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■オープニング本文 ぼくのひい爺ちゃんは、とっても年を取っています。 たぶん100歳は越えてると思います。 ひい爺ちゃん、最近元気がないんだ‥‥どうしよう。 ●めだまやきが たべたいのう 今日も、ひい爺ちゃんはご飯をちょっとしか食べなかったんだって‥‥ 盛り付けた時と同じくらい何も減ってないお皿を部屋から下げてきたお母さんは、しょんぼりしてた。 「ひい爺ちゃん、なんにも食べないの?」 「ええ、欲しくない‥‥って仰って」 今日のごはんは、お魚の煮付けと菜の花の御浸し、ぼくにはちょっとオトナの味だけど、お父さんも爺ちゃんも美味しいって食べてた。 ひい爺ちゃん、前は美味しいって食べてたのに‥‥食欲がないんだって。 「おじいちゃん、このままじゃ体を壊しちゃうわ‥‥」 どうしよう。 お医者さんの話だと、ちゃんとご飯を食べていれば体を動かせるようにもなるし、体を動かせるようになればだんだん元気になってくるそうなんだ。 だから――ぼく、ひい爺ちゃんに聞いてみる事にしたんだ。 「ひい爺ちゃん、何か食べたいものはない? ぼくが作ってあげる」 そしたら、ひい爺ちゃんは少しびっくりして――言ったんだ。 「そうさの‥‥目玉焼きが食べたいのう。お前さんが作ってくれた目玉焼きなら食べられそうじゃのう」 「本当?」 「本当じゃとも。大きな大きな目玉焼きが食べたいのう」 ――それで、ぼくはギルドに来ました。 開拓者さんたち、ぼくと一緒に闇目玉をつかまえてください! ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません |
■参加者一覧
鴇ノ宮 風葉(ia0799)
18歳・女・魔
弖志峰 直羽(ia1884)
23歳・男・巫
アーニャ・ベルマン(ia5465)
22歳・女・弓
からす(ia6525)
13歳・女・弓
朱麓(ia8390)
23歳・女・泰
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
モハメド・アルハムディ(ib1210)
18歳・男・吟
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ぼくは闇目玉をつかまえに行きました。ギルドで出会った、8人のお兄さんお姉さん達も一緒です。 ひい爺ちゃん、待っててね。 ところで、お兄さんお姉さん達は、闇目玉がどこにいるのか知っているのかな‥‥ ●闇目玉を狩りに 「嫌いじゃないぜ‥‥その発想!」 弖志峰 直羽(ia1884)お兄さんが、ぼくに親指を立てて言った。 首を傾げたぼくの顔を覗き込んだ、ルンルン・パムポップン(ib0234)お姉さんの目はウルウル。 「ひいお爺ちゃんに元気になってほしいキミの気持ちに、ジンと来ちゃった‥‥」 「お、お姉さん‥‥? 泣かないで‥‥むぐ」 どうしたらいいのかわからないぼくの頭をぎゅっと胸に抱き締めて、ルンルンお姉さんは、ぼくの頭の上で叫んでた。 「こういう時は、正義のニンジャの出番なんだから!」 「ときに少年、目玉焼きとはどのようなものかな」 からす(ia6525)お姉さんがぼくに尋ねた。 ルンルンお姉さんの腕の中から顔だけ出して、焼いた卵の料理だよねって答えたら、みんな安心した顔したり難しい顔したり。 ぼく変な事言ったかな‥‥それで慌てて付け加えたんだ。 「‥‥にわとりのは、そうだよね?」 ((それがどうして闇目玉に繋がるんだ)) みんなが何を考えたのかは、ぼくにはわからない――けど何だかみんな微妙な顔してる‥‥? 「そうだね。目玉のように見える卵の事だよ」 からすお姉さんが首肯してくれたから、合ってるよね。 ひとり離れて柱にもたれてた鴇ノ宮 風葉(ia0799)お姉さんが独り言を繰り返してた。 「目玉焼き‥‥目玉焼きかぁ‥‥」 「ナァム、そう言えば‥‥」 モハメド・アルハムディ(ib1210)お兄さんは以前お友達と目玉焼きの話になったんだって。 遠い国の衣装かな、珍しい服と不思議な言葉の響きに乗せて、モハメドお兄さんは縁のようなものを感じるって話してくれたよ。 