたり。 甘味はお茶の友、甘味好きが集まってもいたから場には色々な菓子が並ぶ。 真音が用意したのは二種類の餡で作った茶巾絞り。 「ユリアの姉様が用意してくれた菊花茶と合うといいんだけど」 そう言ってモハメドに勧めたのは、南瓜に胡桃を混ぜた茶巾絞りだ。一口の大きさに纏められたそれを口に入れ、甘党の開拓者は美味と頷く。もう一種類はサツマイモに栗を混ぜたもの、甘味好きには堪らない秋らしい味覚に陽媛が無邪気な笑みを浮かべた。 観月が近いという事もあって、月見団子を意識した甘味もいくつか並んでいる。陽媛が作った白く丸い団子は勿論の事、ニノンは雪兎型に形作っている。 お飾り風に盛ってみましたと陽媛が出した三宝に、ニノンが団子の雪兎を添えてみる。何とも愛らしい観月の設えだ。少しだけ取り分けて、霜夜が飾った芒にお供えしようという事になった。 「覚えて‥‥いらっしゃいますか?」 千覚が荷から取り出した、お手玉の雪うさぎ。番いのそれを懐かしく触れた鞠子は、千覚が今日作っているものも兎だと気が付いた。 「兎‥‥お好きなのですか?」 千覚の頭には兎耳カチューシャ、おっとりとした千覚によく似合っている――本当に兎好きらしい。鞠子の視線に「仲秋の名月ですから」はにかんで答える千覚である。 お月様に因んで丸いものをと、アルーシュが用意したのはブリヌイ、丸く薄く焼いたクレープ状の料理だ。包む中身はお好みで、アルーシュは洋梨のジャムやサワークリーム、黒スグリを持って来ていた。 「でも、天儀の食材を包んでみると案外美味しいかもしれませんよ?」 ブリヌイ自体は淡白だから結構色々合いそうだ。 小豆餡の掛かった串団子を手に取ったばかりの霜夜が、ブリヌイと串団子を交互に見た後おもむろに包んでみた。筒型のブリヌイに串が出ている格好だ。 「美味しー!」 ぱくっと一口、笑顔が零れた。 遊び心もお茶の楽しみのひとつだ。皆も真似てあれこれ試しては新しい美味しさを見つけてゆく。 ラヴィ特製、本日の練り切りは菊に因んだのを二種類。 「この季節にある重陽のお節句は菊のお祭りなんだとか♪」 透けたように淡く色づいた菊はこんもりと、着せ綿を模したもの。もうひとつは波目模様が付いた涼しげな色合いの練り切りだ。 「これは‥‥?」 「菊水‥‥じゃな?」 波模様の練り切りには黄色の模様が散っている。首を傾げた鞠子へ、ニノンが不老長寿の伝承を示唆した。 ある霊水は不老長寿の妙薬と伝えられ、源流には菊花が咲いている。水の守人はその露をのんでいるが故に永遠を生きている――練り切りに描かれた波模様は霊水の川、これならば菊酒でなくとも不老長寿は願えよう。 「タファッダル、お先にどうぞ。いつまでもお元気で。インシャッラー」 年長者に敬意を表しモハメドが目付役の老爺に勧めた。軽く会釈し小皿を受け取った目付役は、縁起の良い紋様に目を、品の良い甘さに舌を癒す。 続いてモハメドも天儀独特の美意識を鑑賞して後、着せ綿練り切りに楊枝を入れた。優しげな白い生地の下から淡紅が顔を出す。なるほど、これが菊の部分で透けていた訳だ。 「‥‥ところで、鞠子さま?」 「はい?」 今日こそは話してくださいませねと鞠子の想い人を聞きだそうと切り出したラヴィ、耳聡い乙女達が聞き逃すはずもない。 「恋バナ?聞きたいねー♪」 「それは、わしも聞きたいの」 「後学のために‥‥皆様のお話を参考にさせて貰いましょう」 「皆様、代わりばんこでお聞かせ下さいませね♪」 途端に姦しくなるのは年頃の娘が多い為でもあるだろう。