「ひいお爺ちゃんに元気になってもらうためにも、頑張りましょうね!」 「美味しい目玉焼きを作ろう」 アーニャ・ベルマン(ia5465)お姉さんが頭を撫でてくれて、朱麓(ia8390)お姉さんが美味しく調理するよって約束してくれた。 みんなが手伝ってくれるから、きっと上手くいくよね! 「目玉焼き。間違ってはいないか」 「末恐ろしい曾孫様‥‥いや、寧ろ良い意味で」 ‥‥そ、そう? それからギルドを出て、闇目玉を探しに行ったんだ。 「手を離しちゃだめですよ?」 迷子にならないようにって、ぼくと手をしっかり繋いでくれているのはレティシア(ib4475)お姉さん。まだ少し肌寒いからって上着を着るように勧めてくれたけど、レティシアお姉さんの手の方が温かい。 ぼくたちから少し離れた所で、朱麓お姉さんとルンルンお姉さんが囮役、モハメドお兄さんが招き寄せの作戦を実行中。 ――なんだけど。 「レティシアお姉さん? ぼく見えないよ」 「大人になるまで見てはいけません」 ええっ、それじゃ声しか聞こえないよ。 繋いでた手を離して、ぼくの目を両手で塞いだレティシアお姉さんは、囮役のお姉さん達をしっかり見てたらしい。 とにかく、ぼくの耳にもルンルンお姉さんの声は聞こえて来た―― 「ホニホニカブラ、パムポップン‥‥ルンルン忍法友達の輪! 私の魅力に闇目玉だってイチコロです!」 おおっ、って直羽お兄さんの声がした直後、殴ったような音がした。 「見惚れてないで警戒しなさい」 ぼくの間近で聞こえた声は風葉お姉さんかな? アーニャお姉さんの忍び笑いが聞こえる――と、その時からすお姉さんの声がした。 「諸君、闇目玉が見ているぞ」 ぼく達と並んで、いつの間にか闇目玉がお姉さん達を見てたんだ! ●たまご 目の前が一気に明るくなった。 眩しくて目をぱちぱちしているぼくを、アーニャお姉さんが引っ張ってって、ぼく達の後ろを闇目玉がふわふわ付いて来る。 見られてる。ぼく、見られてる。 「しっ、見返しちゃいけません」 だって、こっち見てるよう。 ぼくがおろおろしていると、朱麓お姉さんが叫んだ。 「そこで浮いてる三下目玉野郎、とっととこっち来な!」 闇目玉がぴたっと止まった。黒い霧をふわふわ揺らして動かない目玉野郎に向かって、朱麓お姉さんはニヤニヤしながら挑発した。 「それとも何かい? あたしらが怖いから近づけないのかしら〜?」 小馬鹿にしたように、ちょいちょい、と手招きしてる。 闇目玉は何も言わない。だけど本当は怒ったのかもしれない。だって朱麓お姉さんに向かって動き始めたんだもの! さささ‥‥っと、直羽お兄さんとアーニャお姉さんがぼくを庇って立った。 二人の間から眺めていると、闇目玉はふよふよと朱麓お姉さんに近付いてる。少し後ろでモハメドお兄さんが楽器の弦に触れていて、闇目玉はそっちに惹かれてるみたいにも見えた。 ――あ、ルンルンお姉さん、何だかえっちい。 「こどもは見ちゃいけません。私はオトナだからいいんです」 あー、レティシアお姉さんずるーい。 その間に、まわりでごそごそ話し声やら動く音やらしてたけど――何してたんだろう。 やっと目の前から手が離れて辺りを見ると、みんなが闇目玉を囲んでた。 「さあ、闇目玉をつかまえますよ」 ふわりと傘を広げたレティシアお姉さんは、開拓者の顔してにこりと微笑った。 モハメドお兄さんの勇ましい演奏の中、闇目玉がこっち見てた。 「あによ? こっち見んな」 「さて、一狩り行こうぜ☆」 不機嫌そうな風葉お姉さんの突っ込みを抜けて、直羽お兄さんが扇を翻した。途端、生み出された炎が闇目玉を覆う。 「上手に焼けました!?」 「なるほど目玉焼きだね。じゃあ、あたしは切り分けてあげよう」 「ルンルン忍法シャドウマン‥‥ニンジャマン提灯で影よ伸びろ、シャドー」 朱麓お姉さんがフライパンを縦に持ち替えて闇目玉をぶん殴った。黒い霧を散らして目玉の本体が丸見えになったのを、ルンルンお姉さんが捕まえた――そこへ。 女の人の甲高い声がした。 誰、と思う間もなくレティシアお姉さんに頭を抱え込まれたぼくが感じたのは、風を切る音と身動き取れない闇目玉に突き立った矢。 