染まる頬を微笑ましく見つめるアルーシュ、まだまだと焦るジークリンデにも娘達の追及は容赦ない。いつもこのように賑やかなのですかとモハメドが尋ねたところ、目付役はにこにこと頷いてみせた。 ●思い思いに祈りを込めて 「あれは春先の事でございました‥‥」 ユリアの初恋の思い出に真音の惚気‥‥と来て、今は恋物語の真っ最中。旦那様との出会いから語る長い長いラヴィの話を聞きながら、一同は針仕事の仕上げに取り掛かっていた。 「‥‥む、これお饅頭に見えちゃいます?」 霜夜が作った髪飾りには菊綿が少し入れてある。厚手に仕上がってしまった紅葉はとても美味しそうで、でも食いしん坊の自分らしいと霜夜は笑った。 指人形が十二、あった。 「ユリアお姉様、この人形はどなたの‥‥?」 黒髪のオールバックに黒いサングラスの人形を示して尋ねた商家の娘に、ユリアは艶めいた微笑みを浮かべた。 「真面目でお人よしでへたれは卒業したけど大馬鹿で―――私の特別な人」 そのお話は伺っておりませんと拗ねる娘に「また、いずれね」軽く返して人形を愛おしむようにつついている。 ヒジャーブを仕上げたモハメドは几帳面に畳みつつこう言った。 「天儀には千のイバル、針を通すことで願いを叶えるコマーシュ、生地になるという話があると聞いたことがあります」 つまりこのヒジャーブは彼なりの祈願の形。どこかの地方に伝わる千人針の風習を誤解しているようだが――これほど真剣に作ったものだ、成就のまじないが掛かったとて不思議はないだろう。 「‥‥いい香りです♪」 大小二つの巾着を仕上げた陽媛は仄かに香る菊に満足気だ。千覚作の菊柄模様のちゃんちゃんこを着た白兎からも良い香りが漂っている。 花の形のに菊綿を挟んで柔らかく。 アルーシュがいくつか作ったアップリケは、どれも繊細な花弁模様が施されていた。襟元や外套の裏側に縫い付ければ、ふわり香るだろうか。 菊の花には独特の品があるように思えるとアルーシュは言った。 「可憐でもあり、また、誇らしくも出しゃばらず凛と佇むような‥‥」 天儀の女性のようですねと微笑って、いつか幼馴染の君に逢えるといいですねと鞠子に言葉を添える。 ニノンが作った携帯用小物入れは道中財布型、菊綿は紐先に付けた縮緬菊の中に。本体にはふんわりと綿を食ませ、中に入れた手鏡や装飾品が壊れないようにとの工夫もしてある。 「どんな状況にあっても美しい物を愛し自らを磨く、それが乙女というものじゃ」 きめ細やかな日々の嗜みが乙女を育むのだ。 「曙姫様、これを」 ジークリンデは出来上がったばかりの兎人形を鞠子に手渡した。 黒い兎と白い兎、お守りにもなりそうな掌に収まるくらいの大きさだ。 「翳姫様にも差し上げてくださいませ」 姉の絢子にもと言われて、はっと作り手の顔を見ると、お会いできると良いですねと微笑むジークリンデがいた。実姉と会う事も叶わぬ鞠子は兎達を胸に抱き、瞳を潤ませた。 壮大な恋物語を終えたラヴィはお守りを両の手に挟んで愛しい人の無事を祈る。 神社で聞いた所によると、お守りには符や神木を入れるとか‥‥だからラヴィは月桂樹の欠片を入れて祈る。 青い生地に描いた祈りの花は『あなたを待っています』、内に包む言霊は『勝利、輝ける将来』――戦いに赴く夫を待つ妻の、切なる祈りであった。 |