一瞬だけ形を保っていた闇目玉は、次の瞬間黒い霧になってしまった。 ――今の声は誰だったんだろう。 きょろきょろして弓の遣い手を探した先にいたのは、からすお姉さんだ。けどお姉さんの声じゃなくて、お姉さんが放った矢が音を帯びていたんだ。 あっという間に終わった戦い、ぼーっとしているとアーニャお姉さんが近付いて来て、ぼくに卵を渡してくれた。 「はい。闇目玉の中から出てきた『闇目玉の卵』ですよ」 「これでひいお爺ちゃんの為に、がんばってください」 ルンルンお姉さんの笑顔が嬉しかった。 ●おおきな めだまやき 闇目玉の卵はとっても大きくて、ぼくが両手で抱えないと持てないくらい重かった。 「こんなに大きな卵で目玉焼きを作ったら‥‥きっとひい爺ちゃんも元気になるよね?」 ぼくが言うと、みんな「もちろん」って言ってくれた。 早くうちに帰って、目玉焼きを作ろう! みんなを連れ帰ったらお母さんがびっくりしてたけど、風葉お姉さんが事情を説明してくれた。 「そんな事が‥‥うちの子がお世話になりました」 「いい子じゃない。ああ、爺ちゃんに会わせてもらっていいわよね」 そう言うと、風葉お姉さんはお茶道具を持ってひい爺ちゃんの部屋へ。直羽お兄さんとアーニャお姉さんが慌てて追いかけてった。 「美味しいの持ってってあげるから、楽しみにしてな」 朱麓お姉さんがアーニャお姉さんに約束して見送ってから、残ったみんなで台所に行ったんだ。 「モハメドお兄さんは、目玉焼きに何をかけるの?」 「アーニー、私は‥‥ミルフ、塩をかけますね」 以前お友達とそんな話をしたらしいモハメドお兄さんに訊いてみたら、少し考えた後に生真面目な答えが返ってきた。 そしたら、レティシアお姉さんが慌ててひい爺ちゃんの部屋へ駆けてった。 「そうでした、目玉焼きの好みは永遠のテーマです!」 時に大論争を巻き起こす永遠のテーマ! って残してった言葉に、モハメドお兄さんと一緒に首を傾げてたら、からすお姉さんがぼく達に尋ねて。 「うん、拘りは千差万別だ。ときに少年、片面焼きと両面焼き、どちらがいい?」 目玉の形を残して片側だけ焼く片面焼きと、ひっくり返して両面焼くの。ぼくが片面焼きがいいなって言うと「それが拘りだよ」‥‥なるほど。 闇目玉の卵は1個だけなんで、まずはにわとりの卵で練習したんだ。 「そぉっと、上手に割れるかな?」 ルンルンお姉さんに手を添えてもらって、崩さずに卵を割れたよ。火加減がむずかしかったけれど、みんなの分を作っているうちにだんだん上手になってきた。 「うん、上手上手♪ そろそろ本番いってみよっか」 「ハカン、わかりました。では私が割りましょう」 大きな卵はとっても堅いから、モハメドお兄さんに割ってもらってフライパンへ。じゅー。ひい爺ちゃん、もうちょっと待っててね。 「ところで朱麓お姉さんは何を作っているの?」 「ああ、ちょっと‥‥やみめだまんをね」 やみめだまん? お肉を食べられない風葉お姉さんにも食べられる、特製目玉料理なんだって。 からすお姉さんはベーコンエッグにしてる。淡々と、けれどとっても美味しそうな匂いが漂ってくる。 「厚切りベーコンに白の葡萄酒、卵を入れて片面を焼く‥‥ときに少年」 「なぁに」 「大目玉が焦げそうだ」 慌ててぼくはフライパンを火から下ろした。 「いい匂いじゃのう」 直羽お兄さんに手を引かれて、ひい爺ちゃんが台所までやってきた。 「ひい爺ちゃん!?」 「頑張ってる曾孫様に負けまいと、部屋から出て来られたよ」 悪戯っぽく微笑みながら、直羽お兄さんは「ね?」ひい爺ちゃんに目配せしてる。肩を竦めた風葉お姉さんが部屋での会話を教えてくれた。 「何言ってんだか。爺ちゃんに『綺麗な女の子が沢山いる』とか唆してたクセに」 ひい爺ちゃんは、ふぇふぇふぇと笑って誤魔化してる。 アーニャお姉さんが「お爺さん、きっと元気になりますよ」ってぼくに耳打ちしてくれた。 みんなには目玉焼き、ひい爺ちゃんには大きな大きな目玉焼き。 塩に醤油に黒胡椒。 それぞれが好きなものを目玉焼きにかけて、からすお姉さんが淹れてくれたお茶を添えればご飯のできあがり。 「では諸君、頂こう。美味し糧を」 ――いただきまーす。 |